著者
加藤 博文
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

研究実績:平成22年度は、日本文化人類学会、アメリカ考古学会において先住民族の文化遺産と知的財産権に関する報告を行う一方、研究アソシエートとして参画するカナダの研究プロジェクト「文化遺産における知的財産権問題(IPinCH)」(研究代表者ジョージ・ニコラス、サイモン・フレーザー大学教授)のワークショップにおいて北海道におけるアイヌ民族の手による文化遺産および景観保全の取り組みについて報告をおこなった。また2011年1月には,北海道阿寒において先住民族の文化遺産と知的財産権をめぐる国際会議をアイヌ・先住民研究センターとIPinCHとの共同で組織し、今日的課題についての協議をおこなった。意義および重要性:研究年度2年目にあたる今年度は、国内学会および国際学会において今日的課題と日本における現状についての報告を行うとともに、海外の研究グループとの将来的な研究ネットワークの構築をおこなった。このような取り組みを通じて加藤は、研究アソシエートとしてIPinCHへの参画が求められ、また世界国際会議(WAC)中間会議(2011年開催)のセッション「先住民族と博物館」の国際委員会メンバーへ招待され、本研究課題を国際的な研究組織の中で議論できる環境が構築できた。先住民族とその文化遺産をとりまく課題は、国際的に注目されており、その解決には国際的な連携が不可欠である。この意味において本研究の実施によって海外の研究組織と恒常的な研究協力体制が構築できたことは、今後の当該課題の解決にむけて大きな成果を挙げたと評価でき、日本における研究展開も国際的な場での議論も可能になると思われる。
著者
山野 茂樹
出版者
日本獣医腎泌尿器学会
雑誌
日本獣医腎泌尿器学会誌 (ISSN:18832652)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.30-35, 2018 (Released:2018-05-11)
参考文献数
14

腎性貧血は慢性腎臓病のネコの30〜65%に認められる。腎性貧血は慢性腎臓病進行の独立した危険因子であり、その治療は慢性腎臓病ネコにおいて重要である。腎性貧血の治療において、赤血球造血刺激因子(Erythropoiesis stimulating agents: ESA)製剤の使用が推奨されている。ESA製剤は慢性腎臓病ネコのQOLと代謝機能を改善する。しかし、ESA製剤の使用は、鉄欠乏、血栓塞栓症、高血圧症、赤芽球癆などの多くの合併症を引き起こす可能性がある。
著者
村田 美穂 岡本 智子
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.752-754, 2013 (Released:2014-03-13)
参考文献数
12

The frequency of depression in patients with Parkinson's disease is approximately 30-40%. Depression has a significantly negative impact on the QOL in Parkinson's disease patients. It leads to the worsening of tremors and frozen gait without disease progression and decreases the patient's motivation to participate in rehabilitation. The distinguishing feature of depression in patients with Parkinson's disease is that guilt, self-blame and suicidal ideation are rarely seen compared to that observed in patients with major depression. Depression can occur in the pre-motor, diagnostic and advanced stages of Parkinson's disease. In particular, patients with wearing-off symptoms are apt to develop anxiety. As for treatment, it is very important to optimize dopamine replacement therapy. Antiparkinsonian drugs may have beneficial effects not only on the motor symptoms of the disease, but also the patient's mood. Cognitive behavioral therapy (CBT) and peer counseling may also be beneficial.

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著者
玉利 真由美
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.158-159, 2015 (Released:2015-09-30)
参考文献数
3
著者
広津 崇亮
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本課題はがんの匂いの検出器として従来の人工機器ではなく、線虫(C. elegans)の嗅覚を活用して線虫が感じるがんの匂いを特定することを目指した。特定を目指すがんの匂い成分は臨床検体中には微量しか含まれていないことが想定される。したがって、分量が限られた臨床検体からがんの匂いを特定可能量まで取得することは非現実的である。そこで、がん患者の尿と同様に線虫が誘引されるがん細胞の培養液に注目した。培養するがん細胞としては、すい臓がん由来株Panc-1を用いた。Panc-1培養液に対し、C. elegans N2株はがん患者の尿と同様に正の走性行動を示す。そこで正の走性行動を指標として分取ガスクロマトグラフィーによる候補成分の絞り込みを行った。各画分を化学走性解析試験に供したところ、複数の画分に対して線虫は正の走性行動を示した。このことから、Panc-1培養液は線虫に正の走性行動を引き起こす誘引物質を複数含有していることが示唆された。次にスケールアップの前検討として10mLスケールでの蒸留による目的物質の捕集および有機溶媒による抽出を試みた。Panc-1培養液の蒸留物および有機溶媒抽出物を適宜希釈した結果、線虫は正の走性行動を示したため、目的とする誘引物質は蒸留および有機溶媒による抽出が可能であった。今後は実際にがん細胞Panc-1で10Lスケールの大量培養を行い、その培養液から目的とする誘引物質=がんの匂いの精製を目指す予定である。
著者
Ken H. Nagai
出版者
The Biophysical Society of Japan
雑誌
Biophysics and Physicobiology (ISSN:21894779)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.51-57, 2018 (Released:2018-02-09)
参考文献数
33
被引用文献数
4 5

Self-propelled rods, which propel by themselves in the direction from the tail to the head and align nematically through collision, have been well-investigated theoretically. Various phenomena including true long-range ordered phase with the Giant number fluctuations, and the collective motion composed of many vorices were predicted using the minimal mathematical models of self-propelled rods. Using filamentous bacteria and running microtubules, we found that the predicted phenomena by the minimal models occur in the real world. This strongly indicates that there exists the unified description of self-propelled rods independent of the details of the systems. The theoretically predicted phenomena and the experimental results concerning the phenomena are reviewed.
著者
安藤 宏 今村 泰弘 増田 裕次 北川 純一
出版者
松本歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

