著者
谷口 圭祐 望月 吉勝
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.689-696, 2019-10-31 (Released:2019-10-31)
参考文献数
20

目的:救急現場活動において救急隊員が受ける急性ストレスとその作用を修飾すると思われる因子について推論する。方法:北海道内の消防本部に勤務する救急隊員を対象として,否定的な評価の知覚,自己効力感,救急現場活動中の情動的反応,救急現場活動での失敗経験について調査した。結果:「救急現場活動中の情動的反応」を目的変数とした重回帰分析では,ストレス負荷が高い救急現場の場合に自己効力感,現場や訓練の経験,経験年数が有意な負の標準偏回帰係数を示した。結論:自己効力感の高い救急隊員は,ストレス負荷が高い救急現場において,急性ストレスによる影響を受けにくいことが示唆された。職場において職員相互に肯定的な関係を構築し,自己効力感を高めるような教育体制を確立することが,急性ストレス下における救急現場活動を改善するために重要であると考えられた。
著者
時松 一成
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-6, 2020-01-25 (Released:2020-07-22)
参考文献数
29
被引用文献数
2 2

カンジダ血症は真菌感染症のなかで最も高い頻度で発生し,死亡率も高く,適正な診断・治療が必要な疾患である.カンジダ症に対するバンドルとして,血液培養2セット採取,疑い例でのβ-D-グルカン測定,24時間以内の中心静脈カテーテル抜去,適切な初期治療の開始,眼病変の有無の確認,症状の改善と血液培養の陰性化を確認した後2週間の抗真菌薬投与,などが提案され,これらを遵守することにより良好な成績が得られた事が報告されている.実践されるべき抗真菌薬適正使用支援プログラムとして,カンジダ血症では少なくとも発症早期と1週間後に眼科で眼病変の有無の診察,無菌検体から酵母様真菌が検出された場合の治療開始,病態が安定した治療が必要な長期例では経口薬へのstep-down治療があげられる.本稿では,カンジダ症のバンドルやガイドラインで述べられている基本的事項の意義と解説,多職種の視点からみたカンジダ血症マネージメントについて述べる.
著者
志水 英明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.957-964, 2022-05-10 (Released:2023-05-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

・血液ガスを測定しなくてもNa―Clで酸塩基平衡異常が推測できる. ・Na―Cl<36 代謝性アシドーシス,Na―Cl>36 代謝性アルカローシスを疑う. ・Na―Cl≒36でも酸塩基平衡異常がある. ・重症疾患(乳酸アシドーシス,ケトアシドーシス,呼吸不全)では血液ガス測定を行う.
著者
原田 諭 須賀 涼太郎 鈴木 健介 北野 信之介 坂田 健吾 藤本 賢司 中澤 真弓 小川 理郎 横田 裕行
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.797-805, 2022-10-31 (Released:2022-10-31)
参考文献数
15

新型コロナウイルス感染症拡大により対面による実習は中止となった。新たな教育手法としてVR動画を活用した遠隔シミュレーション実習を実施した。目的:VR動画を活用した遠隔実習と,従来実施していた実技を伴う対面実習における知識の教育効果を比較検討した。方法:2020年度シミュレーション履修者4年生82名(VRあり)を対象にVRゴーグルを使用して10想定の動画を視聴させ,救急救命士国家試験と同等の筆記試験を実施した。比較対象は,2019年度シミュレーション履修者4年生68名(VRなし)とした。結果:A問題はVRなし群が有意に高かった。D問題はVRあり群が有意に高かった。一般問題はVRなし群が有意に高かったが,状況設定問題はVRあり群が有意に高かった。結論:一般のシミュレーション実習は,A問題でみる一般医学的知識の向上に有用であり,VR動画を活用した実習は,一般のシミュレーション実習より状況設定問題の知識向上に有用であった。
著者
笠岡 俊志 金子 唯 原田 正公 奥本 克己 前原 潤一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.146-150, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
6

救急救命士による低血糖症例へのブドウ糖溶液の投与に関して,熊本県メディカルコントロール協議会では20%ブドウ糖溶液を用いることを決定した。熊本県の全消防本部に依頼して,低血糖のため救急救命士が20%ブドウ糖溶液40mlを投与した症例を対象にして,ブドウ糖溶液投与前後の意識レベル(Japan Coma Scale)と血糖値を調査した。対象症例は30例で,男性18例,年齢は72歳(中央値)。ブドウ糖溶液投与から病院到着までの時間は7.5分(中央値)。血糖値(中央値)はブドウ糖溶液投与前の38mg/dLから病院到着時には88mg/dL まで有意に上昇した。病院到着時の意識レベルは30例中24例(80%)で改善を認めた。病院前における低血糖症例に対する20%ブドウ糖溶液の投与は,血糖上昇および意識レベル改善に一定の効果が期待でき,高張な50%ブドウ糖溶液投与のリスクを考慮すると病院前において有用かもしれない。
著者
白鳥 孝幸 村井 源
雑誌
じんもんこん2021論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.38-43, 2021-12-04

