著者
小野 清美 飴野 清 原 量宏 奥田 博之 秋山 正史 柳原 敏広
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

成育医療は妊娠中から出産後まで、母親から胎児、新生児、小児、キャリーオーバー、思春期、成人に至る一連のサイクルに係わる疾患に関する医療であり、これらを一括し連続で診ていく医療である。この成育医療の中では専門家の壁はなく対象者のニーズに応じた医療となってきている。しかし、周産期医療のレベルではわが国でも極めて高くなっているが、母親と子どもをとりまく環境はこの20年の月日の中で、技術の革新、情報化に伴い大きく変わってきた。女性の高学歴化、自立、家事労働の合理化、ライフスタイルの変化、相対的な労働人口の減少などにより、働く女性の増加に伴って、多様性のある女性の健康と人権(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)やりプロダクションサイクルの問題にも対応する必要性が生じ、総合的な施策が言われるようになってきた。こうした成育医療の観点から妊娠と車の問題は、乳幼児の事故防止や救急医療体制などからチャイルドシート(以下CRS : child restraint system)は大きな社会問題となり、ついに2000年(平成12)4月1日から着用の義務化となった。そこで、本研究は法制化の前年の状況・法制化された年・その後の状況(平成11年から13年まで)までのCRSを取り巻く状況を考察し、緊急時および母子保健の視点で"母子保健システムの支援体制"の私案を発表し助産婦の取るべきマネージメントの重要性を導いた。具体的な展開の一例として母親学級にアプローチし、「命」と「心」に向けた模擬授業の実践を本学助産婦コースの学生に実施し、バーチャルリアリティの授業の開発をした。
著者
高橋 晃周
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

研究計画に基づいて以下の野外調査を行い、様々な海洋大型動物の環境利用についてデータを取得した。(1)2004年7月より8月まで、米国アラスカ州プリビロフ諸島セントジョージ島に滞在し、同島に繁殖するハシブトウミガラスの海洋環境利用について調査を行った。ハシブトウミガラスに潜水深度・水温・体軸方向の加速度などのパラメータをファインスケールで測定するデータロガーを装着し、12個体から採餌行動に関する情報を得た。その結果、ハシブトウミガラスが水温躍層深度の異なる複数の水塊を利用し、水温躍層直下へ頻繁に潜水を行っていることなど、ハシブトウミガラスのファインスケールでの海洋環境利用について新しい事実があきらかになった。(2)2004年9月より10月まで、伊豆諸島御蔵島に滞在し、同島に繁殖するオオミズナギドリの環境利用について調査を行った。照度・着水の有無・水温を記録するデータロガーをオオミズナギドリ11個体に装着した。来年度(2005年6-7月)にデータロガーを回収し、海洋環境利用についてのデータを取得する予定である。(3)2004年11月より2005年3月にかけて、英国サウスジョージア諸島バード島にあるBritish Antarctic Survey Bird Island Research Stationに滞在し、同島に繁殖する南極海洋生態系の様々な高次捕食動物の海洋環境利用について調査を行った。潜水深度・遊泳速度・水温・体軸方向の加速度などのパラメータをファインスケールで測定するデータロガーを装着し、マカロニペンギン43個体、ジェンツーペンギン12個体、アオメウ15個体、マユグロアホウドリ5個体、ナンキョクオットセイ10個体から採餌行動に関する情報を得た。繁殖期間の進行に伴う環境利用の変化や海洋環境利用の種間の違いなどについて、現在データ解析を進めている。
著者
SI Si
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

