著者
蘆田 裕史
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度は、シュルレアリスムにおける衣服と身体の問題を理論的な見地とモードとの関連の双方から考察していくことを目指した。その際に着目したのが「切断=裁断」の概念である。シュルレアリスムの「イメージ」においては、衣服が人間身体に代置されるものとして描かれることが珍しくない。それはすなわち、身体が不在のものとなり、衣服のみが現前することである。また、シュルレアリストが描く身体はしばしば切断され、パーツへと解体されている。これはある意味で、衣服的なありかたである。というのは、衣服は本来いくつかのパーツが縫合されることで成立するものであり、常に解体可能なものであり、切断される身体はあたかも衣服であるかのように扱われているといえる。アンドレ・ブルトンがパピエ・コレを型紙になぞらえていることから、衣服制作とコラージュとの関係に着目し、当時現れはじめた立体裁断の手法との関連を明らかにした。つまり、身体にあてられた布地は既にして身体と同一化しているのであり、表象のレヴェルにおいては布地にハサミを入れることと身体にハサミを入れることが同じ行為と見なされるのである。このことを踏まえつつ、ブルトンの『狂気の愛』における有名なスプーンの分析を参照することで、シュルレアリスムにおいては衣服が潜在的な身体として捉えられうることを口頭発表「シュルレアリスムにおける衣服と身体-切断=裁断の概念をめぐって-」において提示した。これはシュルレアリスム内部での問題にとどまらず、シュルレアリスムを同時代のモードの世界に関連づけられる点において、シュルレアリスムにおける衣服の問題を語る上で外せない論点となることは間違いない。

1 0 0 0 IR チェコ語の話

著者
山口 巌
出版者
日本古代ロシア研究会
雑誌
ことばの構造とことばの論理 : 山口巖教授停年記念論文集 (ISSN:02891255)
巻号頁・発行日
pp.721-712, 1998-07

古代ロシア研究特別号
著者
Mocek Tomas Rus Bedrich
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.446-449, 2008-07-25
参考文献数
10

チェコにあるEU共同利用装置Prague Asterix Laser Systemを利用した軟X線レーザー利用・応用研究についていくつかの例を挙げて紹介する.ここでの軟X線レーザーは波長21.2 nmのNe様Znレーザーであり,出力エネルギー〜10 mJ,パルス幅120 ps(パルスあたりの光子数〜10^<15>)と高出力である.この特徴を活かしたプラズマのバックライト撮像や表面加工などの応用研究について紹介する.
著者
山本 祐輔
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

平成22年度は「Web情報の信頼性の評価」に関する研究として2つの課題に取り組んだ.1つ目の研究課題は,Webページに掲載された画像の信憑性を分析するためのアルゴリズムの開発である.本アルゴリズムのために,昨年度開発したWeb情報の信憑性を分析する汎用的なアルゴリズムを画像信憑性分析のために応用・改善した.開発した分析アルゴリズムは,画像の信憑性を画像とその周辺テキスト内容(例:キャプション)との整合性に着目した分析アルゴリズムである.また,提案アルゴリズムの応用システムとして,Web画像の信憑性をブラウジング時にリアルタイムに解析できるアプリケーションImageAlertを開発した,ImageAlertを用いることで,閲覧中の画像の信憑性を分析し,より信憑性の高い画像を取得することが可能となる.開発したアルゴリズム・アプリケーションは,既存のメディア情報とは異なり信憑性の検証がほとんど行われないWeb情報,特にインターネット広告の画像の信憑性検証に有益である.2つ目の研究課題は,インターネットユーザの信憑性判断モデルの推定に基づくWeb検索結果の最適化に関する研究である.情報の信憑性は,情報の種類や情報を閲覧するユーザによって評価尺度が異なる情報特性であることが知られている.そこで,2つ目の研究課題では,検索結果に対するユーザの信憑性フィードバック情報から信憑性判断時にユーザが重視する信憑性評価観点を推定し,それを基にWeb検索結果を再ランキングするシステムを開発した.提案システムによって,(1)通常のWeb検索結果では確認することが難しい信憑性判断情報を確認すること,(2)膨大なWeb情報の中から各々のユーザにとって信憑性が高いと思われるWebページを効率よく検索することが可能となる.
著者
平田 豊
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

