著者
川島 浩誉 山下 泰弘 川井 千香子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.384-392, 2016-09-01 (Released:2016-09-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

科学技術・学術政策研究所と科学技術振興機構(JST)情報企画部情報分析室は現在,相互協力に関する覚書およびJSTの所有する情報資産の利用に関する覚書に基づく共同研究を実施している。本稿では,その共同研究の一つである,JREC-IN Portal掲載の求人票に基づく大学における研究関連求人の推移の分析プロジェクトに関して紹介する。本分析は2つの目的をもっている。一つはこれまで総体的な分析対象とされてこなかったJREC-IN Portalの統計的性質を明らかにすること,もう一つはJREC-IN Portalの統計により研究関連求人市場の動向を示すことで当該人材の流動性の増進を促した近年の政策の帰結を明らかにすることである。本分析プロジェクトは現在進行中であり,結果の数値は最終的な研究成果公表において変わりうるものではあるが,現段階で得られた近年の研究関連求人の動向の一端を示す集計結果も本稿に示す。
著者
高路 奈保 中野 友佳理 満居 愛実 上利 尚子 有安 絵理名 吉村 耕一
出版者
公益財団法人 パブリックヘルスリサーチセンター
雑誌
ストレス科学研究 (ISSN:13419986)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.138-144, 2015 (Released:2016-01-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

Many people suffer from undue psychological stress in modern society. We here examined whether emotional tears relieve stress and improve mood state. Fourteen healthy students were subjected to a mental arithmetic task, and were subsequently induced to shed tears by viewing emotional movie scenes or cutting onions. A resting state following the task was also used as a control. The mood states were assessed with the Profile of Mood States (POMS). Heart rate variability, especially the ratio between low and high frequency components (LF/HF ratio), was measured to evaluate levels of psychological stress. Fatigue levels of POMS and LF/HF ratio were decreased after shedding tears by viewing emotional movie scenes. In contrast, tears caused by onions, as well as resting state, resulted in little or no reduction in either fatigue levels or LF/HF ratio. These findings demonstrate that emotional tears play an important role in relieving psychological stress and reducing mental fatigue.
著者
内藤 郁夫 長谷川 由美子 芝木 儀夫
出版者
社団法人 日本印刷学会
雑誌
日本印刷学会誌 (ISSN:09143319)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.405-422, 2015 (Released:2015-11-15)
参考文献数
15
被引用文献数
1

Developments in music printing by letterpresses were studied using several historical scores, i.e., score I printed by Gardano in Venice in 1575, score II printed by Gardano in Venice in 1679, score III printed by Ch. Ballard in Paris in 1679, score IV printed by Endter in Nuremberg in 1682, score V printed by F. Heptinstall in London in 1697, and score VI printed by Breitkopf & H ä rtel in Leipzig in 1799. Score I was printed using fonts similar to those invented by Ottaviano dei Petrucci in 1525. About 100 years after score I was printed, there were many differences in the scores in different cities (score II to V). The differences were studied to develop the next font, a mosaic-type font. Finally, the characteristics and typesetting of the mosaic-type font were clarified using score VI.

27 0 0 0 OA 小児がん

著者
石井 栄三郎
出版者
日本小児口腔外科学会
雑誌
小児口腔外科 (ISSN:09175261)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-13, 2009-06-25 (Released:2012-09-20)
参考文献数
17
被引用文献数
2

The prevalence of childhood cancer has been estimated to be 1 to 1.5 per 10,000 persons. Although childhood cancer is less common than adult cancer, about 3000 new patients are registered per year. Childhood cancer is the second leading cause of death in children, after accidents. Owing to progress in diagnostic and therapeutic techniques, more than 70% to 80% of patients are now cured. Because cancer develops in 1 per 500 to 600 children aged 0 to 14 years, it is estimated that about 1 per 300 of the entire population has had childhood cancer. Childhood cancer is characterized by a high prevalence of blastomas and sarcomas, derived from fetal tissue and precursor cells. Tumors can arise in various sites, and tumor type is related to age and sex. Generally, childhood cancers are sensitive to antitumor agents and radiotherapy; however, response rates, remission rates, and long-term survival rates differ depending on tumor type, molecular biologic and cellular genetic characteristics, and tumor extension. Treatment is therefore decided according to expected outcomes, predicted on the basis of risk factors.  The development of childhood cancer is mainly related to genetic predisposition, the fetal environment from conception to birth, and genetic abnormalities occurring during postnatal growth and development. Unlike adult cancer, the effects of lifestyle and environmental factors are minimal. Studies of genetic diseases associated with high risks of cancers such as retinoblastoma and chromosomal and genetic analyses of cancer cells in diseases such as neuroblastoma and leukemia have led to the identification of many oncogenes and tumor suppressor genes, contributing to a better understanding of the mechanisms underlying the development and progression of cancer, the identification of risk factors, and the development of molecular targeted therapy.  Progress in epidemiology, molecular biology, and cellular genetics is changing childhood cancer from an incurable to a curable disease. How to improve patients' quality of life after treatment (i.e., a decreased rate of late complications) is becoming an important part of the treatment strategy.
著者
平井 一臣
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.216, pp.11-37, 2019-03

