著者
関 英治 小塚 美由記 米田(和田) 実央 村尾 咲音 山根 拓也 荒川 義人 大久保 岩男 藤原 佳史
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.21-28, 2018-03-31 (Released:2018-04-18)
参考文献数
19

鰹節の熱水抽出液(鰹だし)は,ジペプチジルペプチダーゼ IV(DPP IV)阻害活性(IC50 値; 3049 µg/ ml)を有することから,ヒトにおける鰹だしの血糖上昇抑制効果の有無について,ヒト試験を用いた糖負荷試験を実施した.鰹荒節500 gに10倍量の水を加え煮出して150 mlを供した.糖尿病やその他の重大な疾患がなく,かつBMIが30未満の健常人(男性14名)を対象とし,鰹だし摂取30分後に糖を負荷し,0 分~150分まで血糖値を測定した.鰹だし摂取時は,米飯摂取 75 分および90分後の血糖値 ± 標準誤差は,鰹だし摂取時110.0 ± 5.9 mg/ dl対白湯摂取時134.9 ± 6.9 mg/ dl値;p < 0.01( p = 0.006)および鰹だし摂取時110.3 ± 6.8 mg/ dl対白湯摂取時129.3 ± 6.6 mg/ dl値;p < 0.05( p = 0.036)が得られ,有意に血糖値の上昇抑制作用が認められた.鰹だしと白湯摂取後の血糖下曲線面積を比較すると 鰹だし摂取時の面積は4753.1 ± 439.7 mg/ dl × min,白湯摂取時の面積は6879.4 ± 728.1 mg/ dl × minであり,血糖降下作用が認められた( p < 0.01, p = 0.005 ).空腹時血糖に対して鰹だし摂取前と鰹だし摂取後30分後の血糖値には有意差が認められなかった.鰹だし摂取糖負荷150分後には,血糖値が空腹時血糖まで復帰した.本ヒト試験において鰹だしに糖負荷血糖上昇抑制作用が認められた.鰹だしにはα-グルコシダーゼ阻害活性が認められなかった.試験中に副作用と考えられる自・他覚症状は認められなかった.
著者
向山 陽子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.164, pp.94-109, 2016 (Released:2018-08-26)
参考文献数
13

本研究はビジネス日本語教育におけるタスク中心の指導の効果を検証することを目的とする。大学院ビジネス日本語コース在籍の2年生20名を実験群とし,ビジネス場面のストーリーを設定することで真正性を高めたタスク教材を用い,ビジネスメール・ビジネス文書作成の授業を15回行った。1回目,8回目,15回目に行ったタスクのパフォーマンス,および異なる指導を受けた対照群20名の15回目のタスクのパフォーマンスを比較した結果,実験群のビジネスメール作成能力(全体的評価,形式の適切さ,社会言語的適切さ,語用論的正確さ)に有意な伸び,および対照群との差が示され,ビジネス日本語教育において真正性を高めたタスク教材を用いた指導に効果があることが明らかになった。しかし,文法の正確さには有意な伸びが見られなったことから,文法能力向上のためには,言語形式により多くの注意を向けさせる指導を組み込む必要があることが示唆された。
著者
坂井田 瑠衣 諏訪 正樹
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.110-125, 2015-03-01 (Released:2015-09-15)
参考文献数
26
被引用文献数
1

We interact with others even without utterances, because observation of others’bod-ily motions often enables guessing their intentions. Others’bodily motions serve as amajor resource for mutual action and collaboration. In this article, we have analyzed,qualitatively with multimodal and fine-grained transcripts, “implicit collaborations”that are constituted by not only utterances but also bodily motions, and have revealedthe way people organize those. The example domain we have selected is a table cookingof “monja-yaki”, because implicit collaboration occurs frequently during cooking. Ourfindings are the following: (1) reading appropriate timing based on observations of eachother’s bodily motions made smooth transitions of cooking phases successful, and (2)even when the current speaker, addressing a certain hearer, asked a question and the hearer did not make an oral reply, the lack of reply did not cause any problem in theircommunication if the hearer intended to reply by his or her bodily motions, and thespeaker properly attended to those. This way, communication and/or collaborationhold even without oral turn-taking.
著者
松木 武彦 藤澤 敦 渡部 森哉 比嘉 夏子 橋本 達也 佐々木 憲一 寺前 直人 市川 彰
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2019-06-28

2020~2021年度は、集成したデータ群を配列し、事象の出現の順番と因果関係を見据えつつ戦争の出現・発展・低減・消滅のプロセスを地域ごとに提示し、「戦争プロセスモデル」を作成する。2022年度は、このモデルにモニュメント築造(A01班)や技術革新・芸術表現(A02班)などの事象を織り込み、戦争プロセスの認知的側面を明示する。2022年度後半~2023年度前半には、B03 身体班と協業し戦争プロセスの身体的側面を解明する。2023年度後半は、C01モデル班との共同作業によって、集団の複合化と戦争という事象が、ヒトの認知と身体を媒介として文明創出に寄与するメカニズムを提示する。

