著者
浅野 優 田中 譲
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.248-261, 2011 (Released:2011-01-06)
参考文献数
16

This paper describes a new framework for querying the Semantic Web using a rich vocabulary. This framework consists of two mechanisms; one for building a rich vocabulary based on lexicographic semantics, and the other for evaluating queries using such a vocabulary. A vocabulary built by the former mechanism has the following two features: (a) its richness because of its expandability and (b) the lexicographic-semantic definition of its words. Query expressions using such a rich vocabulary satisfy the following two properties: (c) no need to use nested query structures, and (d) no need to use variables. In our framework, a new word, i.e., a derived word, can be defined as a character string label given to an expression that combines already defined words with operators. This expression, or phrase, works as a lexicographic definition of this derived word. Each vocabulary consists of basic words and derived words. A lexicon of a vocabulary denotes a set of lexicographic definitions of all of its derived words. Once someone defines a lexicon of a large vocabulary with all of its basic words being mapped to an ontology of the Semantic Web, users can query this Semantic Web using this vocabulary. The same lexicon can be reused for the Semantic Web that has a different ontology if all of its basic words are newly mapped to its ontology. Use of a rich vocabulary in querying a Semantic Web simplifies the query sentence structure and removes the necessity of using variables from each query, which makes it much easier for users to query the Semantic Web. This framework provides query evaluation rules based on the proposed lexicographic semantics, which guarantees that each query using such a rich vocabulary is correctly evaluated over the underlying Semantic Web.
著者
吉村 正志
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本年度は3年計画の最終年度であった。3年間で国内所蔵の東南アジア雄アリコレクションの概要がほぼ明らかになったと言えるだろう。だが、同時に、さらなるインベントリー情報の整備が検索システム構築には不可欠な要素であることも明らかになった。東南アジアにおける雄アリ検索システムの完成には到らなかったものの、その基礎となる知見や環境整備は3年間で大きく前進したといえる。今年度はこうした研究成果を英・和文の論文5編、著作1編、雑誌記事1編、国際学会発表1編、国内学会発表3編として公表した。昨年より本格的にカリフォルニア科学アカデミーとの共同研究を行ない、インベントリー情報が整備されたマダガスカル地域の雄アリ検索システムを構築し、このうちハリアリ亜科については発表に至った。さらにカギバラアリ亜科の研究を進めており、亜科内の翅脈の比較形態について国際学会で発表した。また、日本産アリ類の分類学的な研究を進め、アギトアリ属とウロコアリ属について発表した。また、屋久島調査の過程でハリアリ属に新知見が見出されたため、屋久島の調査報告とともに発表した。今年度は分類学的な研究と並行して、これまで蓄積された学術的な情報を分類研究者以外の研究者や一般社会へ還元するための、Web公開型データベースの整備に力を入れた。日本産アリ類画像データベースの改訂については昨年から進めていたもので、これを7月に2007年ベータ版としてWeb上に公開した。また、Web公開情報の安定的な保存と普及をさらに進め、学術的な引用に耐える環境を整備するため、新たなコンテンツを加えたデータベースを2008年CD-ROM版として、3月に出版した。また、データベースの改訂と運営を通して、現在のWeb公開型データベースが抱える問題点と展望を発表した。
著者
緒方 一夫 多田内 修 粕谷 英一 矢田 脩
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、アリ類を生物多様性のバイオインディケーターとして用いることを上位の目的に、(1)調査方法の比較検討、(2)分類学的基盤、(3)分析評価方法などの諸問題を研究課題とした。(1)については様々な調査方法について比較し、採集種数、サンプリング特性、地域アリ群集特性の検出力等について検討した。その結果、単位時間調査法が限られた時間の中で比較的多くの種を収集できることが明らかとなった。ただし採集者の経験の違いによる調査結果の質に問題があり、その弱点は適切なインストラクションである程度補完できることが実証された。(2)については、日本産アリ類276種について、分布調査の取りまとめ等に活用できるようにエクセル形式でのダウンロード版チェックリストを公開した。このリストおよび世界のアリの学名についてとりまとめたものを携帯版の印刷物として準備した。この他、いくつかの分類群について整理しその成果を公表している。(3)については森林生態系や農業生態系のアリ群集を対象に、種数、種類組成、頻度、類似度などについて検討し、多変量解析による多様性の研究を実施した。その結果、連続林では森林の成長にかかわらずアリ群集の組成は変化が小さいこと、孤立林ではその成因や攪乱の程度によりアリ群集の組成は大きく異なることが示されてた。農業生態系では土壌の理化学的性質と種数について調査したが、有為な関係は示され得なかった。サトウキビ畑のような永年性作物圃場では、緯度傾斜と植え付け後徐々に種数が増加するパターンが見られた。また、アリ類の多様性と他の生物群との多様性の関連について、とくに知見が蓄積されているチョウ類との関連を検討した。その結果、局所的にアリの種数とチョウの種数が一致するような地域もあるけれども、この現象は必ずしも普遍的ではないことが示唆された。これらより、アリ群集のバイオインディケーターとしての価値は生態系指標にあること、すなわち攪乱や孤立性の程度を表す生物群としての利用可能性が示唆された。
著者
小川 晴久 吾妻 重二 柳沢 南 酒井 シヅ 壺井 秀生 末木 剛博 橋尾 四郎
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