1965年4月に発足したベ平連(ベトナムに平和を!市民連合)は,戦後日本における市民運動としての反戦平和運動の展開のなかで大きな役割を果たした。このベ平連の運動を牽引した知識人が,ベ平連の「代表」となった小田実だった。これまでのベ平連研究のなかでも小田の思想と行動はしばしばとり上げられてきたものの,彼がベ平連に参入した経緯や,難死の思想や加害の論理という小田の思想の形成のプロセスについては,依然として未検討の部分が残されている。本稿では,企画展「『1968年』無数の問いの噴出の時代」に提供された資料のなかのいくつかも利用して,ベ平連に参入するまでの小田の行動の軌跡,ベ平連発足時の小田起用の背景,難死の思想と加害の論理の形成のプロセスや両者の関係といった問題を検討する。このような問題意識の下に,本稿ではまず小田の世代的な特徴(「満州事変の頃」に生まれた世代)に着目したうえで,この世代特有の経験と結びつきながら難死の思想がどのように形成されたのか,その軌跡を明らかにする。次に,ベ平連発足に際しての小田の起用について,小熊英二や竹内洋に代表される従来の説明を検討し,ベ平連の代表として「小田実か石原慎太郎か」という選択肢は存在しなかったこと,60年代前半の小田の言論活動の軌跡は戦闘的リベラルに近づく軌跡であり,ベ平連に結集した知識人のなかでの小田に対する一定の評価が存在していたこと,などを明らかにする。さらに,これまで1966年の日米市民会議と結びつけて説明されてきた小田の加害の論理について検討する。実は,加害の論理はベ平連参加以前の段階で小田の問題意識のなかに存在していたが,むしろ回答困難な課題と小田は捉えていたこと,この問題に小田が積極的に向き合うきっかけとなったのが沖縄訪問での経験であったこと,そして加害の論理は当時の小田特有の考え方というよりも,当時の運動のなかで練り上げられていったものであったこと,などを明らかにする。
著者
雨宮 一彦 中村 由紀 新井 由紀
出版者
国際学院埼玉短期大学
雑誌
国際学院埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:02896850)
巻号頁・発行日
no.29, pp.81-85, 2008

日本人が古くから親しんできた香辛料の中で,寿司や刺身に欠かせない薬味といえばわさびである。わさびの細菌に対する抗菌効果を確かめるため,蒸散暴露(気相法)により大腸菌と黄色ブドウ球菌を用いて実験を行った。暴露する温度条件を4℃,室温(25℃),35℃で抗菌効果を比較すると,チューブ入り加工わさび,生わさびのいずれも暴露温度が35℃時に抗菌効果が高かった。わさびに7日間継続的に暴露し続けた結果,生わさびは途中で菌の発育がみられたが,チューブ入り加工わさびは菌の発育はみられず,細菌に対する増殖抑制と共に殺菌効果があることがわかった。菌数減少の推移を定量的に測定したところ,暴露開始5時間後から徐々に菌数が減少し48時間後には生菌は全く認められなかった。わさびの主な抗菌成分は揮発性のアリルイソチオシアネートといわれる。この実験からも寒天培地に触れさせず蒸気で接触させる方法で抗菌効果が強く認められたと考えられる。
著者
Kazuki TAKAHASHI Yasuyuki KANEKO Akiko SHIBANAI Shushi YAMAMOTO Ayana KATAGIRI Tatsuyuki OSUGA Yoshiyuki INOUE Kohei KURODA Mika TANABE Tamaki OKABAYASHI Kiyokazu NAGANOBU Isao MINOBE Akatsuki SAITO
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.22-0010, (Released:2022-03-24)
被引用文献数
17

The hepatitis B virus (Hepadnaviridae) induces chronic hepatitis and hepatic cancer in humans. A novel domestic cat hepadnavirus (DCH) was recently identified in several countries, however, the DCH infection status of cats in Japan is unknown. Therefore, we investigated the DCH infection rate of 139 cat samples collected in Japan. We identified one positive blood sample (0.78%) from a 17-year-old female cat with chronically elevated alanine aminotransferase. Phylogenetic analysis demonstrated that the DCH strain identified in this study is genetically different from strains in other countries. Further investigations are required to elucidate the evolution of DCH and the impact of DCH infection on hepatic diseases in domestic cats.
著者
友杉 直久
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.12, pp.2450-2457, 2016-12-10 (Released:2017-12-10)
参考文献数
12
被引用文献数
2

