著者
五十嵐 章 長谷部 太
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

デング出血熱の発病機構に係るウイルス毒力説の直接的証拠を得る目的で、1993年タイ国東北部ナコンパノムにおいて臨床的に重篤度の異なる患者から分離された2型デングウイルス遺伝子の塩基配列と、それから推測されるアミノ酸配列を比較解析した。(1)ウイルス蛋白質のアミノ酸配列から、分離株は3つの亜型に分類され、亜型1は最も重症のDSS患者からの分離株、亜型2はDHF患者分離株2株とDF患者分離株2株、亜型3はDF患者分離株3株であった。(2)3'非コード領域(3'NCR)に推測される2次構造からも分離株は3つの亜型に分類され、亜型1はDSS患者分離株、亜型2はDHF患者分離株2株とDF患者分離株3株、亜型3は2株のDF患者分離株であった。これらの結果から、亜型1のアミノ酸配列と亜型1の3'NCRを有するウイスル株に感染した場合、臨床症状は重篤化する可能性があるのに対して、亜型3のアミノ酸配列と亜型3の3'NCRを有する株の感染は軽症で済む可能性が推測される。LLC-MK2細胞に形成されるプラークサイズは、ウイスル遺伝子の構造よりもむしろ、各株が分離された患者の血清反応と関係している。更に1993年、タイ国バンコックの流行から分離された4株の4型デングウイスル遺伝子を比較解析した。その結果、軽症のDF患者分離株に特異的なアミノ酸置換、及び比較的重症のDHF grade II分離株にそれぞれ特異的なアミノ酸置換が存在した。これらのアミノ酸置換は蛋白質の性状に重大な影響を与えると考えられるので、上記2型デングウイスルの結果と総合してデング出血熱の発病機構にウイスル遺伝子の塩基配列が関与していることを推測させる。これらのアミノ酸置換或いは3'NCR構造を有するウイルス株の生物学的性状の解析と、デング出血熱発病機構との係わりは今後の研究課題である。
著者
松原 幸夫 尾田 雅文 川崎 一正 小浦方 格 平沢 信康
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の目的は、日本の大学教育において未だ十分には達成されていない高度熟練技術分野における人材育成法を活用した教育カリキュラムを開発することにある。本研究は、現在最先端技術分野において、高度な熟練技術を保有し先進的な取り組みをしている企業(以下「先進企業」という)の人材育成法および日本と欧州の伝統的技術伝承法に関するこれまでの研究成果を検証、統合し推進される。
著者
杉浦 香織
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は日本人英語学習者が効果的に語強勢を習得する有効な方法として, 聴覚性プライミング効果の原理を利用した発音学習(音声刺激語の復唱)が可能かどうか,また,その効果に影響する要因を検討した.その結果, ①復唱が5回以上で効果あり,②刺激語の親密度に関係なく効果あり(BNC頻度上位3000語),③音節への注意は効果的,④刺激語を数回復唱した後の文字情報が効果的,⑤復唱のみでは効果は1週間持続しない,ことがわかった.発音向上(音韻表象の変化)に必要な音韻情報への注意,文字情報を得る時期の重要性,更に学習効果を持続させるため,音韻情報の内在化を促進させる手だての必要性が示唆された.
著者
松村 美代 南部 裕之 安藤 彰
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

