著者
小谷 泰則 石井 源信
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究ではfMRIと脳波を用いて、メンタルトレーニングの効果を評価し、脳活動モデルをもとにした新たなメンタルトレーニング・プログラムを開発することを目的とした。本研究では、まずこれまでの日本において行われたメンタル・トレーニング研究に関して歴史的な経緯を含め、文献レビューを行った。さらに、近年の脳科学研究における内容を参考に「メンタル・トレーニングの生理心理学的メカニズムについて文献研究を通して仮説を立てた。研究1では、被験者は、大学スキー選手を対象とし、メンタルトレーニング・プログラム実施の前と実施後にそれぞれスキー滑走イメージ中の脳活動をfMRIを用いて測定した。研究2では、イメージ及び集中力、動機づけのトレーニングのトレーニングプログラム実施の前後に脳波を測定し、研究3では、動機づけと関連する脳活動について研究を行った。その結果、メンタルトレーニング・プログラムに対して以下のような新たな示唆を見いだすことができた:(1)イメージトレーニングでは、実際の運動学習場面や日常のトレーニング場面と同様に、Step by step的なイメージの内容を想起させることが重要である。(2)時付けを高めるプログラムでは、個々のトレーニング課題に明確で具体的な数値目標を設定し、その目標の何パーセントを達成できたかという「正しくて詳しいフィードバック情報」を与えることが重要であると言える。(3)また、本研究のfMRIを用いた実験から、脳の島皮質が情動をともなう情報と関連していることが示された。島皮質は、体制感覚の情報を処理し、それを意識化する働きをしていると考えられている。そのため、リラクセーショントレーニングとして、選手の心拍が低下したといった身体の安静化への意識付けが情動のコントロールに非常に効果的であることが示された。
著者
辻 俊宏 山中 一司 三原 毅
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

走査プローブ顕微鏡により逆圧電応答を計測する圧電応答顕微鏡(PFM)により、強誘電体メモリ用薄膜の疲労現象やMEMSのアクチュエータ用薄膜の性能向上のメカニズムが明らかにされつつある。しかしデバイスの動作環境、すなわち分極反転過程および逆圧電駆動中の分域をナノスケールの空間分解能で観察する手法は確立されていない。本研究では、表面に作製した電極対(表面電極対)の微小なギャップを利用してデバイスの動作環境の再現を試み、ナノスケールにおける弾性特性評価が可能な超音波原子間力顕微鏡(UAFM)により評価して、強誘電体材料の実用的な環境における材料評価技術の確立を目的とした。強誘電体材料には様々なものがあるが、ここでは特定の結晶方位に分極処理を施すことで従来の材料に比べて著しく高い圧電係数を発現することで近年注目されているマグネシウムニオブ酸鉛(Pb(Mg2/3Nb1/3)O3-PbTiO3:PMN-PT)単結晶について実験を行った。その結果、この材料はキュリー点が130℃と低いために真空蒸着による電極作製時の入熱で脱分極分域組織が発生してしまったものの、表面電極対の電場で分域構造を駆動可能なことが初めて示された。その際に発生した分域境界をUAFMで観察した結果、表面下で斜めになっていることを示唆する結果が得られた。これはPFMのように誘電率の高い材料で電場が表面に集中する状況では不可能な測定であり、UAFMによる表面下欠陥の3次元構造の解析の可能性を実証できた。このように強誘電体材料の分域構造の評価において表面電極対を用いた電界印加およびUAFMによる非破壊評価が有用なことを初めて実証した。以上の研究により微細加工電極により分極・駆動される強誘電体の超音波原子間力顕微鏡による非破壊評価に関する基盤技術が確立でき当初の目的を達成した。
著者
藤田 栄一
出版者
大阪薬科大学
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1984

