著者
Kellies Axel 有田 豊
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.187-235, 2001-06-30
参考文献数
43
被引用文献数
4

ここ10年くらいの間にベトナムの鱗翅目相がかなり解明されてきた.スカシバガ科も多数の昆虫研究者の協力によってかなりの資料が得られるようになった.著者らも1996年よりベトナムでの調査を開始し,1997年よりスカシバガ科の合成性フェロモンを使用することにより多数の種類と多くの個体を収集することができた.近年のベトナムのスカシバガ科の報告は,Romieuxによって1950年に採集され,主にスイスのジュネーブ博物館に保存されている資料によってなされている(Gorbunov,1988;Gorbunov&Arita,1995a,1995b,1995c,1996,1997).また,著者らの資料による報告もなされつつある(Arita&Gorbunov,2000a,2000b,2000c;Gorbunov&Arita,2000a;Arita&Kallies,2000).本報告では,スカシバガ科,ヒメスカシバガ亜科に所属する21種を報告した.ヒメスカシバガ亜科を調べた結果,他の鱗翅目と同様に,北ベトナムのファウナは北東インドや南中国と関係が深いことが明らかになった.すなわち,Trichocerota.dizona Hampson,1919,T.radians Hampson,1919およびT.proxima Le Cerf,1916などは北東インドから知られており,今回北ベトナムからも記録された.さらに,Caudicornia tonkinensis sp.nov.,Entrichella pogonias Bryk,1947およびTrichocerota melli sp.nov.などは南中国からも記録された.Subfamily Tinthiinae Le Cerf,1917 Tinthiini Le Cerf,1917 Ceratocorema Hampson,1893,gen.rev.=Neotinthia Hampson,1919,syn nov.C.hyalina sp.nov.(Figs 2,31,45)非常に小さいスカシバガでこの属の他の種類はインド,ミヤンマー,ラオス,マレーシアなどから知られている.C.yoshiyasui sp.nov.(Figs 3,46)前種同様に小さい種で北ベトナムのクックホンで得られた.Parathrenopsis Le Cerf,1911=Oligophlebiella Strand,1916,syn.nov.P.flaviventris sp.nov.(Figs 4,47)この属の種類は,東アジアと東南アジアから5種類が知られているのみである.Caudicornia Bryk,1947 C.xanthopimpla Bryk,1947(Figs 5,32)この種類は北部ミャンマーから知られていたが,今回北ベトナムの最高峰のファンシーパン山の近くのサパ(標高1,950mのところ)で合成性フェロモンによって採集された.C.tonkinensis sp.nov.(Figs 6,7,33,48)図示したように際だった性的二型の種類である.幼虫はキイチゴの一種の前年茎の基部近くに潜っているのが発見され,飼育の結果本種の雌が羽化した.雄は午後に合成性フェロモンに飛来した.本種は南中国からも発見された.Entrichella Bryk,1947 E.pogonias Bryk,1947(Figs 8,9,10,34)本種は,中国のE.leiaeformis(Walker,1865)や同じく中国のE.meilinensis(Xu&Liu,1993)や韓国のE.shakojianus(Matsumura,1931)などに酷似している.再調査が必要である.E.tricolor sp.nov.(Figs 11,12,34,49)この種は腹部第4と5節の橙黄色と白の帯によってこの属の他の種類と容易に区別される.南中国からも記録された.Trichocerota Hampson,1893 T.proxima Le Cerf,1916,comb.rev.(Figs 13,36)本種は腹部基半分が黒褐色で残りの半分が灰色がかった黄色の2色で,他の種類とは際だって異なる.北部ミャンマーから知られていたが,北部ベトナムからも記録された.T.radians Hampson,1919(Figs 14,15)本種も前翅の長い透明部分から他の種と容易に区別される.北東インドから知られていたが,北部ベトナムからも記録された.T.spilogastra(Le Cerf,1916),comb.rev.本種はすでに,Gorbunov&Arita(1995c)によってベトナムより記録された.T.melli sp.nov.(Figs 16,17,37,50)本種の前翅の青い輝きはこの属の種としては非常に特徴的である.中国南東部と北ベトナムから記録された.Paradoxecia Hampson,1919=Paranthrenina Bryk,1947,syn.nov.P.myrmekomorpha(Bryk,1947),comb.nov.(Figs 18,19,38)本種は腹部基半分が黒褐色で,外半分が灰黄色である.北部ミャンマーから知られていたが,今回北ベトナムからも発見された.P.vietnamica Gorbunov&Arita,1997本種は,Gorbunov&Arita(1997)によって記載された1雌が知られているのみである.P.luteocincta sp.nov.(Fig.20)本種は腹部の幅広い2本の帯が特徴的である.P.karubei sp.nov.(Figs 21,51)本種は腹部の幅広い橙黄色の帯が特徴的である.P.dizona(Hampson,1919),comb.nov.(Figs 22,23,39,52)本種は北東インドから知られていたが,今回北ベトナムから発見された.P.tristis sp.nov.(Figs 24,25,40,53)本種は腹部に帯が全く現われないことからこの属の他の種類から区別される.Rectala Bryk,1947 R.magnifica sp.nov.(Figs 26,27,41,54)本種は雌雄ともに腹部に幅広い黄色の帯が存在することにより他種と間違うことはない.Pennisetiini Naumann,1971 Corematosetia gen.nov.翅脈はヒメスカシバガ亜科のPennisetia属に似るが,雄の触角がPennisetia属ではbipectinate(両櫛歯状)であるのに対して本属では単毛である.また雄のゲニタリアではバルバが大変異なる.C.naumanni sp.nov.(Figs 28,42,43)北ベトナムのタムダオで1雄が得られているのみである.Similipepsini Spatenka et al.,1993 Similipepsis Le Cerf,1911=Vespaegeria Strand,1913 S.helicellus sp.nov.(Figs 29,30,44)本種は開張15mmと大変小さく,また腹部が強くくびれており,チビドロバチに非常によく擬態している.Milisipepsis Gorbunov&Arita,1995 M.bicingulata(Gorbunov&Arita,1995)本種は,Gorubunov&Arita(1995c)によって記載されたホロタイプのみが知られている.
著者
宮狭 和大 坂内祐一 重野 寛 岡田 謙一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.181-192, 2006-01-15

