著者
曽根 広哲 吉田 泰明 平手 勇宇 山名 早人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.93, pp.89-94, 2008-06-19
被引用文献数
2

検索エンジンはインターネットで情報を探す手段として欠くことができない.また,ユーザは検索エンジンの検索結果から得られる情報はテレビからの情報とほぼ同等の信頼性があると認知しているという調査報告がある.すなわち,検索エンジンのランキングを調べることによって,あるサイトが社会に与える影響力の一端を把握できると考えられる.本稿では,今やインターネット上の百科事典の代名詞ともなったウィキペディアが社会に与える影響力を調べることを目的として,日本語版ウィキペディアの検索エンジンにおけるランキング解析を行った.実験の結果,全記事のうち,上位10位以内にランキングされた記事はYahoo! JAPANとGoogleでは約9割,MSNでは約7割となった.また,Yahoo! JAPAN,MSNともに,ウィキペディアの新規記事は「はてなダイアリーキーワード」と比べ,最初から上位10位以内に現れる傾向が強く,上位のランキングを維持する傾向があることが分かった.以上のようにウィキペディアの影響力は大きいものであるということが実験結果から確認できた.
著者
里見 潤 加納 樹里
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、心拍変動(HRV)の解析によって得られる指標(HRV解析指標)のスポーツ活動への有効利用の可能性を探ろうとするものである。本研究は、(1)ボート競技日本代表選手の海外合宿期間中の心拍変動の推移、(2)自転車競技選手の漸増的運動負荷テストにおける心拍変動応答、(3)女子陸上競技長距離選手のフィールド漸増的運動負荷テストにおける心拍変動応答から構成されている。HRV解析指標を用いたコンディションの把握の可能性に関しては、研究(1)において、起床時の安静HRV解析指標(SD1, HF)の推移より、鍛練期から調整期に移行することにより心拍変動が増大し副交感神経活動が高まることが示され、トレーニングプロセスにおけるHRV解析指標の推移にもとづくコンディションの把握の可能性が示唆された。漸増的運動負荷テストにおけるHRV解析指標の応答に関しては、研究(2)において、SDlミニマムの現象として捉えられるHRV閾値が多くのケースで認められる可能性が示唆されたが、HRV閾値と乳酸閾値との間に明確な関係性は認められなかった。また、研究(3)において、漸増的運動負荷テストにおける周波数解析の手法によるHRV解析指標の応答に関して、個々の選手に固有の応答パターンがある可能性や、トレーニング状態がHRV解析指標(LF)の応答のありように反映する可能性が示唆された。漸増的運動負荷テストにおけるHRV解析指標の応答をアスリートのトレーニング状態の把握に利用ためには更なる研究が必要と考えられる。
著者
三沢 義一 小畑 文也
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.1-9, 1987-09-14
被引用文献数
1

精神薄弱者の職場適応の実態と、それに影響を及ぼすと思われる個人的、環境的要因との関連を検討することを目的として、三沢ら(1983)による評定尺度を用い調査研究を実施した。分析対象となったのは現に企業に雇用されている198名の精神薄弱者の資料である。職場適応評定尺度の因子分析の結果、5つの因子(作業適応、勤務態度、人間関係、身辺処理、耐性)を抽出した。このうち作業適応の因子は説明率も極めて高く、精神薄弱者に対しても企業側は作業の能率や質の高さを求めていることがうかがわれた。さらに、個人的、環境的要因と各因子の推定因子得点の間で数量化1類による分析を行った。各因子と個人的、環境的要因の関連はさまざまであり、これらの結果を知的水準、パーソナリティ特性、勤務態度要因、人間関係要因、身辺処理の各視点から考察した。
著者
大津 由紀雄
出版者
慶應義塾大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