運動学習の中核を担う小脳内情報処理機構を魚類を用いた神経生理学実験により明らかにした.また,その知見を数理モデルとして集約し,計算機内に実装して,ロボットアーム等に用いられる実機モータの制御に応用することに成功した.
著者
赤塚 若樹
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-10-20

本研究のテーマは、20世紀チェコの視覚芸術における文学的想像力のはたらきを、美術史的・文学史的・文化史的観点からだけでなく、歴史的・社会的・政治的文脈においても検討することにあった。絵画、写真、グラフィック・デザイン、コラージュ、映画、アニメーションといったさまざまなジャンルをあつかいながら、20世紀に開花したチェコの視覚芸術が、表現の点でも思想の点でも、文学と密接な関係を取り結びながら発展してきたことをあきらかにした。
著者
日置 寛之
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

レンチウイルスは長期発現が可能であるという利点はあるものの、目的遺伝子の発現量が他のウイルスベクターよりも弱いという欠点があった。そこで、神経細胞特異的かつ高発現を可能にするレンチウイルスの開発を進めた。神経細胞特異的プロモーター(SYNプロモーターなど)の制御下でGFPを発現させた場合、ウイルス注入から一週間程度ではGFPの蛍光輝度は非常に弱く、GFPの発現を検出するには免疫染色法が必須となる。そこで、SYNプロモーター下でテトラサイクリン調節性トランス活性化因子(tTA:Tet-Off)を神経細胞特異的に発現するウイルス、Tet応答性プロモーター下でGFPを発現するウイルスを二重感染させるシステムを開発した(Double Lentiviral Vector Tet-Off Platform)。神経細胞特異的に発現したtTAはTREプロモーターを活性化し、その結果GFPの蛍光輝度は40倍程度まで増大した。8週間に渡ってGFPの発現を観察したが、神経細胞特異性に変化はなく、また細胞傷害性も認められなかった。
著者
新井 浩子
出版者
早稲田大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

本研究は、昭和初期における文部省社会教育局の活動実態を明らかにする新資料を整理・分析し、近代社会教育行政の整備・展開過程に関わる貴重な資料として公開することを目的としたものである。昭和初期の社会教育政策についての先行研究は、社会教育局の掌握内容の変遷、組織化過程、代表的指導者の理論研究が行われているが、具体的な社会教育活動を明らかにする研究はほとんどない。本研究代表者は、この未開拓分野に関する新資料を発掘した。新資料は、社会教育局が創設された1929年前後の時期に社会教育を牽引した指導者たちへのインタビュー調査の記録テープ全38本である。調査は1960年代に財団法人日本女性学習財団(当時:財団法人大日本女子社会教育会)によって実施されたものである。本研究では、オープンリール型テープだったものをデジタル変換するとともに、内容をテキスト化して資料として利用可能な状態にした。併せてインタビューの証言者に関する資料収集を行い、社会教育指導者としての役割を明らかにした。約17時間に及ぶ記録テープには、18名の証言が収められている。それは具体的には、社会教育局長、社会教育局職員、県社会教育主事、日比谷図書館長、博物館研究者、青年団指導者、ボーイスカウト指導者、女学校校長、民衆娯楽関係者などによる証言である。証言内容と証言者に関する情報分析から、これまでほとんど知られていなかった民衆娯楽、文部省社会教育局、図書舘・博物館の社会教育施設、府県レベルでの社会教育活動の実態を確認することができた。その結果、1920~30年代に文部省社会教育局が各領域の指導者と密接な関係を結びつつ、その活動を通して社会教育行政の整備を推進したことが明らかになった。今回の調査・研究によって明らかになった事実、昭和初期文部省社会教育活動の歴史的意義については、論文・学会発表において公表していく予定である。また本研究によって整理した証言テープは、現在、(財)日本女性学習財団と公開方法を検討中である。
著者
浅野 紘臣 磯部 勝孝 坪木 良雄
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-8, 1999-04-30
参考文献数
9
被引用文献数
5

