著者
杉山 和男
出版者
広島大学生物生産学部
雑誌
広島大学生物生産学部紀要 (ISSN:03877647)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.p75-89, 1982-12

本稿では農家養鶏の発展形態と異なるところの企業型養鶏経営発展のメカニズムについて考察した。ここでは、父子兄弟組織が首都100キロ圏内に分散独立し、企業養鶏グループを確立したところの「愛鶏園グループ」を調査実例にして、その特質と発展法則の解明を行なった。第1章では、企業型養鶏の概念とその発展経過について述べた。農民型養鶏と対比して最も異なる点は会社形態の法人組織をもって、資本利回り率の最大化を経営目標におき、内部経済の拡大によって規模経済を追求している点である。また企業型養鶏は規模や統合の仕方によって、生産志向型と流通志向型とに分けられるが、ここで対象にしたのは都市専業養鶏の個人経営から出発した生産志向的な中小企業型養鶏である。第2章では、企業型養鶏の展開過程を3つの指標を用いて、個別専業養鶏期、企業型養鶏の生成期、発展期、成熟期の4つの発展段階こ区分し、各段階の特色について述べた。このうち企業型養鶏の生成期では、戦前築いた都市近郊養鶏を復活させ、土地節約的な豊橋養鶏のバタリー飼育法の改良普及によって都市に大規模養鶏経営を実現し、個人経営を会社形態の法人組織にした。また発展期では、養鶏経営の規模拡大と同族的経営を目指して、3つの段階を経過した。発展前期には、都市型のアラ養鶏技術体系を受け継ぎ、経営管理の可能な範囲(30~40キロ)の相模原に転出し、別法人をつくって後継者を独立させた。発展中期には、ニューカッスルによる汚染対策を契機にして、首都100キロ圏内の埼玉北部へ転出し、畜産公害と鵜病対策の生産システムを考案実施して、10万羽養鶏を実現した。発展後期には、茨城に新天地を求め、いわゆる埼玉方式によって10万羽養鶏をつぎつぎに成立させ、三兄弟がそれぞれ三社の責任者となり、父親を会長とする愛鶏園玉子グループを形成した。さらに成熟期では、第2次オイルショックによる燃料・包装費材の高騰の中で、分散グループ養鶏は、生鶏ふんの土地還元や鶏卵の首都圏内での販売などによって有利に展開してきた。さらに鶏卵需要の頭打ちの中での生産者対応の方向としては、鶏の栄養・飼料問題の合理化にあるとして企業養鶏仲間による新しい組織をつくった。第3章では、企業型養鶏経営における動態的発展のメカニズムを解明するために、経営発展の誘因をあげ、3つの発展段階について具体的に述べた。企業型養鶏経営の各発展段階は、都市近郊養鶏立地の首都30キロ圏から100キロ圏へと移動し、新天地への進出によって内部経済の拡大を遂げてきた。そこでは生産・流通・管理の技術革新が採択され、根本的革新は誘発的革新に連係して、それらの革新が相互に補完的に機能するように調整されている。しかし、これらは環境変化か主体的革新の採択によって破壊されていくという経営発展のメカニズムを例証した。第4章では、企業型養鶏の経営管理体系と組織について考察を加えた。動態的発展は生産管理・販売管理・労務管理・財務管理のシステム化を捉がし、生産志向からマーケテイングを取り込んだ生産販売へと変ってきた。また組織面でも法人化は税務経理対策であったが、それが経営の集積へさらには集中へと進んできたのである。This paper intends to clarify the development mechanism of an entrepreneur type of laying hen farming. This kind of form takes a different course from that of a family farm. With this in view, the author worked out a case study. The Aikeien Poultry Farms Co., with an amount of 450 thousands hens was taken up as a specimen among prominent entrepreneur type of laying hen farmings in the Kanto region. This company is composed of three independent farms tied together by father-son and brother relationships; it acquires scale merit by means of collective purchase of feed, information exchange, mutual security for credit, etc., although they are scattered within the range of a hundred kilometers around the capital. The company, at present, reached the stage of maturity after going through all the growing phases from its founding on. During these periods, the initial loaction was moved for reasons of manure pollution and diseases, and the company dispersed to suit better the sons independence. In the development mechanism of the entrepreneur type and the family farm type regarding laying hen farming the following differences are found. 1. The scale merit is realized by the enlargement of the internal economy in the company. 2. The way to expand internal economy is location changing from higher to cheaper price lands under the inflation. 3. The company is self-supporting (using no government funds). 4. Looking for upland crop areas in the suburbs, the company could systematize its production ancl succeeded in establishing a new type of laying hen farming.
著者
岡林 繁
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EID, 電子ディスプレイ
巻号頁・発行日
vol.94, no.161, pp.55-61, 1994-07-21