初年度にひき続き『贅語』全六帙の原文の書き下し文作りと注釈(出典,語釈,難読箇所の解釈)の作業を鋭意進めてきたと言う以外に別に述べることも少ない。それを仕上げることが研究実績であるからである。『玄語』が形式上他人の引用がないのに比し(ただし実質的な引用があることは昨年度のこの欄で指摘した),『贅語』はまさに従来の諸見解の吟味の場という意味で引用の世界であると言ってよい。その引用の形式上の特徴は前回記したので再言はしない。ただ今回は天人帙,天命第二を例にとりあげ,引用の実質的な意味について考えてみたい。そこでは「五十にして天命を知る」という論語の命題の意味を『孔子家族』の文章をもとに考察し,「為不為者、在己者也、成不成者。有天者也。天者、無意而成、命者。無致而至。」という梅園の天命理解を孔子の天命観で論証する形をとっている。また論語の「夫子の性と天道を言ふは得て聞きくべからざるのみ」という子貢の言をもとに,性と天道を「聖門の第一義」となした後儒を厳しく批判している。荀子を引用して己れに在る側のもの(すなわち自分の意志で自由になるもの)を修める君子のあり方を強調している点も注目される。総じて先秦時代の遺産(とくに孔子を核とする)を重視し,それによって自説を根拠づけている形式が天命第二から確認できる。朱子学を絶対化せず孔子自身や先秦に帰ろうとする古学の傾向を梅園においても確認することができよう。『贅語』は学説史批判の書といってもよいが,より正格に言えば従来の見解を取舍して,自説を根拠づける作品であるのがその性格である。『贅語』が『玄語』の注であるとは,まさにこの意味である。そして注とは本来このような積極的な意味をもつべきものであろう。かくして『贅語』の各帙(各巻)の章別構成をながめると,ある共通の体系(構成)が看取できそうである。贅語は贅疣ならめ梅園の学問世界の論証の場であった。
著者
高山 成子 菊池 美香 半田 陽子 磯見 智恵 麻生 佳愛 吉川 日和子 高柳 智子
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

4〜8月に、倉敷市の老人保健施設で、入浴拒否4事例、俳徊2事例、収集癖2事例を調査した。その結果、累積事例は、入浴拒否13、俳徊10、収集癖7で、総計30となり、目標であった各問題行動別8事例、延べ24事例を達成できた。分析結果は以下のとおりである。1.入浴調査:(1)拒否の理由は、数回の調査によってほぼ同一で、本人にとり意味のある理由と考えられた。(2)軽度認知症は風邪等納得できる理由、中等度は失見当識による「金がない」等の理由であった。(3)攻撃性は80%が「脱衣時」「お湯をかけられた」で起こっていた。(4)脱衣時の攻撃性は、無理に引っ張る、脱がせるで生じていた。2.徘徊調査:(1)俳徊目的は4タイプに分類され、各人2〜5タイプを有し、バラエテイに富む生活の現われと考えられた。(2)俳徊時の気持は肯定的と否定的があり、介入の必要性の判断として有効であった。(3)「集中する」「精神的安寧をもつ」「他者と関わる」「生理的欲求を満たす」で俳徊を中止した。3.収集癖調査:(1)収集物品は「今の生活に必要な」「大事なもの」であった。(2)物品の所有認識は、認知症重傷度と関連していた。(3)物品管理は「自分で保管できる場所」で、認知症が重度になるにつれ身近となっていた。(4)返却は、納得すれば返し、無理に取られそうになると興奮していた。分析結果を、9月に第36回日本看護学会で2題(入浴、収集癖)、国際アルツハイマー協会国際会議2題(入浴、俳徊)発表した。また、本学学術雑誌に、2論文(俳徊、収集癖)投稿した。本研究最終目標は、分析結果より介入方法を策定し、実践的介入を行なうことであった。が、分析過程で、認知症レペルによる違いがあるなどで調査事例追加が必要であったこと、介入方法は、十分な分析が必要であったことにより、計画を変更した。結果として、2月に研究代表者が入浴1事例に対し、1回目部分的介入、2回目研究代表者のみの介入を実施した。
著者
石黒 一次
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.113-120, 1996-03-15

