著者
山本 浩二
出版者
常葉大学造形学部
雑誌
常葉大学造形学部紀要 = TOKOHA UNIVERSITY FACULTY OF ART AND DESIGN RESEARCH REVIEW (ISSN:21884366)
巻号頁・発行日
no.16, pp.103-110, 2017-12-31

我が国においては明治期以降、美術教育における基礎的な造形力を養う方法としてデッサンの習得が行われてきた。特に日本の美術系高等教育においては入学試験でデッサンを課すという場合が多く、受験のための訓練と認識されることも多いのが現状である。本稿ではデッサンを単に描画のための技術と捉えるのではなく、ものを見るという行為について知るとともに様々なものの見方を獲得するための訓練と位置づけ、あらゆる美術ジャンルに共通する問題である視覚ということについて考察を進めることで美術教育におけるデッサンの役割について明らかにしようとするものである。
著者
三宅 裕子 田中 友二
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-9, 1992 (Released:2006-06-23)
参考文献数
21
被引用文献数
5 4

左側頭頭頂葉皮質下出血により読字・書字障害のみを呈し,読字では仮名が,書字では漢字が選択的に障害された1例を報告した。本例は読字・書字における漢字処理と仮名処理過程の神経心理機構について示唆を与える症例である。    症例は74歳の右利き男性。仮名に選択的な失読と漢字に選択的な失書を認めた。漢字の読みと仮名書字は正常に保たれていた。発症初期には喚語困難と聴覚的理解の障害を認めたがこれらの失語症状は速やかに消退した。本例はX線CT上,左側頭頭頂葉移行部の皮質下に病巣があり,この部位の損傷により後頭葉から角回に至る仮名読みを担う経路と側頭葉から後頭葉を経て運動野に至る漢字書字の経路が同時に損傷されて仮名の失読と漢字の失書を呈したと推察した。日本語の読み書きには神経心理学的に異なる4つの処理過程—漢字の読みと書字,仮名の読みと書字—が存在するが,本例の症状はこの4つの過程が選択的に障害されうる場合があることを示している。
著者
古山 若呼
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

エボラウイルスのGPに対して誘導される抗体の一部はin vitroでウイルスの感染を増強することが知られている(抗体依存性感染増強現象Antibody-dependent enhancement: ADE)。この現象は、デングウイルスを含む多くのウイルスで報告されており、主に抗体がFcγレセプターIIa (FcγRIIa) を介して細胞とウイルスとを架橋し、ウイルスの吸着効率が上昇することによって引き起こされると考えられている。さらに、エボラウイルスではFcγRIIaだけではなく、補体成分であるC1qおよびC1qレセプターを介したADEも報告されている。しかし、ADEの詳細なメカニズムは明らかとなっていない。そこで、本研究ではADE抗体存在時のエボラウイルス感染における宿主細胞内シグナル経路やウイルスの侵入経路を、ADE抗体非存在時の感染と比較することによって、ADEに特異的なメカニズムを分子レベルで解明することを目的とした。昨年度は、エボラウイルスに対する抗体がADEを引き起こすためは、宿主細胞のFcγRIIaを介したシグナルであるSrc Family PTKsが重要であることを、実際のエボラウイルスを用いて明らかにした。また、ADE抗体がFcγRIIa下流のSrc Family PTKsを介したシグナル伝達経路を活性化し、マクロピノサイトーシス/ファゴサイトーシスを誘導することによって細胞へのウイルスの取り込み効率を上昇させ、その結果、感染増強が引き起こされていることを明らかにした。本年度は、これらすべての結果をまとめ論文を執筆しPLoS Pathogensに掲載された。

