著者
和田 良子
出版者
敬愛大学・千葉敬愛短期大学
雑誌
経済文化研究所紀要 (ISSN:13492446)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.125-144, 2004-03

1990年代末以降、個人の動学的な意思決定問題として、現在バイアスの問題とセルフ・コントロール問題が再浮上している。セルフ・コントロールの問題は、動学的意思決定問題では、時間選好率のアノマリーの一つであるhyperbolic preferenceとして捉えられることが多い。最近では、hyperbolic preferenceがあると仮定した場合のマクロ的な経済分析は、不良債権問題ヤプロジェクトの失敗など枚挙に暇がない。Hyperbolic preferenceがあるときの異時点間の効用関数は、時間選好率ρだけでは説明することはできない。そこでLaibson (1999)は、hyperbolic preferenceの本質的な要素のみを現在バイアスβとして取り出し、(ρ、β)の枠組みで異時点の問題を定式化した。さらにTed O'Donoghue and Mattew Rabin (1999)は、その後この手法を用いて、人々を3つのタイプにわけて、ビヘイビアの違いを分析した。第一は、現在バイアスがなく、したがって明日と今日の違いは時間選好率だけであるようなTime-Consistent (TC)な個人である。第2は、現在バイアスがあるが、賢者個人(sophisticants)であり、第3が愚者(naifes)である。賢者は、β<1である自分を知っているのに対して、愚者は、自分のβは1であり、自分はTCであると思い込んでいる(β=1)が、現実にはβ<1である点が特性を形成している。彼らの問題への対処は、今すぐ犠牲がかかる場合には、賢者(sophisticants)であれば、自分の動学的問題をバックワードに解いて問題を処理することができる。しかし現在バイアスがあり、かつ愚者(naifes)の場合には、最終期の前の期に初めてβ<1であることに気がつくために、最も大きな犠牲を払うこともありうる。具体的に問題を解いてみると、(ρ、β)の枠組みは問題を複雑にしているように見えるが、実際には、問題を現在と次の期の問題に限定していることがわかる。つまり、いま自分がいる時点で遠い将来までのことを考えるというより、次の期と比べて今期の自分はどうであるかを考えることに重点を置くのである。現在バイアスを克服するためのセルフ・コントロールの問題のうち、いかにして問題を克服するか、ということはO'Donoghue and Rabin (1999)のモデルでは扱われていない。セルフコントロール問題を正面から扱い、定義しているのは、Gul and Pesendorfer (2000)である。Gul and Pesendorfer (2000)では、オプションの存在がある主体の効用を下げるようなとき、セルフ・コントロール問題がある、と定義されている。このモデルでは、セルフコントロールに失敗したときの不効用が明示的に効用関数に取り入れられている。ある主体がセルフ・コントロール問題を感じれば、それを克服するためにプレコミットメントを手段として用いる場合もある。本稿では、以上のサーベイを踏まえて実験を組み立て、セルフ・コントロール問題を感じている個人と感じていない個人の行動を計測した。その実験結果の分析により、(β、ρ)アプローチとGul and Pesendorfer (2000)流のセルフ・コントロール問題の叙述は異なってみえるが、本質は切り離して考えることのできない同質的なものであることがわかった。また、βが非常に小さいが自分でそれを分かっている者は、結局ビヘイビアはnaifesと同じになることから、sophistecateであることの意味について再確認する結果を得た。
著者
奥 英之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.81, no.10, pp.1026-1033, 1998-10-25

本年2月7日から16日間にわたり, 長野オリンピックが開催され, 多くの感動とドラマを残し, 大成功のうちに幕を閉じた.今回の長野オリンピックは, 「ハイテクオリンピック」と銘打ち, 1市2町2村の広域に分散した競技会場等が光ファイバネットワークで結ばれ, CCTVシステム, VODシステム, Info'98等の様々なハイテクの情報通信システムが駆使され, 選手の活躍や大会の運営を支え, オリンピックの感動を世界に伝えると共に, 我が国のハイテク技術を世界にアピールした大会でもあった.また, 大会期間中, 競技ならびに大会の運営, 更には国際映像の制作等の面で無線通信が大変重要な役割を果たした.
著者
沖 裕貴 宮浦 崇 林 泰子 井上 史子
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.27, pp.74-77, 2011-08-20

アメリカではユニバーサル化の進展に伴って1970年代後半から全米の州立大学やリベラルアーツ・コレッジの一般教育で初年次教育が取り組まれ始めた。そして,その初年次教育に欠かせないものがピア・リーダーシップ・プログラム(peer leadership program)である。ピア・リーダーシップ・プログラムとは,成績やリーダーシップ,初年次教育セミナーの経験をもとに選抜された上級生か,訓練を受けた後,主に(1)オリエンテーション・プログラム,(2)リメディアル授業,(3)アカデミック・アドバイジング,(4)寮生活における新入生対象プログラム等に従事するものである。本稿では,アメリカのピア・リーダーシップ・プログラムに類似する活動として,立命館大学を中心に我が国の各大学で取り組まれているピア・サポート制度等の学生参画の制度を紹介し,その定義と分類,活動の内容,成果と課題について報告,検討する。
著者
住吉 廣行
出版者
松本大学
雑誌
地域総合研究
巻号頁・発行日
vol.7, pp.171-188, 2007-06

