著者
中尾 悠里
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.4H1GS11b03, 2021

<p>機械学習が日常の意思決定を助けるために広く利用されるようになり、情報検索やレコメンデーションなどのAIアプリケーションの結果の影響を受ける人が増えている。一方で、これらのアプリケーションは、フィルターバブルやソーシャルエコーチャンバーと呼ばれる効果を通じて、個人の知覚する世界にバイアスを与えていることが指摘されている。就職先の決定や大学での進路決定など、将来の進路に関わる重要な意思決定において、ユーザーの知覚の偏りは、技術が人の可能性を捻じ曲げてしまう点で倫理的に致命的な問題である。しかし、個人にとって重要な意思決定を的確に支援するための具体的な方法はいまだ提示されていない。本論文では、個人が人生の中で数回しか経験しない、重要な意思決定を支援する技術を開発するために探求する必要がある内容を人の意思決定方策、選択肢のマッピング、批判的なインタラクションの支援の文脈から検討する。そして、ユーザーが自身の人生における選択肢を拡張するためには、システムの決定をユーザーが批判し覆せるシステムが必要であると結論づけ、批判可能なシステムを構築するための研究課題のリストを提案する。</p>
著者
高橋 圭子 東泉 裕子 佐藤 万里 Keiko TAKAHASHI Yuko HIGASHIIZUMI Mari SATO
出版者
国立国語研究所
雑誌
言語資源活用ワークショップ発表論文集 = Proceedings of Language Resources Workshop
巻号頁・発行日
no.3, pp.57-67, 2018

会議名: 言語資源活用ワークショップ2018, 開催地: 国立国語研究所, 会期: 2018年9月4日-5日, 主催: 国立国語研究所 コーパス開発センター近年,ビジネスマナーに関する書籍やウェブ上において,「了解」は上から目線の言葉で失礼なので使わないほうがよい,とする記述が少なからず見られる。本発表では,各種コーパスの用例,辞書やマナー本の記述などを調査し,(1)応答詞としての「了解」とその派生形式,(2)「了解は失礼」説,のそれぞれについて,出現と広がりのさまを探る。
著者
小畑 仁司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1041-1055, 2021-09-10

Point・外傷性頭頚部血管損傷は稀であるが,重篤な症状を呈することが多く,良好な転帰を得るためには迅速な診断・治療が必要である.・スクリーニングにはCTAが有用であるが,脳血管内治療に移行できるDSAが診断のgold standardである.・外傷性頭頚部血管損傷の治療では,基本的な脳血管外科手術と脳血管内治療に習熟し,多様な病変に柔軟に対応する必要がある.
著者
Karlsson Anastasia Mukhanova
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.28-39, 2007-08
被引用文献数
2

モンゴル語のイントネーションについては21世紀に入るまで本格的な研究は行われてこなかった。最新の記述によれば,モンゴル語は語アクセント言語(word-accent language)であり,語中の1音節を顕著にするという語彙強勢(lexical stress)を持つのではなく,すべての語の最初の2モーラに結びつけられる語アクセントを持つ。その語アクセントは音調の上昇(tonal rise)で,(ほとんど)すべての語における上昇音調によってモンゴル語は「うねる波」のような特徴を持って聞こえる。モンゴル語には疑問を表すための特定の音調上の手段はなく,フォーカスは平叙文においても疑問文においても上昇調によって示される。
著者
塩野 和夫 シオノ カズオ SHIONO KAZUO
出版者
西南学院大学学術研究所
雑誌
西南学院大学国際文化論集 (ISSN:09130756)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.15-20, 2016-02

舘野泉は現在「左手のピアニスト」と呼ばれている。脳溢血(脳出血)のため2002(平成14)年に右半身不随となったが,04年には演奏活動を再開する。09年以降は海外各地でも精力的に活動を続けている。舘野泉ファンクラブ九州が主催する「舘野泉氏を囲む親睦会」(2014年9月20日,ホテルオークラ福岡)では,午前11時15分より「《演奏曲目》秘密です」のピアノ演奏を堪能した。会食の後に持たれた懇親会で,各テーブルから舘野泉先生に「フィンランドの空気の色」,「お正月の過ごし方」,「奥様のマリアさんはいつ日本に来られるのか」などと質問が寄せられる。質問内容が多様であっただけに際立ったのは,ほぼ全員が「今日の演奏は素晴らしかった」と異口同音にスピーチを始められたことである。しかも,聞いたばかりの演奏に対する感動を込めて「素晴らしかった」と語るスピーカーの顔は,いずれも紅潮しているように見えた。聴衆の心をとらえてやまなかったピアノ演奏の素晴らしさとは何なのか。いくつかの視点から考えてみたい。
著者
日置 真世
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター = Research and Clinical Center for Child Development, Faculty of Education, Hokkaido University
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
no.4, pp.21-34, 2010