本研究班では新しい化学構造を有する優れた抗癌剤の生産的開発ならびにそれらの有用性について組織的に研究している。新抗癌剤の合成開発研究分野からは、放射線制癌における新規低酸素性癌細胞増感剤としてニトロトリアゾール誘導体の開発、カンプトテシン系新規抗癌剤の新しい簡便合成法のための重要中間体の好収率合成、抗腫瘍性天然物メガホン、スパトールなどの能率的不斉全合成、新規核酸系抗癌性化合物2′、3′-ジデオキシ-2′-(または3′-)置換リボフラノシルシトシンの開発、抗腫瘍活性シソ科ジテルペンの一種シコクシンの活性増強化、分子軌道法的計算を基盤とする抗腫瘍性シクロペンテンジオン類の合成開発、脳腫瘍の化学療法改善を企図するオキシセルローズ-アドリアマイシン複合体の合成開発、制癌性トロポロン誘導体の合成と構造活性相関の解明などに成功した。天然資源からの新規抗癌剤の探索に関する分野においては、中国産シソ科植物から抗癌性ジテルペン、ラブドロキソニンAの単離構造決定、抗腫瘍性多糖体誘導血清内腫瘍退縮因子の癌治療の応用に関する問題点の解明、放線菌代謝産物から新規抗癌性天然物ラクトキノマイシン-A及び-B、カズサマイシン、アワマイシン、トリエノマイシン-A及び-Bなどの単離構造決定、茜草根より抗癌活性スペクトル幅の広い2環性ヘキサペプチドの単離と化学構造の解明などに成功した。新規抗癌性化合物SM-108、ネプラノシンA、MST-16などの投与法、他の薬剤との交叉耐性ならびに作用機序に関しても興味ある新知見を得た。本年度は本研究班が認可されて2年目になるが、上述の通り数々の新知見ならびに有望な新規抗癌性化合物が、合成と天然資源からの探索の両面から見出されており、可成りの成果が得られたと考えている。さらに各分野研究者の専門的知識と情報を結集して本研究課題を強力に推進させたい。
著者
小澤 浩之
出版者
昭和大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

【目的】強制的歯牙移動時の疼痛により、プロトオンコジンのひとつであるFos陽性細胞が脳に発現することが中枢神経における可塑性、持続性疼痛と関連が深い現象として注目されているが、そのメカニズム解明の第一歩として今回は動物実験におけるFos陽性細胞出現の推移と、アンケート調査により実施した矯正治療中の患者の傷み感覚の推移について比較検討することとした。【動物実験の方法】Urethane,α-chloralose麻酔下で、Wistar ratをindomethacin投与群、非投与群に分けそれぞれ200gで上顎切歯を離開する矯正刺激を加えた。各群とも刺激直後、2時間後、12時間後に4%paraformaldehyde溶液で灌流固定し脳幹部の凍結切片作成後、抗c-foc抗体を用いたABCによりSP5CにおけるFOS陽性細胞を免疫組織学的に検索した。また、矯正刺激を24時間経験させたラットに1週間後同様の手順で刺激し経時変化を調べた(矯正刺激経験群)。【結果および考察】動物実験における経時変化では、2時間後をピークとして陽性細胞が認められた。indomethacin投与群においては反応が見らなかった。一方患者の痛み反応としては、2時間後より痛み反応が出現し、48時間をピークとして減少した。また矯正治療直後にロキソニン(三共)60mgを経口投与した場合、痛み減少傾向を示した。したがって、Fos陽性細胞の出現は、実際の痛み感覚よりもかなり早く出現し、そそ消失後も実際の痛みは長く継続する性質があり、それにプロスタグランディンが関与していることが示唆された。また、痛み刺激経験群においては、動物実験においてはFos発現細胞数が減少し、患者においては痛み反応が低下した。したがって、間欠的に繰り返される痛み刺激に対して、受容系が寛容状態になることが示唆された。
著者
前島精治
雑誌
皮膚科紀要
巻号頁・発行日
vol.93, pp.187-190, 1998
被引用文献数
1
著者
松尾 裕彰
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

