著者
片倉 佳史
出版者
交流協会
雑誌
交流 (ISSN:02899191)
巻号頁・発行日
no.833, pp.31-38, 2010-08
著者
中島 健
出版者
放射化分析研究会
雑誌
放射化分析
巻号頁・発行日
no.24, pp.12-16, 2009-06

世界各国の研究用原子炉(研究炉)では、従来は濃縮度90%以上の高濃縮ウランを使用していたが、この高濃縮ウランは核兵器に直接転用可能であるため、米国とIAEA(国際原子力機関)の主導により、濃縮度20%未満の低濃縮ウランに転換するプログラム(RERTR: Reduced Enrichment for Research and Test Reactor)が進められている。多くの研究炉では、燃料の濃縮度を低くした代わりに燃料1体当たりのウラン量(ウラン密度)を増やすことによって、原子炉の特性がほとんど変わらないように工夫している。ウラン密度を増加させるには、従来のウラン-アルミニウム合金では困難なため、ウラン-シリサイド合金をアルミニウム中に分散させた燃料(シリサイド燃料)が広く採用されている。京都大学研究用原子炉KURでも、これまでは濃縮度93%の高濃縮ウランを使用していたが、2006年2月の運転を持ってその使用を終了し、燃料低濃縮化のための作業を開始した。今後のKURでは、濃縮度を93%から約20%へと低減し、ウラン密度を約0.6g/cm^3から3.2g/cm^3へと増加させた低濃縮ウラン燃料(シリサイド燃料)を使用することとなる。この低濃縮化のための準備作業として、原子炉等規制法に基づく原子炉設置承認申請書の変更(いわゆる安全審査)をこれまでに終了し、現在は低濃縮ウラン燃料の製造及び関連する検査、休止中の原子炉の健全性確認(総点検)を順次行っているところである。健全性確認では、運転再開後の安定した使用が可能となるように、運転中は観察が行えない箇所も含めて大掛かりな点検及び必要な機器設備の改修を行っている。また、低濃縮ウラン燃料を装荷した炉心の核特性解析を行い、運転及び実験における濃縮度低減の影響評価を行っている。なお、使用済みの高濃縮ウラン燃料については、既に全数を米国に返送済みである。低濃縮ウラン燃料の製造はフランスの燃料メーカーにて行っており、2009年5月に当実験所に到着する予定である。その後各種の検査等を行い、これらに無事合格した後に、KURは運転を再開することなる。ただし、燃料製造に係るコストの問題から、今回製造する燃料は30体のみであり、従前のような定格出力5MWの運転を定常的に行うと短期間で全燃料を消費してしまう。このため、運転再開後は出力1MWを標準とした運転を計画しているところである。本報告では、燃料低濃縮化を含めたKUR停止期間中に実施してきた、あるいは実施中の、各種の作業及び新炉心の核特性予測評価等、運転再開に向けての準備状況と今後の予定について紹介する。
著者
小椋 宗一郎
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.207-215, 2007-09-20

ドイツでは、医学的に適応がある場合等を除き、中絶手術の少なくとも3日以前に「妊娠葛藤相談」を受けることが法的に義務付けられている。この相談に関しては少なくとも二つの問題が指摘されている。第一に、自発的対話を旨とする相談が法的に義務付けられているという問題がある(「強制としての相談」)。第二に、同相談は「〔胎児の〕生命保護」を目的とすると同時に、「〔相談後に女性たちが出産か中絶かの決断をすることについて〕結果を問わない」ものでなければならないとされる点について議論がある。本論文は、相談の現場に即してこれらの問題について考察する。ドイツのカウンセラーたちによると、実際、これらの問題は実務上の困難をもたらしている。しかしその困難は、カウンセラーと来談者による「率直さ」へ向けた努力によって乗り越えられうる。われわれはこの相談を、生命保護と同時に妊娠した女性たちの援助へ向けたドイツの人々による長期的な努力として理解することができる。
著者
西田 かほる ニシダ カオル Kaoru NISHIDA
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture bulletin
巻号頁・発行日
vol.16, pp.43-54, 2016-03-31