大学では、似たような社会・文化の環境に育った同世代の人間が、共通の学びを介して、少し規模は小さいが社会生活を営んでいる。そこでは学生が中心となって、体育・文化活動等の諸行事が実施される他に、学外団体との共同での取組や、自らの活動を発表する機会もあるなど、多くの学生の意見をまとめながら、学友会活動を具体的に推進していくエネルギーが発揮されている。本学の教職員は、こうした学生の自主的活動の中に、社会性の涵養を図る要素が数多く盛り込まれていると認識しており、側面から支援してきている。本取組では、学生の活動をその本分である学習活動にまで広げようとしている。これまでアンケート調査など間接的に意見を聴取していたFD活動を、学生参画による直接対話で、協働して授業改善を図るという新展開を目指すものである。これまで培ってきた学生との信頼関係に依拠して、前向きな学びの姿勢を引き出す、新たな挑戦と考えている。
著者
岩崎 日出男 太田 宏
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.176-183, 1999-08-15

本論文では, 人間の嗜好や感性の評価をセマンティック・ディファレンシャル(SD〉法をもちいて実施するとき, 評価者の判断のあいまい性をできるだけ少数のサンプルからその分散値で把握し, さらにその信頼限界を推定する立場で考察することを目的としている.そして, SD法に対するあいまいな分散の推定の適用例として, 男性用オードトワレの香りおよび1964年に開催された東京オリンピックのシンボル・マークに対する視覚感性データについて検証を行った.
著者
栗原 芳高
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.530, pp.33-35, 2004-12-10
参考文献数
17

郵政省電波研究所は1964年5月1日、茨城県鹿島町(当時)に鹿島支所を開設し、主として米国NASAの実験用通信衛星リレー2号および応用技術衛星ATS1号を相手として数多くの実験を実施し、衛星通信技術の確立に努めるとともに、シンコム3号(史上初の静止衛星)を用いて、東京オリンピックTV映像の史上初の実用宇宙中継に成功している。本講演では、鹿島地球局の建設からATS実験終結までの、鹿島における衛星通信の黎明期について回顧する。
著者
白木 仁
出版者
筑波大学体育科学系
雑誌
筑波大学体育科学系紀要 (ISSN:03867129)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.107-109, 2005-03

2004年8月13日から29日にわたって、聖地アテネでオリンピックが開催された。選手312名、役員201名、総勢513名を編成し、26競技にチーム・ジャパンとして挑んだ今大会は、多くのメダルを獲得し、日本を感動の渦に巻き込んだ。 ...
著者
鈴木 孝十郎
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会技術報告 (ISSN:03864227)
巻号頁・発行日
vol.15, no.53, pp.19-24, 1991-09-27

世界陸上選手権大会はオリンピックが本来の価値をうすれさせた一方でトップレベルのアスリートが一堂に会し、真の世界一の力と技を競うものとなった。第3回東京大会では日本テレビがホストブロードキヤスターとして、ガイドラインにのつとり、プランを具体化して最大規模の中継放送を行なった。そのカバレージシステムの特徴については各所に新しい試みを盛り込んだ物となつた。長い間の周到な準備と担当者がそれぞれのスペシャリストとなる努力をして送り出した番組は海外からも高い評価を受ける物となった。
著者
中島 楽章
出版者
九州大学大学院人文科学研究院
雑誌
史淵 (ISSN:03869326)
巻号頁・発行日
vol.148, pp.1-37, 2011-03-01 (Released:2011-07-06)
著者
申 東珪 シン トンギュ Dong kyu Shin
雑誌
史苑
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.54-70, 2000-11-08 (Released:2012-11-21)
著者
原 孝子
出版者
文光堂
雑誌
臨床スポーツ医学 = The journal of clinical sports medicine (ISSN:02893339)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.751-755, 1998-07-01
参考文献数
7
被引用文献数
1
著者
文化庁文化財部
出版者
第一法規
雑誌
月刊文化財 (ISSN:00165948)
巻号頁・発行日
no.588, pp.34-36, 2012-09
著者
伊藤 周男 原田 亮介
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1240, pp.102-105, 2004-05-03

問 今年はアテネオリンピックがあり、薄型テレビなどが景気の牽引役になると期待されています。 答 我々は薄型テレビの中でもプラズマテレビに特化しています。まず、プラズマテレビの日本市場だけを見ると、2002年はワールドカップがあって非常に良かった。ところが昨年は、期待していたほどは伸びなかった。別に悪かったわけじゃなくて、あまりにも期待が大きすぎたんですね。
著者
山崎 信 村上 斉 中島 一喜 阿部 啓之 杉浦 俊彦 横沢 正幸 栗原 光規
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.231-235, 2006-05-25
参考文献数
11
被引用文献数
5 6

わが国で飼養されているブロイラーの産肉量に対する地球温暖化の影響を各地域の月平均気温の変動から推定した.環境制御室を用いて気温が産肉量に及ぼす影響を検討したところ,23℃における産肉量と比べて5および15%低下する気温はそれぞれ27.2および30.0℃であることが示された.夏季(7,8および9月)について,その気温域に該当する区域を日本地図上に図示するプログラムにより,地球温暖化の影響を解析した.将来の気候予測データとして「気候変化メッシュデータ(日本)」を用い,約10×10km単位のメッシュで解析を行った.その結果,2060年の7~9月における気温の上昇は,九州の宮崎市および鹿児島市において1.8~2.5℃,東北の青森市および盛岡市において3.0~4.5℃と推定された.また,7,8および9月の各月とも,2020年,2040年,2060年と年代の経過とともに産肉量への地球温暖化の影響が大きくなることが予測され,とくに九州,四国,中国,近畿などの西日本において産肉量が比較的大幅に低下する地域の拡大が懸念された.さらに,現在は産肉量が低下する気温ではない東北地方も,年代の経過とともに産肉量の低下する地域になる可能性が示された.九州および東北地方はわが国の鶏肉生産の半分以上を生産する主要地域であるが,今後とも高い生産を維持するためには地球温暖化を考慮した飼養法の改善が必要であると考えられた.以上の結果から,地球温暖化は今後半世紀でわが国の鶏肉生産に大きな影響をもたらす可能性が示された.