統語解析理論は、脳波や脳画像などの資料を解釈するうえで、重要な役割を果たす。今年度の研究では、昨年度の研究成果にもとづき、つぎの隣接結合の原則を心理実験により検証した。[隣接結合の原則]結合は隣接した構成素同士でのものが最適である。日本語の統語解析においてこの原則が重要な役割を果たしているか否かを大津研究室に設置のタキストスコープによって調査した。被験者総数は20名で、画面上に文節ごとに提示された文字列を読み、その意味を理解したごとに反応キーを押すという課題で実験を行った。刺激材料には、隣接結合の原則にしたがう文とそうでない文が混在している。もし被験者が隣接結合の原則を使って解析を行っているのであれば、後者では、隣接結合の原則が貫徹されないことを示す間題の部分が提示された直後の反応時間が田の部分での反応時問に比べ、長くなることが予想される。実験の結果はおおむね、それを支持するものであった。今後はこの結果をもとにより多くの刺激文を作成し、それらを用いてERPや機能MRIを用いた実験を行う予定である。これらの実験では、それぞれのタイプの刺激文に対し、100以上の刺激文(トークン)が必要とされるからである。なお、大津は現在、京都大学病院において、この実験の一部を予備実験の形で実施中である。
著者
両角 達男
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は、次の2つのことがらについて、考察を進めた。(1)範例を形づくるよりどころとしての「何を志向し、何に価値をおき、何を培うのか」を具体的に明らかにしていくこと。(2)「問いの連鎖」を促す対話や協働的な活動には何があり、その諸活動が「問いの連鎖」を促進するために具体的にどのような機能をもつのかを明らかにすること。(1)については、授業実践者としての授業の反省的分析、単元に着目した「核となることがら」(本質的なことがら)の抽出、代数領域に焦点をあてた「何を志向し、何を培うのか」の可能性の検討の3つの側面からの分析を行った。第一に、両角自身が筑波大学附属中学校にて行っていた10年間の授業実践記録より、範例的教授・学習の視点から浮かび上がる「範例」や「範例的なもの」の抽出と分析を行った。1組の三角定規を活用して15°の角をつくること、折り紙から1組の三角定規をつくること、地図との関連を意識した座標の学習、式を読むことを重視した文字式の学習などの事例である。第二に、小学校1年から高校1年までの必修過程に焦点をあてて、単元ごとに2〜3ずつ「核となることがら」(本質的なことがら)の抽出を行った。これは、範例から「範例的なもの」を抽出していくことを意識している。第三に、式を読むことを重視した文字式の学習活動に密接に関わりのあるシンボルセンスの育成に関して、フロイデンタール研究所のDrijversの学位論文(2003)やArcabiなど、最近の代数の研究動向を分析した。DrijversはCAS (Computer Algebra System)を活用した中等教育段階の代数学習の理論的枠組みを、4つの観点の融合により形成している。その一つとして「CAS-メンタルシェマ-範例」による連続的な学習過程の形成がある。学習者が範例と出逢い、範例的なものを意識化・顕在化、了解、内的同化していく過程に迫ろうとしている。CASの活用などを通して、代数領域でどのような教授・学習が可能になり、何を培うことができるのか。範例的教授・学習理論、学習カリキュラムの形成の視座から、継続的に考察を行っているところである。連続的な研究として、平成17年度からの研究テーマとする。(2)については、浜松市立村櫛小学校の教育実践に焦点をあて、単元レベルで考察を行った。子どもたちに問いが育まれるために、単元の前半ではどのような範例が形成され、範例を起点とした学習活動が変容していくか。村櫛小の先生方との継続的な研究協議、継続的な授業参観、単元の前半部と後半部に記述する「子どもたちのはてな」の変容の分析などを通して、(2)の考察を具体例に基づき実証的に行った。
著者
谷 淳
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:06272997)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.850-855, 1995-03-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
岩瀬 昭雄 伊積 康彦
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.411-419, 1996-06-01
被引用文献数
20

音響管を用いた多孔質材料の伝搬定数計測では, 試料を剛壁に密着状態と背後に1/4波長の空気層を設けた状態での2回のインピーダンス測定を行う方法が代表するように, 試料背後の空気層確保が必須条件で, 柔らかな材料の形態を変えないで上記2条件を実現する困難な課題に大きな努力が注がれてきた。本研究ではこの方向とは考えを異にした背後空気層を全く不要とする, 試料前後の伝達関数分析のみによる極めて単純な計測法を考案し, 有効性を検証した。その検証過程で, 多孔質試料には音響管壁で支持される共振振動が生じて大きな計測誤差を生むことが初めて明らかにされ, その回避が音響管を用いた計測法に共通する新たな問題として提起された。
著者
稲川 和香
出版者
浜松医科大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

【研究目的】口腔内崩壊錠に関する患者意識、治療効果および副作用発現の調査を行い、患者の期待する剤形および近隣の保険調剤薬局における口腔内崩壊錠の選択要因に関する情報を入手することで、口腔内崩壊錠の開発における患者満足度の向上を図るための情報を得ることを目的とした。【研究方法】(1)官能試験および溶出試験による製品選択の有用性に関する調査を行った。(2)インタビューフォームに記載されている成分の溶出挙動の比較方法に関する調査を行った。本調査では、先発医薬品と後発医薬品の製品が上市されているアムロジピンベシル酸塩の口腔内崩壊錠をモデル薬剤として用いた。【研究成果】(1)官能試験による味(清涼感、甘さ、苦味)と服用感(ザラツキ、粉っぽさ)については、服用する際に問題となる製剤的要因とはならなかった。嗜好性とともに総合的に評価すると、調査対象とした現行製品の味と服用感については、いずれも良好であると考えられた。(2)アムロジピンベシル酸塩の口腔内崩壊錠については、2010年7月時点で26製品(後発医薬品24製品)が上市されていた。インタビューフォームに溶出試験の情報として、溶出率-時間曲線の記載されている製品は、22製品であった。インタビューフォームを用いることで、ほぼ全ての製品の溶出挙動を評価できることが明らかになった。一方、後発医薬品の各製品において、比較対照となる標準製剤が統一されていない問題点も明らかになった。その原因として、先発医薬品における製剤変更が挙げられた。今後、溶出挙動の違いと薬効との関連性について、評価する必要がある。
著者
讃岐美智義
雑誌
LiSA
巻号頁・発行日
vol.12, pp.484-490, 2005
被引用文献数
1
著者
梶田 将司 太田 芳博 若松 進 林 能成 間瀬 健二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.38, pp.65-70, 2007-05-10
被引用文献数
4

