- 著者
-
宇都 雅輝
- 出版者
- The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
- 雑誌
- 電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
- 巻号頁・発行日
- vol.J105-D, no.7, pp.457-469, 2022-07-01
近年,論理的思考力や表現力といった被評価者の実践的な能力を測定する手法の一つとして,ルーブリックを用いたパフォーマンス評価が注目されている.ルーブリックの利用により評価者間の採点基準のばらつきを低減できると期待されるが,それでも評価結果がパフォーマンス課題や評価者,ルーブリックの評価観点の特性の影響を受けることが指摘されている.この問題を解決する方法の一つとして,課題や評価者,評価観点の特性を考慮して被評価者の能力を推定できる項目反応モデルが提案されてきた.それらの既存モデルの多くは測定対象の能力に一次元性を仮定しているが,高次な能力の測定を目的とするルーブリックを用いたパフォーマンス評価では測定対象の能力に多次元性が想定される場合がある.そのような能力の多次元性に対応できる項目反応モデルも提案されているが,既存のモデルでは課題と評価者,評価観点の特性を同時に考慮した能力推定は実現できない.そこで,本論文では,課題・評価者・評価観点の特性を同時に考慮して多次元尺度上で被評価者の能力を推定できる項目反応モデルを提案する.また,シミュレーション実験と実データ実験を通して提案モデルの有効性を示す.