著者
町山 栄章 兼子 尚知 石村 豊穂
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

時代的・空間的に広範な分布を示すコケムシについて、海洋環境指標として利活用できるか否か、その検証を行った。MART指標(群体を形成するコケムシの個虫サイズが水温と逆相関の関係にあることを利用して、群体が成長した期間における海水温の平均年較差を算出する)の検証の結果、個虫サイズと平均水温の年較差との関連が実証された。また、対象としたコケムシ骨格の酸素同位体比が平均水温変化と調和していることから、コケムシ骨格は古海洋環境復元指標として有用であると結論づけられる。
著者
風呂田 利夫 須之部 友基 有田 茂生
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus : journal of the Malacological Society of Japan (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.15-23, 2002-06-30
被引用文献数
2

東京湾ならびにその近隣の干潟において, ウミニナ科ならびにキバウミニナ科に属する腹足類の地域個体群がホソウミニナを除いて消滅しつつある。埋め立てにより閉鎖状態で孤立化して存在する東京湾奥部の谷津干潟には, ウミニナ科のウミニナBatillaria multiformisとホソウミニナB. cumingiが生息する。この干潟でのウミニナ類の個体群調査結果から, ホソウミニナは新規加入による個体群の急激な増加傾向が認められたが, ウミニナは長年にわたり老齢個体がわずかに残るのみで, 絶滅が危惧される。ウミニナを水槽飼育したところ卵鞘を生産し, その中からプランクトン幼生が孵化した。谷津干潟は干潮時にはほぼ前面が干出するため, 干潟で孵化したウミニナのプランクトン幼生は東京湾水中に移送されると考えられる。東京湾ではウミニナの生息地である干潟は埋立により孤立的にしか残っておらず, また幼生が放出される夏期は底層の貧酸素化が著しい。したがって, 東京湾水に移送された幼生が干潟に回帰し着底できる可能性は低く, このことがウミニナの新規加入を抑制していると推察される。これに対して, 直達発生により親の生息場に直接加入できるホソウミニナ(Adachi & Wada, 1997)では, 親個体群が形成された後は同所的再生産により個体群は比較的容易に継続もしくは拡大されると推察される。これらのことは, 孤立化した干潟におけるウミニナ類の個体群維持において, プランクトン発生は不利に, 直達発生は有利に機能する可能性が高いことを示唆している。
著者
坂本 一之 小田 竜樹 木村 昭夫 木村 昭夫 R.I.G. Uhrberg M. Donath
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

半導体表面上に作製した低次元ナノ構造体での巨大スピン分裂など、特異なラシュバ効果の観測とその起源の解明を目的に実験と理論の両面より研究を遂行した。その結果、固体表面の対称性に起因した、表面垂直方向に100%偏極したラシュバスピンや、不可欠だと思われていた時間反転対称性がなくてもラシュバ効果が起こることなど、それまでの常識を覆すようなラシュバ効果を報告した。また、ラシュバスピンの向きが原子核近傍の電荷分布の非対称性により決定されることも示した。
著者
長友 恒人 小野 昭
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

IntCal04によって26 kyr BPまで較正することが可能になったC-14年代の有効性を検証することを目的として、約7~30kaのテフラを対象としてルミネッセンス年代測定を行い、18のルミネッセンス年代とC-14年代をクロスチェックした。約13 cal kyr BPを超えるテフラについてはC-14較正年代が若干古い傾向があるようにみえるが、有意に古いかどうかについてはより厳密な検討が必要である。
著者
松田 春香
出版者
大妻女子大学
雑誌
大妻女子大学紀要. 文系 (ISSN:03020304)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.218-209, 2011-03
著者
荒木 淳吾
出版者
筑波大学
雑誌
筑波フォーラム (ISSN:03851850)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.7-11, 2001-06

「当社を志望した理由を述べてください」このフレーズ何度見聞きしたことか。就職活動といえば、この質問(?)に必ず行き当たります。この単純な問いに対して、学生側は気に入られようとあの手、この手の策略を練り、就職へと挑みます。 …
著者
鹿又 伸夫
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.2_65-2_83, 2008-11-30 (Released:2009-01-05)
参考文献数
30

