著者
中村 芳樹 野田 晃司 及川 崇
出版者
鶴見大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

歯を移動した際の歯根膜の遺伝子発現について検討することを目的とした。そこで、歯の移動の初期変化として歯の移動6時間と、大きな組織変化の起っている歯の移動5日間の歯根膜に着目し、遺伝子の解析を行なった(コントロールとして歯を移動していない歯根膜を使用した。ラット上顎第一臼歯の歯の移動を6時間と5日間行い、第1臼歯の凍結非脱灰切片を作製し、laser microdissection法により歯根膜採取し、DNAマイクロチップを用いて発現遺伝子の解析を行い、前年度の正常下での歯根膜の発現遺伝子のデーターと比較検討した。なお、比較検討は正常下での歯根膜の発現遺伝子より2倍以上強く発現しているものと1/2以下のものをリストアップして行なった。歯の移動6時間の結果では、全遺伝子44284中、圧迫側ではその発現が2倍以上増加したものは2960個、1/2以下に減少したもの2978個であった。牽引側では2倍以上のもの2506個、1/2以下に減少したもの2722であった。また、歯の移動5日の結果では。全遺伝子44284中、圧迫側ではその発現が2倍以上増加したものは4239個、1/2以下に減少したもの2849個であった。牽引側では2倍以上のもの3762個、1/2以下に減少したもの2722個であった。歯の移動においては歯根膜の細胞が歯根膜の圧縮や拡張に対して、その細胞内で発現遺伝子を変化させて、新しい環境に適応しているものと思われた。特に牽引側では骨形成に関する遺伝子群、圧迫側ではアポトーシスや骨吸収に関する遺伝子群でその発現量が顕著に増加していた。
著者
鈴木 克典 建部 修見
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.14, pp.49-54, 2009-02-19

本稿は我々が想定する並列ファイル転送システムにおける,ファイル転送タスクのスケジューリングアルゴリズムに関する提案である.想定システムはグリッド環境においてクラスタ間でファイル転送を行うものであり,各ノードに複数の複製が存在することを仮定する.このとき適切な複製選択,転送順序の決定,複製の動的作成を行うことで,最適な転送時間を求める.我々は,この問題を定式化し,リストアルゴリズムを基本とした手法として実装した.提案手法を評価した結果,特定のノードにのみにファイルが偏って分布している場合でも予想転送時間を短縮できることを確認した.We present a task scheduling algorithm of the parallel file transfer system. It is asuumed that the system does file transfer to and from clusters in grid environment, and two or more replicas exist in each cluster. In this situation, to optimize the transfer time, proper transfer scheduling including replica selection and dynamic replica creation should be investigated. We build a model to solve the problem and implement algorithms based on the list-algorithm. Performance evaluation shows that the proposed replica selection algorithm and the replica creation algorithm provide better result than a simple list scheduling in unevenly file distributed case.
著者
鈴木 賢次郎 安達 裕之 加藤 道夫 山口 泰 横山 ゆりか
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

近年、コンピュータによる立体形状の図的表現と図形処理-コンピュータ・グラフィックス(以下、3D-CG)-とその設計製造技術の応用-計算機援用設計(以下、3D-CAD)-が実社会で普及するに連れて、図学教育へのCG/CAD教育導入の必要性が高まっている。そこで、本研究においては、東京大学教養学部前期課程教育(教養教育)における実践を通して、すべての分野に進学する学生を対象とした3D-CG/CADを用いた図的表現法に関する基礎教育-これを、グラフィックス・リテラシー教育と呼ぶ-のためのカリキュラムを開発し、これを普及することを目的とした。平成17年度においては1クラスを対象として、また、平成18年度においては5クラスを対象として試行教育を実施し、これらの試行教育結果の分析を基に、平成19年度から、対象を10クラスに広げて本格教育を開始した。カリキュラム開発に当たっては、学生に提出させたレポート(課題の出来具合/課題を遂行するに学生が要した時間/授業で困難を感じた点を記載)、期末試験、学生による授業評価結果、および、切断面実形視テストを用いた学生の空間認識能力の育成効果について詳細な分析を行い、また、学期末には担当教師による反省会を催し、次年度の教材・教育方法の改善に役立てた。これら授業実施結果の分析によれば。まだまだ、改善すべき点は多いものの、ほぼ目的に沿った授業が実現できたものと考えられる。平成19年3月には、この授業用に執筆した教科書を出版し世に出した。また、カリキュラム開発の経過は、日本図学会、日本設計工学会、グラフィックスとCAD研究会(情報処理学会)、建築学会、図学国際会議、日中図学教育研究国際会議、設計工学国際会議などにおいて、講演・論文の形で公表し、広く当該カリキュラムの普及を図った。
著者
仲 真紀子
出版者
福村出版
巻号頁・発行日
1987-04

