著者
河口 明人
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
no.111, pp.163-196, 2010

ポリスの存続という至上命題の中で,古代ギリシャ人が人間の身体に抱いていた観念は,精神と乖離した二元論的な理解ではなく,彼らの生存の内的欲求を意義づけるエートス(ethos)と一体のものであった。貴族文化の余韻をとどめながらも,人間の内面は身体に表現されることを確信し,その身体を創造せんとする卓越性(アレテー)の概念と結びつき,戦士共同体における生命のアイデンティティを構成することにって,ギリシャ文化や文明をもたらした主要な源泉となった。死すべき運命を悼みながら,その反映としての不滅の栄光を保障する卓越した勇気の顕現を,ポリス間の絶えざる戦闘という不幸の中で具現しようとしたギリシャ人は,英雄精神によって不死の神に至らんとする飽くなき憧憬を抱き続け,鍛錬された身体的能力と,限りない自己啓発を希求する精神的能力の渾然一体化した「カロカガティア」という,人間のありうべき理想像に関する概念的遺産を今日に伝える。
著者
安藤 政志 堀田 政二 渋谷 久恵 前田 俊二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.467, pp.127-130, 2011-03-03
被引用文献数
1

本稿では,尤度ヒストゲラムと呼ばれる複数のセンサごとに求めた尤度を累積したヒストゲラムを特徴量とする記述子を提案し,これを用いてその日が正常に稼働した日(正常日)であるか,あるいは異常を起こした日(異常日)であるのかをSupport Vector Machine (SVM)でクラス分類する方法を提案する.このヒストグラムを求めるために,まずガウス関数を用いてセンサごと・時刻ごとのモデルを構築する.次に,各時刻でモデルごと(センサごと)に尤度を計算し,それらの累積値を投票数にもつヒストグラムを作成する.さらに,ヒストグラムを時間階層化(ピラミッド化)することで,異常検知の精度改善を試みる.これらの記述子を用いることで,one classの分類器以外の分類器による正常日,異常日の分類が可能となる.実際に稼働している精密機器のセンサデータを用いた実験により,提案手法の有効性を管理図と比較しながら検証する.
著者
沢口 敦史 佐藤 導謙
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.505-509, 2001-12-05
被引用文献数
6

春播コムギの初冬播において,根雪前20-25日に播種すれば越冬が良好であることを既報で示した.本報では初冬播栽培において春播栽培よりも安定的に多収を確保する技術として,発芽抑制剤と播種量について検討した.発芽抑制剤試験では,薬剤により越冬後の出芽個体数を増加させ,早期播種においても多収のコムギを生産することが可能な剤が認められた.また試験結果から,最大収量の95%以上を得るためには,178個体m^<-2>以上の生存個体が必要であると判断された.播種量試験では,播種量を春播栽培の標準量(340粒m^<-2>),1.5倍あるいは2倍量を検討した.播種量を増やしても穂数は増えるが穂長と千粒重がやや低下し,収量は標準量播種量とほぼ同じであった.越冬率は越冬可能な播種時期においても40%〜89%であった.これらより,最大収量の95%を得るためには,必要生存個体数178粒を最低の越冬率である40%で除して得られたm^2当たり445粒が播種量として適正であり,これ以上は収量増加に効果的でないと判断された.
著者
北本 豊
出版者
日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-7, 2006-01-25
著者
大貫 真樹子 谷口 伸二 小畑 秀弘
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.586-588, 2005-02-28
被引用文献数
8 9

景勝天橋立近くの森林内で採取した表土シードバンクを植生基材の中に体積比10%混入して吹付けた切土のり面の施工後2年3カ月には, ヌルデ, カラスザンショウを主とする多様な種による低木類が成立した。その林床にはアカマツ, ウリカエデ, リョウブなど風散布型の木本種と鳥散布によって侵入したと思われるヒサカキ, ソヨゴが生育していることが確認された。これらの種類は, のり面上部の森林の植生相を形成する種の一部であり, こののり面は早期に周囲と近似した植生へ遷移することが示唆された。
著者
飛川 光治
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.381-385, 2008-07-15

ナスの花粉の発芽に及ぼす置床後の培養温度の影響について寒天培地上で検討した.花粉の発芽および花粉管の伸長は,花粉の置床直後に発芽適温の25℃で1時間以土経過すれば,その後に15℃に遭遇しても,常時発芽適温で経過した場合と比べて同等であった.一方,置床後に一時的に15℃に遭遇した場合には,その後に25℃に1時間遭遇しても有意に劣ることが示された.ナスの慣行加湿促成栽培における日中の25℃加温と受粉時間帯の果実生産への影響については,11:00〜14:00の3時間の加湿処理中に人為的に授粉することにより,種子数,正常果収量および果実外観は,加温処理外の時間に授粉した場合に比べて有意に向上した.また,それらは11:00〜12:00の1時間の加湿処理時に授粉することだけでも,加湿処理をしない慣行栽培に比べて有意に向上した.
著者
黒田 久寅 熊野 明美 岡本 幸子
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
衛生化学 (ISSN:0013273X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.165-168, 1964-09-30

The present work was undertaken to clarify the physiological mechanism of germination of conidio spore of Cochliobolus miyabeanus. With the spore obtained by wet method, rate of germinaton and regression coefficient of germination curve decreased and the synchronism of spore lowered during storage. But, with the spore obtained by dry method, this phenomena could not be recognized even after 12 weeks'storage. Neither α-picolinic acid nor its analogues were found in the spore. This spore showed a great resistance to such respiration poison as potassium cyanide and sodium azide, therefore, under the condition completely inhibiting the oxygen-uptake (concentration of KCN or NaN_3 was 10^<-3>M/L) or without oxygen the formation of germ tube was observed. Thus, it was supposed that this spore had a metabolic pathway producing energy necessary for germination under an anaerobic condition. The respiration of spore rapidly increased instantly after the beginning of cultivation and the faculty to oxidize external substrate had a tendency to increase after the formation of germ tube.
著者
市原 実 和田 明華 山下 雅幸 澤田 均 木田 揚一 浅井 元朗
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.41-47, 2008-06-30

種子の乾熱処理および火炎放射処理が帰化アサガオ類(ホシアサガオ(Ipomoea triloba),マメアサガオ(I. lacunosa),マルバアサガオ(I. purpurea),マルバアメリカアサガオ(I. hederacea var. integriuscula)およびマルバルコウ(I. coccinea)の発芽に及ぼす影響と,火炎放射後の湛水が種子の生存に及ぼす影響について調査した。80℃で30分間乾熱処理した場合,5草種の発芽率(吸水,膨潤した種子の場合)は21.1〜97.8%であった。マメアサガオ(21.1%)とマルバアサガオ(47.8%)を除く3草種は,72.2%〜97.8%と高い発芽率を示した。一方,火炎放射処理を3秒間行った場合,発芽率は94.4〜100.0%と5草種ともほぼ完全に発芽した。さらに火炎放射処理後の種子は湛水条件下に2ヶ月間埋土されることにより,5草種全てにおいて100%死滅することがわかった。本研究より帰化アサガオ類の防除において,種子散布後に圃場地表面を火炎放射処理し,その後湛水することが有効であることが示唆した。
著者
間野 康男
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.30, pp.37-44, 2006-03-25