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巻号頁・発行日
1945
著者
谷出 康士 沖 貞明 田坂 厚志 甲田 宗嗣 長谷川 正哉 島谷 康司 金井 秀作 小野 武也 田中 聡 大塚 彰
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P1368, 2009

【目的】イメージトレーニングによる運動学習や運動習熟に関する研究は数多く報告されている.しかし,イメージトレーニングの筋力増強効果についての研究は少ない.そこで本研究では大腿四頭筋を対象とし,イメージトレーニングによる筋力増強効果を検討した.また,イメージ能力の高い被験者群とイメージ能力の低い被験者群との2群を設け,イメージ能力の差が筋力増強効果にどのような影響を与えるかを調べることとした.<BR><BR>【方法】研究の実施にあたって対象者には十分説明を行い,同意を得た.対象は健常学生24人とし,筋収縮を伴う筋力増強運動群(以下,MS群),イメージ能力の低いイメージトレーニング群(以下,Ns群),イメージ能力の高いイメージトレーニング群(以下,PT群)に分類した.Biodexを用いて,膝関節屈曲60°での膝関節伸展筋力を計測した.MS群には大腿四頭筋の等尺性最大収縮をトレーニングとして行わせた.一方Ns群とPT群にはトレーニング前に運動を想起させる原稿を読ませ,上記のトレーニングをイメージさせた.4週間のトレーニング実施前後に等尺性収縮を5秒間持続し,最大値を記録した.また,全被験者に自己効力感についてのアンケート調査を実施した.統計は各群内の筋力差にt検定を,3群間の筋力上昇率の差に一元配置分散分析を行い,有意差を5%未満とした.<BR><BR>【結果】1)筋力測定の結果:初期評価と最終評価における筋力平均値の変化は,MS群(p<0.01),Ns群(p<0.05),PT群(p<0.01)で有意に増加したが,各群間での筋力上昇率に有意差は認められなかった.2)アンケート:「トレーニングにより筋力は向上したと思うか」という問いと筋力上昇率との間に,MS群は正の相関が認められたのに対し,Ns群およびPT群では負の相関が認められた.<BR><BR>【考察】筋力測定の結果,3群全てにおいて筋力が向上した.イメージトレーニングのみ行ったNs群とPT群においても筋力増強が認められた理由として,運動イメージを繰り返すことにより筋収縮を起こすためのプログラムが改善されたためと考える.次に,Ns群・PT群間の筋力上昇率に有意差は認められない理由として,イメージの誘導に用いた原稿が影響したと考えられる.この原稿によってイメージ能力が低いと想定したNs群でも,一定の水準でイメージを持続できていたと考えられる.原稿によるイメージのし易さは,PT群に比べてNs群で高く,Ns群は原稿の誘導を頼りにイメージを想起し,PT群とのイメージ能力の差を補った可能性が示唆された.最後に,MS群では筋力上昇率と自己効力感との間に正の相関があったが,Ns群・PT群では負の相関が認められた.イメージトレーニングのみ行ったNs群・PT群では,フィードバックが無いことで,「この練習で筋力は向上するのか」という懐疑心が強くなったと考えられる.
著者
平田 友香
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.35-66, 2015

本稿は,筆者の在籍する大学院のリカレント教育で行われた日本語教育実習を通して,筆者が行ったタスクベース授業の改善を目指したアクション・リサーチの報告である。筆者は,過去の日本語教授経験で取り組んだプロジェクト型タスクベース授業において,タスクの進め方と,文法・文型の取り扱いに問題を感じていた。その後,日本語教育現場を離れ,大学院でLearner-Centredなどの理論背景について学び,日本語教授経験を振り返り,教育実習では,タスクベース授業における筆者の課題の改善を試みた。これは,アクション・リサーチの形で,タスクベース授業における教師の役割について理解を深め,タスクの進め方や,フィードバックなど様々な問題点の改善に取り組んだ。そこで,授業という限られた時間でタスクを完了させるために,教師は様々な役割を担い,学習者をサポートする必要があることがわかった。文法・文型指導においては,筆者のビリーフが大きく影響していることに気づいた。また,タスクを進める上で,Learner-Centredの考えも影響することに気づいた。実習を通して得たこれらの気づきを基に,改善案を提示し,今後の課題とした。
著者
若杉 葉子 戸原 玄 中根 綾子 後藤 志乃 大内 ゆかり 三串 伸哉 竹内 周平 高島 真穂 都島 千明 千葉 由美 植松 宏
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.109-117, 2008-08-31 (Released:2021-01-22)
参考文献数
64

