著者
塩川 茂樹
出版者
神奈川工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

近年,eスポーツが急速に世界中で普及し始めている.場所や時間を問わずオンラインで実施可能なeスポーツは今後ますます注目を集めると思われる.しかしながら,基盤となるネットワーク技術からゲーム依存症問題まで幅広い分野で多くの課題が存在するものの,急激な普及にそれらの解決が追い付いていない.本研究では,eスポーツ競技のコンテンツ配信に適したネットワーク技術課題に着目し,無線ネットワーク技術を発展させたコンテンツ配信プロトコルの開発を行う.データ管理および送信,動的通信経路構築,多重経路制御などを駆使したプロトコル開発により,eスポーツコンテンツの低遅延配信および同期配信の実現を図る.
著者
佐野 方郁
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

イギリス人のウィリアム・ペッペが1898年にインドで釈迦の遺骨を発見し、イギリス政府・インド政庁が1899年にタイ王室に寄贈すると、日本の仏教界は1900年にその一部を譲り受けた。覚王山日暹寺はそれを安置するために、1904 年に愛知県愛知郡田代村(現在の名古屋市千種区法王町)に建てられた寺院である(1942年に日泰寺に名称変更)。仏骨を納めるための奉安塔は1918年に完成した。しかし、日暹寺/日泰寺は日タイ文化交流の中心地の1つであるにも拘わらず、これまで研究者はほとんど注目して来なかった。本研究は、地方・宗教新聞や各宗派機関誌を分析することで、明治・大正期の日暹寺の歴史の再検討を行った。
著者
渡邉 恵一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

ヒルベルト空間の原点を中心とする開球は,A.A.Ungarによって定義されたメビウスの和,メビウスのスカラー倍,ポアンカレの距離によって,メビウスジャイロベクトル空間をなし,関数解析学的に空間としてよく分かってきている。メビウスジャイロベクトル空間の間の写像で,ヒルベルト空間の間の有界線形作用素に相当するものの法則を解明することが補助事業期間全体の研究計画の概要である。
著者
西村 俊哉
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、異種母体を利用した個体作出システムの構築を目的とし、胚盤胞補完法を用いて子宮欠損ラット体内にマウス幹細胞由来子宮を作製し、そこにマウス胚を移植し、ラット母体内でのマウス胎子の発生を試みる。異種母体内で移植胚と同種の子宮を作製することができれば、異種母体を利用した個体作出システムの構築に大きく近づくと考えられる。また、本研究が進めば、産子作出に同種母体が必要なくなることから、個体の確保が困難な絶滅危惧種やすでに絶滅した種の近縁種を用いることによる“代理異種母出産”が可能となる。本年度は、前年度に開発した飛躍的なドナーキメリズムを上昇させる新規手法(細胞競合ニッチ法)をさらに改良することで、子宮特異的に成長因子受容体欠損を誘導する遺伝子改変マウスを作製した。具体的には、Wnta7遺伝子のプロモーター下でCREタンパク質を発現するマウスとIgf1遺伝子にloxp配列が挿入されたマウスを掛け合わせることで、両方の組み換え遺伝子を有したマウスを作製した。今後、本マウス胚にドナー細胞を移植することで、①ドナー細胞のキメリズムが子宮内で上昇するか、②ドナーキメリズムが上昇した場場、ドナー細胞由来子宮を誘導することが出来るかを検討する。また、これまで得られたデータをまとめ、論文発表(Nishimura et al., Cell Stem Cell. 2021)、学会発表(第20回再生医療学会総会 口頭発表)を行い、研究成果を社会に発信するとともに、得られた研究結果の米国特許申請を行うことで産業に結び付ける足掛かりを作った。
著者
田中 省作 本田 久平 長谷川 由美
出版者
立命館大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