現代心理学のすすめ, 田島信元[ほか]編著, ISBN: 4571200226, pp.64-73
著者
中野 美紀
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

現在、有機分子を用いたデバイスの開発が盛んに行われており、分子の電気的特性を調べるために、走査プローブ顕微鏡や微細加工電極が用いられてきた。分子素子の実用化のためには、電流の増幅効果やゲート電圧引加による分子独特の効果が期待できる微細加工電極を用いた三端子素子の作製が望まれる。さらに、電極ギャップ間距離が数nm以下と短い場合には、分子で電極のギャップ間を架橋できるが、大きな電界効果を望めないことが報告されている。この問題を克服するために、絶縁性分子・金属イオンからなる自己組織化多層膜を、数十nmにギャップ間距離を広げたナノギャップ電極に挟み込んだ。本研究では100-400nmのシリコン酸化膜を持つn-Si基板上に斜め蒸着で作製した20-30nmギヤップのナノ電極に多層膜を挟み電気特性を調べた。その結果、ソース・ドレイン間のギャップが狭い場合には、クーロン振動が観察され、単一電子トンネルトランジスター(SET)として働いていることを室温で確認した。しかし、ギャップが広い場合には、クーロン振動は観察されなかった。電極のギャップ距離が均一でないことから、界面の一部、微小ギャップが薄い部分が量子ドットとして働いているために、ギャップ間距離が狭い電極の場合にのみ、SETの現象が観察できたと考えられる。さらに、酸化膜厚を薄くすることで、クーロン振動の周期が短くなり、電界に対する電流の応答性が良くなったものと考えられる。
著者
藤波 朋子
出版者
昭和女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

昨年に引き続き、古糊と呼ばれる小麦デンプン糊を原料とした糊料の製造過程における経年変化を微生物関与の側面から考察し、微生物によるデンプン糊の分解機構をより詳細に解明するための基礎資料を蓄積することを目的としており、本年度は主に経年による微生物生産物の変化・傾向をとらえることに主眼をおいた。使用試料は平成16年2月に生成期間にある貯蔵糊容器中から糊上に張った水・糊を採取し、研究に供した。糊試料については昨年度の研究結果と合わせ考察を加えるため、各容器中より糊塊表面部と糊塊の内部の2箇所から採取を行った。糊試料については水分・還元糖量を測定し、同一容器内の糊塊の表面及び内部の状態及び分解生成物の相違を検討した。またその結果とDSCによるデンプンの熱分析、酵素科学的にデンプンの特性を把握することと合わせ、経年によるデンプン分解の傾向を把握することを計画していた。また、水試料については昨年度に引き続き有機酸分析を行い、同一容器中での変化を調査すると共に、その変化量と経年との関連性についてより考察を加える予定であった。研究廃止により未遂行事項は水試料の分析および糊試料の酵素科学的分析についてであり、それらを含めた検討は終了していない。なお、6月12〜13日には文化財保存修復学会において、昨年度の研究成果の一部についての発表を行っている。
著者
阿部 彩子 田近 英一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