日本における世代間移動の出身―到達機会格差について、独自の階層的地位として扱われてこなかった非正規雇用と無職を含む階層分類をもちいて、女性に焦点をあてながら性別比較をおこなった。この性別比較では、第1に出身―到達格差に男女間の明瞭な相違があるのか、第2に、多くの既存研究で時代的変化がないとされてきた男性と同様に、女性の機会格差にも時代的変化がないといえるかを検討課題とした。仮説的な議論として、前者については女性の出身―到達格差が男性より小さいことが予想されたが、後者の変化については格差の安定的持続、拡大、減少の3通りを予測することができた。2005年SSM調査の職歴データを活用して分析した結果、女性の出身―到達格差は、とくに38歳以降そして最大格差で、男性よりも小さく予測に合致した。また非移動については、男性では時代的変化がなかったが、女性では暦年にともなう変化が確認された。しかしその暦年変化は、階層によって安定的持続、増大および減少の趨勢そして増減の曲線的変化などがみられ、3つの変化予測のいずれとも一致しなかった。
著者
飯尾 唯紀
出版者
北海道大学スラブ研究センター
雑誌
スラヴ研究 (ISSN:05626579)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.95-112, 2001

In Habsburg Hungary, the religious liberty of all estates came into force by the Act of 1608. This article was enacted in the years of crisis of the Habsburg rule, and had been valid, with a little modification, until the end of the 17th century. It has been proposed that this article, accordant with the system of "Neo-Serfdom," gave the religious liberty only to the feudal lords and free royal towns, not to the serfs. In the struggle between the foreign dynasty and domestic feudal lords, the former gave up to intervene in the affairs of serfs. On the other hand, feudal lords reinforced the power on their serfs not only in the physical, but in the spiritual sphere too. For feudal lords, their privilege on religious affairs was self-evident on the premise that they assigned to themselves the power of exercising the right of church-patron. This paper aims at questioning this established account and pointing out two central problems. First, this account regards the act as a part of the regulation of serfdom. Investigating the process of enactment, however, it appeared that the main issue was not on serfs but on the people who lived on those lands belonging to the crown. The second point of debate is about an understanding of the word "villa" [village]. This was interpreted as an expression of the right of non-Catholic church patron to keep their serfs on their side. However, concerning the understanding of the word "villa," we must take into consideration the discretionary power of congregation, which had been developed through late medieval times. As the role of congregation was diverged in each part of the state, there were frequent signs of clashes of opinions among Hungarian feudal lords on the question of the religious liberty of villages. The Act of 1608 declared that the king could not interfere in religious affairs in Hungary, but the right of the villages was not denied. The relation between patron and congregation became a keen issue on the Diet after the 1610s, when the western magnates returned to the Catholic church, and friction between them arose again throughout the Kingdom.
著者
舘 すすむ 川上 直樹 新居 英明 梶本 裕之 梶本 裕之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

触るという感覚の原理を解明し、高品位な触覚ディスプレイの社会的普及を目的として研究を遂行した。触ることにより生じる皮膚の変形や内部の現象を理論的に検証し設計のための知見を得た上で、電気刺激による皮膚感覚提示デバイス、簡易で普及しやすい把持力提示デバイス及び力覚と皮膚感覚を統合した操縦型ロボットハンドシステムを実現した。さらに、視覚障害者の目を代行する額型電気触覚ディスプレイの工学的基礎を与え、社会的普及へ貢献した。
著者
吉田 樹
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、観光地域における生活者と観光者がともに快適な環境を創出するために、生活者と観光交通の折り合いに配慮した交通計画に関する理論化と計画技術の構築を目的として実施したものである。具体的には、以下の二点について検討した。第一には、青森県奥入瀬渓流地域を事例として、観光地域における交通問題の現象解析とその発生構造の分析を行い、観光バスによる車窓観光が地域の道路交通に与える影響を定量的に示した。第二に、鉄道と自転車の融合利用の一つであるサイクルトレインに着目して、地方鉄道の活性化や観光における周遊手段としての可能性を検討した。
著者
宮島 昌克 北浦 勝 池本 敏和 村田 晶 清野 純史 能島 暢呂
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