研究計画に従い,次のようなテーマを重点的に推進した.1. 崩れのモデルに基づいた指文字の生成:前年度提案した,掌と手の向きごとに分割した手指に対して生理構造の観点で最も安定的な手指の状態形状との一種の重み付き平均に基づいた手指形状の生成モデルの実装を進めた.このモデルのパラメタである重みの範囲が,指文字の崩れに連関する.そのパラメタは被験者実験で推定することを計画していたものの,コロナ禍の影響もあり,かなわなかった.2. 学習システムのプロトタイプの実装:カメラに向かって指定された指文字を表出し,それを自動的に認識した上で,その正誤を判定するようなモジュールの開発を進めた.1のテーマが進み,指文字ごとに許容される崩れの範囲がパラメタとして推定されれば,この学習システムの正誤判定にそのまま適用できる.3. 指文字学習のための新しいテキストの作成:これまでの指文字の崩れや,指文字間の錯誤に基づいた部分形状を活用した指文字の類型化を盛り込んだ,今までにない新しい指文字の学習テキストを作成した.
著者
白木澤 涼子
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、第二次世界大戦を未曽有の人災と捉え、そこでの町内会の働きをソーシャル・キャピタルの観点から捉え直し、そのポジティブとネガティブな二面性を明らかにする。ソーシャル・キャピタルの二面性を前提として、今後のわが国の自然災害・人災を問わず、災害時における人々の生活と生命を守る指針の一つとなることを目指す。従来の研究史では、町内会は第二次大戦下、戦時国家体制を支えたとされた。仮に町内会がなければ、国民生活はより壊滅的でパニック状況に陥り、戦後の復興は遅れたであろう。戦時下の町内会は、人々の生活と生命を守るために、地域の実情と特徴に合わせた創意工夫ある働きを行った。その全国的実態の解明を行う。
著者
井上 康博 船山 典子 近藤 滋 新美 輝幸 大澤 志津江 小沼 健 秋山 正和 山崎 慎太郎 田尻 怜子 後藤 寛貴
出版者
京都大学
雑誌
学術変革領域研究(A)
巻号頁・発行日
2020-11-19

細胞は、素材によって工法を選び、組み立てることで「体」を建築する。本領域では、この素材の加工という新しいパラダイムを提示することで、後期発生以降の形態形成の原理に挑む。このパラダイムは「工業」そのものであるため、工業デザイン技術の生物への応用と、生物で得られた知見の産業応用が期待できる。この目的のために、総括班は、様々な分野の実験系と理論系の融合推進、異分野からの若手研究者の参入支援など、領域推進の司令塔としての機能を担う。
著者
近藤 滋
出版者
大阪大学
雑誌
学術変革領域研究(A)
巻号頁・発行日
2020-11-19

魚類ヒレの先端には、アクチノトリキアと呼ばれるコラーゲンの棒状結晶体を、ヒレの細胞が「建築資材」のように扱い、分業体制で、作成・整列・骨化を行うことで、ヒレ骨パターンを作り上げている。本申請研究では、その過程の完全な理解、インビトロにおける再現、計算機シミュレーションによるインシリコ再構成により、これまで不明であった後期形態形成現象の新たな概念を創出し将来の再生医療の基礎を作ることを目的とする。
著者
西田 康太郎 高田 徹 由留部 崇 角谷 賢一朗 前野 耕一郎
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

椎間板研究にとって欠かせない、3種類の椎間板変性モデルを確立した。緩やかな変性を生じるモデルを用いて圧迫期間に伴い特に脊索由来細胞が早期に消失して非脊索由来細胞(軟骨様細胞を示唆)が相対的に増大していた。動的負荷培養装置を用いた実験では, 圧負荷により代表的なメカノレセプターであるintegrinの関与が椎間板変性に関与していることが明らかとなった。脊椎後方に小皮切から挿入可能なスペーサーを作成し、周辺機器も含めて改良を行い、有効性に関して大型動物実験を行い確認した。
著者
黒田 公美 天野 大樹 吉原 千尋 時田 賢一
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

未交尾オスマウスは子マウスに対して攻撃的であるが、メスとの交尾・同居を経験し父親になると、自分の子ばかりか他人の子まで養育する。この「父性の目覚め」において、攻撃には前脳分界条床核の一部分BSTrhが、養育には内側視索前野中央部cMPOAが重要であることを見出した。BSTrhの機能を阻害すると子への攻撃が弱まり、cMPOAの機能を阻害すると子を養育できなくなった。また光遺伝学的手法でcMPOAを活性化すると、子への攻撃が減る。さらにオスマウスが子を攻撃するか、養育するかは、cMPOAとBSTrhの2つの脳部位の活性化状態を測定するだけで、95%以上の確率で推定できることがわかった。
著者
前山 花織
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の発症における役割を明らかにするために、新生児黄疸に関連するUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)遺伝子多型の発生頻度をASD児の集団と日本人の一般頻度と比較し、ASDの発症に関与しているかどうかを検討した。回収したDNAを解析した結果、UGT1A1*6、UGT1A1*28の遺伝子多型の頻度は日本人の一般頻度と変わりなく、少なくともASDの発症に新生児黄疸の発症リスクの一つであるUGT1A1遺伝子多型は関与していないことが考えられた。
著者
竹谷 豊
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