培養ブタ虹彩上皮細胞に1μMのprostamideとPGF2αを含む緩衝液を還流して連続的に作用させ、蛍光顕微鏡アクアコスモスを用いてカルシウムイメージングを行った。同一視野の中で反応する細胞をカウントして細胞内カルシウムの上昇度を計測したところ、ほとんど全ての細胞で反応が見られなかった。同様に隅角線維柱帯、毛様体の組織培養から得られた隅角線維柱帯細胞、毛様体上皮細胞におけるカルシウムイメージングを行ったが陽性反応は見られなかった。このことから1μMのprostamideとPGF2αではブタ培養虹彩上皮細胞、隅角線維柱帯細胞、毛様体上皮細胞において細胞内情報伝達のトリガーである細胞内カルシウム濃度を上昇させるような生理活性がない可能性が示唆された。同様の実験を当院眼科で緑内障に対する線維柱帯切除術を行う際に同意を得た患者から得られた線維柱帯細胞を用いて行い、ブタとヒトの種差の有無を検討した。結果はブタ線維柱帯細胞と同じく1μMのprostamideとPGF2αを作用させたところほとんど全ての細胞で反応が見られなかった。これらの結果から当該実験系ではブタ線維柱帯細胞とヒト線維柱帯細胞では種による差がないものと考えられた。同様に培養ヒト隅角線維柱帯細胞における各種プロスタグランジン誘導体に対する細胞内カルシウムの上昇は見られず、ブタおよびヒト隅角線維柱帯細胞に対してプロスタグランジンは少なくとも細胞内カルシウム濃度の上昇を引き金とした細胞内シグナル伝達を引き起こさない可能性が示された。今回の実験で用いた培養細胞はブタ、ヒトともに初代培養系であったため継代を重ねると細胞分裂の限界が訪れた。このように老化に陥った線維柱帯細胞について老化のマーカーであるテロメアの短縮とガラクトシダーゼ活性の変化を検討したところ培養線維柱帯細胞も細胞老化の特徴を示し、アクアポリン1などの遺伝子発現も変化することが明らかになった。この線維柱帯細胞の細胞老化の現象についてはBritish Journal of Ophthalmology誌に公表した。
著者
寺原 和孝 横田 恭子 岩渕 龍太郎
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究はHIV-1感染伝播における樹状細胞の役割についてヒト化マウスモデルで明らかにすることを目的とした。ヒト化マウスは樹状細胞等の骨髄系細胞の分化が乏しいため、まず、ヒト由来サイトカインであるGM-CSFおよびFlt3-Lの導入による樹状細胞の分化誘導について検討したところ、骨髄系樹状細胞亜集団であるBDCA-1+ MDC1およびBDCA-3+ MDC2の顕著な分化誘導が可能となった。そして、これらヒト化マウスにHIV-1を感染させた結果、感染前の単球数と感染後1週目の血中ウイルス量が有意に相関した。つまり、HIV-1初期感染において樹状細胞がその伝播効率に関与することが推察された。
著者
伊東 栄典
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

急増する利用者投稿型コンテンツを,視聴者が与えるタグやコメントを用いて検索する手法を研究した。コンテンツのランキング手法では,コメント内の感情語数に基づくものと,お気に入り登録を2部グラフとして捉えてグラフ構造解析により重み付けする手法を提案した。後者の手法は,将来人気になるコンテンツを早く見つけることが出来る手法である。コンテンツの自動カテゴリ分けでは,単語(タグ)をカテゴゴリと捉え,タグ群を出現頻度および共起頻度に基づき意味階層を与える手法を開発した。階層は非循環有向グラフの形で出力される。しかし意味的な階層化は充分とはいえない。今後も詳細な研究を行う必要がある。
著者
ゴルゴル リカルド ミゾグチ (2014) ミゾグチ ゴルゴル リカルド (2013) ゴルゴル リカルドミゾグチ (2012)
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

本年度は,二つの異なるアプローチでフラーレン二重膜ベシクルのようなナノカーボンから形成される階層的複合材料の研究を行いました.①フラーレン二重膜ベシクル上での金ナノ粒子の配列を制御しました.静電相互作用によるベシクルの表面修飾は凝集を起こす原因として広く知られていますが,ここでフラーレンベシクルが水中に形成する界面の自由エネルギーの減少を吸着の駆動力として利用することで,ベシクル上に金ナノ粒子を高密度に集積化させることに成功しました.さらに,ベシクル表面上でナノ粒子をさらに成長させることも可能であり,ナノ粒子同士の表面プラズモン共鳴のカップリングを観測することに成功しています.このハイブリッド構造はフラーレン二重ベシクルを用いた光電変換システムの構築に非常に重要な技術になります.②高分解能電子顕微鏡による単一の有機分子で修飾されたカーボンナノホーンの観察技術を開発しました.有機単分子の電子顕微鏡観察においては測定温度がその立体配座変換の速度に影響を与えないため,電子顕微鏡で有機単分子の動きを観察することが困難であったが,新たな分子デザインと測定条件を用いることで、複雑な有機分子の段階的な立体配座の変化を観察することに成功しました.また,画像解析により分子の動きを定量化する方法を確立し,これを用いて分子動力学の観点から有機単分子の動画を解析することで,観察された分子の動きが高エネルギー配座から低エネルギー配座への変化であることを明らかにしました.このような有機単分子の動的挙動を研究できる実験手法は他に例がなく,有機分子の構造解析と配座変化の研究に大変有用であります.本研究は,交付申請書で提案した研究を大きく超えて,電子顕微鏡を用いた分子運動の観察技術として重要な成果になりました.
著者
高橋 友一
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