ヘプシジンは,鉄代謝制御の中心的役割を担っているペプチドホルモンである.ヘプシジンは,血清鉄量,肝細胞内の鉄量,腸上皮での吸収鉄量などの変動で刺激され,血清鉄濃度の恒常性を保つように,また,体が鉄過剰に陥らないように作用している.腎性貧血では,エリスロポエチン(erythropoietin:EPO)産生能の低下に伴う造血機能の低下が発端となるヘプシジンの上昇や,赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis-stimulating agent:ESA)や鉄製剤による治療時のヘプシジン発現異常は,いずれも血清鉄濃度の恒常性を保つためのフィードバック反応である.ESA投与量に左右されるFas/FasLを介した生存のシグナルや,EPO受容体に対するESAの持続的作用不足が誘因となるネオサイトライシス(赤血球崩壊)の病態は,ヘプシジンの反応で捉えることができる.腸管での鉄吸収量は,ヘプシジン濃度で決定される.このような病態は,血清ヘプシジン-25が測定できるようになり,容易に推測できるようになった.
著者
藤高 和輝
出版者
お茶の水女子大学ジェンダー研究所
雑誌
ジェンダー研究 : お茶の水女子大学ジェンダー研究所年報
巻号頁・発行日
no.24, pp.171-187, 2021-07-31

本論文は、千田有紀の論考「 女の境界線を引きなおす」 を批判的に読み解くことを通して、現代の日本社会におけるトランス排除的言説の構造を明らかにすることを試みるものである。千田の論考は 2020年3月に出版された『現代思想』臨時増刊号「フェミニズムの現在」に掲載されるや否や、トランス当事者を含めた多くの人たちからトランス排除的な論考であると批判され、物議を醸したものである。本稿では、千田の論考を読解することを通して、その背後にあるトランスフォビックな認識論的枠組みを明らかにする。その枠組みとは「ポストフェミニズムとしてのトランス」という図式である。そして、その図式が千田個人だけではなく「トランス排除的ラディカル・フェミニズム」に広く共有されている可能性を提起する。以上を通して、現在のフェミニズムが抱える問題点を浮き彫りにし、インターセクショナルな視点をもったトランス・インクルーシブなフェミニズムの必要性を主張する。
著者
田口 東
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.85-108, 2005-12
参考文献数
9
被引用文献数
8

本論文では, 東京首都圏の電車を利用する通勤通学客を対象として, 利用者均衡に基づいて, 出発駅から到着駅への交通需要をほぼ時刻表の通りに運行される電車に配分するモデルを提案する.乗客は朝の定期券利用者のうち約700万人を対象とし, 電車はJR線私鉄線合計128路線の始発電車から午前10時台に終着駅に到着する通勤電車のほとんど(約7500本)を対象とする.電車のダイヤおよび交通需要が時間依存である場合を扱うために, 電車の時刻表を基に, 各駅における各電車の発着をそれぞれ頂点で表し, 駅間の電車の運行を頂点間の枝で表してネットワークを作成する.これによって, 確定した離散的な時間の経過を頂点間の移動で表すことができるので, 電車ネットワーク上の移動を計算する問題を静的な利用者均衡配分問題として定式化することが可能となる.そして, 2000年に行われた大都市交通センサスデータからOD交通需要を求めて利用者均衡配分を計算し, 同じセンサスに記録された実際の乗客の移動と比較して計算結果の妥当性を確かめる.その上で, 応用問題として時差出勤による混雑緩和の可能性を調べること, 南北線全線開通にともなう乗客数変化の予測を行って実際の利用数と比較することを行う.ここで提案した手法によって, 首都圏のような広い範囲の公共交通機関を利用する移動に対して, 詳細な検討を行うことができるひとつのツールが得られたと考えている.
著者
渡辺 朝一
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.A11-A18, 2012 (Released:2012-03-14)
参考文献数
6
被引用文献数
1

レンコン栽培が盛んな茨城県下のハス田で,レンコン食害を防ぐための防鳥ネットに,コガモ Anas crecca,ヒドリガモ A. Penelope,オオバン Fulica atar など,多くの野鳥が羅網して落鳥する事態が続いている.防鳥ネットが多く敷設されている霞ヶ浦湖岸のハス田で,2010 年から2011 年にかけての冬期に5回の調査を行なった.その結果,羅網鳥は15種が記録され,種の識別ができなかったものも含め,のべ185羽の落鳥が記録された.防鳥ネットの天井面積を1haに換算すると,1日の調査では7.5 ± 1.8 羽が記録された.マガモ属は主に翼を引っかけて羅網し,オオバンは主に足を引っかけて羅網していた.コガモの羅網はレンコン収穫前のハス田でより多く記録されたが,オオバンの羅網はレンコン収穫後のハス田で多かった.種の識別ができたのべ145羽の羅網落鳥個体のうち,98羽は同じネットで連続的に記録されず,確実に 1 か月以内にネットから消失していた.生息している鳥類は25種が記録された.サギ類,シギ・チドリ類は防鳥ネットの敷設されたハス田にはわずかな出現かあるいは全く出現せず,防鳥ネット敷設により生息にマイナスの影響を受けていた.スズメ目のハクセキレイ,セグロセキレイ,タヒバリ,ツグミは防鳥ネットの有無に関わりなく記録され,防鳥ネットは生息の障害となっていないと考えられた.