慢性腎臓病は、日本人の1300万人が罹患していると推定されており、その対策が喫緊の課題である。慢性腎臓病では、腎機能が低下し、悪化すれば人工透析が必要となる。それに加え、心筋梗塞などの心血管疾患のリスクや骨粗鬆症、筋肉の萎縮による低栄養状態を招き、これらが重なると生命予後が悪化する。我々は、腎機能低下に伴い上昇する高リン血症が、これらの病態に共通した因子であることを見出してきた。これまでは、食事や薬剤で高リン血症の改善を試みてきたが、運動を行うことが、高リン血症の改善や骨粗鬆症、筋肉の萎縮などを改善するために効果的であると考え、その効果の検証と分子機序の解明に取り組む。
著者
有地 亨 三島 とみ子 緒方 直人 南方 暁 清山 洋子 生野 正剛 大原 長和 金山 直樹 久塚 純一 小野 義美 川田 昇 丸山 茂 松川 正毅 河内 宏 二宮 孝富 伊藤 昌司 UEKI Tomiko MISHIMA Tomi HISATSHUKA Junichi
出版者
九州大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

われわれは、1990年秋と91年秋の2度に分けて、第1年目には英国第2年目には仏国および独国において、離婚、児童福祉、老人の3領域における各種相談・援助機関に関する実態調査を行なった。離婚の領域では、英国において、公私2つの研究機関と12の各種相談・援助機関のスタッフに対する面接調査を行い、質問票配布の方法による補足的調査をも行った。仏国では3つの公的機関と22の民間機関のスタッフならびに7人の研究者との面接調査を行い、同様の補足調査を併用した。独国では、民間機関である結婚生活相談所スタッフを調査対象に選んだ。英国では、離婚問題を抱えた当事者への相談・援助活動は、民間機関中心に行われており、夫婦関係の和合調整より、クリ-ン・ブレイクを目指す傾向が顕著であったが、仏国でも民間機関が中心であって、その活動にも同様の傾向が見られ、ここでの合意形成援助活動を司法手続の前段階として制度化する動きも確認できる。独国の上記相談機関は、法的問題と心理的問題を区別し、活動分野を後者に限定しているのが特徴であり、これが独国の一般的傾向を代表する。児童福祉の領域では、英国の公的機関13と民間機関4、仏国の政府機関をはじめとする公的機関8および民間機関11の、それぞれのスタッフと面接調査し、独国においては民間機関1および少年係検事1人を対象に調査した。英仏両国ともに民間機関に活動が顕著であり、各個に特色ある諸機関がその特色を活かしてキメ細かな援助を行なっていることが分かったが、特に、英国においては、公的機関と民間機関との連携が良く、総合的機関の確立も追求されている。独国でも、民間の青少年援助機関が、広義の社会的不適応者に対する社会化のための援助を行っているのが注目される。老人の領域では、英国では、研究者3、地方行政における福祉担当官や公的機関のスタッフや民間の営利・非営利の老人施設のスタッフに面接調査した他に、施設利用者15人に対しても面接調査し、さらに、質問票による補足調査からも多くの情報を得た。同様に、仏国でも高齡者施策に関与する諸機関を訪問してスタッフの面接調査をした(30件)後、福祉諸施設の現場を訪問した。独国では民間の老人ホ-ム経営体を訪問したにとどまる。この領域でも、英仏両国では、やはり民間機関が高齡者個々のニ-ドに応じた多様な援助を広範に提供しており、公的機関の役割はむしろ限定的であるが、両者の連携が重視されている。仏国でも、民間機関による援助が、質・量ともに顕著である。英国では、高齡者は総じて家族とは独立した生活を送っており、相談・援助は、家族との人間関係調整よりも実際的(経済的)援助中心であるが、仏国では、高齡者の自己決定の尊重を眼目としつつ、家族による精神的サポ-トのための民間機関の活動も重視されている。独国調査でも家族によるサポ-トのための民間機関の活動が重視されている。総じて、これらの海外調査の結果は、日本調査の結論としての「家族問題総合センタ-」の構想において、ともすれば公的機関中心に考える日本的発想への反省を迫るものがある。つまり、今回われわれが調査した国々では、家族問題への公的機関の関与は抑制的であり、その役割は財政的支援の範囲に限定されているようである。主導的な役割は、むしろ多様な民間機関が果たしているが、それを可能にしている背景には、その活動の担い手であるソ-シャル・ワ-カ-の専門性の高さとその社会的認知が存在することを見失ってはならない。多様な機関に所属しつつも、活動の担い手相互間には専門性という共通項があって、それが、わが国には見られないような機関相互間の良好な連携を生み出しているという点も、特記すべきことである。
著者
久塚 純一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

