著者
西 真弓 坂本 浩隆
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

脳内コルチコステロイド受容体にはグルココルチコイド受容体(GR)とミネラルコルチコイド受容体(MR)の2種類が存在し、いずれもホルモン誘導性の転写制御因子であり、低分子脂溶性ホルモンのコルチコステロイドとの結合により活性化され、細胞質から核へ速やかに移行し、脳内で発生、分化、ストレス応答など多彩な作用を発揮することが知られている。また共通のリガンドであるコルチコステロイドに対して、MRはGRよりもおよそ10倍親和性が高いことも知られており、この親和性の差を反映して恒常状態ではMRが主として活性化されるのに対し、ストレス状況下などコルチコステロイドの分泌が増加した状態ではMRに加えてGRも活性化されると考えられている。しかしながら、ストレスやサーカデイアンリズムなどに伴いダイナミックに変動するホルモン環境に対し、これら2つの受容体がいかにして神経細胞の突起、細胞質から核へ移行し、標的遺伝子の転写を調節するのか、という生物学にとって極めて基本的かつ重要な問題が未だ明確にされていないのが現状である。本研究では、これら受容体が核局在化シグナル(nuclear localization signal ; NLS)を有することから、このNLSを認識する輸送因子であるインポーチンαおよびβに着目した。平成17年度は、海馬培養神経細胞にCFP-GRあるいはCFP-MRとYFP-インポーチンαの種々のサブタイプを共発現させ、コルチコステロイドを投与した際に受容体とインポーチンαが同時に核内へ輸送されるかを、live cell imagingの手法を用いて解析した。その結果サブタイプにより、核輸送に違いがあることが明らかになった。平成18年度は、GRとインポーチンα1あるいはα3は結合するが、これら複合体は樹状突起から細胞体、核の方には輸送されない、という2点に必要な部位の決定を行い、ミュータントを作成した。現在、受容体とインポーチンαとの複合体を核へ輸送するモーター分子を探索する実験が進行中である。
著者
辻 敏夫 島 圭介 村上 洋介
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.606-613, 2010-06-15
被引用文献数
4 9

This paper proposes a novel pattern classification method of user's motions to use as input signals for human-machine interfaces from electromyograms (EMGs) based on a muscle synergy theory. This method can represent combined motions (e.g. wrist flexion during hand grasping), which are not trained by a recurrent neural network in advance, by combinations of synergy patterns of EMG signals preprocessed by the network. With this method, since the combined motions (i.e. unlearned motions) can be classified through learning of single motions (such as hand grasping and wrist flexion) only, the number of motions could be increased without increasing of the number of learning samples and the learning times for controlling of the machines such as a prosthetic hand. Effectiveness of the proposed method is shown by the motion classification experiments and prosthetic hand control experiments. The results showed that 18 motions, which are 12 combined and 6 single ones, can be classified sufficiently through learning of 6 single motions only (average rate: 89.2 ± 6.33%), and the amputee could control of a prosthetic hand using single and combined motions at will.
著者
野村 安宏
出版者
JAPAN WOOD PRESERVING ASSOCIATION
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.236-244, 1990
被引用文献数
4

