著者
米野 史健
出版者
国土技術政策総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

民間非営利組織(NPO)が一定の公益性を有する住宅の供給事業を立ち上げて継続的に運営するのに必要となる、資金調達とコスト負担の方法及びそれを経済的に支援する仕組みを検討するため、NPOによる住宅の供給・管理事業の実態と、住宅供給・管理事業における資金確保の状況を、事業報告書等の公開資料を基に把握・検討した。その結果、高齢者などの住宅確保要配慮者向けの住宅供給が志向されているが、介護保険等の公的制度に基づくサービスを付加する形でないと経営は成り立ちにくく、整備資金の調達も難しい状況が示された。あわせて、東日本大震災後の住宅供給等の取組についても実態を把握した。
著者
上野 真一
出版者
順天堂大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2020-09-11

パーキンソン病(PD)は構造異常を伴うα-シヌクレイン(AS)が伝播・凝集することで神経細胞変性を惹起することが想定されている。これまでAS凝集体は嗅上皮や腸管から神経回路を介して脳全体へ進展するという2経路が提唱されているが、全ての症例には当てはまらず、非神経系回路を介した伝播経路以外にAS凝集体が循環し全身に広がる可能性を考え、血液中に微量なAS凝集体を検出することに成功した。本研究では、血液からの進展様式および病態への影響を解明することを目的とし、その上で、血中AS凝集体除去による治療の可能性を模索する。
著者
辻野 彰 松本 武浩 前田 隆浩
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

遠隔医療への期待が高まっている昨今、ビデオカンファレンス方式による遠隔診療の診断精度や治療効果(質)に及ぼす影響については十分に検討されていないのが現状である。本研究では、専門医が不在の離島にカメラ付きスマートグラス(MOVERIO Pro:エプソン)を利用したDoctor To Doctor To Patient(D to D to P)のバーチャル専門外来を開設して、その有用性を質に重点を置いて検討するものである。本年度は離島の基幹病院にバーチャル神経専門外来を開設し、慢性神経疾患診療、特にパーキンソン病における治療効果に重点を置いて、D to D to Pの遠隔診療支援の有用性を検討する。専門診療介入前後でパーキンソン病の治療効果や診療満足度が向上するかどうかの評価を開始した。診察プロトコール:1ヶ月に一度の外来受診(年12回)を基本として、同意取得後の6カ月間は通常診療を行う。この期間の診療をコントロール期間として、その後に引き続いてバーチャル神経専門外来を実施する。通常診療時とは別の現地の専属医師が大学の専門医のアドバイスを受けながらパーキンソン病患者を診療して抗パーキンソン病薬の薬物調整を行う。評価項目:PD統一スケール改訂版(MDS-UPDRS)、ウエアリング・オフ現象のオンとオフ状態の時間、ジスキネジアの有無、PD特異的QOL尺度質問票(PDQ-39)、臨床的全般印象度の変化(CGI-C)、認知機能(MoCA)、レボドパ換算総薬物投与量、入院回数、併存合併症(骨折など)、慢性疾患患者ケアシステム評価(PACIC)、アンケート調査を開始前から3カ月ごとに評価する。
著者
田端 和仁
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

バクテリアゲノムの交換を目指し、その方法を開発する研究を行った。ゲノム交換を行うためには、宿主バクテリアのゲノムを取り除く必要がある。制限酵素の発現系を利用してゲノム破壊株の作成に成功した。さらに導入するゲノムも切断から守るため、認識部位のメチル化にも成功した。ゲノム入れ替えを試みたところ、いくつかのコロニーを得ることが出来たが、それらの持つゲノムはキメラ状態になっていることが示唆された。
著者
南郷 晃子(中島晃子)
出版者
神戸大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

本研究は元禄2年刊行の『本朝故事因縁集』の形成過程と、地方写本のその享受を考察するものである。同書所収説話には、特定の地域を舞台とする説話が多く見出せる。さらに共通する地域を舞台とする説話は、時期的、内容的な類似性も指摘できる。例えば出雲国を舞台とする説話には、17世紀前半の武家に関わる話が多い。これらの情報から出雲国、摂津国など説話集形成の拠点を具体的に見いだすことができる。特に出雲国では藩祖松平直政周辺で説話収集があったと考えられる。これらは地域の「由緒」や家の「祖」を記録する写本に引用されていく。自己の来歴の情報源として版本を享受することが『本朝故事因縁集』に関し起こっているのである。
著者
渡辺 佑基
出版者
国立極地研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