4 0 0 0 OA 雑兵物語 : 2巻

巻号頁・発行日
vol.[2], 1846
著者
吉江 崇
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、鎌倉時代史の基本的文献である『平戸記』に関して、信頼に足るような新たな校訂本を作成し、研究の基盤整備を行うことにある。第3年度にあたる平成30年度には、前年度に終えた伏見宮家旧蔵本の校訂作業を基盤としながら、伏見宮家旧蔵本に含まれていない年次について、校訂作業を実施するとともに、人名・地名の比定作業および人名索引の作成、各記事を端的に要約して示すような標出の作成に着手した。これまで研究協力者などで構成される8人のメンバーで校訂会を開催し、伏見宮家旧蔵本の校訂を実施してきたが、それが一段落したことを受け、伏見宮家本以外の校訂、人名・地名の比定、標出の作成、といった3つの部門に分け、それぞれが担当の作業を行うこととした。そして、計4回の会合をもって、各担当部分の進捗状況の確認や、作業を遂行する上で発生した諸問題の検討などを行った。校訂作業については、日次記部分の全てにおいて、諸本の相違点を抽出した。その後、抽出した写本間の相違点について、どの文字を校訂注として示すか、または示さないかを検討し、校訂を確定させる作業に着手した。このような形で平成30年度中に校訂を確定し終えたのは、全体の半分程度である。人名・地名比定作業については、日次記全体から人名・地名を抽出し、比定作業を順次行った。平成30年度中に一通りの比定を終えることはできたものの、なお検討が必要な箇所が少なからず存在する。また、比定ができたものについても、実際にどの記載を新訂本で明示するかについては、これから検討することになる。標出作成作業については、全体の半分程度で標出を作成することができた。その際、すでに標出を行っている大日本史料の記述方法などを参考にした。
著者
植木 琢也 平岡 俊也 大澤 美代子 黒川 理加 塚本 佐保 辻 恵子 矢野 実穂 横島 由紀 萩原 章由 松葉 好子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11585, (Released:2019-09-25)
参考文献数
47

【目的】回復期リハビリテーション(以下,回リハ)病棟における脳卒中患者の身体活動量を生活活動度計により定量的に評価し,入院時と退院時における変化や自立歩行の可否による相違を明らかにすること。【方法】当院回リハ病棟に入院した脳卒中患者169 名を対象とした。対象に生活活動度計を連続24 時間装着し,回リハ病棟入院時および退院時における身体活動量(歩行・立位・車椅子駆動・座位・臥位の各時間)を測定した。24 時間,日中,理学療法中,作業療法中の各時間帯別に入院時と退院時の比較,歩行介助群と自立群との比較を行った。【結果】退院時,歩行や立位の時間が増加する一方,臥位の時間は減少した。歩行や立位の時間は介助群で短い傾向にあった。【結論】回リハ病棟入院中の脳卒中患者の身体活動量は入院時と比べ退院時には増加する。一方で歩行自立に至らない患者の立位歩行時間は相対的に短く,身体活動量の確保に向けた方策の検討が必要である。

4 0 0 0 OA 建築写真類聚

著者
建築写真類聚刊行会 編
出版者
洪洋社
巻号頁・発行日
vol.第5期 第3 (公衆浴場), 1925
著者
川崎 直樹 小玉 正博
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.209-215, 2011 (Released:2016-03-12)
参考文献数
31
被引用文献数
2

自己愛傾向の高い者は,他者との競争の中で自己の優越性を示すことを強く求める一方で,他者との親和的な関係を維持することを相対的に軽視しがちであるといわれる。そして,実際に自己の優越性が示されていたとしても,本人にとってはそれが満足として感じられることはないといわれている。そこで,本研究では,競争・親和欲求の強さと,その欲求の充足度を区別して測定し,自己愛傾向との関連を検討することとした。なお,自己愛傾向との比較のため,自尊心との関連も検討を行った。大学生259名に質問紙調査を行い,自己愛傾向・自尊心とともに,競争欲求・親和欲求の強さおよびそれぞれの充足度が測定された。その結果,自己愛傾向は,競争欲求およびその充足度の影響によっては説明されないものであった。対照的に,自尊心は競争と親和での充足度とおもに関連を示し,欲求の強さとはあまり関連を示さなかった。これらのことから,自己愛傾向が高い者ほど,親和的な関係より競争的な関係を強く求めており,その欲求が満足を得ない貪欲さを帯びうることが示唆された。
著者
鈴木 貴久 小林 哲郎
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.99-107, 2014-11-30 (Released:2015-07-24)
参考文献数
29