新規木材用防かび剤の性能を明確にするため,研究室レベルの試験から野外試験等の中規模試験を経て最後に現場での実用試験(モニター)を行った。<BR>数種の単独及び混合の化合物を,種々の剤型に製剤化し,日本木材保存協会規格第2号に従って防かび性能を評価した.その結果,化合物単体を製剤化した場合には,TPICN及びTCMTBはそれぞれ乳化製剤で高い効力を示し,IPBCは可溶化製剤で高い効力を示した。また化合物を混合して製剤化した場合では,TCMTB+MBTCが乳化製剤で高い効力を示し,TCMTB+IPBCは可溶化製剤で高い効力を示した。<BR>また各種剤型について,その実用可能性を検討した結果,浸漬処理法での作業液安定性を初め,総合的な性能を満足する製剤は乳化タイプであり,本実験ではTCMTBとMBTCとの混合物を主成分とする下記の乳化タイプが実用上優れた性能を発揮した。<BR>(1)水不溶性の有機溶剤単独またはそれと水溶性の有機溶剤を組み合わせたものが,溶剤として良好なもので,界面活性剤はHLBが適合する非カチオン系のものが良い。この組み合わせで製剤化したものが,浸漬処理使用での作業液の長期繰り返し使用にも耐えうる最も優れた乳化安定性を示した。<BR>(2)上記の水不溶性溶剤を配合する乳化タイプ製剤は,水希釈(作業液)時の液性が弱酸性(pH5~7)を示すものでも極度の鉄腐食性を示さず,処理材にも変色が見られなかった。<BR>(3)乳化タイプの製剤品では,水で希釈して初めて乳化性を示す溶媒系製剤が,水系乳剤製剤より気温の変化(-20~40℃)に安定であった。またその性状は低粘度のものが,現場での水希釈時に敏速かつ均一な乳化性を示した。
著者
田中 義一郎 河村 曰佐男
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
Journal of Radiation Research (ISSN:04493060)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.78-84, 1978-03-15 (Released:2006-07-14)
参考文献数
14
被引用文献数
7 12 11

As a method of prompt and rapid estimation of thyroidal 131I burden of the public (and nuclear workers) in emergency exposure to radioiodine, feasibility of a use of a scintillation survey meter with a NaI (T1) crystal was demonstrated using phantoms simulating the thyroid gland of Japanese. Age dependency in the efficiency of detection was found. From the obtained detection limit, a possibility of the practical application of this method was proven. The present method may be safely used in rapid screening and measurement to a first approximation of the thyroidal 131I burden and consequently approximation of absorbed dose to the thyroid gland in emergency situations.
巻号頁・発行日
1898

交通-鉄道敷設 / 和装 / 明治31年10月 / 附・塩川天郎意見書
著者
仲谷 寛 原 良成 宮里 明子 佐藤 聡 伊藤 弘 小林 博 鴨井 久一 菅谷 彰 杉山 裕一 辻上 弘 田村 利之 堀 俊雄
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.220-231, 1992-03-28
被引用文献数
14 2

歯周治療におけるTBC-コラーゲン複合骨移植材: KF-300(TBC-コラーゲン合材)の臨床応用について検討した。歯周疾患によって生じた歯槽骨欠損部68名,80部位に対してTBC-コラーゲン複合骨移植材を応用し,経時的にX線写真および臨床的な評価を行った。術前と比較して術後6ヵ月で,X線写真による骨欠損最深部までの距離は3.6mmの改善が認められた。また,プロービング・デブスおよびアタッチメントレベルは,それぞれ3.2mm, 2.1mmの改善が認められた。動揺度,プロービング時の出血は,術後有意の改善が認められた。骨移植材の漏出および創〓開は,術後2週まで認められたが臨床的には問題とならないと思われた。TBC-コラーゲン合材によると考えられる副作用は1症例も認められなかつた。以上の結果より,TBC-コラーゲン複合骨移植材は,生体親和性に優れ,歯周治療における有用な骨移植材であると考えられた。
著者
小林 伸雄 竹内 理恵子 半田 高 高柳 謙治
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.611-616, 1995-12-15
被引用文献数
8 12

本研究では, 一般にDNA抽出が困難とされる木本性植物のツツジ属からのDNA抽出について検討を加えた後, 最近多くの植物で利用されているRAPD (Random Amplified Polymorphic DNA) 法を用いたツツジ品種の同定を試みた.<BR>ツツジ亜属の種群および同亜属を母種とするッッジ品種ではSDS法およびCTAB法によるDNA抽出が困難であったが, 改変CTAB法では全種からDNA抽出が可能であった.<BR>RAPD分析では, 100種のプライマーについて検索したところ, 16種で鮮明な多型バンドが得られ, 特に多くの多型を検出できた2種のプライマー (OPK-19, 20) を品種同定に用いた. 江戸キリシマ (9品種) およびクルメツツジ (14品種) の品種群では, これらのプライマーで得られた多型バンドにより, すべての供試品種を識別できた. また, サツキ品種では'晃山'とその枝変わり品種との識別が可能であった.以上のような結果から, ツツジ品種の同定技術としてRAPD法を適用できることが示唆された.
著者
谷田 憲俊
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.89-97, 2004 (Released:2005-09-30)
参考文献数
18