避難行動において重要な要素である避難誘導に着目し、身体的な相違の他に、過去の災害時の報告書にある行動に至る個人の状態をモデルで表現し、避難情報の提供方法や個人の心理状態と行動パターンもパラメータとするマルチエージェントベースの避難シミュレーションを構築した。一斉避難放送や警備員から避難誘導、避難誘導情報の適切さ・伝達効率、エージェントの行動パターンなどの条件を変化させたシミュレーション結果を解析し、避難誘導内容・方法により避難行動に変化がある事を示し、それをもとに避難シミュレーションが防災計画の評価に有効な事を示した。
著者
近藤 通朗
出版者
東京電機大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

直観主義的時相論理の決定可能性問題を一般化した形で解決するため,様相部分構造論理を代数的に考察した.部分構造論理の代数的意味論として剰余束を用い,この代数に様相演算子に対応する演算子を追加した代数系の性質を調べた.最初に1つの演算子を持つ体系の性質を調べ,その特徴付け定理を証明した.次に2つの演算子をガロア結合として持つ代数系の性質を調べ,直観主義的様相論理が決定可能であること,直観主義的時相論理が直観主義的様相論理のfusionであることを示した.これらの結果に,既知の結果(決定可能な論理のfusionはまた決定可能)を適用すると,直観主義的時相論理が決定可能であることが証明できた.
著者
南 裕子 神崎 初美 岡本 玲子 大野 かおり 内布 敦子 神原 咲子 片山 貴文 井伊 久美子 新井 香奈子
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

まちの保健室に対する住民のニーズを2つの記述的研究により調査した。ひとつは兵庫県全土で開催されているまちの保健室来訪者を対象としたもので、405人の有効回答者で最も多かった疾患は高血圧(22.8%)、次に糖尿病(9.1%),高脂血症(8.9%),不整脈(1.2%),リウマチ(1.0%)であった。もう一方は地域住民3064人のうち有効回答858人(23.7%)へ認知症に関するまちの保健室のニーズを調査した。認知症の種類や薬物療法について知らないものが、41.2%と57.5%であった。身近に疑いのある人が「いる」は23.6%、認知症について相談してみたいは85.9%であった。また、まちの保健室を新たに立ち上げる準備のため(10項目)、設立のため(10項目)、立ち上げた後の効果的な運営のため(7項目)の立ち上げ運営支援マニュアルを作成した。相談技術を開発するためには、がん専門看護師によるがん患者へのフォーカスグループインタビューを企画し、がん療養相談技術カテゴリーを作成した。また、専門家による口腔ケア支援のモデルを作成した。女性の健康班では、相談機能において後方支援に期待される機能を明らかにするために、ボランティアNsへのインタビューを実施し、結果を基に相談の実態及び困難を支援できるマニュアルを作成した。ボランティア看護師のための教育研修を継続実施している。その効果を測定するため講習会の前後で得点を比較しほぼ全項目で有意に改善していた(p<0.05)。平成18年度129拠点で実施された活動実績報告と教育・研修会班が実施したボランティア看護師へのアンケート・座談会から抽出した質問集に、班で作成した回答を加えWeb上に反映させボNsが簡単に利用できる仕組みとした。看護師がまちの保健室活動を行うにあたっての困難は、「本職が忙しい」「活動に対する上司の理解がない」が主であり、職場での理解が必要であることが分かった。まちの保健室看護師支援を目的とし、Webと携帯サイトにFAQを作成し、記述や閲覧ができるようにした。これは、セミナーグループワークでの発言やWeb上の記述から作成した。
著者
尾谷 昌則
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、近年の日本語における文法変化について類推ネットワークモデルの観点から分析するため、昭和中期から後期にかけて出版された小説(主に文庫本、約700冊)をスキャンし、テキスト化して簡易コーパスを作成した。主に書き言葉であったため、口語の変化を研究するに十分なデータが得られたわけではなかったが、国会会議録検索システムなども併用しながら、接続助詞から接続詞化した「なので」や、「V+ません」から「V+ナイデス」への変化を中心に、様々な事例を研究した。
著者
保田 隆明
出版者
小樽商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