地域で、実際に計画策定を担当している者が、計画策定や地域特性に対してのアイデンティティーを持てる条件が備わっていることが「策定された計画についての満足度」と深く関わり、したがって、「マニュアル」や「指針」の存在や国からの指導は、かえって、地域特性を反映した計画に結実しないとの仮説のもとに、「福岡県」・「佐賀県」・「熊本県」・「兵庫県」・「神奈川県」と五県内の全市町村、および関係団体について、アンケート調査とヒアリングを実施した。アンケート調査の結果については、(1)策定された計画についての満足度と、(2)アンケートに回答した担当者が、評価を下す際に「自己責任」という観点から回答を導き出したか、「他者責任」という観点から回答を導き出したかをクロスさせ解析した。その理由は、コミュニティーケア自体が、「普遍性」と「個別性=地域特性」という二つの価値軸を持っているからである。仮説の通り、(1)「策定された計画についての満足度」と(2)「地域に対してのアイデンティティー」や「実感としての主体性発揮」の有無が密接に関係していることが分かった。地域を比較すると、「福岡県」と「兵庫県」に類似した傾向が見られる。同様のことは、介護保険導入後の市町村の実施計画作成についても想像できることから、今後とも、計画作りの「マニュアル」や「指針」と、計画作りにおける「自由度」や「地域特性の重視」との関係は大きな課題となろう。いずれにしろ、地域で、具体的に計画策定を担当する市町村職員の「ローカルなものに対するアイデンティティーの確保」が重要な鍵を握っているものと考えられる。
著者
久塚 純一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

昨年度までの調査・研究によって、コミュニティー・ケアの実施にあたっては、「画一性や平等性」の重視と「多様性や地域特性」の重視という二つの価値軸の衝突が見られることが明らかとなった。これは、施策に限らず、担当者の意識面においてもみられるものと推測されることから、最終年度の調査・研究は、実施段階に入った「介護保険事業」を対象とし、「事業」のありようと担当者の意識の関係を析出することを主な狙いとした。この手法により、コミュニティー・ケアの理念がどのような形で具体化するのかについての一定の「解」が得られると考えた。調査・研究対象を、「広域連合的実施」と「単独実施」の混在している「福岡県」と「佐賀県」としたことは正しい選択であったといえる。調査・研究はアンケートとヒアリングという形態を基本とした。担当者の意識を析出するねらいから、アンケートは、自由記述を多く含んだものを使用した。配布は、福岡県、佐賀県を中心としていたが、最終年度のみは、福岡県内の97市町村と広域連合(本部と支部)とした。最終年に限れば、37市町村より回答を得たものの、広域連合関係からは、一切の回答を得ていない。解析は定性的なものを中心とした。ヒアリングは、「福岡市」、「北九州市」、「久留米市」、「筑後市」、「中間市」、「大牟田市」、「水巻町」、「芦屋町」、「豊津町」等で、担当者と専門職に対して実施した。コミュニティー・ケアの実施にあたっては、具体的な施策の内容においても、担当者の意識の面においても、「画一性や平等性」を重視するものは「他者に依存する」傾向が強くあらわれており、「多様性や地域特牲」を重視するものは「自己責任」の傾向が強くあらわれるという傾向があることがわかった。
著者
早田 宰 寺尾 仁 久塚 純一 内田 勝一 麦倉 哲 平山 洋介 佐藤 滋 卯月 盛夫
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