複合現実感技術を用いて現実空間に仮想物体を重畳させることで,産業分野などにおける作業をシミュレーションすることができる.そのような作業の映像記録を参照することで作業の把握が可能であるが,作業映像を基にして作業の把握を試みる方法では,作業把握に有効な場面を知る指標が得られず,また3 次元情報の把握が困難なため,効率の良い十分な作業把握を行うことが難しい.そこで本稿では,作業者が装着しているビデオシースルーHMD からの映像に加え,作業者による仮想物体の操作情報および作業者と仮想物体の位置・姿勢情報を記録し,それらを関連付けて可視化することにより,MR 空間で行われた作業の把握を支援することを提案する.そして提案概念を実現する作業把握支援システムMR Work Visualizer を構築し,その有用性を評価した.
著者
影山 輝國
出版者
実践女子大学
雑誌
實踐國文學 (ISSN:03899756)
巻号頁・発行日
vol.75, pp.76-89, 2009-03-15
著者
(魏) 何晏 撰
出版者
慈眼
巻号頁・発行日
1600

中国三国時代、魏の何晏が「論語」に対する漢魏の古注を総合、自らの見解を加えた書。本版は、慶長年間(1596-1614)刊本。要法寺版。整版。巻末の刊記に「慈眼刊/正運刊/洛汭要法寺内開版」とある。京都日蓮宗の要法寺では、慶長初年より寛永年間(1624-44)まで、主に木活字版で、また整版で仏典、外典、仮名交じりの和書など多種の書籍を出版し、要法寺版といわれる。浅野梅堂(1816-80、蔵書家・画家)、伊藤介夫(幕末明治の儒者)、フランク・ホーレー(1906-61、英国人言語学者)旧蔵書。
著者
西村 淳
出版者
東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻
巻号頁・発行日
2011-03-24

報告番号: ; 学位授与年月日: 2011-03-24 ; 学位の種別: 修士 ; 学位の種類: 修士(工学) ; 学位記番号: ; 研究科・専攻: 工学系研究科電気系工学専攻
著者
佐藤 圭史
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

平成22年度は、優秀若手研究者派遣事業にもとづき英国グラスゴー大学・中東欧研究所に研究滞在した。ホスト教官であるデヴィット・J・スミス教授のもと、ソ連邦末期における、北東エストニア地域を中心としたロシア語話者による自治領域創設問題を研究した。スミス教授の提案に従い、2009年にActa Slavica Iaponica誌に掲載された、資源動員論にかんする自身の論文を発展させる形で研究を進めた。これにともない、資料収集のため、2010年2月と2011年3月にエストニア共和国でフィールドワークを実施した。2度のフィールドワークの実施と、グラスゴー大学滞在中のスミス教授の指導によって、英国派遣終了時には「北東エストニア地域における自治領域創設問題」と題する論文を、概ね完成させるにいたった。優秀若手研究者派遣事業での研究テーマとは異なる分野での研究でも発展がみられた。一つは、ソ連末期のソ連史において決定的に重要な事件である、独ソ不可侵条約付属秘密議定書の公開をめぐる問題である。いま一つは、旧ソ連空間の非承認国家における和平交渉にかんする問題である。モルドヴァでは、1993年から紛争解決の交渉にあたっているOSCE、モルドヴァ共和国統一省での資料収集とインタヴューを中心にフィールドワークを実施した。ここでの研究結果は、グラスゴー大学とドイツのギッセン大学が共同開催した言語問題にかんする国際会議で発表した。
著者
水永 秀樹 田中 俊昭
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