江戸時代、甲斐国巨摩郡小笠原村(現山梨県南アルプス市)には、吉田出羽という陰陽師がいた。出羽は宝暦四年(一七五四)に陰陽道の本所である公家の土御門家から、巨摩一郡の小頭役と一国の惣押役に任じられた。この出羽が明和六年(一七六九)に居村の長百姓藤右衛門を相手取る訴訟を起こした。きっかけは出羽の下作地における小作金の滞納問題であったが、出羽、藤右衛門、村方百姓、陰陽師仲間らの主張を検討するなかで、上下帯刀の着用といった陰陽師としての身分のあり方や、村方と陰陽師との関係、出羽の小頭としての役割などについて考察した。
著者
前原 正美
出版者
経済研究所
雑誌
経済研究所年報 (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
no.53, pp.155-182, 2021-10-05

本論文全体の主張論点としては,石田三成の旗印「大一大万大吉」には《「愛」の政治理念》が示されていること,を明らかにする。本論文の独自の視点としては,第1 に,石田三成が依拠した道教=神道では,地上(天下)の世界は天上の世界の映し絵である,という論点を提示する。宇宙(天上)では「大」=「太」=「天」=「神」は,北極星=宇宙上の中心に位置する「神」であり,その周りを「八」つの「神」が支えている。地上(天下)では,「大」=「太」=「天」=「神」は伊勢神宮に祀られる天照大神であり,道教=神道は,北斗八星信仰=アマテラス信仰=伊勢(神宮)信仰を創りだした。第2 に,三成の九曜文の中央の大丸は北斗=北極星,八つの丸は北斗=北極星の周りの八星を示しており,いいかえれば中央の大丸は天照大神,八の丸は「八百万の神」を示している。こうした北斗八星信仰は,道教=神道を基礎とした平和国家を構築するための政策となった。第3 に,三成は,「一」は常に「万」人=「他」者=「多」者とつながっている,と考えた。そのかぎり人間各人は「愛」に生きるしか幸福になる道はない。かくて三成は,《隣人「愛」=人間「愛」》に基礎づけられた天下国家を実現できれば,「道徳的世界」と「政治的世界」と「経済的世界」とが調和した「最大数の最大幸福」を実現できる,と考えた。
著者
山本 ゆりえ 庄子 雅保 細川 真理子 村上 匡史 田村 奈穂 河合 啓介
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.719-727, 2020 (Released:2020-12-01)
参考文献数
14

摂食障害患者の下剤乱用は予後不良因子の1つである. 入院治療において薬剤師による下剤乱用や便秘に焦点を当てた教育的指導を実施した後, 下剤の処方量と患者の認識の変化, 退院1年後の下剤乱用量について調査した. 下剤乱用患者33名は入院時処方に比較して, 退院処方では刺激性下剤に関して有意な変化を認めなかった (p=0.435) ものの, 入院前の下剤乱用量を考慮すると刺激性下剤の総量としては減少したと推察する. 医師らと連携しながら薬剤師が教育的指導を実施したところ, 患者の排便や下剤に対するこだわり発言に変化がみられた. 追跡調査として対照群を設定し, 入院前と退院1年後の下剤の乱用量を比較した. 入院前の下剤乱用量が少ないこと (p=0.000), 薬剤師の介入 (p=0.029) は, 退院後の下剤乱用量を減少させる因子であることがわかった. 摂食障害患者に対するチーム医療において, 薬剤師の関わりは有用である.
著者
児玉 浩子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.5-9, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1