現在,被害地震の直後には被災建築物応急危険度判定士によって建物の健全度が判定されているが,医療機関の機能の健全度を評価するものではないので,医療機関においては効果を発揮し得ない。このような観点から本研究では,医療機関における建物の健全度のみならず,救命ライフラインや医療機器の耐震機能評価法を考究することを目的とする。まず,過去の地震における医療機関の被災資料を収集した。近年わが国で発生した地震のみならず,アルジェリア・ブーメルデス地震やイラン・バム地震などの被害についても調査し,世界共通の視点から分析した。その結果,地震後の医療機能損失の要因としては建物そのものの損壊,ライフラインの機能喪失,医療機器の転倒,落下に大きく分ける必要があることが明らかとなった。つぎに,2007年3月に発生した能登半島地震と7月に発生した新潟県中越地震の際に被災地の医療施設に対して地震被害が医療機能に与えた影響に関するアンケート調査を実施した。ここでは,上記のように,建物そのものの損壊,ライフラインの機能喪失,医療機器の転倒,落下に分けて,それぞれの被害が医療機能にどのような影響を及ぼしたかについて整理,分析した。その結果,能登半島地震および新潟県中越沖地震では,医療施設において生活機能,医療機能の両面に対して断水被害の影響が目立ったことが明らかとなった。さらに,長周期地震動に対して敏感であると考えられ,しかも医療機器類に多い,キャスター付き機器の振動特性を明らかにするために,正弦波を用いた振動台実験を行い,医療機器類のフラジリティ曲線を求めた。さらに,病院内のライフラインの損傷や薬品棚の転倒が医療機能に及ぼす影響を検討し,それぞれのフラジリティ曲線を提示するとともに,地震時の医療機関の機能損曲線を提案した。
著者
矢部 恒晶
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.55-63, 2007 (Released:2007-08-21)
参考文献数
22
被引用文献数
7

九州におけるニホンジカ特定鳥獣保護管理計画について, 策定している6県の担当者へのアンケートおよび聞き取りを行い, モニタリング手法やこれまでの結果, 評価の体制, 広域的な個体群管理のための協力体制, および推進上の問題点について整理した. 個体群モニタリングには捕獲個体や糞粒法等に基づく指標が利用され, 将来予測や捕獲計画にはいくつかの手法が用いられていた. 2000年度から2006年度までの計画期間においては, 多くの地域で捕獲による生息数の減少割合は小さく, 生息数の現状と最終目標との開きがまだ大きいと考えられた. 計画の推進に当たり, 福岡県では学識経験者で構成される保護管理検討委員会とその他の分野のメンバーで構成される連絡会議が, 他の5県では多分野の委員から構成される保護管理検討委員会が, モニタリングの評価および管理施策の検討を行っていた. 県境を越えて分布するシカ個体群の管理のため, 複数の県や森林管理局等による合同一斉捕獲や, 行政, 試験研究機関等で構成される協議会等における情報交換等の協力体制がつくられてきた. 行政担当者からは, モニタリングの精度, 施策の進行度, 予算の制約等について問題点が指摘された. 今後のモニタリング調査の充実や科学的評価機能の維持, モニタリングデータの共有等が必要と考えられる.
著者
高橋 成子
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

物体知覚と空間知覚における知覚的文脈がどのような脳内機構によって処理されるのかについて検討を行なった。知覚的文脈処理においては、4つの処理系が同定された。視覚情報処理において常に働く機構は、低次文脈処理、および、注意コントロールを担っていると考えられる。これに対して、過去記憶と照合して物体知覚における連合的文脈処理を担う機構、物体奥行き文脈処理を行う機構、空間奥行き文脈処理を行う機構は、刺激状況によって動的に働く。
著者
北尾 幸市 福村 勝 村田 尚志
出版者
日本鋼管
雑誌
NKK技報 (ISSN:09150536)
巻号頁・発行日
no.153, pp.26-31, 1996-03