偶然現象の確率論的研究においては、その現象を記述する確率変数のシステムに対して、それと同等な情報を持つ「独立」な確率変数系を構成し、扱う現象をそれら関数として表し、その解析を行って、与えられた偶然現象を解明する。独立確率変数系には時空のパラメータがつくが、その確率分布は、パラメータに関して定常性など好都合な性質を要求すれば、ガウス型とポアソン型の2種類となる。ガウス型の場合はよく知られているが、ポアソン型の場合、とくに空間パラメータのときは、解明すべき事が多い。安定性を持つ場合に、詳しい確率論的性質を調べ、その応用として安定過程の場合の不変性や双対性などについて研究成果を得た。
著者
山内 誠
出版者
仙台高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、平成24年度奨励研究「電気自転車とリヤカーを利用した災害時用支援ミニステーションの構築」(課題番号24918019)で開発した電動補助リヤカーの問題点を改良し、災害時の救援物資運搬や要救助者搬送に有効な改良型アシスト付電動補助リヤカーの再開発を行った。また、避難後の支援装備として人力発電とソーラー発電装置の開発を行い装備品としてシステムへの組み込みを行った。これらをセットとし、電源供給や照明設備等を兼ね揃えた電動補助リヤカーを母体とした、災害時用支援ミニステーションの再構築を実現させるため、以下の研究活動を行った。研究実施計画に沿って報告する。1. 災害時用の電動補助付リヤカーの改良、及び設計・製作駆動システムの検討を行い、マイコンにて駆動2輪の電流によるトルク制御を実現した。リヤカーの車体は、コンセプトを活かしつつ構造を見直し、軽量且つ強度のある構造とした。2. 人力による電気自転車用発電装置とソーラー発電装置の開発とミニステーションヘの組み込み避難後の照明・携帯電話充電等の電源確保は重要であることから、発電装置の開発を行った。電気自転車を利用した人力発電装置とソーラー発電装置の開発を行い、実用性を確認した。3. 発電装置の性能と発電効率の評価人力・ソーラー両発電装置の発電性能を評価し、発電性能と発電効率の改善を試みた。電源は100V, 24V, 12Vを利用でき、複数のUSBコンセントでの使用と、持ち運びも可能なものとした。4. 電動補助付リヤカーを母体とした発電装置を有する災害時のためのミニステーションの再構築電動補助付リヤカーの周辺設備に必要と考えられる電源・USBコンセント、防災用品、照明装置、及び発電装置等の組み込みを行い、災害時のための支援ミニステーションの再構築を行った。5. 実用性の評価と商品化の検討、研究取りまとめ電動補助リヤカーを母体とした災害時支援ミニステーションの完成度を確認。今後も更なる改良を行う。本研究の開発コンセプト・成果を各種研究発表会にて紹介し、防災・減災について啓蒙活動を行いたい。
著者
大塚 茂
出版者
米子工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

携帯情報端末としてモバイル化への対応が望まれるHDD、DVD・BDドライブ用スピンドルモータの軸受に、多孔質焼結含油体を用い、その端面および内周面に気孔調整層と動圧形状を形成した「スラスト・ラジアル複合軸受」を製作した。本軸受試料を使用し、軸起動時といった非定常状態において、要望される高速化・高精度化に適した動圧形状仕様やその組合せの適正化検討を実験的に実施した。結果として、動圧形状はヘリングボーン形状が最も高速化・高精度化に適しており、耐振・耐衝撃性も高く、加振状態においても十分な軸振れ抑制効果を発揮できることが判明した。
著者
田村 秀行 西浦 敬信 木村 朝子 柴田 史久 大島 登志一 柴田 史久
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

視聴覚併用複合現実空間の表現力を向上させる研究開発を推進し,聴覚的には新しい3D音像提示方式の提案・実装を,視覚的には実時間光学的整合技術の体系化を行った.特に「音像プラネタリウム」と名付けた前者は全く独自の新方式であり,当初の計画以上の有望な研究成果を生み出した.このため,本研究を1年短縮して終了し,2012年度から基盤研究(S)としてさらに発展させることになった.
著者
根来 貴成
出版者
金沢美術工芸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