1994年6月に米国San Joseで開催されたSID(Society for Information Display)大会では,Applied Vision, Human Interfaceに関連する論文はセッション数は6,ポスターセッションを含めると24件を超え,セッションも二日半通しで割り当てられ,従来同様多くの講演発表と活発な討議がなされた.講演全体は大まかに分類して,航空機や戦闘機用表示装置の視覚特性,コンピュータとのインターフェイスに関する考察,画質に関する基礎的な考察の三分野と言えよう.話題騒然となるある種の派手さはないが,表示システムと他学会とのまさしくインターフェイス的な役割としてエンドユーザからの観点での発言は本学会としても今後とも重要な分野であろう.
著者
西田 律夫
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

昆虫には,配偶行動における雌・雌のコミュニケーションの手段として化学物質を利用しているものが多い.その大部分は雌が分泌し遠くの雄を誘引する物質であり,逆に雄が分泌し雌に作用する性フェロモンについての研究例は少ない.雌がフェロモンを放出する場合でも雄がフェロモン源に到達した後に何らかの相互認知段階を経て交尾に至り,そこに雄フェロモンの介在している場合が多い.以下の数目の昆虫類について雄フェロモンの機能および化学性質の解明を目的に研究を進めた.1)鱗翅目昆虫の雄フェロモンマダラチョウ類の雄はヘアペンシルをひろげ雌にプロポーズする.オオゴマダラ雄のヘアペンル成分(ダナイドン,ネシン酸β-ラクトン,モノテルペンチオエーテルなど)の雌に対する性フェロモン活性を実証した.一方,ハマキガ類の雄もヘアペンシルを有し,配偶行動の場でフェロモンとして利用している.ナシヒメシンクイ雄のヘアペンシルに含まれる性フェロモン成分の生成過程について追跡した結果,ジャスモン酸メチル,桂皮酸エチルは幼虫および成虫時代の食物に由来することが示唆され,フェロモンの蓄積過程がマダラチョウの場合に類似することが明らかになった.2)双翅目昆虫の雄フェロモンミカンコミバエの雄の直腸腺から分泌される揮発性成分の性フェロモン作用について追跡した結果,雄ミバエ誘引植物より摂取したフェニルプロパノイド関連物質が,雌に強い誘引作用を示すことを実験的に証明することができた.クウィーンズランドミバエ雄の蓄積するフェロモン腺成分についても明らかにした.3)直翅目昆虫の雄フェロモンチャバネゴキブリおよびアオマツムシ雄の背面より分泌物される化学物質の雌に対する性フェロモン効果を追跡した.いずれの場合もメタノールに可溶の画分より得られた活性因子は複数成分から構成されていることが判明した.
著者
Neuberger Bernhard 乙政 潤
出版者
京都外国語大学
雑誌
研究論叢 (ISSN:03899152)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.379-401, 2007