アイガモ農法では, アイガモの行動範囲の多少によって除草効果が異なる。ここでは, 雑草防除に関係の深いアイガモの食性と行動について調査するとともにアイガモ放飼による除草効果について調査した。アイガモの食道膨大部を調査した結果, アイガモは雑草の他に昆虫類を摂食していた(Table 2)。この結果アイガモの放飼によって, 除草効果はもちろんのこと害虫に対する防除効果も期待できる。アイガモの行動は, 早朝と薄暮において活発に行動する傾向がみられた(Fig. 1)。また, 放飼されたアイガモは, 水田を縦横無尽に行動することが明らかになった(Fig. 2)。20aの水田に放飼されたアイガモ50羽の内の1個体をマークして調べた行動距離は3.8Km/3:00a.m.-20:00p.m.(17時間)であった(Fig. 1)。アイガモの放飼期間は6月下旬(田植3-4週間後)から8月上旬(出穂時)の40-50日間に及ぶことから、このアイガモの行動距離は, 雑草を制御するに十分な距離と思われた。ミゾソバ, ヤナギタデおよびイヌホタルイが僅かに残ったが実用上問題はなく, アイガモ放飼1週間後からアイガモの引き上げ時(出穂時)まで雑草(藻類を含む)は抑制され, アイガモによる除草効果は極めて大きかった。(Fig. 4, 5, 6, 7)。
著者
西崎 信男
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.145-151, 2008

経済発展に伴い、第3次産業がGDPで6割超を占める先進国の経済構造では、サービス業活性化が不可欠である。一大サービス産業である英国プロサッカーを見る。無形性等サービスの特質から、スタジアムはサービス提供システムで重要な役割を担う。有料TV発達等も加わり、サッカーは「スポーツからビジネスへ脱皮」した。そこでは自前のスタジアムが、差別的優位性を発揮している。クラブの売上高の中で、景気に左右されない入場料は経営の基盤である。入場者数を増大させるためには、ファンのクラブへの思い入れを毀損しないことである。そのためには、スタジアムを単なる「経営資源」ではなく、「地域共有資産」と位置づけることが重要である。
著者
中村 香子 ホルツマン ジョン
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、民族文化観光が、ホストである地元の人びとにとって、どのような経済的資源・文化的資源となっているのかを解明し、地域社会の開発=発展のために民族文化観光が果たしうる役割を探究することを目指している。本研究では、アフリカの「マサイ」を事例に、現地の人びとがみずからの「伝統的な文化」(ダンス、儀礼、装身具、衣装、家屋など)を外国人観光客に提供する民族文化観光が、地元の人びとの経済を支え、自文化に対する誇りを高めるために果たしうる役割に関する情報基盤を提出する。
著者
貞包 英之
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.593-607, 2008-03-31
被引用文献数
4

2002年末より,ネットをとおして知り合った者が自殺をともに企てる「ネット自殺」と呼ばれる事件が流行する.2005年末までに2度の波が観察され,そのなかで未遂を含め計69件,のべ204人がこの事件に参加したのである.<br>事件の最大の特徴は,他の集団自殺でのようには幻想やイデオロギーの共有が確認されなかったことにある.事件では他者の介入をなるべく排除した自殺が選択された.つまりネット自殺では集団で行われながら,個々に孤立する「私的」な死が観察されたのである.<br>近代社会は,問題状況としての死を社会と対立する否定的な要素として想定してきたといえよう.たとえば死のタブー化を主張する議論では,生を規範とする社会から死が否定的なものとして締め出されていることが問題とされる.またアノミーを前提とした議論では,社会の正常な秩序が欠如する際に自殺は発生するとされる.しかしネット自殺では,こうした近代的な図式に回収されない自殺の現象が確認された.すなわち事件では集団形成と矛盾せず,それゆえ社会の否定的要素とならない死が観察されたのである.そうした自殺を発生させることで,事件は自殺の前提となる配置を変えたあらたな社会の形成について示唆している.本論は,ネット自殺事件をとおしてそうした現代社会の特徴を探る試みである.
著者
山田 祥徳 酒井 幹夫 水谷 慎 孫 暁松 野々上 友也 高橋 公紀
出版者
The Society of Powder Technology, Japan
雑誌
粉体工学会誌 (ISSN:03866157)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.288-295, 2011-05-10 (Released:2011-05-31)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