初年度は、病院を利用する方が待ち時間を快適に過ごせるよう、医師や看護師、患者らからのアドバイスをもとに椅子の制作を行った。その成果はイタリアの家具展で紹介され、高い評価を得た。また、2013年~2014年には、病院でのデザインに味わいを持たせるため、癒しと音楽との観点から音楽堂の待合空間のための椅子のデザインを展開した。ケアの機能に音楽性が加わり、癒しともてなしを融合したより魅力的なデザインが生まれた。人気投票の結果、評価の高い椅子は、待ち合い空間のくつろぎや癒しを楽しむ配慮がなされたものであり、機能性だけではなく、形や色、サイズの工夫によって待つ間のストレスや不安を軽減できることがわかった。
著者
松田 政子
出版者
山形大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、幼児が意欲的に取り組み表現する楽しさが味わえるような、造形遊びの教材とその提供方法について実践を通し考えていくことを目的とした。そこで、文献や先行事例、各種研修会による素材とその活用方法についての教材研究を積むと共に、3歳児の保育にこれらを取り入れ、その有効性について検証してきた。その結果、以下の1〜3の成果が得られた。1 粘土は、容易に形を作ることが出来、繰り返し楽しめる魅力的な素材である。また、安全な小麦粉粘土、造形のしやすい油粘土、着色できる紙粘土、ダイナミックに活動できる土粘土など色々な種類がある。手作りで楽しめる新聞紙粘土や、糊粘土、石けん粘土などもある。これらの中から、子ども達の育ちに合わせて粘土を選び準備していくことで、のびのびと活動する姿が見られた。素材の特性をよく知る、そして子ども達への願いに応じた提供をしていくことは、保育者の欠かせない役割であるといえる。2 3歳児は、クレヨンであれば、ぐるぐる点々ジグザグをリズム良く描くことに、絵の具であれば色水作りや塗りたくりに喜んで取り組んでいた。偶然の形や変わっていく形を見立て、お話しする様子も多く見られた。これまでは、自分の顔を描くなど保育者側に出来上がりのイメージがあり、描き方など誘導してしまうことが多かった。だがそれ以上に、子ども達が自由にかかわり、試しながら、素材の面白さを見つけていけるような活動が、幼児の興味を引き出すとわかった。3 市販の画材の他、石や木の枝、草花などの自然物、箱やロール芯などの廃材、ストローや毛糸など身のまわりのもの等、実に様々なものが造形の教材となる。また、紙ひとつの素材をとってみても、描く、切る、貼る、組み合わせる、並べるなど、多様な造形遊びが考えられる。幼児期の造形遊びでは、これらの教材との出会いを作り、子どもと共に「色」と「形」の面白さに心を動かしていく保育者の感性と姿勢が、幼児の興味と意欲を引き出すということが成果として得られた。
著者
郭 昌俊(郭沛俊)
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では繰り返せない一回限りの意思決定問題に対し、ワン・ショット意思決定理論を提案した。期待効用理論など主な意思決定理論は「くじ」を選択する理論に対し、ワン・ショット意思決定理論は「シナリオ」を選ぶ理論であるので、今までにない根本的に新しい理論である。提案した理論を用いて、個人の不動産投資問題、複占市場問題、新聞売り子問題に適用し、分析の結果から、一回限りの意思決定問題に対し、ワン・ショット意思決定理論は有効であることが分かった。ワン・ショット意思決定理論の拡張として、多段階ワン・ショット意思決定理論を提案し、基本的な性質を調べて、最適停止問題および個人の多段階投資・消費問題に適用した。
著者
坪井 陽子
出版者
中央大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.Chandra衛星でM17 HII領域を観測し、886ものYoung Stellar Objectsを検出した(Broos, et. al. 2007 ApJS)。その40%はAvが10等以上の減光を受けた若い天体であり、IRS5/UC1領域、Kleinmann-Wright天体、M17-Northといった有名な星生成領域や、新たに発見した、2pcの長さの孤状領域、0.1pcスケールの領域にある程度が付随していた。残りの減光を受けた天体は、集団で生まれている星よりも多く、分子雲全体に大きく拡散していた。M17には何百かのClass I原始星候補が存在するとされているが、結局そのうち64個からX線が検出された。2.すざく衛星による銀河中心方向のサーベイで、早期A型星から大きなフレアが受かった(Miura, et. al.2008 PASJ)。強い磁場が存在しないとされるA型星から、原始星と共通する大きなフレアが受かったことは驚きに値する。フレアループの磁場の強さは、50gauss、ループの長さは0.05AUと導けた。最も考えられうる放射機構は、そのA型星は他の星と近接連星系をなしており、相互作用を及ぼしあうことによって磁場が増幅されているという説である。3.すざく衛星を用いてM17 HII領域の拡がったX線成分を検出した。高電離状態の元素からの輝線を複数検出し、この拡がったプラズマは、300万度程度の単一温度の太陽コロナモデルでフィッティングできること、水素に対する元素の組成比は太陽組成比の0.1-0.3倍であること、元素同士の組成比はNeを除いて大体太陽組成と同等で、Neのみが太陽組成の2倍あることを明らかにした。これらの結果は我々の観測した5pc程度の拡がりのどこでも同じ結果であった。4.すざく衛星を用いて、超新星残骸の研究(Bamba, et. al.2008 AdSpR、Takahashi, et. al.2008 PASJ)、および超新星残骸の集合体と考えられているNorth Polar Spur (Miller, et. al. 2008 PASJ)の研究を行った。
著者
加藤 博一 片寄 晴弘 真鍋 佳嗣 山口 証 井口 征士
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