3 0 0 0 OA 政戦余業

著者
尾崎行雄 著
出版者
大阪毎日新聞社[ほか]
巻号頁・発行日
vol.第2輯, 1923
著者
石野 亨
出版者
公益社団法人 日本鋳造工学会
雑誌
鋳造工学 (ISSN:13420429)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.197-203, 2000-03-25 (Released:2014-12-18)
参考文献数
20
著者
飯山 陽
出版者
一般社団法人 日本オリエント学会
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.141-160, 2007 (Released:2010-03-12)

It is usually said that maslaha as a legal concept was first defined in a tangible manner by al-Ghazali (d. 1111) and that he made a breakthrough innovation in the evolutional history of maslaha theory. But in my previous article (Oriento 47: 2 [2005]), I analyzed the maslaha theory of his master al-Juwayni (d. 1085) and clearly demonstrated that (al-Juwayni's) theory was innovative by comparison with former theories. The current article investigates three books of legal theory written by al-Ghazali, namely Mankhul, Shifa' and Mustasfa, to reconsider whether his achievement was this accepted notion. The findings show that most of the terms and the logic used in his maslaha theory had been already used by al-Juwayni. However, al-Ghazali arranged his master's maslaha theory in an easily comprehensible and methodical fashion. His master's theory, in contrast, was complicated and used many terms inconsistently, and what is more, he criticized harshly the interpretation and application of maslaha by the Maliki school. This is why later scholars, especially Maliki scholars, quote al-Ghazali's maslaha theory exclusively. Thus, the achievement of al-Ghazali in the history of maslaha theory should be sought in his arrangement of his master's theory, because without that, it is hard to understand how later scholars could have evolved maslaha theory and applied the con-cept in legal practice.
著者
高辻 華子 高橋 功次朗 北川 純一
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.145, no.6, pp.278-282, 2015 (Released:2015-06-10)
参考文献数
18

咽頭・喉頭領域の感覚神経(舌咽神経咽頭枝や上喉頭神経)は,舌領域を支配する味覚神経(鼓索神経や舌咽神経舌枝)と異なる生理学的特徴をもっている.咽頭・喉頭領域の感覚神経は舌領域の味覚神経に比べ,味刺激(4基本味)に対して神経応答性は低いが,水やアルコール刺激に高い興奮性を示す.また,長鎖脂肪酸やうま味も咽頭・喉頭領域の感覚神経を興奮させる.このような舌の味覚神経とは異なる咽頭・喉頭領域の感覚応答特性が,食べ物や飲み物の「おいしさ」に重要な要素である「のどごし」や「こく」の感覚形成に関与している可能性が考えられる.様々な機能を有するtransient receptor potential(TRP)チャネルファミリーに注目すると,カプサイシンによって活性化するTRPV1が属するTRPVファミリーは,機械刺激,熱刺激,pHの変化,浸透圧の変化で活性化する.また,細胞の代謝,分化,増殖などに関係しているTRPMファミリーには,冷刺激やメントール刺激で活性化するチャネルがある.したがって,咽頭・喉頭領域に発現しているTRPチャネルが,飲食物を飲み込むときの味,温度,触,圧などの刺激を受容し,「のどごし」や「こく」の感覚形成に寄与していると考えられる.近年,嚥下中枢において,CB1受容体が興奮性シナプス群より抑制性シナプス群に多数存在することが明らかにされた.これらシナプス前終末のCB1受容体に内因性カンナビノイド(2-AG)が結合すると,神経伝達物質の放出が抑圧される.その結果,興奮性シナプスの作用が優位になり,嚥下誘発が促進する可能性が示唆された.このように咽頭・喉頭領域からの求心性情報は「おいしさ」の感覚に貢献し,さらに,生命活動に重要な摂食機能である嚥下反射の誘発にも深く関与している.
著者
米地 文夫
出版者
THE TOHOKU GEOGRAPHICAL ASSOCIATION
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.133-147, 1989-11-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
35
被引用文献数
1

歴史時代の地形を復元するには, 地形学においては従来地質学的データに比し等閑視されがちであった絵画資料を, より活用すべきである。さきに筆者は磐梯山1888年噴火の多段階崩壊仮説を呈示したが, 本論文では絵画資料を用いてその補訂を行う。新たに得られた噴火実況スケッチは新田図と小林手書き図で, 前者は噴火の模様を描き, 小磐梯の形態と名を記入し, 頂上付近を残したまま噴煙を南東になびかせているなど, 筆者の多段階崩壊説を支持する。後者には5段階の噴火過程が描かれており, 小林印刷図や大伴図との対比により, 噴火の過程がより詳細に解明された。次に磐梯山の三つの山頂を同じ方角から描いた江戸時代後期以降の絵の形態表現の正確さを比較し, 江戸後期の真景図は部分描写に優れていることを知った。噴火で失われた小磐梯の山頂の細部は不明確であったが, 江戸後期の真景図 (遠藤香村「信遊紀行図絵」と白雲「磐城紀行図巻」) および高島北海の絵を用いて地形模型を作成し, 小磐梯山山頂にそれぞれ二つの突出部を持つ二つのピークがあったと推定した。この模型と写真との照合から, 筆者の多段階崩壊仮説, すなわち「1888年磐梯山噴火の第一段階に山腹の現銅沼付近に崩壊が発生した」という推論に, 今回さらに「ほぼ同時に山頂部の北東端のピークないしは突出部が崩壊した」という想定が付加された。
著者
馰谷 剛志
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.215-218, 2016 (Released:2016-03-01)
参考文献数
18