夏休みを間近に控え,校下の公園で過ごす一人の青年のことが,大きな話題となった。その青年は子供たちの遊びの中に分け入り,夕方暗くなるまで公園で過ごすことを毎日の楽しみとしているようであった。そうした青年の思いとは裏腹に,子供たちは大人と遊ぶことへの「遠慮や違和感」など,遊びの不自由さを次第に募らせていった。夕方になり子供たちが帰宅し始めると,青年は帰りそびれた子どもをいつまでもその場に留めた。その上,帰ろうとする仕草に逆上し,長々と怒鳴りつけることが度々あった。当然,子供たちの間では,「怖い人」「おかしい人」などのマイナスイメージが膨らみ公園で遊ぼうとする子供たちはその青年の姿をうかがい,避けるようになっていった。本論は,一青年のなげかけを通し,児童・父母・教職員が共通の基盤に立ち,これまでの人間関係やふれあいの在り方を振り返るなど,多くを学んだ実践事例を報告する。
著者
田辺 國士 石黒 真木夫 土谷 隆
出版者
統計数理研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

1984年にカ-マ-カ-がシンプレックス法とは全く異なる線形計画の新解法を提案してセンセ-ションを巻起こして以来、これに触発されて内点法のアプロ-チによる様々な新解法が現れている。方法論的には、最近の動向はbarrier function法の復活であると一般には考えられているが、むしろNewton法への回帰であると見る考えからこの研究を進めている。Newton法が定めるベクトル場を解析すると自然に最適化問題の微分幾何学的構造に導かれる。「LagrangeとNewtonに帰ろう」という立場から、不等式制約条件下の最適化問題にも特殊な可微分構造を導入して、従来解析的に取り扱われてきた最適化の理論を微分幾何学的立場から再構成し、それを基に新しいアルゴリズムを開発しつつある。具体的には1.甘利氏によって提案されている「情報幾何」に射影幾何学的構造を加味した微分幾何学の構成2.新しい微分幾何学に基づく最適化問題の双対理論の再構成3.微分幾何学の立場からカ-マ-カ-法、伊理・今井法、山下法、Centered Newton法等の既存の解法の解析と関連性の解明4.数値的最適化の新しいアルゴリズムの開発5.アルゴリズムを実装化するために必要な数値線形代数等の数値計算法の研究6.実用化にむけてのプログラムの作成、数値実験を行なっている。
著者
窪 誠司
出版者
一般社団法人照明学会
雑誌
照明学会誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, 2005-12-01

西日本初のナイターレース場として開幕した若松競艇場は, 北九州市の公営競技場で家族からカップルまで気軽にレースを観戦できる施設である(図1).
著者
小池桃子
雑誌
長野県人工透析研究会誌
巻号頁・発行日
vol.13, pp.83-84, 1990
被引用文献数
1
著者
千葉 恵
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究はアリストテレスの「分析論後書」の翻訳と註解からなる。この書物の詳しい説明は『序文』に譲るが、J.バーンズの印象的な表現を借りるなら、「この書物は、いかなる理由にせよ、哲学の歴史のなかで最も優れた、独創的で影響力のある作品のうちのひとつである。それは科学哲学のコースを--また或る程度科学そのもののコースを--千年間にわたり決定した」と形容されるものである。(J.Barnes,Aristotle Posterior Analytics,xiv,Clarendon Press Oxford 1994)今日は科学技術の時代であると言ってよく、生活のすみずみにいたるまで、その恩恵と制約のもとにある。科学そして科学的知識というものが、その起源において、いかなるものとして理解されたかを知ることは、今日の状況を作り上げているものをその源泉から理解し、省察することを促うように思われる。本研究においては「分析論後書」の全翻訳を提示し、註解としては私の「分析論後書」について研究である"Aristotle on Explanation ; Demonstrative Science and Scientific Inquiry Part I,II"(北海道大学文学部紀要 72号、pp.1-110、73号、pp.1-95)の関連箇所を指示する。詳細な註解の執筆は今後の課題としたい。
著者
谷本 潤 藤井 晴行 片山 忠久 萩島 理
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.66, no.547, pp.255-262, 2001
被引用文献数
10 2