現在行われている多くのスクリーニングテストは誤嚥のスクリーニングテストであり,不顕性誤嚥(SA)をスクリーニングすることは難しいとされている.今回,我々はクエン酸の吸入による咳テストを用いたSAのスクリーニングの有用性について検討を行った.対象は何らかの摂食・嚥下障害が疑われた18歳から100歳までの患者204名 (男性131名,女性73名,平均年齢69.90±11.70歳).超音波ネブライザより1.0重量%クエン酸生理食塩水溶液を経口より吸入させ,1分間での咳の回数を数える.5回以上であれば陰性 (正常),4回以下であれば陽性 (SA疑い)と判定し,VFもしくはVEの結果を基準とし,SAのスクリーニングの感度,特異度,有効度,陽性反応的中度,陰性反応的中度を計算した.咳テストによるSAのスクリーニングの結果は,感度0.87,特異度0.89,有効度0.89,陽性反応的中度0.74,陰性反応的中度0.95であった.次いで主要な原疾患別に咳テストの有用性を検討した.脳血管障害患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.76,特異度0.82,有効度0.79,陽性反応的中度0.73,陰性反応的中度0.84であった.頭頚部腫瘍患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度1.00,特異度0.97,有効度0.98,陽性反応的中度0.93,陰性反応的中度1.00であった.神経筋疾患患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.83,特異度0.84,有効度0.84,陽性反応的中度0.56,陰性反応的中度0.95であった.呼吸器疾患患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.67,特異度0.81,有効度0.76,陽性反応的中度0.67,陰性反応的中度0.81であった.気管切開のある患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.71,特異度1.00,有効度0.78,陽性反応的中度1.00,陰性反応的中度0.50であった.認知症患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度1.00,特異度1.00,有効度1.00,陽性反応的中度1.00,陰性反応的中度1.00であった.以上より,クエン酸吸入による咳テストはSAのスクリーニングに疾患によらず有用であると考えられた.
著者
小俣 謙二
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.775-781, 1995-08

個室の領域化は自己形成の途上にあり情緒的にも不安定な時期にある青年にとって重要な問題である.他方,わが国では子供部屋は居住空間の中で物理的に確保されているものの,他者がそこに無断で入ることも容易にできる.このような状況では,なわばり行動が青年の部屋の使い方や心理的自立性の発達において重要な役割を果たすと考えられる.この可能性を検討するために質問紙調査を実施し,以下の結果を得た.防御的態度は男女ともあまり強くなかったが,それは負の感情にあるような場合の男子の部屋の使い方に影響を及ぼす.もう一つのなわばり行動である空間の自己表出化については,個室の自己表出性を高める者ほど部屋に対して肯定的な感情をもち,心理的自立性も高いという結果が得られた.これらの所見は個室の領域化が青年の日常生活において重要な役割を果たすことを示している.
著者
毛内 拡
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.71-80, 2021-06-05 (Released:2021-07-05)
参考文献数
18
被引用文献数
1