わが国におけるエクイティファイナンスの現状を実正分析を通じて行った。第三者割当増資、公募増資に関してそれぞれ案件の発表時の株式市場の反応を分析し、市場から評価される案件の系類を明らかにした。また、第三者割当増資、公募増資実施後の中長期の収益分析、株価パフォーマンス分析をあわせて実施し、事後的にも評価されるエクイティファイナンスのタイプを明らかにした。分析結果を要約すると、資金使途が借入金の返済ではない案件、特に第三者割当増資の場合は増資の引き受けをする株主と発行体の関係性、シナジーの有無が重要であることが分かった。
著者
園田 茂人
出版者
中央大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

本研究では、研究代表者が以前「在京県人会に見られるネットワークの構造とその機能」(1990年度文部省科学研究費助成金・奨励研究(A))プロジェクトで行った調査の成果を受けて、県人会組織に所属する個人を対象に、その出身背景、東京地域への流入プロセス、就職経路と転職過程、同郷人との交流、現在の出身地との結び付き、同郷意識などの項目に関して質問票調査を行った。具体的な作業としては、まず最初に、1993年の夏に秋田県と鹿児島県からの出郷者を対象に、合計6人、一人3時間程度のヒアリングを行い、これをもとに調査票の質問項目の確認作業を行った。次に、県人会に所属している人たちを結び付ける活動について、具体的に東京新潟県人会の事務局を対象にヒアリングを行い、同時に今回の質問票調査の協力を取り付けた。もともと留置法による調査を考えていたが、調査の効率性と対象者のばらつきを考え、郵送法による調査へと変更した。結局調査の対象者は、東京新潟県人会に属する400人となったが、すでに対象者には質問票を配布してある。本年5月中旬までには質問票の回収作業を終わらせ、このデータをコンピュータに入力した後、7月〜8月くらいには、基礎集計がまとまるものと期待される。この結果は、それ独自に論文としてまとめられると同時に、東京大学の苅谷剛彦助教授のグループと連動し、戦後日本の社会形成に関する大規模プロジェクトへとつなげてゆく計画がある。
著者
中川 一雄
出版者
岐阜大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

メアリ・コリアの文化的想像力と詩的言説は二重の意味で疎外されている。経済的・社会的構造において彼女は、スティーブン・ダックと同様に、下層の労働者階級に属している。彼らは領主層に「服従」し、その命に応じて労働することによって賃金を得、最底辺の貧困生活を送る。もうひとつのレベルでは、女性であることによって男性に抑圧されているのである。この抑圧構造がダックの農婦批判という言説を生んだと言える。この経済と性に関わる二重の疎外性は、当時のジェントリー階級文化のイデオローグの一人であったアレグザンダー・ポウプの詩を二人の詩と対置させ、彼ら3人の詩における水表象の分析によって明らかとなる。
著者
今 淳 澤村 大輔
出版者
青森県立保健大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

心筋の胎仔創傷治癒機構(FWH)が成獣創傷治癒機構(AWH)へ移行する時に,遺伝子がどう変動するか網羅的に解析した。その結果,多数の変動遺伝子を検出し,特に,Has-2,MMP,fibromodulinの抗線維化に関連する遺伝子は抑制し,I型コラーゲン,アクチン,TGF-betaの線維化に関連する遺伝子,toll-like receptor,シクロオキシゲナーゼ等の免疫に関与する遺伝子は上昇した。次に,抑制した遺伝子を心筋壊死組織に導入したところ,軽度に抗線維化を認めたが,何れも完全なFWHは誘導されなかった。従って,各遺伝子はFWHのマスター遺伝子ではなく,更なる遺伝子の関与が考えられた。
著者
千森 幹子 BEER Dame Gillian SCOTT Clive
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、ポストコロニアル的観点から、1860年代から1920年代にいたる英版文学図像におけるオリエント表象を、政治社会文化美術的背景から、西洋と日本(東洋)の交差として、考察する学際研究であり、カルチュラルスタディズである。本研究では、ケーススタディとして取り上げた文学作品図像に見るオリエント表象を、中東・中国・日本イメージの混在・分化・変容の過程から考察し、この時期、英国がなぜオリエントに魅惑され、何を受容表象しようとしたのか、その現実との乖離を、政治(植民地政策等)文化美術社会ジェンダーなど多領域から検証し、西洋的価値体系におけるオリエント表象の位相を解明することを、目的とする。
著者
宮下 和子
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

