著者
境原 三津夫 菊地 美帆
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.120-126, 2014-02-28 (Released:2014-06-26)
参考文献数
15

目的 : 地球上のある地点にいる人に対する天体の影響を力学的な観点から考える場合には、潮位をひとつの指標とすることができる。潮位は天体の引力が作り出す起潮力にともない変化する。したがって、潮位の変化をみることにより天体の引力の変化を推測することができる。潮位と陣痛発来および前期破水の関連性を検討し、天体の引力が分娩開始に及ぼす影響について考察する。方法 : 2010年1月1日から平成2010年12月31日までの1年間に、茨城県内のT病院で陣痛発来後に分娩に至った236症例と前期破水後に分娩に至った77症例を対象とした。これらの症例について陣痛発来時の平均潮位と当該年度の平均潮位の関係、前期破水時の平均潮位と当該年度の平均潮位の関係、潮の満ち引きと陣痛発来数の関係、潮の満ち引きと前期破水数の関係を統計学的に検討した。結果 : 陣痛発来時と当該年度の平均潮位の比較において、陣痛発来時の平均潮位は当該年度の平均潮位より有意に高値であった(p=0.006)。前期破水時と当該年度の平均潮位、潮の満ち引きと陣痛発来数、潮の満ち引きと前期破水数の間には、関係を認めなかった。考察 : 海面の昇降は、起潮力に起因している。起潮力とは、潮汐を起こす力のことで、月や太陽の引力がその主な成因となっている。陣痛発来時の平均潮位が当該年度の平均潮位より高いということは、陣痛発来が天体の引力の影響を受けている可能性があることを示唆している。
著者
藤井 聡 高野 裕久 宮沢 孝幸 川端 祐一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究では新型コロナウイルス感染症等に関するデータを用いて、以下の3要素を含む被害・対策効果予測モデルを構築する。(1)社会経済活動の制限やマスク着用等の行動変容が、健康・経済被害に与える影響(2)医療資源や保健体制への財政投資による健康・経済被害の低下(3)東京一極集中を緩和し国土構造を分散化することによる健康・経済被害の低減これらを統合したモデルシステムを用いて、公衆免疫強靭化対策効果の定量予測を行うとともに、パンデミック発生下における最適な行動指針の策定手法を提案する。

34 0 0 0 OA 電気事業要覧

著者
逓信省電気局 編
出版者
電気協会
巻号頁・発行日
vol.第12回, 1920
著者
田村 淳 中西 のりこ 赤谷 美穂 石川 信吾 伊藤 一誠 町田 直樹 永井 広野 野辺 陽子 長澤 展子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.263, 2022-10-20 (Released:2023-01-01)
参考文献数
32

シカの累積的な採食圧により絶滅が危惧される多年草の回復を評価するには、設置年の異なる植生保護柵を用いて長期にわたり継続調査することが有効である。本研究では、 1980年代後半からシカの強い採食圧を受けてきた丹沢山地のブナ林に 1997年に設置された 3基の柵( 1997年柵)と 2003年に設置された 4基の柵( 2003年柵)、2010年に設置された 3基の柵( 2010年柵)を用いて、シカの個体数管理が行われている柵外も加えて、神奈川県絶滅危惧種の多年草の種数と個体数を継続して調べた(ただし、柵により不定期調査)。1997年柵では 5年目に 6種が出現して、それ以降種数は減少した。一方、 2010年柵では、時間の経過につれて出現種数が増加して 10年目には最大の 5種が出現した。個体数では、 1997年柵ではハルナユキザサとレンゲショウマを除き減少し、 2010年柵では時間の経過に伴い増加する種が多かった。 1997年柵と 2003年柵、 2010年柵の 5年目の比較では、 1997年柵で個体数の多い種が 2種あった。これらの結果は、シカの累積的な採食圧を長く受けた後に設置された柵では、先に設置された柵よりも回復までに時間はかかるものの、柵を長く維持することで新たな種が出現したり個体数が増加したりする可能性があることを示している。一方、柵外ではヒカゲミツバの 1種のみが継続して出現し、 8年目にはクルマユリやハルナユキザサなど 4種が初めて出現したがクルマユリを除いてその年のみの出現であった。また、個体数は柵内と比較して少なかった。このように丹沢山地では、シカの採食圧を 20年以上受けた後に設置された柵内で 5年以上かけて回復した絶滅危惧種が存在することを確認した。一方、柵外では絶滅危惧種の回復は限られていた。これら柵内外の結果は本調査地に特有の可能性もあるため、他地域においても柵の設置と個体数管理の有効性を検証することが望まれる。
著者
谷口 雄太
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

