著者
遠藤 泰弘
出版者
松山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、フーゴ・プロイスの主権なき国家論の理論上および実践上の有効性を究明しようとするものである。プロイスは、主権に代えて、「領域高権」概念を導入し、政治主体が重層的に併存する当時のドイツの政治状況において、あえて権力主体を特定するために強引な擬制を行うことを回避しえたという点で、その優位性が認められることを明らかにした。しかし同時に彼は、「責任の拡散」という有機的国家論に特有の難問に直面し、ワイマール憲法48条の大統領の非常権限の評価をめぐり、逡巡する結果ともなった。
著者
颯田 葉子 西岡 輔 安河内 彦輝
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

チトクロームP450(CYP)は生体内外に由来する物質の代謝に関わる酵素である。この酵素の種類は生物によって異なることが知られており、生息環境や食性の違いを反映していると考えられる。本研究では、特に、薬物の代謝に関わるCYPサブファミリーの分子進化や肝臓での発現解析を行い、CYPの多様化の生物学的機構を明らかにすることを目的とした。その結果、サブファミリーの起源は、羊膜類と両生類との共通祖先にまで遡ること、またその酵素の基質特異性を決める領域での特異的な進化の様相を明らかにした。
著者
斉藤 貞夫 今岡 啓治 藤井 秀幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.100, pp.87-90, 2008-06-19

改良型高性能マイクロ波放射計AMSR-Eは、地球観測衛星Aquaに搭載されたマイクロ波放射計である。AquaおよびAMSR-Eは2002年5月4日に打ち上げられた。満6周年を迎えた現在も、致命的なトラブルはなく順調に観測を続けている。ここでは、AMSR-E運用および利用の現状を紹介し、AMSR-Eの観測した地球環境のイベントの一部を紹介する。
著者
吉田 隆志 波多野 力 伊東 秀之
出版者
社団法人 有機合成化学協会
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.500-507, 2004-05-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
24
被引用文献数
5 14

Large-size secondary metabolites with dimeric-oligomeric and/or dendrine-type structure from higher plants are regarded as natural nanomolecules which are constructed in a bottom-up pathway from small molecules under biological condition. Among them are polyphenols classified as tannins which have large molecular weights ranging from 500 to 4000, and strong affinity to proteins, alkaloids and heavy metals to form complex molecules (precipitates). They constitute two major groups : one is condensed tannins (proantocyanidins), which are composed of flavan-3-ol units linked through C-C bond, and the other is hydrolyzable tannins, which are principally multiple esters of D-glucose with gallic acid and its oxidative metabolites. This paper reviews the diverse structural characteristics of both tannins, especially ellagitannin oligomers up to pentamers, and examples of their biological activities. Formation of insoluble and soluble complex between tannins and proteins are also described.
著者
井之上 良一
雑誌
社会系教科教育学研究
巻号頁・発行日
vol.9, pp.29-36, 1997-10
著者
和田芳子 著
出版者
文明堂
巻号頁・発行日
vol.続, 1913
著者
岩間 一弘
出版者
千葉商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、(1)日本人の上海観光と上海の観光都市化、(2)上海におけるクリスマス消費のユニークな大衆化過程、(3)上海における日本式食文化の現地化に関して、それぞれ具体的な研究成果を得た。 日本での中国趣味は 1920~30 年代に盛んとなり、当時の日本人旅行者が抱いた西洋的な上海の幻想は 1980 年代に継承された。1920 年代から上海でクリスマスディナーやクリスマスプレゼントが普及したが、それに対する消費者の認識や位置づけは欧米や日本と異なった。また、現在の上海の和食チェーンレストランでは日本と異なるメニューが提供され、日本と異なる食べ方によって受け入れられている場合が多い。
著者
笹原 宏之
出版者
明治書院
雑誌
日本語学 (ISSN:02880822)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.60-77, 2014-02
著者
村山 康男
出版者
多摩美術大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

写真の発明(1839年)から1870年代に至るフランスの美学、写真理論、美術批判、文科史関連文献資料の収集と整理、研究を中心として進めて来た。ドラクロワの美術論、日記、ボードレールの美術批評、クールベ、シャンフルーリらの美術論、テーヌの美学等の読解を進め、それと平行して、当時の代表的な写真家の写真美学との比較を行なった。その結果、ロマン派から写実主義にいたる美術理論は、「犠牲の理論」(無用な細部を犠牲(省略、選択)にし、全体的効果を高めるという主張)として捉えられるが、この理論が当時の写真美学にとっても基本的な骨格となっていることが明らかになった。この理論は伝統的な美学(選択的模倣の理論)の枠の中にある。それに制約されていたためにこそ、当時の画家、写真家、美術批評家等は、写真の新しいメディアとしての特性(新しい構図法、偶然性の強調等)を積極的に認めることができなかったことを我々の研究は明らかにした。我々が画家の個別研究では、ドラクロワやモネが写真の新しい特性に対して否定的であったことを明らかにしたが、このことは上記の制約からして当然といえる。画家の個別研究では、特にモネに関して研究を進めた。我々はテーヌ著『知性について』の研究によって、彼の知覚心理学が、モネの筆致の使用法を理論的に裏づけていることを明らかにした。モネの画業が、当時の写真よりもテーヌに多くを負っていることは、19世紀中葉のフランス美術における写真の位置を象徴的に示しており、我々の研究にとって大きな成果と言える。