2000年代世界で主要な潮流となっている都市再生政策の国際比較をおこなった。調査対象国は、イギリス:ロンドン(早田宰・内田勝一)、フランス:パリ(寺尾仁・久塚純一)、ドイツ:ベルリン・ハンブルク(卯月盛夫・秋山靖浩・平山洋介)、スウェーデン:ストックホルム(麦倉哲)、アメリカ:ニューヨーク他(平山洋介・佐藤滋・内田勝一)を分担した。全体として、(1)縮小都市化・低需要にともなう郊外減退地区問題(特にパリ大都市圏における郊外住宅地等)、(2)都市問題の質的変化、(3)社会、経済、住宅、教育、交通、都市デザイン等の包括化・統合化による地域開発の導入(ロンドン大都市圏、パリ大都市圏、ベルリン、ハンブルク等)、(4)空間戦略の変化と既存政策の文脈との関係(特にロンドンにおけるEUの空間戦略の消化)、(5)補完性原理導入とガバナンスの重層(EU-国-地方-都市-地区)の影響(特にロンドンのGLA等)、(6)とくに行政庁内さらに民間・NPO等の広域的・横断的プロジェクト推進組織の登場(ロンドンのGLA、ハンブルクの庁内改革等)、(7)新しい専門化像(特にハンブルクにおける街区マネージャー等)、(8)ステイクホルダー民主主義と政治力学の影響(特にニューヨークにおけるグラウンド・ゼロ再建等)、(9)次世代型グローバル投資の空間的連携、(10)資源マッチングの戦略化、(11)「新しい貧困」(特にストックホルムにおけるセグリゲーション等)の出現、など11の特徴が世界的傾向となっていること、およびその国ごとのコンテクストが明らかになった。研究成果を雑誌『都市問題』(東京市政調査会)に連続投稿した。
著者
山井 弥生 久塚 純一 岡沢 憲芙
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

研究の背景-ノルウェーと日本比較福祉国家研究では、ノルウェーは北欧福祉国家モデルに分類され、高齢者介護では公的セクターが大きな役割を果たしていることが特徴とされる。日本とノルウェーでは、高齢者介護へのアプローチが異なるものの、類似点も見られる。ノルウェーは北欧諸国の中では、比較的、家族の役割が期待され、またNPOの活動も見られ、日本の高齢者介護との共通点もみられる。その意味で北欧諸国の中でもノルウェーは日本に身近な存在のようにみえる。研究の目的本研究の目的は、ノルウェーと日本の高齢者介護システムについて、特に家族の役割やサービス供給のしくみに重点を置いて、比較検討を行うことにより、それぞれの国の特徴を明らかにすることであった。研究計画と実施方法本研究は3つのパートで構成された。第一にノルウェーと日本の福祉国家比較研究を行った(岡沢、久塚)。第二に、両国の高齢者介護サービスの供給システムについての分析を行った(クリステンセン、エドヴァードセン、斉藤)。第三に、家族、ジェンダーの視点から両国の高齢者介護を比較した(ウエルネス、安倍)。本研究の特徴はノルウェー研究者との共同研究であり、東京、オスロ、ベルゲン、トロンハイムにおいて、現地調査および研究会を共同で実施してきた。研究の成果研究成果は各研究者が論文としてまとめた。本研究では、両国の介護サービス発展の歴史を見ると、伝統的なスタイルから専門化という同じプロセスをたどっていること、グローバル化の中で競争原理が強調され、介護サービス供給スタイルが大きく変わっていることなどが、共通点として明らかとなった。研究成果については、今後、出版を計画している。
著者
久塚 純一 岡澤 憲芙 坪郷 實 畑 惠子 篠田 徹 早田 宰
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

福祉社会・政策デザインにおける次世代人材育成を研究し、その国際比較をおこなった。いずれの国においても移民など国家レベルを超えたグローバルな社会問題を、地域レベル、コミュニティレベルで扱う社会福祉専門職の仕事の重要性が高まり、その養成が急務になっていることが明らかになった。
著者
有地 亨 森下 伸也 三島 とみ子 丸山 茂 南方 暁 久塚 純一 緒方 直人 小野 義美 森田 三郎 二宮 孝富 生野 正剛 畑 穣 江守 五夫 黒木 三郎
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1987