本研究の目的は、中世後期の足利一門総体につき十分な理解を得ることにある。今年度はその第3年度であった。そこで得られた成果は以下の通り。第一に、足利氏・足利一門総体に関し、歴史学研究会大会で「足利時代における血統秩序と貴種権威」を報告し、『歴史学研究』963号に掲載された。また、「中世後期武家の対足利一門観」が『日本歴史』829号に掲載された。いずれも、足利氏を頂点とし、足利一門を上位とする中世後期武家の儀礼的・血統的秩序の形成・維持・崩壊過程について検討したものである。第二に、足利一門個別に関し、①「中世後期における御一家渋川氏の動向」が戦国史研究会編『戦国期政治史論集』西国編(岩田書院)に、②「今川氏と「足利一門」「吉良一門」」が大石泰史編『今川氏年表』(高志書院)に、③「足利成氏の妻と子女」が黒田基樹編著『足利成氏とその時代』(戎光祥出版)にそれぞれ掲載された。①は渋川氏の基礎的研究。②は今川氏の自他認識を足利一門・吉良一門をキーワードに考察したもの。③は関東足利成氏関係の基礎的研究。他に、書評類として「書評と紹介 松島周一著『鎌倉時代の足利氏と三河』」(『日本歴史』830号)・「書評 亀田俊和著『観応の擾乱』」(『週刊読書人』3208号)・「遠州飯尾氏は「両属」国衆か」(『静岡県地域史研究会報』213号)を書き、一般向け記事として「足利尊氏」(『南北朝』洋泉社)・「足利一族」(『足利将軍15代』洋泉社)・「関東吉良氏とその時代」(『世田谷往古来今』世田谷区)を認めた。なお、『世田谷往古来今』に関し、刊行後、拙稿部分を確認したところ、校正指示に従っておらず、内容改変もある等、種々の問題が見られた。また、コラムの一部には学術的・掲載媒体的に疑義のあるものがある。注意されたい。

34 0 0 0 OA 衆議院先例集

出版者
衆議院事務局
巻号頁・発行日
vol.昭和38年版, 1963
著者
藤澤 正一郎 末田 統
出版者
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
雑誌
福祉のまちづくり研究 (ISSN:13458973)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.21-27, 2012-11-15 (Released:2017-06-23)

盲人と視覚障害者のための歩行面触知物(TWSIs)の国際規格ISO23599が2012年3月に発行された。TWSIsは1965年に日本で発明され、その後、盲人と視覚障害者の自立歩行を支援するために世界各国で使用されるようになった。しかし、国によりTWSIの形状とその敷設方法は異なっている。このような事情を反映して発行された国際規格の概説を行う。
著者
坂 敏宏
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.270-286, 2014 (Released:2015-09-30)
参考文献数
42

Max Weberの価値自由 (Wertfreiheit) という概念はこれまでさまざまに解釈されてきた. 本稿はまず, Weberの著作からwertfreiまたはwertungsfreiを含む語 (‘価値自由’) の用例を調べ上げることで, Weber自身がこの言葉にどのような意味を与えていたのかを明らかにしようとする. 調査の結果, ‘価値自由’の語はテキスト中30カ所において得られた. これらの用例を分析したところ, これらはすべて社会科学的認識のための方法論の立場を示すものとして用いられており, 実践的な「価値への自由」を含意していなかった. つまり, ‘価値自由’が意味しているのは, 実践的内容を含意するものである価値は, 科学的認識の「過程」において認識の対象とすることができるが認識の基準にすることはできないということ, および認識の「言明」において価値評価は排除されるということである. 次にその意義を考察した. それによると, ‘価値自由’は自然と対置される価値の世界を自然科学と同じ確実性をもって認識するための原理であって, これによって価値の世界を自然の世界と同様の客体として科学的に「説明」することを可能にするものであり, さらには, 認識と実践の統一を主張するHegel的な汎論理主義的性格に抗して, あくまで認識と実践との区別というKant的な立場に踏みとどまろうとするWeberの「哲学」の基礎をなしている.
著者
佐立 治人
出版者
關西大學法學會
雑誌
関西大学法学論集 (ISSN:0437648X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.1004-979, 2018-11
著者
川端 晶子 澤山 茂 瓜生 恵子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.9-18, 1974-01-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
19
被引用文献数
7 6