In industrial arena, there are many solid-liquid two phase flow systems like mixing vessels, glass furnaces, solid-liquid separation equipments, etc. Numerical simulations are promising approach to understand the phenomena. Numerical analyses by the Eulerian-Lagrangian approach were performed in the past studies. The Eulerian-Lagrangian methods were applied to various solid-liquid flow systems without the free surfaces. On the other hand, numerical models which can treat the solid-liquid flows involving free surface were hardly developed so far. Hence, in the current study, we develop a Lagrangian-Lagrangian coupling methods to perform the fast simulation of the solid-liquid flows. The liquid phase were modeled by the Explicit Moving Particle Simulation (E-MPS) method. The E-MPS method can simulate the free surface flows easily. The DEM / E-MPS method was applied to a solid-liquid flow in a pipeline. The simulations were performed by changing the acoustic velocity. The simulation results, namely, the solid particle distribution, pressure and fluid velocity were compared in the present study. The DEM / E-MPS method is shown to make possible to perform the fast simulation by assuaging the acoustic velocity.
著者
Osterkamp Sven
出版者
京都大学大学院文学研究科言語学研究室
雑誌
京都大学言語学研究 (ISSN:13497804)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.77-151, 2010-12-25

本稿では、欧米における日本語の研究史において重要な意義をもっているにもかかわらず、これまでほとんど注目されてこなかった資料として東洋学者Andreas Muler (1630~1694)のSyllabarium Japanicum (日本の音節文字)を取り上げる。特に、同書のラテン語原文を英訳した上で、彼の研究に利用された資料が何であるかを明らかにすることを目的とする。Peter Komicki氏によって『七ッいろは』の写本の一つが同書の出典として夙に突き止められていたが、本研究によってMulerは『七ッいろは』以外にもColadoによる『日本文典』および『羅西日辞典』、さらに「海篇』類の字書によく登場する「いろは」と琉球語の語葉集を利用していたことが明らかになった。つづいて、Syllabarium Japanicumのみならず、あまたあるMullerの著作から日本語に関する記述について議論する。彼の著作には日本語とトルコ語が類型論的に似ているといった興味深い指摘を見ることができる。初期中国学者として知られているMu11erの研究とSyllabarium Japanicumの成立には、1661年にプランデンブツレク選手持侯によって開設された図書館(現ベルリン国立図書館)とその漢籍コレクションが大きく関わっている。Mullerの作成した目録によると、『字海』と呼ばれる字書が1683年に漢籍コレクションに加えられたという。本研究では、欧州に所在する『海篇』類字書群の歴史を17世紀から現在に至るまで辿り、このベルリン所蔵の『字海』の具体的な候補として、『音韻字海』と呼ばれる字書が最も有力であるという結論に達した。Syllabarium Japanicumの成立年は遺憾ながら厳密には不詳とするほかはないが、『宇海Jが初めて使われるようになった年代やMullerの活躍時期などを考慮に入れれば、1683~1685年の聞と推定できる。もしそうであれば、この著作こそがドイツ語圏における日本文字の紹介・研究書として最初のものということになる。
著者
岡崎 康浩
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1133-1138, 2006-03-25

本論は,アヴィータ論のシャスティタントラからウッドヨータカラにいたる展開を因の三相の観点から論じ,ウッドヨータカラのこの論に対する貢献を明らかにしようとしたものである.シャスティタントラのアヴィータ論は,夙にフラウワルナーによって再構成されたが,彼の再構成は,その論証式,論証形式という点でいくつか不足している点がある.その不足部分を補って再考した場合,アヴィータの論証は五肢作法の理由・例示・適用・結論に残余法を加えたような論証形態になっており,これを後の三相説から見ると残余法の部分が余計であるように思われる.ディグナーガは残余法を除き三肢作法の理由が帰謬形式になっているものをアヴィータとして提示したが,因の第1相と抵触するとした.これに対し,ウッドヨータカラは否定的属性も主題の属性になりうることを主張し帰謬的性格を保持したまま因の三相説の枠組みに組み入れたのである.
著者
甲本 卓也
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