本稿は三つの先行する紹介, Ein kleiner Fuhrer durch die japanische Literatur der Neuzeit (1)-(2) (Brucke 1 [1998年3月刊] -Brucke 2 [1999年3月刊]), Kommentierter Uberblick zu den Werken der japanischen Literatur der Neuzeit (1)-(7)(『研究論叢』 55[2000年9月刊]-『研究論叢』61 [2003年9月刊]),およびErganzungen zum kommentierter Uberblick zu den Werken der japanischen Literatur der Neuzeit (1)-(6) (『研究論叢』62 [2004年3月刊]-『研究論叢』67 [2006年7月刊],にさらに補足を加えようとするものである。筆者たちは,本来,上記3篇の連載を通じて,原則として,明治から昭和の敗戦までのあいだの各時期の現代日本文学を代表すると見なし得る作家の主たる作品を輝介することを目指した。戦後に発表された作品のなかにもすでに古典的名声を博している作品があるにもかかわらず,それらはほとんど採り上げなかった。それらは,戦後60年の日本文学作品が専門家によって総括され整理されたときはじめて「現代日本文学紹介」の対象となりうると考えたからである。そして,続編の(6)でもって所期の目的をひとまず達したと考えたのであったが,擱筆後ふりかえり通読してみて,上記の紹介になおも洩れている作品があるのを見い出した。本稿はこれらの作品の紹介を目指して,今号を含めて前後3回にわたって筆を進めるつもりである。今号では,まずKommentierter Uberblick (1)ですでに紹介した国木田独歩に『運命論者』,『酒中日記』,『竹の木戸』,『窮死』の4篇を,田山花袋に『田舎教師』を,島崎藤村に自伝的作品である『桜の実の熟する頃』,『春』,『家』,『新生』の4篇と短編の『旧主人』,『ある女の生涯』,『三人』を,劇作家である岡本綺堂に戯曲の『修善寺物語』と『小来楢の長兵衛』の2篇を加えた。またKommentierter Uberblick (2)で取り上げた有島武郎には長編『ある女』および童話『一房の葡萄』杏,志賀直哉に短編の『小僧の神様』,『赤西蠣太』,『清兵衛と瓢箪』,『城の崎にて』を加えた。これまでの紹介では原題や作者名を漢字で記していたが,すべてローマ字表記に改めた。また,作品の題もドイツ語訳で示し,原題はあとの( )内に記した。さらにそのあとにジャンルと発表年次を記した。原題がドイツ語訳からは想像しにくいと思われる場合に限って,原題のあとの[ ]内にドイツ語の直訳を記した。なお,作品単位で紹介する形式に統一することとし,紹介順は作品の発表された年次の順(同年の場合は月順)によることにした。そのため,同一の作者の作品が必ずしも連続して紹介されない。作品の梗概紹介のあとに,作品についての短いコメントを紹介した。コメントの出典は末尾に注としてまとめた。スペースをとることを恐れ,当該作品のドイツ語訳が存在するかどうかを紹介する記事は割愛した。ドイツ語訳が存在するか否かは, 1994年までに刊行された翻訳についてはStalph, Jurgen / Giesela Ogasa / Drote Puls: Moderne japanische Literatur in deutscher Ubersetzung. Eine Bibliographic der Jahre 1868-19941によって調べるのが便利である。
著者
岩川 治
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.255-262, 1965-08-25

林道路面の良否は一般に、(1)路面上のデコボコの多少、(2)車輌の乗心地の良否などを基にした直感判断で行なわれることが多い。したがって、林道のごとき悪路については、その良否にある基準を与える研究も、またその方法も現在確立されていない。筆者はこうした現状において、林道路面に対する研究の必要性とともに、まず路面の良否に(悪路の程度に)科学的な根拠を与えていくことの重要性を考え、林道路面の良否判定法の研究に着手した。これに対する具体的な方法および判定法の尺度として考えられる振動加速度の測定条件との関係について、これら一連の研究はReportNo.1〜8)で、すでに発表を重ねてきた。本論文は以下にのべるように、筆者の目的とする研究に実験的な根拠を与えるものとしてとりまとめたものであり、つぎの2つの仮定を出発点としている。すなわち、1)われわれがトラックで林道を走行する場合、、ばしば大きな振動を感じるが、同じ車輌でも舗装路面上ではきわめて振動が小さく、乗心地もまたよい。この相違は、両者の路面の質の相違によるものであると考えられる。換言すれば、路面の質(形状、状態)と車輌の振動には密接な関係がありそうである。2)デコボコ路面を走行する場合、振動に基因する衝撃荷重の大きさは路面の良否(とくにデコボコの大きさ)に関係がありそうである。このことは理論的に導きうる。以上の仮定にたって、筆者は、路面上のデコボコの大きさ(サイズの大きさ)および路面の各種の状態(Tables1〜3)と振動加速度(衝撃荷重)との関係を実験をもとにして考察し、つぎの結果をうることができた。(1)車輌の片車輪が路面上の1箇の穴を乗越えるとき、および左右両車輪が同時に2箇の穴を通過するとき、車輌に生ずる上下方向の振動加速度(g_v)は路面上の穴の大きさ、とくに穴の深さに比例して増大する(Table1)。(2)車輌が路面上のいくつかの穴を連続して乗越えるとき(前後の穴から影響をうけるとき)、単一の穴を乗越えるときよりもg_vの値は相対的に大きくなる。(3)同路面でも、デコボコの補修前と補修後(例えば凹部に土砂を入れる)では振動加速度値に大きな相違が生ずる(Table3、後者が小さくなる)。(4)ヌカルミ林道では、車輌通過により轍、穴を生じやすく、そのデコボコによる振動が非常に大きくなる。これは(1)と共通。(5)砕石のある路面では、砕石の大小が大いに関係を有し、木橋上轍部に板張を施した板張路面上での振動加速度はきわめて小さくなり、舗装的効果を期待できる(Table3)。以上の結果から、筆者は上記の2つの仮定が実験的に立証されることを示し、さらに、振動加速度を尺度として路面の良否を決めうること(ここでは路面の良否をつぎのように解する : 車輌に対して大きな振動衝撃荷重を生ぜしめる路上ほど悪路という評価をする、もちろん測定条件は一定)および、さきに述べた路面の良否に対する直感的判断に1つの科学的な根拠を与えうることを述べた。なお第5章では、振動加速度の測定にさいして、車輌の運転者、路線勾配などをいかに取扱うべきかについて論議し、これをつけ加えた。