英語教育とは単なるスキル習得ではなく、ヒューマニティを伴う異文化コミュニケーション教育でもある。歌詞(英語)の和訳(=異文化翻訳)に果たすメロディの役割を自主教材で伝え、ライフ・ワークのスティーブン・フォスターについて、日本ではその「アメリカ性」、米国では「日本性」を伝え、日米交流に寄与できた。2013年12月、米国より2名を招へいし、立命館大学で日本初の「フォスター歌・レクチャーコンサートと国際シンポジウム」を開催できるのは本研究の最大の成果と言え、感謝の念で準備中である。
著者
大石 直樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

加齢性難聴の病態を、有毛細胞が障害される感覚細胞障害型と、らせん神経節細胞死による神経障害型モデルに分け解析した。それぞれのモデル動物に対して、小胞体ストレスをブロックする薬剤TUDCAを長期投与した。その結果、感覚細胞障害型モデルではTUDCAの治療効果は認められなかった。一方、神経障害型モデルでは、TUDCA投与により難聴の進行が統計学的に有意に抑制される傾向を認めた。小胞体ストレスの予防が加齢性難聴の進行を抑制させる可能性について、意義のある結果が得られた。
著者
三輪 哲也
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、海洋における生物サンプリングにおいて、生存捕獲を試み、新しいバイオリソースの提供を行うための、装置開発を実施した。ネットやROVなどの装置で取れる生物は、運動動作の遅い、比較的動かない生物のみが、選択的にとれる事実がある。深海調査においての生物多様性の情報は、調査研究のうち映像から証明されているが、サンプリングできている生物種との格差がみられてきている。それは映像に移った生物が必ずしも採取できている状況に無い。その矛盾を解決する方法として、センシングや視認性の向上を採取装置に付加することが必要と感じた。そこで同軸タイプのカメラシステムで、それぞれ性質の異なるカメラの近紫外領域(可視光範囲)の画像と、近赤外(赤外)画像の差分を取り、認識の難しかった海底生物分布状況把握を的確にし、迅速に生物の位置を把握するシステムを構築することを目的とし、本研究課題によって基礎的検証をおこなった。同軸によるマルチカメラシステムと、イーサーケーブルによる長距離の画像伝搬システムを用い、差分画像を得るための画像処理システムとプログラム制作を実施した。その結果、2つのカメラ映像の差分観察画像を構築することが出来た。次に光源を単波長の異なるLED光源とし、光源を切り替えることで、いくつかの異なる照明による生物画像を入手できた。これらの生物画像から、表面の色素の異なる成分抽出し、同一画像における生物識別が出来るようになった。水中の撮影においては、耐圧ハウジングが必要であり、10mの防水容器の中で、実験水槽中で検討を行った。窓材における制限はあるものの、水中での差分映像も入手できた。今後さらに水中撮影における条件の最適化を実施し、実用に耐えるものに改良を加える予定である。
著者
谷口 義明
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

UltraVISTAプロジェクトはVISTA望遠鏡(VISTA=Visible and Infrared Survey Telescope for Astronomy)はチリ共和国にあるVery Large Telescopeのサイトに設置された口径4mのサーベイ専用の望遠鏡である。我々はハッブル宇宙望遠鏡のトレジャリー・プログラムで観測された宇宙進化サーベイの天域の近赤外線撮像探査を行い、赤方偏移 z=7 の銀河を多数発見した。広視野サーベイのおかげで、従来想定されていなかった明るい光度の銀河が発見され、銀河の初期進化及び宇宙再電離源の研究に大きな貢献をした。