2元線形ブロック符号のトップダウン(適応)型再帰的最尤および準最尤復号法を考案し、アルゴリズムの有効性を計算機シミュレーションにより示した。従来、最尤復号法の効率的なアルゴリズムとしてはトレリスダイアグラムを用いるヴィタビ復号法が広く知られていたが、実行に際して必要な加算、比較といった演算の回数と記憶容量の問題から、構造がよく知られた2元線形ブロック符号においても符号長64程度までしか計算機シミュレーションによる誤り特性の解析ができなかった。本研究では符号の持つ再起構造に着目し、従来法には無い、次に示す改善を具現化可能なアルゴリズムを考案した。第一に加算に関して、再利用される可能性のある加算結果をメモリに格納し、必要に応じて計算済み結果を再利用し、加算に関する重複計算を完全に除去した。この改善点の実現に伴い、メモリ使用量は増加するが、適応型アルゴリズムとして実現しているため、従来法に比較しても総合的には大きな問題にはなっていない。第二に比較演算に関して、従来法では同じ比較演算が複数の箇所に散在していることが多く、演算の種類が加算の結果の種類の概ね2乗に達するため、比較演算が同一かどうかの判定が簡単ではない。そめため、重複した比較演算が従来法には多数含まれていたが、提案アルゴリズムでは、符号の構造に関する情報を利用することにより、比較演算の重複箇所そのものを理論的に特定し、可能な限り共有することにより、従来法で大きな問題となっていた比較演算の数を劇的に削減することに成功した。第三に、従来法では最適化問題の解法をまじめな総当り的手法によって実現しているため、加算、比較といった演算の回数は、入力系列に無関係に固定的な数値となっていた。提案アルゴリズムでは、枝刈りの手法を最大限活用することにより、入力系列に加えられている雑音の大きさに応じて計算量が変化するようにしている。つまり、雑音が小さな入力系列に対する復号は早く停止するため、平均計算量の低減が可能となっている。以上のような改善に関するコンセプトを実現した最尤復号法および最小重み探索を用いる準最尤復号法のアルゴリズムとして考案し、ソフトウエア実装した。最尤復号法に関しては、よく知られたいくつかの符号として、(128,64,16)RM符号、(128,64,22)拡大BCH符号に関して数値演算シミュレーションにより、精度の高い誤り制御特性を初めて得るとともに、平均的計算量に関して、ヴィタビ復号法などの従来法と比較して劇的な低減が実現されることを示した。また準最尤復号法に関しては、いくつかの符号長256および512のRM符号に関して、優れた誤り制御特性と小さな平均計算量を実現する優れた復号法であることを示した。
著者
高橋 進 元田 結花 安井 宏樹 小舘 尚文
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.政権交代の政治学の狙いは、主として2つあった。一つは戦後西欧諸国の政権交代の事例研究を実証的に行なうこと。2つめは、政権交代に関する政治理論を考察することであった。2.第1の目的については、「東京大学COE先進国における《政策システム》の創出」と協力し、試論的に考察した(本プロジェクトの研究分担者以外にも協力者も求めた)。その成果は、COEのOccasional Paper「政権交代の政治学」として刊行済みである。その後研究会を重ね、修正の後、今年度又は来年度に東京大学出版会から本として刊行される。扱う国は、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オランダであり、それに理論編が加わる予定である。3.2つ目の目標は、現在研究代表者である高橋 進が、その理論モデルを研究中であり、先の東京大学出版会から刊行予定の本に収録する。内容は、レジーム変動と政権交代の中間にあるセミ・レジーム変動といえる政権交代を抽出することにある。そのため分析レベルを3つに区別し、第1のレベルとして、政治的思潮の変化(例えばサッチャリズムから第3の道へ)がどのように生起するのかに焦点をあてる。第2のレベルとして政党システムの再編成を扱う(例えば日本の55年体制の崩壊とそれと同時に起きた政党システムの再編)、第3のレベルは政策の問題であり、与野党間の政策距離の違いが政権交代にどのような影響を与えるのかというのが具体的内容である。4.以上の研究に付随して、先のCOEとも協力して、COEのOccasional Paperとして「変調するヨーロッパ政治」を刊行。加えて、これもCOEと協力してEUに関するシンポジウムも開催(2005年9月)し、それもCOEのOccasional Paper, EU Symposium : The EU Constitutional Treaty and the Future of Projectを刊行した。〔以上〕
著者
深沢 克己 齊藤 寛海 黒木 英充 西川 杉子 堀井 優 勝田 俊輔 千葉 敏之 加藤 玄 踊 共二 宮野 裕 坂野 正則 辻 明日香 宮武 志郎 那須 敬 山本 大丙 藤崎 衛
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

当初の研究計画に即して、国際ワークショップと国際シンポジウムを3年連続で組織し、第一線で活躍する合計14名の研究者を世界各国から結集して、キリスト教諸宗派、イスラーム、ユダヤ教などを対象に、広域的な視野のもとで異宗教・異宗派間の関係を比較史的に研究した。これにより得られた共通認識をふまえて、研究者間の濃密な国際交流ネットワークを構築し、研究代表者を編集責任者として、全員の協力による共著出版の準備を進めることができた。