現在,我々は,巨大地震などの大規模災害時において,大学構成員の安否確認を信憑性高くかつ迅速に行うためのシステム開発を行っている.特に,災害発生直後の人命救助等を目的とした安否確認ではなく,講義の再開など,大学における教育研究活動等の事業活動の再開を判断するための安否情報の取得を目指している.そのための必要な要件としては,(1)ユーザ認証を必須とすることで信憑性の高い安否情報の収集が可能であること,(2)使用する情報システムの稼働が災害時においても保証されること,(3)災害時にしか使用しないシステムではなく,継続的にいつでも利用できるシステムであること,(4)学務などの他の情報サービスとの連携も可能であること,が重要であると考えている.そこで,我々は,情報・サービスの統合的な提供を目指し構築している名古屋大学ポータルを利用した安否確認システムを構築し,2006年10月の地震防災訓練から試験運用を開始した.本報告では,構築した安否確認システムについて述べるとともに,安否確認訓練を通じて得られた知見・経験を述べる.This paper describes a Survivor Confirmation and Management Services through Nagoya University Portal (MyNU), which is intended to confirm who is alive after a major disaster crisis like a large-scale earthquake, and manages the data for recovery planning. In the area of central Japan, a periodical large-scale earthquake with a magnitude of 8 could happen anytime within 10 years, and a huge damages including from 9,200 to 4,500 deaths is estimated in the area. After initial search and rescue activities, it is crucial for Nagoya University to make a recovery plan that determines when and how our teaching, learning and research activities are going to be resumed. Getting the latest and reliable status from individuals like faculty, staff and students is the base line for the recovery planning. In our proto system development, we realized that (1) survivors can input their latest status using PC-based Web browser and Cellular phone-based Web browser with LDAP based-user authentication through HTTPS, (2) administrative staff can manage the latest status and make the list in Excel format, (3) MyNU servers are load-balanced between Nagoya and Kyoto by DNS Round Robin to attain fault tolerant in a wide area.
著者
古田 元夫 山影 進 佐藤 安信 田中 明彦 末廣 昭 池本 幸生 白石 昌也 栗原 浩英 レ ボ・リン グエン ズイ・ズン グエン タイン・ヴァン 伊藤 未帆
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、ベトナムをはじめとするASEAN新規加盟国の地域統合の動態を、東西回廊など、これら諸国を結ぶ自動車道路を実際に走行して観察しつつ、ベトナムのダナン、バンメトート、ラオスのビエンチャンおよび東京でワークショップを開催して、現地の行政担当者や研究者と意見を交換した。こうした取り組みを通じて、ベトナムの東南アジア研究所と研究者と、この地域統合の中でベトナムが果たしている役割、それと日本との関係について意見を交換し、その成果をベトナムと日本で報告書にまとめて刊行した。
著者
伊藤 仁 伊藤 彰則
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J93-D, no.9, pp.1745-1754, 2010-09-01

音声信号を振幅と周波数が時間変化する正弦波成分の和として近似する正弦波モデルでは,非定常部でのパラメータ推定精度が問題となる.本論文では,音声信号の時間軸を第1調波成分の位相軸に置き換える時間軸変換と,正弦波成分の振幅と周波数の非定常性を単純な時変関数で近似する局所変化率変換に基づく正弦波パラメータ推定法を提案する.成人男女75名が発話した900個の単語音声を用いた性能評価実験により,提案法の推定精度を二つの既存手法と比較した.各手法の推定精度は,パラメータから再合成した信号に基づいて入力対残差パワー比(S/R)として定量化した.提案法の平均S/Rは28.4 dBで,時間軸変換を行わずパワースペクトルの局所ピークを用いるPeak-picking法(14.4 dB)や,正弦波成分の振幅の非定常性を考慮しないIF-attractor法(23.4 dB)より高かった.この推定精度の差は,特に入力音声の非定常性が高い場合に大きくなった.これらの結果から,非定常部を含む有声音声の正弦波パラメータの高精度推定において,時間軸変換と局所変化率変換を統合した提案法の有効性が確認された.
著者
坂内 栄夫
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

従来のコンピューター全文検索は、ある文献に対して何らかの研究を行ったとしても、その研究成果に対しては検索・利用することはできない。本研究は、中国古典文献を分析・読解した結果である研究成果を、有効に再利用するためのデータベース構築を試みた。その結果、異なる版本を指定しての語彙検索や様々なテキストの異同表示、底本に対して加えた注釈等の研究成果を表示可能にするデータベースの雛形を構築する事ができた。