The backgrounds of informed consent in the history are described with a special reference to human experimentation, clinical trials and physicians' morality and ethical codes. The first informed consent might be one by a Japanese surgeon Hanaoka Seishu (1760-1835), which included information of diagnosis, condition, and immunity to him in case of incidence. During the extensive development in medicine from the nineteenth to twentieth century, a number of inhumane experimentations were carried out in vulnerable subjects. Then, movement against cruel human experiments emerged, and headed toward establishment of human rights. The current concept of informed consent was introduced in 1900 by the Prussian government. In 1931, Reich Minister of the Interior issued the Guidelines for New Therapy and Human Experimentation, which included almost all informed consent rules in a current sense. However, these guidelines could not stop the abuse of people in medical research by doctors. After World War 2, the Nuremberg Code and Helsinki declaration have established the current form of informed consent. However, even this final form of informed consent could not stop the abuse of research subjects by doctors as exemplified by the Taskegee syphilis study, Willowbrook hepatitis trials and the Gelsinger case in the Pennsylvania University. We must remind ourselves the history of informed consent, which tells us that even the finest form of informed consent rule can be jeopardized easily by doctors resulting in the abuse of research subjects.
著者
嶋田 義仁
出版者
Japan Association for African Studies
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.70, pp.77-89, 2007
被引用文献数
1

モラル・エコノミーと情の経済学は基本的に低開発論であり, その特徴は低開発を当該社会が充分経済合理性を成熟させず, 非経済的な諸価値に支配されていることに起因させる点にある。非経済的価値の重要性を評価しようとしている点で新しさがあるが, 当該社会がどのような価値に重きを置くかという内的要因の観点から (経済合理性も一つの価値), その経済を論じようとしている点で, 基本的に心理主義的であり倫理的である。したがって, 経済発展の方策は新たな価値観の注入という倫理的心理的教育的な手段しかない。低開発を非経済的価値で説明しようというのはそもそもトートロジーであり, 経済発展も低開発も実に多様な様相をとることが説明できない。小論では, これに対して, 経済的発展も停滞も, 歴史自然環境という外的要因によって説明しうるとする。外的要因数は内的要因数よりもはるかに多数であり, これはそれだけの多様な経済発展と低開発があることにもなる。小論では, こうした分析の一例として, アフリカと東南アジアの比較を試みた。アフリカだけでも4種類の歴史自然環境があることになるが (表), この数は分析のレヴェルにおうじてもっと増やせるし, 東南アジアもさらに細かくわけられる。
著者
志賀 朋子 松浦 幹人 関口 麻衣子 伊從 慶太 井手 香織 岩﨑 利郎 西藤 公司
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.107-110, 2012 (Released:2012-07-13)
参考文献数
6
被引用文献数
1

本稿では,犬種および症状から無菌性脂肪織炎が考慮されたものの,病変部の切除生検により異物肉芽腫と診断されたミニチュア・ダックスフンドの3例を経験したので報告する。いずれの症例でも臨床的に皮下結節が認められ,病変部の切除により症例1では病巣から針葉樹の葉が,症例2では竹串が,症例3では縫合糸が摘出された。病理組織学的には,3症例ともに異物を取り囲む化膿性肉芽腫性炎が認められた。犬に皮下結節を認めた場合,異物肉芽腫などの類症鑑別を常に考慮に入れ,切除生検を実施する必要があると考えられた。