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著者
榊原英海 著
出版者
榊原文吉
巻号頁・発行日
1910
著者
鷲見 和彦 橋本 学 泉井 良夫
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.129-130, 1993-09-27

画像による点検・検査・分類などに応用できるクラス分け手法を開発した.このクラス分け手法は多重解像度ラプラシアンガウシアンで処理した入力画像を正負に対称な閥値で処理して得られる3値画像を中間表現として用い,3値画像の局所的な特徴を自己相関に基づくテンプレートで抽出し,その発生頻度をGRBFクラスタリングヘの入力ベクトルとしたものである.3値輪郭の表現が多階調のシーンを表現する能力が高いことと,従来の2値画像処理で用いられてきた認識手法を拡張して応用できることは文献[1][2]で紹介した.この時点でのアルゴリズムは,文献[3]に記載された2値画像に対する局所自己相関に基づくマスク型特徴抽出および特徴のヒストグラムを入力とする重回帰分析による線形判別を3値画像に適用できるように拡張したものであった.そのため局所特徴ヒストグラムの特徴空間が線形分離可能な事例にしか適用できなかった.我々は特徴空間を非線形にクラス分けする手法としてGRBF(Generalized Radial Basis Function)を応用したクラスタリングを導入し,認識能力の向上を計った.GRBFの画像の認識への応用に関しては文献[4]ですでに紹介されているが,我々は最近傍のGRBFのみを考慮することで簡略化を計っている.
著者
太田 昭彦 渡辺 修 松岡 一祥 志賀 千晃 西島 敏 前田 芳夫 鈴木 直之 久保 高宏
出版者
社団法人溶接学会
雑誌
溶接学会論文集 : quarterly journal of the Japan Welding Society (ISSN:02884771)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.141-145, 2000-02-05
参考文献数
18
被引用文献数
22

The fatigue strength of developed box welds was improved about two times of the conventional box welds. The improved welds used the low transformation temperature welding material which contains 10% Cr and 10% Ni. The expansion of the developed welding material was 0.55% due to the transformation from austenite to martensite. This expansion induced the compressive residual stress around welds. On low stress range condition, the stress ratio effect by this compressive residual stress avoids the fatigue crack initiation at the weld toe. On high stress range condition, the fatigue crack initiated from weld toe and the fretting was observed on the fractured surface. While in the conventional welds, no trace of fretting was observed.
著者
三上 大季 林 弘樹 守屋 潔 山上 浩志 吉田 晃敏
雑誌
日本遠隔医療学会雑誌 (ISSN:1880800X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.273-274, 2008-10
被引用文献数
1

著者版遠隔医療における通信インフラとして、低コストであるインターネットが多く利用されている。インターネットは公衆網であるため、通信内容の暗号化と共にサービスシステムへの不正なアクセスを防ぐための利用者認証が必須となる。最も一般的な利用者認証方式はID/パスワードによる認証であるが、認証情報の漏洩による第三者の「なりすまし」が行われる危険性が高い。そこで本研究では、インターネットを基盤とした遠隔医療システムにおいて、本人が所有する携帯電話を利用者認証手続きに利用することで安全性を高め、且つ利用者認証と連動して通信端末間に安全なVPN通信路を動的に確立できる通信インフラシステムを開発した。医療従事者に本システムを体験してもらいアンケート評価を行ったところ、92%の評価者が本システムの有効性を認めた。
著者
岩本 一樹 和崎 克己
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.397, pp.107-113, 2007-12-12
参考文献数
13
被引用文献数
2

コンピユータウイルスの亜種判定について、コード内のAPI呼び出しや制御フローを静的解析することにより、特徴抽出と種の分類を行う手法について述べる。具体的には、収集したウイルスの実行可能コード(Win32)を逆アセンブルし、マルウェアとして特徴・影響があると思われるAPIの呼び出しグラフを作成し、既に解析済みの種と比較することで、新種・亜種の別などの検査を行う。また、いくつかの亜種の特徴の共通部分グラフをとることで、種の特徴抽出も試みた。