An ultimate objective of this study is not only to depict the reality of academic society, possibly embracing some sort of ambiguous degrade in its stable and established environment, but also to propose a certain strategy to avoid this, overcome this and build a better preferable future. First of all this study, in this report, a really challenging trial to build a human-academic society model dealing with the future prospect of its activity based on so-called Complexity Model, was done. Mathematical framework of the model was precisely described. And actual calculations of its artificial society were carried out on a particular Discrete Type Simulator. Results of simulations led to consider much interesting and marvelous facts.
著者
坂本 季詩雄
出版者
愛知工業大学
雑誌
愛知工業大学研究報告. A, 基礎教育系論文集 (ISSN:03870804)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.33-40, 2000-03

"Hardboiled" is an adjective for the style of Earnest Hemingway and Dashiell Hammett. Rarely have critiques these days said that their styles are similar because Hemingway is a Nobel Prize winner and is supposed to be a greater artist, who has been influenced by eminent modernists such as Gertrude Stein and Ezra Pound, than Hammett, who is just a detective story writer from a pulp magazine for the lowbrow. Both of them, however, definitely shared the same Zeitgeist after World War I, which led to a nihilistic resignation to the destroyed identity and the consequential isolation from the community. Their "hardboiled" style could unexpectedly be born from the same root in the different places, Paris and San Francisco in the 1920s
著者
不破 和彦
出版者
尚絅学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、東北地域で問題化している地域経済の後退に伴う雇用構造の大幅な変化との関連で、新規高校卒業者の就業動向の実状について統計的かつ個別的な事例調査手法による全体的な解明に取り組んだ。東北経済の後退は若年世代の労働市場を狭隘化させ、新規高校卒業者の就職に大きな制約を与え、さらに彼らの就業にも深刻な問題をもたらしている。特に、新規高卒就職者の多くは製造業、卸小売業、サービス業など単純労働に従事し、しかも労働条件も低下を期待し、地域労働市場の底辺に置かれている。このことは、若年世代の仕事および職場への定着を妨げる大きな要因となり、その解決が急がれる。一方、東北地域で就職志望する高校生を対象としたアンケート調査(今回は、宮城県11高校、約800名)からも、彼らの就職に対する不安が窺える。特に、職場の仕事への対応、人間関係への順応をめぐる不安が高くなっている。しかし、安定した職場への就職、仕事の継続などに対する願望は強くみられる点からも、就職に向けた高校での進路指導、たとえば働くことの社会的意義、事観の形成などをめぐる計画的、体系的な教育的指導法、カリキュラムの編成が改めて重要になってくる。さらには行政機関、企業はじめ地域全体として働く意欲をもつ若年世代の就業機会、安定した就業状況の構築に取り組むことが求められる。同時に、若年世代の安定した持続的な就業は地域経済とともに地域社会の発展に貢献するという観点からも急務な課題である。
著者
井ヶ田 良治 山岡 高志
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.209-250, 2007

山岡中尉の日清戦争従軍日誌の続編である。1895年1月18日から同年3月7日までの記述を含む。1月22日、吉林軍襲来、撃退、敵敗走する。2月4日山県中尉戦死。2月16日敵軍襲来するも、野砲で撃退。2月22日敵軍襲来、野砲を発射して応戦(海城第四回防衛戦)。敵は負傷兵を車に載せて退却。
著者
藤本 浩志 土井 幸輝 植松 美幸
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では高齢者・障害者配慮設計技術の開発の際に必要な触知覚特性(五感の1つ)のデータを収集することを目的として,図記号の識別容易性,指先の触覚の基本特性に着目して,それらと加齢の関係を調べた.その結果,図記号の識別容易性について図記号のサイズが小さい場合に加齢効果が見られることがわかった.指先の基本機能(空間分解能・触圧感度)に関しては,加齢効果が見られた.また,視覚障害者は日常的に触覚を活用していることが関係しているためか顕著な加齢効果は見られなかった.これらのデータは,今後触覚を活用した関連規格の作成の際に有用な知見となるであろう.