アカデミアの知財戦略では、知財は研究成果ではなくビジネスの武器であるとの認識を以て医薬製品を頑健な特許権で保護するために研究計画やラボノートの整備等出願前の周到な準備が重要である。医薬分野は世界が戦場であり、出口戦略の成功のためには、入口の段階から知財やビジネスの専門家と協力し戦略を練るべきである。また、基礎研究のみならず臨床・トランスレーショナル研究等総合的な知財ポートフォリオの策定も必要である。
著者
佐藤 寛子 羽山 伸一 高橋 公正
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.81-86, 2007 (Released:2018-05-04)
参考文献数
22

ダイオキシン類は,実験動物あるいは野生生物が暴露した場合,甲状腺の機能や形態に影響を及ぼす。今回我々は野生ニホンザル(Macaca fuscata)の甲状腺におけるダイオキシン類の影響について報告する。野生サルはヒトの居住地の周辺で生活しており,生物分類学的にヒトに最も近い動物種である。野生サルの脂肪組織,肝臓,骨格筋からダイオキシン類(PCDDs,PCDFs,Co-PCBs)の残留濃度を分析した。また,甲状腺については病理組織学的に検索し,画像解析を用いて濾胞上皮細胞の肥大を定量的に評価した。PCDDs,PCDFs,Co-PCBsの残留濃度はいずれも0.2〜26pgTEQ/g-fatの範囲だった。病理組織学的検索において,TEQに関連した甲状腺の変化は認められなかった。さらに,濾胞の数や濾胞上皮細胞の大きさにもTEQに関連した変化は認められなかった。このように,野生ニホンザルは自然環境からダイオキシン類に暴露されてはいたが,検出されたレベルでは甲状腺の機能や形態に影響を及ぼさなかったと考えられた。
著者
松下 戦具 三島 爽香
出版者
容装心理学研究編集委員会
雑誌
容装心理学研究 (ISSN:24363367)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.29-38, 2022 (Released:2022-05-02)

イレズミ(tattoo)の人口が増えてきている国々においてさえ,自分や他者のイレズミに対する抵抗感は依然として存在している。人々がイレズミに対してさまざまな否定的意見を持っているという点で,同じことが日本にも当てはまる。しかしながら,どのような意見がイレズミへの抵抗感と結びつく傾向があるのかはよくわかっていない。本研究では,イレズミに関する否定的な意見について因子分析を行い,イレズミの人物への嫌悪,社会的不利益,リスクの3つの因子を得た。次に,3因子で抵抗感の強さを説明する重回帰分析を行った。その結果,回答者本人がイレズミを入れる事を想定した場合には社会的不利益因子が重要で,他人がイレズミを入れることを想定した場合には人物への嫌悪因子が重要であった。これらの知見は、自己と他者のイレズミへの抵抗感につながる因子が明らかに異なるということを示唆している。
著者
静 貴生 樋口 和秀 富永 和作 後藤 昌弘 紀 貴之 山口 敏史 宮本 敬大 島本 福太郎
出版者
大阪医科薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

炎症性サイトカインであるinterleukin-6(IL-6)は、がん細胞の増殖・浸潤・転移に関わり、また抗がん剤による殺細胞効果に対して抵抗性を示すことが知られている。一方で臨床上問題となる悪液質も、がん組織から産生されるIL-6により惹起されることから、腫瘍-宿主の相互作用におけるIL-6が中心的役割をになっていることが理解される。IL-6調整作用を有する漢方薬(補中益気湯)は、病状改善の候補薬として十分に期待される。本研究では、がん患者に対する漢方薬併用と、腫瘍増殖抑制の付加的効果、化学療法継続期間の延長、悪液質の抑制など、治療からQOLの側面に到るまでを、IL-6の血中動態と共に評価し、漢方薬の有効性を解き明かしエビデンスを構築する。膵癌および大腸癌を対象に漢方投与群と非投与群へランダムに分け、使用薬剤:[(補中益気湯7.5g分3+牛車腎気丸7.5g分3)+桂枝茯苓丸7.5g分3]を登録日より上記用法にて一次化学療法終了まで連日投与を行う。治療開始前、治療開始2週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後の合計6回採血を行いIL-6の測定を行う。本年度は研究経過に基づき、対象患者へのリクルートおよびIL-6の採血を行い、SRL社に依頼しIL-6の測定を行った。