著者
市川 守
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.18-44, 1988
被引用文献数
1

<p>本研究は,1980年に全国の少年院を出院した男子3,320人について,出院後2年間の再逮捕状況を調査し,少年の処遇類型別に再犯の有無と11要因(①出院時の年齢,②施設収容歴,③出院時の引受人,④在院日数,⑤在院1月当たりの面会回数,⑥少年院送致決定にある非行の種別,⑦非行時の学職状況,⑧非行時の所在,⑨知能指数,⑩非行時の実父母の有無,⑪非行時の家庭の生活程度)との関係を分析したものである。その結果,全体では施設収容歴の有無が最も再犯の有無と密接な関係にあったが,初等少年院一般短期処遇の出院者では非行時の居住状態が,特別少年院の出院者では在院期間が,それぞれ施設収容歴と同様に再犯の有無と密接な関係にあることがわかった。一方,中等少年院で交通短期処遇の出院者や人格の未熟な処遇類型に分類された少年では,施設収容歴がさほど再犯と密接に結び付いていなかった。比較的非行性の浅い者を処遇する中等少年院交通短期処遇や非行性の進んだ者を処遇する特別少年院では,全体で行なった分析結果よりも処遇類型別に行なった分析結果の方が予測の効率は高まった。今後の研究の課題としては,より優れた再犯原因の理論とそれに裏打ちされた因子の測定,及び最適な確率モデルの作成を行ない,合わせて実務に即した研究を行なっていくことが必要である。一方,再犯により刑務所に収容されていた144人の意識調査によれば,出院後における家庭環境の悪化とともに,離職一家出一暴力団への加入一覚せい剤濫用という,典型的な再犯に至る課程が明らかにされ,出院後の出来事に対する対処の仕方や更生への意欲が再犯に大きな影響力を持ちうることが再確認された。</p>
著者
丸茂 弘幸 青木 太郎 木下 光
出版者
日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊 都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.583-588, 1999-10-15

東京市区改正委員会の甲武鉄道延伸計画審議の議事録から,当時の委員会の景観に対する姿勢を明らかにした。本件は,明治22年委員会に付議されたが,この時は景観には触れることなく決定された。その後,関係筋との協議を経て明治25年再度付議された。今度は,鉄道予定地の外濠の樹木保全,四谷・牛込間の眺望の保全等景観に関する議論がなされ条件を付して承認した。着工後も委員会は数次の現場視察を行い粗雑な工事が景観を害していると知事に改善方指示している。さらに明治33年万世橋への延伸の審議の際にも,お茶の水付近の景観保全等の議論がなされた。こうして完成した甲武鉄道の景観は,当時の「風俗画報」にも掲載され,市民からもかなり高く評価されていたといえる。この10年間の委員会の議論の流れの中には景観というものに関する時代の潮流が感じられる。
著者
鹿持, 雅澄
出版者
巻号頁・発行日
vol.[3],
著者
鹿持, 雅澄
出版者
巻号頁・発行日
vol.[1],
著者
長野 留美子 小林 洋子 大杉 豊
出版者
筑波技術大学学術・社会貢献推進委員会
雑誌
筑波技術大学テクノレポート (ISSN:13417142)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.31-35, 2019-03

耳のきこえない女性(以下「ろう女性」とする。)は,「障害者」と「女性」という二重差別の中で言語化の機会も乏しく,1950 年代まで抱える課題が可視化されてこなかった存在である。本報告では,「ろう女性」に焦点をあて,聴覚障害当事者団体の機関紙である日本聴力障害新聞の戦後の創刊当初から2014 年までを対象に「ろう女性」に関する記事を抽出し,データベースを作成した経緯について述べる。
著者
守田 庸一 Yoichi MORITA
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.149-157, 2013-03-31