咽頭・喉頭領域の感覚は、迷走神経の分枝の上喉頭神経に受容される。この神経において43℃以上の温度およびカプサイシンに活性化されるTRPV1チャネル、冷刺激やメントールに応答するTRPM8チャネル、冷刺激やマスタードに応答するTRPA1チャネルが発現していることを免疫組織学的方法により明らかにした。さらに、これらのチャネルの活性化物質であるカプサイシン、メントールおよびマスタード成分による咽頭・喉頭領域の刺激は、嚥下回数を顕著に増加させた。これらの結果から、上喉頭神経に発現するTRPV1、TRPM8およびTRPA1を介して、嚥下が誘発されることが示唆される。
著者
新槇 幸彦 多田 塁
出版者
東京薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染を病因とするものが多いと考えられている。そこで当教室の正電荷リポソームを用いた経鼻投与型粘膜ワクチンシステムによるガン治療ワクチンの開発を目指した。その結果、正電荷リポソームと抗原蛋白質の経鼻投与により、抗原特異的血清IgG2cの亢進と免疫マウスリンパ球の抗原特異的IFN-g産生誘導が見られた。これらのことから、正電荷リポソームを用いた経鼻投与型粘膜ワクチンシステムは細胞傷害性T細胞(CTL)活性を誘導可能であることが明らかとなった。
著者
田中 義孝
出版者
日本高圧力学会
雑誌
高圧力の科学と技術 (ISSN:0917639X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.238-244, 2007 (Released:2007-08-30)
被引用文献数
3 3

The quality of cutting of diamond anvils from the stone crystal has a decisive influence on high-pressure generation using a diamond anvil cell (DAC). Recently, we have established a high-precision processing technology for the cutting. The development enabled to design a simple and convenient DAC without any adjustment mechanism to parallelize culet-faces of opposite anvils. The current situation in the manufacturing floor is also reported on.
著者
村井 俊哉 生方 志浦
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3+4, pp.164-170, 2017 (Released:2018-04-12)
参考文献数
11

【要旨】脳損傷後には、依存性、感情コントロール低下、対人技能拙劣、固執性、引きこもりなど、社会的場面における行動に様々な問題が生じてくる。前頭葉は社会的行動と関連する重要な脳領域であるが、その損傷の直接の結果として生じる行動障害は、アパシー、脱抑制、遂行機能障害という3つの症候群として考えることが可能である。アパシーは内側前頭前皮質、脱抑制は眼窩前頭皮質、遂行機能障害は背外側前頭前皮質の損傷とそれぞれ特異的に関連しているとの主張も見られるが、実際には病変と症候の対応関係はそれほど明解ではない。個々の症例における評価と対応においては、実生活の中で問題となる社会的行動障害がどのようなきっかけで生じるかを分析し、必要とされる具体的な能力の獲得を目指すことが必要である。
著者
田端 祥太 新井 崇俊 本間 健太郎 今井 公太郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1562-1569, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
16
被引用文献数
1 2

本研究の目的は,Desire pathの発生モデルを構築し,歩行環境が歩行軌跡に与える影響を解明することである。Desire pathは草地や土の地面において,人が繰り返し歩行することによって発生するが,美観や衛生の観点から,管理運営上Desire pathを発生させない計画が望まれる.そこで本研究は,地面の仕上げに応じた移動抵抗を加味したランダムドロネー網上での最短路上にDesire pathを再現することで,草や土の領域の移動抵抗を推定し,歩行環境が歩行軌跡に与える影響を解明した.分析より,草の移動抵抗はフォーマルな空間やパブリックな空間ほど大きく,インフォーマルな空間やプライベートな空間ほど小さいこと,土の移動抵抗は舗装路の移動抵抗とほぼ同一であることが明らかになった.
著者
清水 伸泰
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.1-8, 2021 (Released:2022-07-26)

ヤスデの防御分泌物は古くから化学生態学の研究対象とされ,化学構造に関するデータは蓄積されている.本稿で はそれら多様な防御分泌物が,分類上の目レベルである程度体系付けられることを述べた.新しい話題として,防御 物質の生合成に関わる酵素に産業上,重要な利用法が見出されたり,捕食者に対する化学防衛の手段と考えられたりしていた防御分泌物が,新たなタイプのアレロケミクスとして作用することなどを解説した.その一方で,天然物化 学としてはアルカロイドを中心に新たな防御物質が一部で発見されているものの,ヤスデ全体から見ると防御分泌物 に関する研究は円熟期を迎えている.今後は防御分泌物を介した生物間相互作用に加えて,これまで未解明である種 内における化学的なコミュニケーションに関する研究が進展することを期待する.
著者
細矢 雄司 篠原 正 押川 渡 元田 慎一
出版者
Japan Society of Corrosion Engineering
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.391-395, 2005-08-15 (Released:2011-12-15)
参考文献数
13
被引用文献数
6 17

炭素鋼の大気腐食における環境の腐食性について, 付着海塩が吸水することによって表面に形成される水膜の厚さの影響を中心に検討した.付着海塩への吸着水量を種々の条件下で実測し, 形成された液膜の濃度を計算値と比較して熱力学計算が実験結果をよく再現する条件を得た. また種々の条件下で炭素鋼の腐食試験を行い, 熱力学計算で導出される水膜の厚さdと腐食速度CRとの関係について調べた. d=50μm近傍においてCRは最大値約0.07mgm-2s-1を取ることを見い出した.