昨年度に行った研究で、健常人においてアスピリン以外の非ステロイド性抗炎症薬であるロキソプロフェンナトリウムやジクロフェナクにもアスピリン同様に小麦製品摂取後の血中グリアジン濃度上昇作用があること、および、非ステロイド性抗炎症薬のなかでもシクロオキシゲナーゼ2を選択的に阻害するメロキシカムはその作用がほとんど無いことを明らかにした。本年度は、血中に検出される小麦グリアジンの性状および生物学的活性を明らかにする目的で以下のとおり実施した。健常人3名にアスピリン(1000mg)を投与し、30分後にうどん(小麦粉120g)を摂取させ、試験前及び食後0,15,30,60,120,180分に採血を行った。食後60分の血清から70%エタノールによりグリアジンを抽出し、ゲル濾過HPLC(TSKgel-2000)により解析した結果、分子量約3万をピークトップとするブロードなピークが認められた。すなわち、グリアジンは抗原性を有する高分子の状態で吸収され血液中に存在していることが示唆された。また、血清を直接ゲル濾過により分析すると、分子量3万のピークに加え免疫複合体と推測される分子量10万以上のピークが認められた。次に、血清中に検出されるグリアジンの抗原としての活性を、小麦依存性運動誘発アナフィラキシー患者由来好塩基球を用いて評価した。その結果、健常人の血中に存在するグリアジンは好塩基球からのヒスタミンを遊離する活性をもつことが明らかとなった。さらに、小麦依存性運動誘発アナフィラキシー患者の小麦負荷試験時の血中に存在するグリアジンは、同様に好塩基球からのヒスタミン遊離活性を有することが示された。以上の結果は、非ステロイド抗炎症薬の服用が食物抗原の吸収を促進することを示唆するものである。従って、非ステロイド抗炎症薬の服用は食物アレルギーの症状誘発やアレルゲンへの感作段階における危険因子であると考えられた。
著者
Menzel Barbara
出版者
佐賀大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02867567)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.131-141, 1996-09
著者
宇都宮 啓吾
出版者
大谷女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

従来より纏まった形ではその全体像を把握し難い天台宗系統の訓点資料の研究を行ない、現在は天台真盛宗総本山西教寺の聖教に注目して、天台宗山門派の聖教を個別に調査して来た。その結果として、西教寺正教蔵に存する訓点資料の全ての抽出とその書誌的データと目録化、および、南北朝以前の訓点資料を含めた古写本全ての撮影とデジタルアーカイブ化が完了した。また、その成果を踏まえて、以下の如きことも明らかになった。(1)西教寺聖教の中の正教蔵とされる聖教が比叡山西塔北谷正教坊を由来とする聖教であること。(2)その実態は天台僧舜興によって集書され、舜興は比叡山葛川の総一和尚となるなど、幅広く活躍する人物として多くの聖教を収集できる立場にあったこと。(3)西教寺正教蔵に存する訓点資料の具体的な把握が可能となった。(4)更に、特に注目される個別の訓点資料(具体的には、『無量義経疏』寛平点・『妙法蓮華経』院政期字音点等)に関する国語学上の意義付け。(5)比叡山における聖教調査における里坊を視野に入れた調査の重要性上記の如く、西教寺正教蔵の解明が比叡山西塔北谷正教坊の解明へと繋がり、更には、天台宗山門派系統の聖教解明として発展できることが明かとなり、目録が公開されることによって、他の研究者にも大きく寄与出来るものと思われる。
著者
堤 拓哉 高橋 章弘 南 慎一 植松 康
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
日本風工学会論文集 (ISSN:13493507)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.75-83, 2009-07-01 (Released:2009-10-17)
参考文献数
10