1)インタラクティブアート作成支援ツールの整備使用可能なジェスチャ情報が多ければ,それだけ,作品を作っていく際の自由度がますわけであるが,そのハンドリングはア-ティストのみならずシステム制作者にとっても煩雑なものである.シンタクスがあっていたとしても,CPUの能力や通信バスの許容量を考慮したプログラミングを行わないと,思い通りに動かなかったり,時にはシステム全体がクラッシュしてしまうことがある.我々は,各シーンのトランディションが明に記述できるMAX上のフレームワークHIATを作成した.HIATでは,音響エフェクトに関するパッチ,音像移動などディジタルミキサに関するパッチ,その他にパターン認識パッチ,トリガー生成不応期パッチ,映像系制御パッチを利用することが出来る.2)VRシステム使用時の緊張状態の生理指標による計測の検討定量的・客観的に心理状態を得る手段として,生理指標を用いた手法が確立されつつある.特に,皮膚電位活動及び心拍活動といった生理指標を用いることで,緊張状態を定量的に評価できることが知られている.本研究では,これらの生理指標を用いて緊張状態に影響を与える要因と生理指標との関係を用いて解析を行い,その結果に基づいて人間の緊張状態をモデル化するという試みを行ってきた.Virtual Performer演奏時における生理指標の計測を行い,演奏時における緊張状態が計測可能であることを確認するとともに,パフォーマ-と観客の生理指標を同時計測し,緊張状態の関連性についての検討を行った.
著者
松原 小夜子
出版者
椙山女学園大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、住まいの各所を移動して行われる家事作業の特性に着目して、既存住宅と高断熱住宅の比較も念頭におきながら、家事作業時の暑さ感と防暑行為を捉えた。その結果、両住宅区分ともに、「暑さで困っている」との回答は多いが、作業の性質上、冷房利用の効果はあまり期待できないため、既存住宅はもとより高断熱住宅においても、くつろぎ時に比べると冷房利用は少なく、「窓開放」などの様々な防暑行為を行っていることがわかった。家事作業時の暑さ感を緩和するにあたっては、高断熱高気密化や、自然な方法による防暑の工夫などによって、内部空間全体の温度分布が小さくなるような住まいや住まい方が求められることが示唆された。
著者
都築 伸二 山田 芳郎
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

漏電ブレーカの誤動作問題と従来のN-L (コンセントのN (Neutral)とL (Live)端子を用いる) 伝送時の信号減衰問題の両方を回避できる方式として、PE端子(Protective Earth, コンセントの3番目のアース端子)とN端子間に信号を注入するN-PE伝送方式をまず提案した。しかしこのN-PE方式でも、ビルのフロア間通信は困難であった。そこで、フロア間を縦断するケーブル(1線のみでよく、信号の帰路は大地を用いる)をインダクティブカプラでクランプして、PLC信号をシングルエンド型で伝送する一線式PLC伝送方式も開発した。
著者
若林 幹夫 RYCHLOWSKA Irena Weronika RYCHLOWSKA I.W RYCHLOWSKA I.W.
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