高等学校国語教科書掲載の評論・論説教材の中には、筆者の印象に基づいて記された批評がある。その一方で、言語学や哲学の知見と関わりながら成立した批評も存在している。このような教材が並存することから、差異あるテクストを一括してとらえるのではなく、また個別のテクストのみを対象にするのでもない、テクストとテクストとの関連性を問題視する教材観が求められる。評論・論説教材を扱う上では、教材間の関連性に着目して、批評としての相違点や共通点に留意しなければならない。
著者
井上 剛志 高木 賢太郎 竹崎 勇輝 石川 昌義
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集C編 (ISSN:18848354)
巻号頁・発行日
vol.78, no.789, pp.1680-1690, 2012 (Released:2012-05-25)
参考文献数
7

The gyroscopic exercise tool which utilizes the gyroscopic effect caused by the whirling motion of the high speed rotating body to train the hand muscle is considered. This tool utilizes the contact phenomenon between the rotor and the case. When the input motion with 3-5 Hz is added to the case, the rotor spins in thousands rpm whirling with the precession motion which is synchronous to the input case motion. Conventional studies on this tool have assumed the continuous rolling motion of the rotor to the case. This paper does not set this assumption, and investigates the dynamical modeling of this tool considering the contact/non-contact conditions and the slip between the rotor and the case. Two kinds of motions are observed in the numerical simulation, one is the uniform precession which was observed in the conventional studies and the other is the periodically reverse precession. These two motions are physically explained, and are also observed in the experiment.
著者
佐々木 長市 江成 敬二郎 小関 恭 伊藤 豊彰 中山 正与
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.200, pp.233-241,a2, 1999-04-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9

農業用水の水質浄化 (特に親水公園に使用を想定) に, 産業廃棄物としてその処理対策に苦慮しているカキ殻を用い試験をした。実験は水質の悪化している農業用水を循環させ水質の経日変化を調査した。その結果, 以下のような知見が得られた。1) pHの値は全観測期間8前後, 同じく溶存酸素濃度は5mg/L以上となった。浮遊物質濃度は数日で20mg/Lから2mg/Lへと低下した。生物化学的酸素要求量の値も8mg/Lから1週間ほどで4mg/L前後まで低下し, 30日で1mg/Lまで低下した。電気伝導度の改善効果は認められなかった。2) 大腸菌群数は, 5,000MPN/100mLの値が実験開始後数日で1,000MPN/100mLまで低下し, その後もさらに低下する傾向を示した。3) 全窒素濃度は, 1.4mg/Lの値から10日ほどで半分以下の濃度の0.6mg/Lとなり, その後も減少していく傾向となった。特に, NH4-Nの減少が大きかった。全リン濃度は, 初期にカキ殻からの溶出がみられ濃度が上昇し, 10日程で0.20mg/Lになったが, その後は低下し20日目で0.1mg/L, 30日目では0.05mg/L前後まで低下した。4) 大腸菌の減少傾向がみられ衛生面からの浄化が期待される。なお, 事例調査により, カキ殻の溶出による体積減少は, 年5%程度で機能維持のためには7年ほどで新しいカキ殻の補充が必要と判断された。以上の結果より, カキ殻は農業用水の浄化に有用であると判断された。
著者
坂田 由紀子
出版者
京都女子大学食物学会
雑誌
京都女子大学食物学会誌 (ISSN:02893827)
巻号頁・発行日
no.49, pp.p53-64, 1994-12
被引用文献数
2
著者
本堂 毅 鈴木 哲 村瀬 雅俊 北條 祥子 石堂 正美
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究課題提案型)
巻号頁・発行日
2009

日常環境レベルでの電磁場が生物及び人体に対して与える影響について,細胞及び人体レベルでの研究を行い,低周波磁場の細胞への影響を,コメットアッセイ解析等の定量評価から明らかにした.疫学研究では調査に用いる問診票を確立した。また,身体レベルでの愁訴を研究に活かすために,科学的不確実性(不定性)を伴う知見の専門家・非専門家間でのコミュニケーションが成立するための基礎的条件を明らかにした.
著者
鈴木 俊明 鬼形 周恵子 谷 万喜子 米田 浩久 高崎 恭輔 谷埜 予士次 塩見 紀子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.A1506, 2008