A tornado struck Wakasa Region of Saroma Town in Hokkaido on November 7, 2006. The tornado killed nine people and injured more than 30 people. Many buildings were collapsed or damaged by this tornado. The authors made a damage investigation just after the disaster. This paper presents the characteristics of the damage. It was found that completely and partially destroyed houses were all located along the track of the tornado. The roofs were flown off and walls and windows were broken by flying debris. The aspects of the building damage are closely related to the materials and method of construction typical of snowy cold regions.
著者
渡辺 晃宏
出版者
公益財団法人史学会
雑誌
史學雜誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.98, no.12, pp.1891-1937, 2050-2049, 1989-12-20

Movements of fudokoku 不動穀 (rice reserves) are one good indicator of the economy under the ritsuryo state. According to the conventional view, the Tenpyo 天平 era (729-749) has been considered the high of point of the Japanese ancient state based in part on the understanding that fudokoku stores accumulated to an amount equal to the 田租 (the rice tax on publically allocated land) for 30 years to come, or the total rice crop for one year. What has not yet been considered, however, is what led to the decline in the institution. In the present paper, the author first deals with whether the fudokoku stores were indeed really at their peak quantities during the Tenpyo era, and then attempts to show that because fudokoku expenditures were increasing throughout the 9th century, these reserves probably reached a maximum around the end of 8th century. In addition to increasing expenditures during the 9th century, such appropriations as nenryo soshomai 年料租春米 and nenryo betsuno sokoku 年料別納租穀 began to be deducted from the 田租 before it entered the storehouse, resulting in a decline in reserves from both the revenue and expenditure sides of the ledger, to the extent that we notice the fudokoku system in danger of bankruptcy during the Kanpyo 寛平 era (889-898). With a decline of even the storehouses holding fudokoku, the whole system had to be revamped. The present paper begins with the story beginning in the 10th century and the proceeds backwards to trace what happened to fudokoku, in an attempt to clarify one aspect of the process of change within the Japanese ancient state as a whole. A document entitled Etchu-no-Kuni Kanso Nokoku Kotai-ki 越中国官倉納穀交替記, an accounting record of the official storehouse of Etchu province, is a very valuable source material for ascertaining the accumulation of fudokoku over the 160 years from the beginning of the Tenpyo to the end of Kanpyo era. An analysis of this document shows not only exactly how fudokoku was accumulated, but also that the quantity steadily increased, with the exception of two eras of stagnant rice production (Tenpyo and Enryaku 延暦 [782-806]), up until the end of 9th century. However, a period of increased expenditures including huge outlays for building the Heian capital and pacifying the borderpeoples in the north was ushered in. Through a process of fixing the amounts of special appropriations (betsuno 別納) from the rice tax and designating the remainder as fudoso, finally in 964 a new system was instituted. With this new way of appropriating the rice revenues coming in from the provinces, fudokoku was maintained in name only, but it was soon abandoned altogether when during the third decade of 11th century a system of uniform levies on the provinces was established. However, the memory of the time when fudokoku was appropriated according to the whims of the central government lived on until the end of the 14th century in the ceremonial submittal by a newly appointed provincial governor of a formal petition, entitled fudoso kaiken shinsei-ge 不動倉開検申請解, requesting that the fudokoku storehouse be opened for expection.
著者
竹宮 孝子 杉浦 弘子 前原 通代 前原 通代 竹内 千仙
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

カイニン酸(KA)は痙攣とともに脳内海馬の神経細胞傷害を引き起こす。本研究では、KAが血管内皮細胞に膜型プロスタグランジンE(PGE)合成酵素(mPGES-1)とアストロサイトにPGE_2レセプターEP3を誘導することを発見した。そして、合成されたPGE_2はアストロサイトのEP3を活性化し、アストロサイト内のCa^<2+>を上昇させグルタミン酸の流出を増やし、神経細胞傷害を悪化させることがわかった。これは血管内皮細胞による新たな神経細胞傷害制御メカニズムである。
著者
木崎 良平
出版者
立正大学
雑誌
立正大学文学部論叢 (ISSN:0485215X)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.103-106, 1985-03-20
著者
水崎 隆雄 VASILYEV S.A LUKASHEVICH アイ.アイ 佐々木 豊 大見 哲巨 LUKASHEVICH アイアイ
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