本研究は研究分担者がポーランドで着手していた後期資本主義の文化の論理に関する研究の継続として、西欧のポストモダンと日本の伝統思想の類似的な関係と並行現象を対象とするものである。最終年度の研究として、平成18年度にはこれまで継続してきたフィールドワーク、資料収集をさらに進めるとともに、そうした資料の具体的な分析や解釈の作業をおこなった。東京では建物だけでなく、文化的な仕掛けや記号、そして様々な人工物が都市イメージを形作り、さらには主要な建築を支配しており、その結果、都市の中を移動することは場所やランドマークの間を移動するというよりも、様々な経験と視覚の間を移動することになる。したがって得られたデータの分析や解釈も、東京における時間と空間の固有のパターンだけでなく、都市景観から消費財の細部にいたる様々なスケールにわたる事象や経験を対象としておこなわれた。具体的には、東京の現代の都市文化と空間的な秩序について、「かわいい」という擬人化的美学、原宿のコスプレーヤーたちとゴシック・ロリータ文化の広がり、秋葉原の再開発とオタク文化等を、人びとと物、そして空間や場所との相互依存関係という点から分析することを試み、さらに比較社会学的な分析を加えることで、一見すると特殊日本的にも見えるこうした現象が、世界的な規模で広がる後期資本主義的現象とそこでの意識のあり方の一つの現れであるという仮説を得た。東京の都市文化や空間文化のそうした諸側面は、日本の文化、宗教、民間信仰と東京の都市デザインや現代日本の消費財のデザインとの間の一貫性とパラレリズムを示している。それは後期資本主義の文化と、日本の文化、宗教、民間信仰との間に一貫性やパラレリズムが存在するという仮説を示唆するものである。上記の研究成果は研究分担者により1冊の著作としてまとめられ、公表される予定である。
著者
谷口 千絵
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的のひとつは、妊娠期を通じて、対象者自身が生活活動量を測定することによって対象者の妊娠経過および健康に対する認識と行動化へ寄与するか明らかにすることである。子年度は引き続き、生活活動量の測定方法について検討した。1つの方法として、加速度計(ライフコーダEX)を用いた歩数および活動量の実測があり、プレテストを実施した。また、もう一つの方法として、今年度は調査票により生活活動量を測定する方法を検討した。先行研究によると具体的な運動については、自記式でもインタビュー形式でも妥当性にほとんど違いはないことが明らかになっている。しかし、生活活動量については明らかになっていない。第一段階として、日記法を用いて実施したが、どの生活行動を記述するのか明確にならず、対象者によってバラツキがでることが考えられた。第二段階として、主な生活行動を項目として列挙した記録用紙を用いたが、対象者の生活パターンが多様であるため、該当する項目が少なく一定の記録用紙は完成しなかった。主に座位の行動や不活動が生活行動の大半を占める対象を想定しているため、質問紙による測定が困難であった。セルフモニタリングは単独あるいは、別の手法と組み合わせて、個人の行動変容を促す認知行動的介入のひとつの技法である.その有効性は一般成人においては、多く先行研究において確認されている。また、必ずしも目標に設定どおりの行動をとることができずに、やり損なったときめ罪悪感を感じたり、逆戻りの生活行動に戻らないような予防的な措置が必要ともいわれている。妊婦を対象とした場合は、失敗体験として受け止めることや実施しなかったことが児への罪悪感へつがることを防ぐための方策を介入にあたって検討する必要があることが明らかになった。
著者
熊谷 悠香
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

当初の予定ではPI(3,4)P2の動態をマウス乳がんに置いて観察する予定であった。しかし、バイオセンサーの感度不足のためか、生体イメージングで目的分子の動態変化を観察することは難しかった。そこで、細胞増殖に関与する分子であるERKの活性を観察することとした。1. HER2陽性乳がんに置けるERKの活性を二こうしていき顕微鏡を用い生体観察した。その結果、個々のがん細胞に置けるERK活性は不均一であり、長時間にわたって維持されることが明らかとなった。2. MEK阻害剤、EGFR/HER2阻害剤をマウスに静脈注し、がん組織に置けるERK活性の変化を観察した。その結果、ERK活性の高い細胞は低い細胞に比べ活性を顕著に下げること、ERK活性の低い細胞はほとんど阻害剤に反応しないことが明らかになった。1と2の結果から、ERK活性ががん細胞の何らかの特性を反映しているのではないかと考え、実験3を実施した。3. ERK活性に基づき、細胞を分取し、tumorsphere形成能、がん形成能、がん幹細胞マーカーの発現度を検討した。その結果、ERK活性の低い細胞は高い細胞に比べ、tumorsphere形成能、がん形成能、がん幹細胞マーカーの発現レベルが高いことが明らかとなった。これらの結果は、ERK活性の低い細胞群にがん幹細胞が多く含まれることを示す。4. さらにERK活性とがん細胞の幹細胞性を調べるため、正常マウス乳腺細胞株J3B1AにMEK阻害剤を添加し、ERK活性を抑制したさいのがん幹細胞マーカーの発現レベルを検討した。その結果、MEK阻害剤処理群はがん幹細胞マーカー(CD24, CD61)の発現を充進させることが明らかとなった。以上の結果は、ERKの活性ががん細胞の幹細胞性を制御する可能性を示すものであり、MEK阻害剤の投与ががん細胞の幹細胞性を上昇させる可能性を示唆するものである。
著者
日向 一雅 袴田 光康 長瀬 由美
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