脳は,神経ネットワークの集合体と解釈されており,神経生理学の主な研究対象は,神経ネットワークにおけるシナプスを介した相互作用である.しかし,血管やグリア細胞など,脳のニューロン意外の構成要素が,脳内の物の流れ(ロジスティクス)に不可欠な役割を果たしている.さらに,脳の細胞外スペースは,細胞外環境の恒常性と代謝老廃物のクリアランスに重要な役割を果たす脳リンパ流の主要な経路であり,神経修飾物質の拡散性伝達や神経細胞が生成する電場の媒質としての役割を担っている.脳の高次機能を理解するためには,神経ネットワークとそれ以外の構成要素との間の「非シナプス性相互作用」を含む,脳内の包括的なコミュニケーション方式を理解する必要がある.本稿では,細胞外スペースとそれを満たす細胞間質液が提供する脳の「アナログ伝達機構」に焦点を当て,生きた脳組織の神経生理学・生物物理学のための神経科学の新たな展開を紹介する.
著者
田中 ゆかり 林 直樹 前田 忠彦 相澤 正夫 Yukari TANAKA Naoki HAYASHI Tadahiko MAEDA Masao AIZAWA
出版者
国立国語研究所
雑誌
国立国語研究所論集 = NINJAL research papers (ISSN:2186134X)
巻号頁・発行日
no.11, pp.117-145, 2016-07

日本大学日本大学統計数理研究所国立国語研究所 時空間変異研究系2015年8月に実施した,全国に居住する20歳以上の男女約1万人から回答を得たWeb調査に基づく最新の全国方言意識調査の概要と「方言・共通語意識」項目についての報告,ならびにその結果を用いた地域類型の提案を行う。「方言・共通語意識」項目は,「生育地に方言はあると思うか」「生育地の方言は好きか」「共通語は好きか」「ふだんの生活における共通語と方言を使う割合はどのくらいか」「ふだんの生活において共通語と方言の使い分けをしているか」「場面(相手)により生育地方言をどの程度使うか」の6項目である。これらについて,回答者の生育地と年代,生育地の生え抜きか否かに注目した分析を行った。その上でこの6項目の相互の関係から,12の地域は大きく7タイプ(首都圏・北海道/東北/北関東・甲信越・東海/近畿・中国/九州/北陸・四国/沖縄),細かく9タイプ(首都圏・北海道/東北/北関東/甲信越/東海/近畿・中国/九州/北陸・四国/沖縄)に分類された。
著者
倉田 篤
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.4, no.5, pp.358-370, 1966-06-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1

1.四日市南高校山岳部を主体として,八重山群島西表島の調査が実施され,1965年8月15日から25日にかけて,西表島及び仲ノ神島の鳥類を調査した。2.今回の調査により,本島産新記録種7種を含めて22科38種の鳥類を記録した。これらのうち本邦との共通種は32種,台湾とのそれは37種であり,亜種まで一致するものは,本邦について19種,台湾について21種である。これは本島産の鳥類の構成が地理的に近い台湾との共通性の深いことを示しているといえる。3.南西諸島は東洋区,旧北区との境界として,動物地理学上重要な地域であり,本島においても地理的及び生態的分布上の注目種として,スズメ,シマアカモズ,リュウキュウツバメ,アオツラカツオドリ,オオアジサシ,リュウキュウキジバトがみられた。4.西表島南方の仲ノ神島には,クロアジサシ,セグロアジサシ,オオミヅナギドリ,及びカツオドリの4種の海鳥が繁殖しており,総個体数約20,000羽を記録した。それらのうち,クロアジサシ,セグロアジサシの両種間にはすみ分けがみられた。5.仲ノ神島では毎年産卵期に採卵が行なわれており,今後貴重なる海鳥の大繁殖地として保護対策が早急に必要であると考える。

4 0 0 0 OA 1.鑑別診断

著者
竹内 靖博
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.656-661, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
5
被引用文献数
2 1

高カルシウム血症は,日常臨床で頻繁に遭遇する生化学検査上の異常である.大部分の高カルシウム血症は自覚症状に乏しく,検査によって初めて気付かれることも稀ではない.一方,血中カルシウム濃度は極めて厳密に制御されており,高カルシウム血症の背景には必ず何らかの病態が潜んでいる.従って,高カルシウム血症に遭遇したら,正しい思考過程に従って適切な診断を付けることが臨床的に大切な課題であり,患者の健康にとって大きな貢献となる.