量子効果の極めて大きい偏極原子状水素(H)は絶対零度まで気体であり、充分低温まで冷却出来ればボ-ス凝縮を起こすことが期待されるなど、この新しい量子系の基礎物性は低温物理の最も重要な問題の一つである。京都大学では、液体H面上に吸着された2次元Hの性質を調べ、2次元巨視的凝縮相(Kosteritz-Thouless転移)の達成の可能性を検討し、2次元視的凝縮相出現に今一歩の所にある。一方、Kurchatov研究所のLukashevichのグループは早くからHの研究に着手に、mm-ESRを研究手段として研究成果をあげてきた。ここ数年間はKurchatov研究所とフィンランドのTurku大学との共同研究による局所的磁場を用いた2次元Hの研究が続けられており、既に2次元巨視的凝縮相が実現している可能性を指摘している。京大とKurchatov研究所の研究は相補的であり、2次元HのシグナルをESRで直接観測することにより今まで間接的な測定から類推されてきた2次元Hの研究を飛躍的に進歩させることが本協同研究の目的である。(1)京大側が2次元偏極原子状水素の基礎物性の研究を行ない、K-T転移の最適化条件を調べた。特に、2次元Hは液体^4Hの表面励起と強く結合して吸着されているが、表面励起とバルクのヘリウムの励起との結合が弱く、それが2次元Hの冷却の限界を決めていることが判明した。(2)Kurchatov側では120〜140GHzのESR装置を用意した。特に、2次元H観測に適したファブリベロ-型キャビティーを開発し、低温でのテストを近く行なう予定である。(3)各グループが各段階での研究に相互に参加し、装置の設計や議論を集中的に行なった。平成9年2月〜3月にかけてKurchatov側の研究者が2人来日して、京大の超低温装置にESR装置を設置し、127GHzでHのシグナルを観測することに成功した。ESRによる2次元Hの直接観測の共同研究をH9年度も継続して、K-T転移の探索を行う。
著者
出口 一郎 竹原 幸生 荒木 進歩
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

毎年海水浴シーズンになると,100名を越える尊い人命が海水浴中の事故で失われており,その大部分は,いわゆる離岸流によって引き起こされているといわれている.予め離岸流の発生が予測できる場合は,警告などを出すことにより,事故の発生を未然に防ぐことが可能である.しかし,いくつかの離岸流は狭い範囲で発生し,その持続時間も必ずしも長くはない.この様な離岸流は,遊泳者にとって非常に危険なものとなる.一方,離岸流は沖への漂砂輸送流れとなることから,海岸侵食を議論する上でも重要な流れである.本研究では,飛行船に搭載したビデオカメラによるメソスケールリモートセンシング(100*100m〜400*400mの領域の流れ,波浪の計測)及び周辺海域の波浪情報(波向・波高・周期,平均水位,など)を同時に計測するシステムを構築し,このシステムを用いて継続した離岸流の現地実測を行うと同時に,波浪情報計測システムの有効性を検討するために,平面水槽内での実験を行った.離岸流に関する現地実測では,従来指摘されていたすべての地形性離岸流の計測を行うことができ,さらに突発性離岸流の流況の計測も行うことができた.また,K-GPS相対測位法による海底地形計測法も開発し,観測された離岸流発生地点周辺の海底地形の精測を行い,その上での波浪変形,海浜流の数値計算を行うことにより,海底地形と入射波浪条件が与えられれば十分な精度で離岸流の発生が予測できることを示した.さらに,リモートセンシングから得られる画像処理による海底地形の推定法,平面的な広がりを有する海面情報(特に波高分布)の取得方法などの構築を行い,その有効性について確認している.これらの成果は,今後の極浅海域流体運動の解析に非常に有効な手段を提供するものと考えられる.