石油・天然ガスや地熱流体の動的挙動を可視化するため,流体流動に伴って発生する電磁気現象に着目した流体流動電磁法を考案した。流体流動電磁法は界面動電現象によって生じた電磁場の時間変化を,地表面で多点同時観測して地下の資源流体の動的挙動を把握するモニタリング探査法である。本研究では,電場 2 成分と磁場 3 成分を測定するための計測機器と,得られた観測データから地下の資源流体の流動方向を推定するための解析プログラムを開発した。
著者
野口 雅弘
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

昨年度執筆した「ウェーバーと自然法」と題する論文では、ウェーバーの著作における西洋、近代、禁欲的プロテスタンティズムの間にある齟齬に注目し、ポリフォニックな西洋的秩序の理念型を抽出した。本年度の研究は、こうした視座を、彼の「音楽社会学」の議論と対応させることで傍証し、また同時代の芸術史家アビ・ヴァールブルクのイコノロジーと対比しながら明確化しつつ、こうした作業を基礎にして一本の論文と一つの研究発表を行なった。まず、論文「ウェーバーと全体主義再考--エリック・フェーゲリンの視角から」(『年報政治学』投稿中)では、冷戦の終焉以降の、主にドイツにおける「全体主義研究ルネサンス」において注目を集めているフェーゲリンの「政治宗教」「グノーシス主義」の視角から、ウェーバーとナチズムの親近性を問題にする従来の解釈(モムゼン・パラダイム)を批評し、「文明の衝突」が言われる状況におけるウェーバーの政治理論の意義を示した。この際とくに、ウェーバーの多神論が、対立を止揚しようとする近代的普遍主義と全体主義に共通する「殲滅」の傾向性に対して、一定の歯止めになっていることを強調した。次に「『ウェーバーと近代』から『ウェーバーと西洋』へ---ウェーバーの著作における静養・近代・普遍」・(「思想史の会」、第30回研究会、2003年12月21日、於法政大学)では、西洋化=近代化=普遍化(=アメリカ化)という近代化論の前提のもとで理解されてきたウェーバー解釈の時代拘束性を指摘し、それを相対化しながら、彼の理論は近代的な普遍主義ではなく、「西洋」的な、つまり異文化に開かれた、多元主義的普遍主義であると論じた。この発表の内容は近日、論文で発表する予定である。
著者
胡桃坂 仁志
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

相同組換えは、DNA の二重鎖切断修復と遺伝的組換えに働く必須の生命反応である。ヒトにおける相同組換え経路では多数のタンパク質が働いているが、現在解明されているタンパク質群のみでは、その反応機構を部分的にしか説明することができない。本研究では、相同組換えにおいて働く新規のタンパク質として、GEMIN2、EVL、PSF などを同定し、それらの相同組換え素過程における役割を明らかにした。また、既知の組換え修復タンパク質 FANCD2 のユビキチン化に、DNA とFANCI が重要であることを見いだした。
著者
村瀬 正雄 河西 一秀 足立 深 田上 ゆり 豊泉 真
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.36, no.10, pp.569-569, 1966-10-25

東京女子医科大学学会第139回例会 昭和41年6月24日(金) 東京女子医科大学本部講堂
著者
薗田 碩哉
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子短期大学紀要 (ISSN:13477196)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.21-34, 2010-03-20

現在の日本社会の特徴はコミュニティの衰退にある。それは不揃いな街並みを見れば一目瞭然であり、近隣関係の貧弱さや地域の教育力、福祉力の低下となって現れている。それはまた、子どもたちの社会化を妨げ、独居老人の孤独死をもたらしている。これからの課題はコミュニティ意識を取り戻し、それを基盤に地域の商業や文化活動やレクリエーションの活性化を図ることである。そのために大学が果たす役割も決して無視できない。短大や地域での筆者の活動を踏まえながら、これからの社会でコミュニティの果たす役割を検討する。