2 0 0 0 OA 土方巽試論

著者
中村 昇
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.297-320, 2019-09-30

1960年代,日本の舞台芸術,そしてアンダーグラウンドの世界を席巻し,後にヨーロッパでも,BUTOH という新たなジャンルを生みだした土方巽の暗黒舞踏について論じる。土方の舞踏とは,どのような芸術であり,どのようなパフォーマンスだったのか。土方の稀代の名著『病める舞姫』を中心にすえ,その内容を分析することによって,土方の世界のとらえ方,存在論,認識論を解明していく。世界を構成するさまざまな要素の融合や多層化によって,世界の見方を根底から覆す土方の方法論の秘密を探っていく。最終的に,土方の舞踏の定義「命がけで突っ立った死体」という概念をあらためて考え再定義する。
著者
相馬 真理子
雑誌
大衆文化 = Popular culture
巻号頁・発行日
vol.12, pp.51-59, 2015-03-25
著者
野尻 洋平 寺島 拓幸 水原 俊博
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.59-77, 2019-07-31

本稿の目的は,アメリカ北西部に位置するオレゴン州ポートランド市における消費文化について,現地での観察調査およびインタビュー調査の知見をふまえつつ,消費社会学的な視点から考察を行なうことである。「全米一住みたい街」と形容されるポートランドは,都市計画・都市政策の成功した街,参加民主主義の成功事例として有名であり,さらには魅力的な消費文化の発信地として世界的に知られている都市である。本稿では,ポートランド消費文化を特徴づける要素として,エコ,ローカル,DIY 志向を取り上げ,それぞれについて考察を行なう。また,既存のポートランド消費文化が影響をこうむる可能性のある,いくつかの社会的な変化についても併せて指摘する。
著者
披田野 清良 大木 哲史 高橋 健太
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.2383-2391, 2013-11-15

ここ10年あまりにわたり,生体情報を秘匿して認証を行うテンプレート保護型生体認証が注目されている.しかしながら,それらの安全性に関する議論では,生体情報間の相関性により,当該情報量が減少し,保護テンプレートが漏洩した際に,生体情報の推定が容易となる可能性については必ずしも十分に言及されていない.そこで,本論文では,テンプレート保護型生体認証の一方式であるFuzzy Commitment Scheme(FCS)を用いたバイオメトリック暗号に着目し,生体情報間の相関性を考慮して保護テンプレートの安全性を評価する.FCSでは,ユーザが提示する生体情報から生成されたビット列と誤り訂正符号の符号語との排他的論理和を計算してコミットメントを作成し,これを保護テンプレートとすることにより安全性を確保している.本論文では,まず,ビット間に相関性の残る可能性が高い指紋情報に着目し,筆者らが提案する2次のRenyiエントロピーを用いた生体情報の情報量評価手法に基づき,実際に指紋ビット列のビット間には何らかの相関性があることを明らかにする.次いで,生体ビット列のビット間の相関性を利用したなりすましに関する新たな脅威としてDecodable Biometric Dictionary Attack(DBDA)を提案し,DBDAに対する安全性を理論的に考察するとともに,シミュレーション結果を交えて定量的に評価する.
著者
中村 浩子
雑誌
国際研究論叢 : 大阪国際大学紀要 = OIU journal of international studies (ISSN:09153586)
巻号頁・発行日
vol.33, no.20, pp.1-17, 2020-01-31

The terror attacks by a gunman at two mosques in Christchurch on March 15, 2019 took the lives of 51 people and left more than 40 injured. The purpose of this paper is to analyse the response both by the government and the citizens of New Zealand after the massacre, given that the responses within the nation after the shootings earned applause world-wide. The paper looks first at the Prime Minister’s leadership and the movements by citizens that followed, then the messages from the leadership of the targeted Muslim communities. It also looks at how the setup and procedure of the Royal Commission of Inquiry is viewed by the public, and the practices of local government agencies. In discussion, it argues that the fact that New Zealand has addressed the issues of exclusionism both at the level of the instrumental violence by the terrorist and that of the expressive violence by white supremacists, could be highlighted as the reason for winning world recognition.
著者
林 恵津子 Etsuko Hayashi
巻号頁・発行日
vol.23, pp.99-109, 2007-01-01

自閉性障害のある子どもは、睡眠の問題を多く示すと指摘されている。本研究では、自閉性障害のある子どもの睡眠の問題を、知的障害のある子どもや典型発達を示す子どもと比較した。その結果、睡眠の時刻やその長さよりも、昼間は覚醒し夜間はまとまった睡眠をとるという生活リズムの形成に問題を持つ児が多いことが明らかになった。さらに、生活リズムの形成に問題を持つ児における行動特徴を調べた結果、対人関係の調整における困難さがうかがわれる行動や、パタン化された行動や発声・発語といった常同行動を示す傾向が示された。
著者
和田 勉
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.233, 2023-04-15