地球上には長い目でみれば生命が存在するような温暖な環境が保たれてきた。ところが、原生代前期と原生代後期において、低緯度の陸が氷で覆われるほどの氷河期が出現したこと、その後急激な温暖化で気候が回復したことなどが最近明らかになった。このような地球規模の大寒冷化では全球凍結状態が実現したのではないかと考えられ、スノーボールアース仮説とよばれている。本研究では、大循環モデルと炭素循環モデルを用いて、地球の過去に見られるような全球規模の凍結や融解がどのような条件で起こりうるものなのかを数値実験によって明らかにすることを大目標としている。本研究では、まず、大循環モデルによる全球凍結の臨界条件決定のための数値実験を数多く行ない、全球凍結に至る気候遷移過程や全球凍結から脱する遷移過程などを調べた。大循環モデル(東京大学気候システム研究センター/環境研にて開発)を用いて、気候感度をしらべるためのエネルギーバランスモデルと同様の系統的実験を行った。季節変化のある場合とない場合、現実のように大陸配置がある場合をまったくなくてすべて海の場合のような異なるケースに対して、異なる太陽定数を設定した実験を、系統的に実行した。結果は、全球凍結に陥る条件については、季節変化の有無に敏感であることがわかった。また、大循環モデルの結果は、地球が部分凍結している条件の範囲がエネルギーバランスモデルで求めたものよりずっと広く、これはハドレー循環や中緯度擾乱など大気輸送メカニズムを考慮したことによることがわかった。海洋熱輸送の変化の寄与を考えずに大気熱輸送の寄与のみを考える限りにおいては、大陸配置はほとんど臨界条件に影響を与えないことがわかった。さらに、大陸配置依存性は、少なくとも降水や蒸発に関わる大気水循環を通じて、炭素循環や氷床形成条件に影響を与えることなどが示唆された。今後この結論は海洋循環や海氷力学の扱いによって変更される可能性があることが、予備的に現在開発中の大気海洋海氷結合モデルの示す南北半球の違いから示唆された。また氷床の力学が臨界条件を変更することが予想される。今後は、大循環モデルの結果を氷床モデルや炭素循環システムのモデルに与えて数値実験を行なうこと、さらに海洋および海氷の効果と氷床力学の効果について検討してゆくこと、など課題は多く残されている
著者
松永 泰義 山森 一人 阿部 亨 堀口 進
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SSE, 交換システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.674, pp.111-116, 2000-03-09

マルチメディア通信は大きな帯域幅を必要とするため, 限られた帯域を効率よく利用するための帯域制御方式の研究が現在盛んに行われている.我々は, WFQ(Weighted Fair Queuing)法に帯域要求量の最大値と最小値を用いたWFQMM(WFQ with the Maximum and Minimum bandwidth)法による公平な帯域割り当て法を提案した.本稿では, 待ち行列のM / M / sモデルを用いたシミュレーションを行い, WFQMM法の性能について議論した.その結果, 帯域制御を行わない場合に比べて安定した満足度が得られ, 帯域予約開始までの待ち時間を削減できた.また, 詳細なパケット通信シミュレーションにより, WFQMM法を用いて予約を行ったストリームは, 帯域制御を行わずに帯域予約を行った場合に比較してパケットの遅延を小さくすることができた.
著者
渡辺 貴史 村島 定行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.114-122, 1996-03-25
被引用文献数
19

ボロノイ図は勢力範囲図とも言うべきもので情報処理のさまざまの分野で重要な役割を果たしている. ボロノイ図を描く方法は母点間の垂直二等分線を描くのが一般的である. この方法では母点数をNとしてO(N)の計算時間がかかる. ここでは計算機画面上で多数の点を配置し, それぞれの点のボロノイ領域を色分けするアルゴリズムを提案する. この方法は与えられた母点に互いに異なる色を割り当てた後, その母点から近い画素順にどの母点の勢力範囲であるかを示す色を置いていくことで実現する. 既に色が置いてある場合はパスする. すべての画素にどの母点の勢力範囲であるかを示す色を置き終わるとボロノイ図が出来上がる. このアルゴリズムは整数演算に基づいているので丸め誤差などは影響しない. またボロノイ図の作成時間は母点の数に依存しない. 母点数2から4000の範囲で調べた結果, ほぼ一定の30秒であった. 距離を計算して, 最近接の母点を決定するS.K.Parui等の方法と比較すると, 母点数が10を超えると, ここで提案の方法が速くなることがわかった.
著者
松永 泰義 山森 一人 阿部 享 堀口 進
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.676, pp.111-116, 2000-03-09

マルチメディア通信は大きな帯域幅を必要とするため, 限られた帯域を効率よく利用するための帯域制御方式の研究が現在盛んに行われている.我々は, WFQ(Weighted Fair Queuing)法に帯域要求量の最大値と最小値を用いたWFQMM(WFQ with the Maximum and Minimum bandwidth)法による公平な帯域割り当て法を提案した.本稿では、待ち行列のM / M / sモデルを用いたシミュレーションを行い, WFQMM法の性能について議論した.その結果, 帯域制御を行わない場合に比べて安定した満足度が得られ, 帯域予約開始までの待ち時間を削減できた.また, 詳細なパケット通信シミュレーションにより, WFQMM法を用いて予約を行ったストリームは, 帯域制御を行わずに帯域予約を行った場合に比較してパケットの遅延を小さくすることができた.
著者
中谷 哲弥 外川 昌彦
出版者
奈良県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