恋愛物語は非常に人気の高い物語ジャンルであるが,物語論的な特徴を定量的に分析する試みはあまりなされていない.本研究では,現代日本恋愛小説における特徴を明らかにすべく,社会的に評価の高い恋愛小説117 作品を収集した.そして,エンディングに着目した恋愛小説の類型化を行い,年代ごとで各類型の割合がどのように変化しているのかを調べた.また,シーンの分割と物語機能を付与したデータを用いてn-gram 分析を行い,各年代ごとに頻出の物語パターンの抽出を行った.
著者
大西 尚樹 安河内 彦輝
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.177-180, 2010 (Released:2011-01-26)
参考文献数
8
被引用文献数
4

九州ではツキノワグマ(Ursus thibetanus)は,1987年に大分県で捕獲されたのを最後に捕獲および生息を示す確実な根拠はなく,現在では絶滅したと考えられている.1987年に捕獲された個体については,野生個体であるとされているが,他地域から移入された個体の可能性も指摘されている.今回,この個体の由来を明らかにすることを目的として,ミトコンドリアDNA解析を行った.調節領域704塩基の配列を決定し,すでに発表されている系統地理学的研究の結果と比較したところ,同個体のハプロタイプは福井県嶺北地方から岐阜県西部にかけて分布しているものと同一だった.このことから,同個体は琵琶湖以東から九州へ移入された個体,もしくは移入されたメス個体の子孫であると結論づけられた.
著者
本間 美里 松本 健義
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.457-470, 2014-03-20 (Released:2017-06-12)

本研究において,他者やものを介しながら行われる鑑賞学習の中で起きる対話が,個々人の経験・語り・知覚を相互に触発していく学習活動のプロセスを記述考察し,鑑賞の学習過程における対話的活動での学習者間の相互行為のもつ意味を明らかにした。言語的な対話を主な媒介として行われる一斉型の鑑賞活動とは異なり,4,5人一組で作品への気付きを記入したり,相手を変えたりしながら語る鑑賞の活動過程を,作品を媒介にして行う子どもの発話や行為が相互の経験・語り・知覚を触発する実践的関係に着目し,分析記述した。本実践における学習過程の触発性は,他者と作品を媒介にして個々人が相互に連鎖させる経験・語り・知覚が,自他の境界を超えて作品世界と知覚経験世界の差異を現象させ,活動の広がりと深まりを生成することが明らかとなった。
著者
藤田 直孝 平澤 大 横山 直記 大友 泰裕
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.2283-2289, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
35

人間ドックでのスクリーニングEGDで発見された,無症状の食道アニサキス症の2例を報告する.症例は42歳と55歳の男性で,特に自覚症状なく人間ドックのスクリーニング検査としてEGDを受検した.ともに食道扁平上皮円柱上皮接合部近傍に細長い白色調の虫体が発見され,穿入部は各々Barrett上皮部,扁平上皮部であった.生検鉗子により摘除し,術後特変なく経過した.消化管アニサキス症は大部分が胃にみられ,残りの大半を小腸が占め,大腸,食道は稀である.食道アニサキス症に関する無症状例の報告は文献的にはほとんどないものの,健診の場などでは診断されていることが予想され,虫体摘除のみならず食事・調理指導が対応として重要と考えられる.
著者
佐野 碧 岩佐 一 中山 千尋 森山 信彰 勝山 邦子 安村 誠司
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.380-389, 2020-06-15 (Released:2020-07-02)
参考文献数
30
被引用文献数
3