44種の果実類, 3種の果菜類および3種の種実類のべクチンを定量した結果, 新鮮物可食部に対するペクチン酸カルシウムとしての全ペクチン含有量は, 次のようであった。1) かんきつ類4%以上: 温州みかん果皮3.00~3.99%: きんかんパルプ, ぶんたんパルプおよび果皮, ゆずパルプ。2.00~2.99%: ぶしゅかん, ゆず果皮。1.00~1.99%: きんかん果皮, 温州みかんパルプ。0.99%以下: きんかん果汁, 温州みかん果汁, ぶんたん果汁, ゆず果汁。2) その他の果実類2.00~2.99%: ポポー, アボカード。1.00~1.99%: かりん, いちじく, 赤すぐり。0.50~0.99%: りんご (紅玉, スターキング, デリシャス, ふじ, インド, 国光), すぐり, バナナ (エクアドル産, フィリピン産, 台湾産), かき, いちご, キィウィ, マンゴー, パパイア, まるめろ。0.49%以下: 和なし (二十世紀, 長十郎, 幸水), 洋なし, さくらんぼ, プラム, あんず, もも, うめ, クッキンダバナナ, りんご (むつ), びわ, レンブ, ぶどう (キャンベル, デラウェア, ネオ・マスカット, 巨峰), パイナップル。3) 果菜類0.50~0.99%: れいし。0.49%以下: トマト, 西瓜。4) 種実類5%以上: くるみ, らっかせい。1.00~1.99%: くり。全ペクチン中の各抽出区分の比率について, かんきつ類の果汁では, きんかん以外, W-S区がもっとも高く, 果皮およびパルプでは, きんかん以外は, P-S区がもっとも高く, つづいてH-S区であった。その他の果実類, 果菜類および種実類45種のうち, 28種はH-S区がもっとも高く, W-S区のもっとも高いものは9種, P-S区のもっとも高いものは8種であった。総体的に, 熱帯果実にW-S区の高いのが目立つ。
著者
栗原 まな 小萩沢 利孝 吉橋 学 飯野 千恵子 安西 里恵 井田 博幸
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.285-290, 2011 (Released:2014-12-25)
参考文献数
18
被引用文献数
5

16歳未満で急性脳症を発症し, 当科でリハビリテーションを行った103例の予後を検討した. 対象を(1)群 : 代謝異常に起因する1例, (2)群 : サイトカインストームに起因する24例, (3)群 : けいれん重積型68例, (4)群 : 難治頻回部分発作重積型5例, (5)群 : 意識障害が主体である5例に分類し, 発症年齢, 既往歴, 発症に関連する因子, 後遺症の状況を検討した. 発症年齢は平均3歳であったが, (4)群は平均6歳5カ月と高かった. 既往歴では熱性けいれん, 喘息, theophylline服用が目立ったが, 有意差は得られなかった. 発症に関連する因子としてはインフルエンザ罹患36例, HHV-6罹患7例などがあった. 後遺症は知的障害89.3%, 高次脳機能障害77.7%, てんかん68.9%, 運動障害27.2%の順に多く, 重症度は(1)(2)(3)(4)(5)群の順に軽度になっていた. 高次脳機能障害では注意障害, 視覚認知障害などがみられた.

34 0 0 0 OA 情報と哲学

著者
東 浩紀
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, 2013-04-15

34 0 0 0 OA 繊毛病

著者
中西 浩一 吉川 徳茂
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.127-131, 2012-11-30 (Released:2012-12-22)
参考文献数
9

繊毛は細胞表面から突出する小器官であり,気管などに存在する運動性の繊毛と,ほぼすべての細胞に存在する非運動性の一次繊毛が存在する。一次繊毛の役割は長らく不明であったが,近年,一次繊毛とその関連構造物の遺伝子変異により腎嚢胞,肝臓・胆管異常,内臓逆位,多指症,脳梁低形成,認知障害,網膜色素変性症,頭蓋・骨格異常,糖尿病など多岐にわたる異常を生じることが明らかになった。これら一群の繊毛機能不全疾病を称して繊毛病(ciliopathy)と呼ぶ。腎徴候を呈する繊毛病としては,常染色体優性および劣性多発性嚢胞腎,ネフロン癆,Joubert syndrome,Bardet-Biedl syndrome,Meckel-Gruber syndromeなどがある。繊毛病の多くは腎嚢胞を合併するため,腎嚢胞は繊毛病の診断上重要である。
著者
Keiichi Kakui Tomoyuki Komai
出版者
Aquos Institute
雑誌
水生動物 (ISSN:24348643)
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.AA2022-1, 2022 (Released:2022-01-30)

We report the first occurrence record of the freshwater ectoparasitic platyhelminth Scutariella japonica (Matjašič, 1990) from Hokkaido, Japan. The flatworms were collected from the surface of exoskeleton and the inside of branchial chamber of the atyid shrimp Neocaridina sp. aff. davidi. Phylogenetic analysis based on the 18S + 28S concatenated dataset of rhabdocoel flatworms retrieved the Scutariella clade, and our specimens identified with Scutariella japonica were genetically distinct from those referred to S. sinensis Chen, Feng, Lin, Lu & Wang, 2018. Phylogenetic analyses using COI showed that the host shrimp specimens from Sapporo were clustered with N. koreana identified by Shih et al. (2017) and placed close to N. palmata (Shen, 1948) and N. davidi (Bouvier, 1904). Our specimens did not agree with the original description of N. koreana Kubo, 1938, particularly in the shape of the endopod of the male pleopod 1. The identity of the present host shrimp specimens could not be established satisfactorily, and thus they were referred to N. sp. aff. davidi for the time being.