本研究は昭和59〜61年度科研費補助大研究「現代家族の機能障害の実態と紛争処理の総合的研究・・・法・政策のための基礎的調査研究」の続編にあたり, その成果を, 深化, 発展させるものである. 当該研究においてわれわれは, 家族機能を活性化させるためには「家族問題総合センター」の設立が必要であることを提唱した(この件に関しては62年1月に文部省公開シンポジウム「大学と科学」で報告). 本研究はこの構想を具体化するために英・仏での実態を明らかにすることを目的とする.我が国は昭和35年以降急激な家族変動に見舞われたため, このことから生じた家族問題に適切に対処する手段を, これまで持たなかった. 翻って英・仏などの先進欧米諸国では, 家族の変動は比較的穏やかに進行し, その過程で生じてきた家族問題に対しても, 様々の有効な処置が講じられてきたと考えられる. そこでこれら一連のファミリー・エージェンシーのシステムを研究し, さらに現在なお存続する家族問題の実態を調査し, これと比較研究すれば, 我が国での今後の対策の在り方をより具体的に提言できるはずである. 予備調査では, 英国における当該援助機関の概要を専門家の協力を得て把握した. ここで, 諸機関の歴史的発展状況, その構造, 運用の実態, 諸機関相互の関連に関して, 一定の理解が得られた.われわれの今回の英国訪問は, 旅行期間を併せて2週間という非常に限られた日程のものではあったが, SocialーLegalーCenterのメンバーの全面的な協力を得られ, 4に掲載した内容の調査研究を速やかに実施することができた. その詳細は『英国の家族援助機関に関する予備調査報告』にまとめているので, ぜひ御高覧戴きたい(本報告書にその写しを添付している).この海外学術研究は, 過去3年間の日本国内における調査研究の成果から, われわれが提唱した「家族問題総合センター」の具体的なイメージを作り上げるためのものである. そこで予備調査では, まずこれまでのわれわれの家族問題に関する研究の枠組みが彼の国においてそのまま使用できるのかという点と, 具体的にどのような機関を調査対象とするのが有益であるのかという点に, 目標を絞った.前者においては, 英国の家族研究者は一般的に, 現代の家族変動自体は問題を有する事柄であるとは見ておらず, そのことに伴って生じる様々な問題をいかにケアしていくかに, 研究の重点を置いているということが理解できた. しかし彼らのこの態度の背景には, 家族の機能障害に関してはすでに私的な援助機関が広汎に活動をしているので, 公的には問題性が薄れてきているのではないかということも, またある程度推測できた. この意味では, やはり私的な援助機関およびその利用者をわれわれの手で直接に調査し, 家族問題の実態をより詳細に把握する必要を強く感じる.そこで後者ともつながるのであるが, 今後の計画としては, 今回訪問し職員から事情を聴取してきたもののうち, われわれの問題関心に非常に隣接した機関と思われる, マリッジ・ガイダンス・カウンシル, プロベイション・サービス, 高齢者のためのエイジ・コンサーンなどに調査対象を限定し, 問題を抱えている家族の実態調査, 家族援助機関の利用状況などの実態調査を進めていきたいと考えている.
著者
山崎 克明 篠田 徹 村上 芳夫 久塚 純一 斉藤 貞之 藪野 祐三
出版者
北九州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

北九州市のネットワ-クの形成について特筆すべきは伝統の根強い残存である。このことは、ネットワ-クの主体、対象、そのあり方等において極めて特徴的である。近年、新たな試みがなされてはいるが、伝統型の残存から、「ネジレ」を生じていることも指摘しうる。具体的に述べれば(1)「企業間ネットワ-ク」については、中小企業における組織技術の鉄依存とタテのネットワ-クの残存(2)「まちづくりネットワ-ク」についてはKEPCのような新たなネットワ-ク形成がみられるものの、北九州市の不況のありようの把握の不正確さ→活性化策のミスマッチ(3)「市民と行政のネットワ-ク」については、伝統型自治会による新しい動きへの阻害(4)「助けるネットワ-ク」については、年長者いこいの家をめぐって高齢者個人の単発的ネットワ-クは形成されはするが、例えば、他の福祉施設との間の社会的ネットワ-クが形成されていない点(5)「女性のネットワ-ク」については、伝統型グル-プが中心を占めていることから、今日的課題の具体的扱い方も伝統的なものとならざるを得ない点(6)従って「雇用をめぐるネットワ-ク」も、雇用の構造にみられる数値以上の課題をかかえている点、等々となる。他方、新興の地域では、区長の役割の変化やキメ細かい行政も展開されつつあることも指摘できる。構造の変容、都像の変容という一般的課題とその担い手、より正確には、それへの参加を許される担い手の意識の「ネジレ」が問題点をより明確にしており、今後は、大都市を構成するより幅広い要素を社会的に組み込んだネットワ-クが追求されることが北九州市におけるネットワ-クの方向性を定めることになろう。都市のかかえる課題は、その課題の正しい認識と把握が基礎をなすのであり、一般化された解決手法は余り有効であるとは感じられない。