近年、経済成長によって注目される南アジア地域のうち、インドとバングラデシュを取り上げて、経済成長にともなう中間層の台頭と人々のライフスタイルの変容に関して調査研究を行った。具体的には観光と宗教という側面から調査研究を行い、その結果、いずれの国においても、よりレジャー的な観光が拡大する傾向にあることや、消費社会に融合するような形で宗教が埋め込まれ、ひとびとに受容されるようになっていることが判明した。
著者
小松 俊文 四宮 義昭 石田 啓祐
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
no.73, pp.61-63, 2003-03-20
被引用文献数
1

2時間ちょっと.四国がこんなに近いことが信じられなかった.京都で10時のバスに乗り, 淡路島を経由して鳴門に着いたのが12時半.確かに時刻表どおり.しかし, 本当に2時間そこそこで着いてしまうとは….以前, 徳島を訪ねた時は, JRで瀬戸大橋を渡り, 初日は移動日で翌日からが化石採集.徳島の化石産地を訪ねるのは, それなりの準備と覚悟が必要だった.ところが, 今では京都・大阪在住の化石愛好家にとって, 車さえあれば十分日帰りの地域になっている.徳島県には白亜系の地層が広く分布する.勝浦盆地周辺にはアンモナイトや二枚貝, 植物化石などを豊富に産出する主に白亜系下部の堆積物が広がり(沼野・中野, 1964;Nakai and Matsumoto, 1968;小川, 1971;前田他, 1987;松川・江藤, 1987;石田・橋本, 1991;石田ほか, 1992), 瀬戸内周辺には, 白亜系上部の和泉層群が露出する.また, 古生代や中生代三畳紀, ジュラ紀の化石を含む地層もあり, 化石の種類や産出量は申し分ない.多くの化石愛好家が育つのはあたり前の環境である.今回, 著者の一人である小松は勝浦盆地の傍示(ぼうじ)層・藤川層の化石産地を案内してもらう目的で, 徳島化石同好会の方々にお会いした.なお, この記事はその時の体験にもとづいて記されている.
著者
原田 保
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.3-14, 2007

昨今,流通業の競争戦略は熾烈であるが,それでも次から次へと新たな覇権企業が立ち現われてきた。そうなると,最初は辺境から生まれた,まさに取るに足らないような企業がいかにして短期間で業界のヘゲモニーを確立できるのか,という疑問が湧いてくる。そして,これに応えるべき解が本稿で示される「コンテクスト・ドリブン・ビジネスモデル」に見出される,ということが著者の主張である。 なお,著者はかねがねビジネスモデルとはコンテンツ(提供内容)とコンテクスト(提供方法)からなるものと考えているが,後者のコンテクストとはコンテンツが保持する潜在的価値を顕在化するための,あるいは価値を増大するための装置である,ということにその戦略性が見出されるのである。このある種の装置としてのコンテクストの優位性によって成功した企業が,すなわち,そのポジションを「辺境」から「中心」に転換した代表例が「ファースト・リテイリング」「良品計画」「デル」「吉野家」「ディズニーランド(拠点名)」である,と考えることができる。
著者
大野 敏
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

全国に分布する比較的規模の大きい野外博物館(民家野外博物館)を中心に、10年前と現在の活動状況を確認しその経過を把握すると共に、施設における歴史的建造物の修復技術の継承に関する意識についても調査し実態を把握した。その結果、やはり規模の大きい野外博物館は, 潜在的に歴史的建造物修復技術の継承拠点としてのみならず、地域の文化財センター的な役割を担う資質を備えていることがあらためて確認できた。しかしその活動を具体化するためには, 施設単独での実現は困難であり、専門家の協力により研修体制を徐々に整えていくこと、そのための先導的施設として川崎市立日本民家園や博物館明治村は有力であること、などが明らかとなった。なお、具体的な修復研修や技術公開の参考資料として、川崎市立日本民家園における試行やその他地域での試行に関して資料をとりまとめた。