経腸栄養剤や特殊ミルク・治療用ミルクには, いくつかの必須栄養素がほとんど含まれていないものがある. 主なものとしては, エンシュア・リキッド®にはカルニチン, セレン, ヨウ素 ; エレンタール®にはカルニチン, セレン ; ラコール®にはカルニチン, ヨウ素 ; 牛乳アレルゲン除去ミルク・乳糖除去ミルク・MCTミルク・ケトンフォーミュラ・先天性代謝異常症用ミルクなどにはビオチン, カルニチン, セレン, ヨウ素がほとんど含まれていない. これらを単独で使用すると, 含有量の少ない栄養素の欠乏をきたすおそれがある. これら栄養剤・ミルクを単独で使用する場合は, 欠乏症に注意し, 必要に応じて補充することが大切である.
著者
橋本 成仁 谷口 守 水嶋 晋作 吉城 秀治
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.737-742, 2010 (Released:2017-11-29)
参考文献数
5
被引用文献数
2 8

住宅地内の道路などではドライバーは街路全体から受ける雰囲気からその道路に適していると感じる走行速度で運転しており、無意識のうちに安全な走行速度で走るような街路を実現することが安全な生活空間を形成する上で重要であると考えられる。そこで本研究では、主に岡山市内の街路54路線において合計1,906台の自動車の走行速度を実測し、速度と街路空間要素の関係を分析した。その結果、自動車の走行速度や速度のばらつきにどの街路空間要素がどれほど影響を及ぼすかを定量的に明らかにした。この結果は、街路空間の改良によって自動車の走行速度をコントロールし得ることを示唆したものと考えられる。
著者
渡邊 隆弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.371-377, 2010
参考文献数
19
被引用文献数
2

典拠コントロールは,図書館目録の集中機能を実現するための重要な機構である。本稿ではまず,現行の目録法における典拠コントロールの仕組みを整理し,いくつかの問題点を指摘する。続いて,目録の変革を目指す近年の動向における典拠コントロールの方向性を,書誌コントロール政策,次世代OPAC,新しい目録法(FRBR/FRAD,国際目録原則,RDA)の各観点から整理する。さらに,図書館外のコミュニティにおける「識別子」の動向,典拠データを図書館外のコミュニティに開放する取り組みについても述べる。情報環境の変化を背景とした諸動向のなかで,典拠コントロールは以前より明確に位置づけられ,その重要性は増している。
著者
平田 祐介
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.139, no.10, pp.1235-1241, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)
参考文献数
31
被引用文献数
6 12

Reactive oxygen species (ROS) are highly reactive molecules generated during mitochondrial respiration and under various environmental stresses, and cause damage to DNA, proteins, and lipids, which is linked to a wide variety of pathologies. However, recent studies have revealed the physiological importance of ROS as signaling molecules, which play crucial roles in the maintenance of cellular functions and homeostasis. According to the extent and duration of ROS generation, ROS-mediated oxidation-reduction (redox) signaling (ROS signaling) is tightly regulated by various molecules and post-translational modifications (PTMs), for inducing appropriate cellular responses. Dysregulation of ROS signaling causes cellular malfunctions, which are also linked to various diseases, such as cancer, neurodegeneration and inflammatory diseases. In this review, we focus on a ROS-responsive protein kinase apoptosis signal-regulating kinase 1 (ASK1) that belongs to the mitogen-activated protein (MAP) kinase kinase kinase (MAP3K) family, and activates the c-jun N-terminal kinase (JNK) and p38 MAP kinase pathways, which consequently induces various cellular responses, including apoptosis and inflammation. Here, we introduce a novel regulatory mechanism and the pathophysiological significance of ASK1 activation. We found that an E3 ubiquitin ligase TRIM48 orchestrates fine-tuning of ROS-induced ASK1 activation mediated by multiple types of PTMs, including ubiquitination, methylation, and phosphorylation. We also found that trans-fatty acids (TFAs) enhance ROS-dependent ASK1 activation induced by extracellular ATP, a damage-associated molecular pattern (DAMP), and thereby promotes apoptosis, which possibly contributes to the pathogenesis of TFA-related diseases including atherosclerosis. Thus, this review provides recent advances in the study of ROS signaling, especially ROS-ASK1 signaling pathway.