目的 近年,メディア(インターネット,ゲーム,ソーシャルネットワークサービス等)の長時間利用や利用年齢の若年化が問題視されている。子どものメディアの長時間利用は,身体的・精神的・社会的側面から成長発達に望ましくない影響を与える可能性が指摘されている。とくに,中学生・高校生はこれまで獲得した基本的な生活習慣を自己管理していく重要な時期であり,日常生活で利用するメディアと上手に付き合っていく能力を培う必要がある。そこで,本研究では,中学生・高校生におけるメディア利用時間と生活習慣の関連について検討した。方法 福島市内の全中学校・高校の生徒から1,633人を抽出した。市内の各校学校長に配布を依頼して自記式質問紙調査を実施し,1,589人より回答を得た。性別・学年が未記入だった者30人を分析から除外し1,559人を分析の対象とした。主観的健康感,生活習慣,飲酒・喫煙経験に関する項目を従属変数,メディア利用時間を独立変数とし,性・学年を調整し,二項ロジスティック回帰分析を行った。結果 中学生では,3時間以上のメディア利用は,「朝食欠食」,「運動習慣なし」,「就寝起床時間(不規則)」,「休養不足」,「ストレスあり」と有意な関連を示した。高校生では,3時間以上のメディア利用は,「健康感(不良)」,「3食食事を食べていない」,「朝食欠食」,「食品多様性(低い)」,「肥満」,「運動習慣なし」,「就寝起床時間(不規則)」,「就寝時間遅い」,「起床時間遅い」,「飲酒経験あり」,「喫煙経験あり」と有意な関連を示した。結論 中学生,高校生ともに,3時間以上の長時間のメディア利用は,睡眠,食事,身体活動の生活習慣全般および飲酒,喫煙との関連を認めた。さらに,長時間のメディア利用は,主観的健康感との関連も示された。メディアの過度な利用が生活習慣や心身の健康に関与していることを,中高生自身が理解し適切に利活用できるよう教育体制を構築することが重要である。
著者
塩満 典子
出版者
公益社団法人 日本工学教育協会
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.6_88-6_93, 2023 (Released:2023-11-21)
参考文献数
13

This paper follows the author’ s special lecture, “Efforts to Improve Research Capability at Hiroshima University: From the Perspective of Academic Diversity and Innovation Creation,” at the 71st Annual Conference of the Japan Society for Engineering Education, held on September 6, 2023, at the Higashi Hiroshima Campus of Hiroshima University. It reviews recent efforts by the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT) and the Council for Science, Technology and Innovation (CSTI) of the Cabinet Office to improve research capability and describes its efforts of Hiroshima University. In addition, the status of engineering education in Japan and expectations for gendered innovation are introduced.
著者
並木 淳 山崎 元靖 船曵 知弘 堀 進悟 相川 直樹
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.295-303, 2009-06-15 (Released:2009-09-04)
参考文献数
16

【目的】救急患者の意識レベル評価に際し,わが国で広く用いられているJapan Coma Scale(以下JCS)による誤判定の要因を明らかにする。【方法】当救急部で3年間に取り扱った救急車搬入の患者データベースから,頻度の高い8通りの意識レベルをGlasgow Coma Scaleのeye, verbal, motor(以下EVM)スコアに基づいて選択し,模擬患者が演ずる意識レベルを標準的な手順で診察するシミュレーションビデオを作製した。経験の少ない医療従事者として 1 年目初期臨床研修医94人を対象に,ビデオを用いたJCSによる意識レベルの判定テストを行い,その解答結果を解析した。【結果】JCSの誤判定率は, 8 つの設問の平均で19 ± 15%(平均±標準偏差)。JCS 0, 300の誤判定は稀だったが,JCS 2, 10, 200は20%以上の誤判定率であった。設問のJCSスコアと誤判定されたJCSスコアを対比すると,意識レベルを良い方に誤判定する傾向が示され,とくに軽度~中等度の意識障害でその傾向が強かった。設問でシミュレーションされたEVMスコアと誤判定されたJCSスコアを比較した結果,JCS誤判定の主な要因は次の3点であった。1)最良運動反応の「M4:逃避(正常屈曲)」を 「JCS 100:はらいのけるような動作」とする誤り。2)発語反応の「V4:会話混乱(見当識障害)」を「JCS 0:意識清明」とする誤り。とくに最良運動反応が「M6:命令に従う」の場合に「JCS 0:意識清明」と誤判定される。3)開眼反応における「E3:呼びかけによる」をJCS 1 桁とする誤り。とくに発語反応が「V4, 5:会話可能」な場合にJCS 1 桁と誤判定される。【結論】JCSによる救急患者の意識レベル誤判定の主な要因は,逃避と疼痛部位認識の運動反応の区別,見当識障害と意識清明の区別,呼びかけによる開眼反応の判定である。
著者
深尾 正
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電氣學會雜誌 (ISSN:00202878)
巻号頁・発行日
vol.101, no.10, pp.965-969, 1981-10-20 (Released:2008-04-17)
参考文献数
13
被引用文献数
1