【目的】第9回アジア理学療法学会にて鍼灸医学の循経取穴理論を理学療法に応用し開発した経穴刺激理学療法を紹介した。循経取穴は、症状のある部位・罹患筋上を走行する経絡を同定して、その経絡上に存在する経穴を鍼治療部位とする理論である。経穴刺激理学療法は、動作分析から筋緊張異常が問題であると判断した場合に用いる。筋緊張抑制には垂直方向、筋緊張促通には斜方向から治療者の指で経穴を圧迫する。本研究では、胸鎖乳突筋に対応する経穴のひとつである左合谷穴への経穴刺激理学療法により右頸部回旋動作の主動作筋である左胸鎖乳突筋と右板状筋の運動前反応時間を検討し、右合谷への経穴刺激理学療法によるPMTの変化が胸鎖乳突筋に特有な変化であるか否かを検討した。<BR>【方法】本研究に同意を得た健常者9名(男性7名、女性2名、平均年齢33.2±7.7歳)を対象とした。座位で、経穴刺激理学療法(Acupoint Stimulation Physical Therapy:ASPT)前後に音刺激を合図に頸部右回旋を連続10回実施した際の左胸鎖乳突筋、右板状筋の音刺激より筋電図出現までの時間である運動前反応時間(pre motor time:PMT)を測定した。ASPTは、検者の指で痛みを伴わず耐えられる最大の強度で、筋緊張促通目的で用いる斜方向に左合谷を5分間圧迫した。ASPT群の左胸鎖乳突筋、右板状筋のPMTは、安静時、刺激終了直後、10分後、20分後、30分後に記録し、安静のPMTを1とした時の相対値(PMT相対値)で比較した。コントロール群としてASPTを行わずに同様の検査を実施した。<BR>【結果】ASPT群の左胸鎖乳突筋のPMT相対値は刺激直後0.98、10分後0.96、20分後0.95、30分後0.93であり、刺激直後より刺激30分後まで短縮する傾向であった。ASPT群の右板状筋のPMT相対値は刺激前後で変化を認めなかった。また、コントロール群でも時間経過によるPMTの変化は認めなかった。<BR>【考察】ASPTは循経取穴という経絡・経穴を用いた治療理論を理学療法に応用した方法である。今回用いた合谷は胸鎖乳突筋上を通過する手陽明大腸経に所属する経穴である。PMTは中枢神経機能を示す一つの指標である。左合谷への5分間のASPTにより左胸鎖乳突筋のPMTが短縮したことから、合谷への圧刺激は胸鎖乳突筋に対応した中枢神経機能の促通に関与したと考えられた。しかし、手陽明大腸経とは関連しないが右頸部回旋動作の主動作筋である右板状筋のPMTは合谷刺激で変化なかったことから、経穴刺激理学療法における効果は循経取穴に関連した経絡・経穴の影響が関連していると考えられた。<BR>【まとめ】左合谷への5分間の経穴刺激理学療法は、循経取穴に関連した左胸鎖乳突筋に対応する中枢神経機能の促通に関与すると考えられた。
著者
クロス ロバート
出版者
同志社大学
雑誌
言語文化 (ISSN:13441418)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.89-115, 2010-12