我が国の初等中等情報教育と大学入試はよい方向に進みつつある.本号にもこれに関する記事が2件掲載されている.私が2006年に韓国に半年間滞在し,初等中等情報教育に関する会議を見た際,登壇した同国国会議員も含め情報教育は国の重要だという認識を共有していることが見てとれた.その後訪問したいくつかの外国でも共通して情報教育は重要であるという認識があった.いまの我が国の変化は望ましいことである半面,25年前から我が国の情報教育にたずさわりまた諸外国を見てきた立場からは,これが20年前に実現しているべきだったと思う.今後できることは,情報教育を充実させ情報社会を担う若い世代を育てることである.
著者
蒲 豊彦
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho (ISSN:03869067)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.471-490, 2007-03

The twentieth century saw a turning point in the colonial regime, at which time the administrator of British India changed the government’s policy orientation from orientalism to reformism. In the area of education, the orientalist-anglicist controversy was one of highlights of this transformation. In an attempt to break the deadlock in the controversy, Charles Edward Trevelyan (l807-86), a fervent anglicist, forced the orientalists into an 1834 debate regarding the application of the Roman alphabet to vernacular languages in India. Basing his “for” argument on the necessity of popular education, he cited the universality of the Roman alphabet, several of its merits, and its benevolent effect on popular education. In addition, he related romanization to the formation of a genre of national literature and the cultural unification of the Indian people, saying, “Indian vernaculars and its literature will be enriched by supplies of words and ideas derived from English.”As for the orthography of the Roman letters to be applied, Trevelyan abandoned the system created by John Borthwick Gilchrist, which was close to the standard at that time, in favor of that created by William Jones. Trevelyan said that Jones’ scheme was more systematic and applicable to languages all over the world. Trevelyan’s well-known inclination towards modern rationality and universality is clearly evident on this point.This controversy over English education was basically put to an end the following year by a memorandum written by Thomas Babington Macaulay, making the anglicists the victors. Thereafter, however, the Romanization project did not take off, for two reasons: 1) the controversy over Romanization was only one part of the English education debate, and 2) despite Trevelyan’s plan being based on the promotion of popular education, educational administrators in British India chose not to pursue that direction after 1835.
著者
平川 美夏
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.208-215, 2006-03-15

分子生物学の台頭とともに成長した核酸,タンパク質のデータベースは,ヒトゲノムプロジェクトを背景として量,質ともに急激に増大した.ゲノムプロジェクトは,様々な生物のゲノム塩基配列データを万人が利用できる状況を作り出し,さらに,網羅的にデータを獲得し,系統的に解析するゲノムのアプローチを発展させた「ポストゲノム研究」を生み出している.ここでは,分子生物学の進展とともにデータベースがどう拡大し,変化してきたかに注目してバイオ分野のデータベースのあり方を見直す.データベースを生命科学分野の頭脳として共有するために,専門家による知識編纂の支援や巨大で複雑なデータを統合する方式の新展開が期待されている.
著者
小森田 龍生
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 社会学篇 (ISSN:21863156)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.93-101, 2022-03-23

本稿では、日本における性的少数者(ゲイ・バイセクシュアル男性)のメンタルヘルス悪化のメカニズムを、要因間の関連性と時間の経過に伴う影響力の変化に注目して明らかにすることを目的として実施した調査結果の一部を報告する。昨年度、本誌に掲載された調査報告に続く本稿では、メンタルヘルス問題と深いかかわりがある自殺念慮や自殺未遂経験(歴)、そのほか関連が予想される心理的変数およびカミングアウト経験の有無等を中心に集計結果を提示する。昨年度の調査報告と異なる視点として、本稿では異性愛男性とゲイ・バイセクシュアル男性との比較にくわえ、ゲイ男性とバイセクシュアル男性との比較を行った。その結果、ほとんどの変数に関して異性愛男性とゲイ・バイセクシュアル男性との間では異なる回答傾向が認められたが、ゲイ男性とバイセクシュアル男性との間では共通した回答傾向が確認された。たとえば自殺念慮や自殺未遂経験とも異性愛男性に比べてゲイ・バイセクシュアル男性の該当割合が高く、ゲイ男性とバイセクシュアル男性との間には目立った違いはなかった。ゲイ男性とバイセクシュアル男性との間で比較的に大きな違いがあったのはカミングアウト経験の有無であり、ゲイ男性のカミングアウト経験割合が高かった。カミングアウト経験とメンタルヘルスとの関連を調べたところ、カミングアウト経験がある場合にメンタルヘルスの状態が悪い傾向にあることが確認された。