This study investigated the effects of reputation-making norms on personal network size. Someone who behaved cooperatively/non-cooperatively toward a “bad” person is denoted as C to B/D to B. Reputation-making norms are then defined by a combination of the assessment of C to B and the assessment of D to B. We hypothesized that (1) those who judge C to B negatively would form smaller personal networks than those who judge C to B positively, and (2) those who judge D to B negatively would form smaller personal networks than those who judge D to B positively. We used scenarios to assess the internalized reputation-making norms as an independent variable and investigated their effects on the size of participants' support networks as a dependent variable. Results indicated that the size of the support networks of participants following a norm which does not permit C to B was smaller than that of participants following a norm which does permit C to B. These findings suggest that using reputation made by norms which do not permit spoiling narrows the size of cooperative relationships.
著者
Takeshi KATO
出版者
Japan Language Testing Association
雑誌
日本言語テスト学会誌 (ISSN:21895341)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.23-43, 2019 (Released:2020-02-07)

Over the last four decades, the constructs of complexity, accuracy, and fluency have been in focus in the analysis of language learners’ performance. However, due to the polysemous nature of complexity, more and more sub-constructs have been assumed, making holistic measurement difficult. This study aims to construct a more appropriate measurement model of L2 complexity by implementing finer-grained and relatively novel linguistic indices for capturing subordinate constructs that could not be measured by conventional indices. By utilizing five natural language processing tools, conventional and fine-grained indices of complexity were computed from 503 argumentative essays written by Japanese English learners. First, exploratory factor analysis was performed on linguistic index values and the extracted factor structures behind them. Second, confirmatory factor analysis was conducted to confirm whether the structure fits the data. Finally, a structural equation model of complexity constructs to predict essay scores was tested to evaluate its applicability to writing evaluation. The result of a series of factor analyses showed that the extracted factor structures reasonably fitted to the data for syntactic complexity (CFI = .901 and RMSEA = .071) and for lexical complexity (CFI = .978 and RMSEA = .051). Furthermore, the result of Structural Equation Modeling (SEM) analysis, which was proposed as a predictive model, accounted for 32.3 % of the variance of essay scores (CFI = .916 and RMSEA = .077). Overall, the findings showed the effectiveness of the proposed approach, which combined conventional linguistic features with fine-grained and relatively novel indices.
著者
鈴木 董
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.9_41-9_44, 2013-09-01 (Released:2014-01-08)
著者
広瀬 茂男 福田 靖 菊池 秀和
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.304-324, 1985-08-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
17
被引用文献数
9 14

歩行機械は, その高い自由度を生かすことにより, 高度の運動性能と, 対地適応性を発揮してゆくものと期待される.これまで歩行機械の歩容制御については, いくつかの基本的考察がなされている.しかし, 制御システム全体の構造とその中の主要なサブシステムの機能を有機的に連携づけ総合的に論ずることは, まだほとんど行なわれていない.本研究は, 筆者らが開発を進めている4星歩行機械を対象にして, その制御システムを論ずるため, まず問題の設定と基本となる概念の設定を行なう.ついでレベルA, B, Cと名付けた3つの階層からなる制御系の全体構造を明らかにすると共に, 特にレベルBに属する3つのサブシステム, つまりxy座標での歩容決定, z座標での歩容決定, 振り上げ振り降しも考慮した遊脚の軌道生成についての詳細な検討を行う.さらに基本的運動調整系を行うレベルCについて, その具体的構成法も論ずる.最後に, それらの有効性は計算機シミュレーションで確認するとともに, 試作した歩行機械TITAN IIIのジョイステックコントロールによる全方向移動, 凹凸面での適応側行歩行などの歩行制御実験により検証する.