シャーム・ベネガル監督のデビュー作品である『Ankur/(邦題)芽生え(1973年)』は、インドの芸術映画の功績である。この物語は、インド初代首相であるジャワハルラール・ネルーのリベラルな人道主義的イデオロギーを、ベネガルが終生信奉していることを明らかにしている。非宗教的で、平等かつ近代的な、新しい独立国家インドを創出するという、ネルーの壮大なプロジェクトは、不可触民や女性の権利を保護することを目的にした社会改革や、近代的なインフラを整備するための技術的な戦略、若い世代をはぐくむ教育的で文化的な活力を含んでいた。しかしながら、ネルー時代(1947年〜64年)の業績は一様でなく、ネルー自身の残したものについては論争がある。『芽ばえ』のイデオロギー的背景にあるのが、後に失敗に終わる「ネルー主義のプロジェクト」のこの初期の期待である。ベネガルは、インドの社会を変える最大の希望は、女性の手の中にあるとするネルーの基本的な信念に共感している。そのため、『芽ばえ』の主人公は、非抑圧的階級である不可触民であるラクシュミであり、物語は、封建的で家父長的な抑圧にもかかわらず、彼女が自分の能力を高めていくというドラマになっている。本稿は、『芽ばえ』が、ベネガルがネルー時代の失敗を認めると同時に、インド社会の再生のためには、それでもなおネルー主義のイデオロギーが最善の方法である(少なくとも映画が公開された1973年時点では)と信じていることを表現していると主張する。したがって、本稿で呼ぶ「ネルー主義の女性」である、ラクシュミが象徴する人物は、ネルーが1947年に構想した、非宗教的でより公正で進歩的なインドのための、ベネガルが抱く指導者像である。
著者
秋山 守文 三神 俊彦 松村 将之 鶴間 哲弘
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.2721-2724, 2008 (Released:2009-04-07)
参考文献数
11

北海道ではマムシ咬傷の報告例はほとんどない.われわれは腎不全,DICを併発したマムシ咬傷の1例を経験した.症例は65歳,男性.既往に冠動脈バイパス手術歴があり,アスピリンを服用していた.早朝マムシを捕え,マムシ酒を作る過程で誤って右拇指を咬まれた.咬傷後10時間してから初診,それ故右上腕に至るまで腫脹していた.翌日には腫脹は肩甲帯を越え,エコー検査では手背部に液体貯溜をみたため切開を加えた.切開創は抗血小板剤の影響もあり止血されず再縫合を余儀なくされた.乏尿,DIC症候も出現し,抗ショック治療を行い,臓器症状は比較的早期に改善したが腕の腫脹の消退には4週間を要した.北海道ではマムシ咬傷は臨床上あまり問題になることは少ないが本症例の如く重症例も起りうることを啓蒙すべく報告する.
著者
草桶 秀夫
出版者
福井工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日本の代表的なホタルであるゲンジボタルおよびヘイケボタルは、ND5遺伝子の塩基配列に基づく種内変異と分子系統解析によって、遺伝的変異が大きく、高い遺伝的生物多様性をもつことを明らかにした。特に、ゲンジボタルでは、ハプロタイプ間の分子系統関係からハプロタイプの生息地を推定する手法を確立した。この手法は、人為的に移植されたゲンジボタルの場合、どこから移植されたかを推定するのに有用である。
著者
井上 遠 松本 麻依 吉田 丈人 鷲谷 いづみ
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.19-28, 2019-04-23 (Released:2019-05-14)
参考文献数
35
被引用文献数
2

本研究では,二次林を含めた森林面積が島の約80%を占める奄美大島において,準絶滅危惧種に指定されているリュウキュウコノハズクの巣立ちビナのルートセンサスを,繁殖期(2017年6月27日–7月25日)に行なった.奄美大島のほぼ全域の合計58地点において98羽の巣立ちビナが確認され,うち13地点では複数回巣立ちビナが確認された.巣立ちビナ確認地点(53地点)と,確認地点と同頻度になるように各センサスルート上に無作為に設定した未確認地点(54地点)について,森林植生タイプ別の面積(常緑広葉樹林,常緑広葉樹二次林,常緑針葉樹林,落葉広葉樹二次林),開放地面積,林縁長,市街地までの距離,標高を説明変数として,一般化線形混合モデルを作成した.その結果,巣立ちビナの確認/未確認に対して常緑広葉樹林面積が正の効果を及ぼしていることが示された.今では限られた面積でしか存在しない成熟した亜熱帯常緑広葉樹林は,樹洞を有する大径木が多く存在し,本種の重要な営巣場所や繁殖場所となっている可能性が示唆された.