源氏物語の研究は大きく本文研究、作品論研究、注釈史・享受史研究に分けられるが、本研究では源氏物語の中世近世の注釈史・享受史における儒教的仏教的言説を対象として、その歴史的背景を明らかにするとともに、それが源氏物語の主題や作品論に深く関わることを明らかにした。
著者
早川 聞多 鈴木 貞美 井上 章一 小松 和彦 鈴木 貞美 早川 聞多
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

日本における生命観についての学際的、総合的研究の一環として、性愛についての学際的・通史的研究を課題として取り組み、関連図書約500点余を購入し、国際日本文化研究センター図書室に入れた。最終年度の研究代表者、早川聞多は、絵画、とりわけ徳川時代の浮世絵春画を対象とし、そこに書かれた言葉と描かれた絵との関連を分析する新たな手法による研究を重ねて、徳川時代の性愛、とりわけ男色などに関する風俗全般の表象の研究を飛躍的に発展させた。前二年度にわたる研究代表者、鈴木貞美は、とくに明治後半期から大正期の生命観と性愛観の変容の過程を、進化論受容や大正生命主義などの思想史、「自然主義」などの文芸思想の展開、および文芸上の性愛の表現を探る論考を重ねた。井上章一は、風俗史の観点から、近・現代において性愛の営まれる場所の諸相の解明を中心に、未開拓の分野に成果をまとめた。小松和彦は、近親相姦の伝承に関して取り組み、その端緒をひらいた。全体としては、性愛学(セクソロジー)の隆盛の中で、手薄であったり、未開拓であったりした領域を開拓したものの、「生命観から見た性愛観」という角度に絞ったまとめがなし切れなかった。「生命観」という研究対象がアモルフなものなので、研究過程にあっては、いたしかたないともいえるが、今後は「生命観」の研究それ自体の確定とアプローチの角度の分節化など、方法の明確化が必要であるとの結論に達した。鈴木貞美がこれを今後の課題として分担することを確認し、終了した。
著者
得 津晶
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

銀行法や独占禁止法上の株式保有制限等の業法規制が、適切な会社経営のインセンティヴのある者(株主)に議決権を認めるという会社法上の考慮を実現する機能を果たすことを導き、従前の私的利益の議論と関係することを導いた。他方、私的利益規制論は会社への出資のうち株式のみに着目したものであるため、一般的・普遍的な議論はできず、広く資金提供者にコミットメントを供給することが重要であるとした。
著者
土佐 朋子
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

23本の『懐風藻』写本についてほぼすべての調査を行い、同時に新たに12本の『懐風藻』写本を紹介した。その結果、これまでの群書類従系統とその他の系統に区分する考え方を改め、群書類従に至るまでの本文系統、すなわち江戸期の書写活動の過程における本文派生状況を明らかにする必要性を指摘した。とくに、江戸初期の林家における書写活動の過程で、複数の本文が生じた可能性を指摘した。また、現存最古の注釈書『懐風藻箋註』を翻刻し、その作者今井舎人が系譜学者鈴木真年であることを確定し、歴史的関心から施される江戸期版本書入と比較して、漢籍に典拠を求める注釈姿勢の異質さを明らかにした。