マグロ類と一部のサメ(ホホジロザメ等)は、筋肉の収縮によって生じた熱を体内にため込むことにより、体温をまわりの水温よりも高く保つことが知られている。しかし、高い体温を保つことにどのような生態的意義があるのかは、ほとんどわかっていなかった。本研究では、様々な種のサメに記録計を取り付け、自然のままの行動を記録した。体温を高く保つ種は、そうでない種に比べて、遊泳スピードが速く、また一年間の回遊の範囲が広いことが明らかになった。
著者
鶴田 滋
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、民事訴訟において、第三者が、係属中の民事訴訟の当事者の一方にどのような場合に補助参加をすることができるのか(これを補助参加の利益という)についての判断基準を再検討することを目的とする。本研究では、補助参加の利益の判断基準は、参加的効力(これは、第三者が補助参加した訴訟の判決効であり、その訴訟の当事者と補助参加人〔補助参加した第三者〕の間に生じる)と関連があるとの仮説を立て、これを母法ドイツ民事訴訟法における議論を参照しながら論証することを試みる。
著者
磯崎 行雄 澤木 佑介 佐野 有司 高畑 直人 尾上 哲治 石川 晃
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

カンブリア紀以降の古生代で3回の大量絶滅(オルドビス紀末、デボン紀後期、およびペルム紀末)がおきた。どれもグローバル寒冷化期に起きたが、その原因は未特定である。オルドビス紀末には大気CO2分圧が現世の10倍あったにもかかわらず大規模寒冷化がおきた。一方ペルム紀末絶滅時に地球外起源3Heが大量流入したことから、大量の星間塵の集中落下で寒冷化と絶滅がおきた可能性が指摘されている。本計画は、古生代の3回の大量絶滅と寒冷化との因果関係の解明を目的とし、過去の深海堆積物中の絶滅境界層から3He同位体異常などの地球外起源物質流入の定量的検出を試みる。主要絶滅事件に関する新たな統一的説明を目指す。
著者
竹田 正秀
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

今回我々は、細胞膜エストロゲン受容体であるGPR30の喘息病態への関与を検討した。喘息マウスを用いた研究では、GRP30アゴニストであるG-1投与によって、アレルギー性の気道炎症や気道抵抗の抑制が認められた。この現象は、IL-10ノックアウトマウスでみられず、GPR30がIL-10を介して喘息病態に関与することが示唆された。一方でヒト好酸球を用いた研究においては、G-1投与によって、IL-5非存在下では、好酸球の生存延長、IL-5存在下では、生存抑制的に作用した。今後さらなる検討の余地を残してはいるが、GPR30が喘息病態において機能的な役割を果たす可能性が本研究によって示唆された。
著者
小松 真治
出版者
東海大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ヨウシュヤマゴボウ色素を用いた色素増感型太陽電池の作製および評価した。さらに、光励起電子の増産化のために金属微粒子を固定化し、高い光起電力と対光溶解性を合わせ持つZn-Ti複合酸化物を用いた分光増感型太陽電池用負極材料を作製した。また、Au微粒子と天然植物色素を用いた色素増感型太陽電池の構築および最適化を行う一方で、ZnTiO3を使用した色素増感型太陽電池の作製および最適化を行なった。シイタケ抽出液への浸漬から作製した修飾電極における抽出液前処理および電解液pHによる条件検討を行なった。さらに、取り扱うキノコを毒キノコまで拡張し、同様な条件で作製した修飾電極における抽出液の条件検討を行なった。
著者
若松 大祐
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

現代台湾(1945-現在)において、中華救助総会(救総)はとりわけ泰緬地区の同胞を救援するに際し、いかにして「我々」(国民国家的な主体)の歴史を叙述してきたのか。本研究の目的はこの問いを解明し、現代台湾という時空をよりよく理解することに在る。三年目の今年度は、現代台湾史において出現した官製歴史叙述や泰緬孤軍像を背景として踏まえた上で、特に救総が展開する歴史叙述について考察を試み、次の2つの知見を得た。すなわち、第1に、現代台湾において泰緬孤軍というふうに名づけられた泰緬地区在住の人々を、中華民国政府の主導する人権概念に基づき、救助対象とみなしていたこと。第2に、世代交代により、孤軍後商(孤軍の末窩)と呼ばれる人びとが出現し、救総の他にも中華民国と孤軍を架橋する媒体が出現したこと、の2点である。孤軍後裔は、救総とのつながりを相対的に希薄化しつつも、台湾との多様なつながりを持ち、タイや台湾という土地に根付こうとしており、タイにおいては朝野挙げての観光立国化の機運の中で、ゴールデン・トライアングルに関するテーマパークを立ち上げたり、台湾においては朝野挙げての多元化の機運の中で、雲南文化公園を設置している。特に第2点について、更なる考察を踏まえ、投稿を前提にした論文を執筆中である。受入機関の京都大学で東南アジア地域研究に関する研究会や講義へ参加し、またタイへ1回、台湾へ1回短期出張して、今年度の研究を遂行ができた。