子ども家庭を取り巻く社会問題が深刻化を見せているなか、2008年4月からスクールソーシャルワーカー(以下、SSWとする)が文部科学省のモデル事業として全国で導入された。日本社会において学齢児の子どもたちへ大きな影響力を持つ学校(教育分野)にソーシャルワーク(福祉分野)の専門職が導入されたことで困難な状況に置かれている子どもが支援につながる機会が拡大し、学校が地域の支援機関との連携を強めるなど様々な意味で大きなチャンスといえる。しかし、現実ではそれぞれの現場は直面する事態の対応に追われたり、世間やマスコミから過剰な攻撃や追及の矢面に立たされたりなど安心して本来の力や役割を発揮できない状況もあり、教育と福祉という異分野の連携はSSWが導入されたからといって、簡単に効果が上がるようなものではない。本論文は筆者がSSWの一人として1年半余り札幌市において取り組んできた支援実践を支援を受ける側の立場に立った問題意識に基づき振りかえることで、子どもたちや家庭とそれを取り巻く学校や関係機関の支援の現状をまとめ、これからの子ども家庭支援の在り方について提言を試みるものである。
著者
楠元 正順 吉里 雄伸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1256, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】競技パフォーマンス向上にはスポーツ障害・外傷予防が大きく関与している。そのため,スポーツ障害・外傷に関する調査は多く報告されている。しかし,ウエイトリフティング競技に関する報告はほとんどみられない。そこで,我々は,H26年度よりウエイトリフティング競技者へのアンケート調査を行い,第51回日本理学療法学術大会にて高校生における調査結果を報告した。今回,大学ウエイトリフティング競技者を対象にアンケート調査を行った。本研究の目的は,大学ウエイトリフティング競技者における痛みの現状を明らかにすることである。【方法】男子大学生50名(平均年齢19.88±1.14)のウエイトリフティング競技者を対象とし,痛みについてアンケート調査を実施した。回答方法は,選択回答と自由記載とした。質問内容は,痛みについて,質問1「現在,練習中に痛みがありますか?」,質問2「痛みはウエイトリフティング競技を始める前からありますか?」,質問3「どのように痛くなりましたか?」,質問4「痛いがある部位はどこですか?(複数回答可)」,質問5「どのような動作をしていて痛くなりましたか?(複数回答可)」,5項目について集計を行った。【結果】アンケート回収率は100%であった。競技者は大学1年生17名(34.0%),大学2年生16名(32.0%),大学3年生12名(24.0%),大学4年生5名(1.0%)であった。質問1については,ある35名(70.0%),ない15名(30.0%)であった。質問2については,ある5名(14.3%),ない30名(85.7%)であった。質問3については,徐々に痛くなった23名(65.7%),1回で痛くなった12名(34.3%)であった。質問4については,肩12名(20.7%),肘2名(3.4%),手首8名(13.8%),腰14名(24.1%),膝12名(20.7%)であった。質問5については,スナッチ4名(8.0%),クリーン10名(20.0%),ジャーク9名(18.0%),スクワット15名(30.0%),デッドリフト8名(16.0%),その他2名(4.0%),練習外2名(4.0%)であった。【結論】今回の調査では,痛みを有している競技者は7割であり,多くはウエイトリフティング競技開始後に発生していた。痛みの発生は,1回で痛くなった場合よりも徐々に痛くなった場合が多かった。痛みのある部位は腰,肩と膝,手首,肘の順に認めた。痛みが発生した動作は,スクワット,ジャーク,クリーンなどバーベルを床から持ち上げる,または肩より上方で支える動作であった。今回の結果は,ウエイトリフティング競技における痛みに関して注目すべき動作や痛みの発生部位を示した。痛みの発生要因は,競技者の技術的な差や特異的な競技動作の各局面の特徴が影響していると考えられるため,今後は学年別や競技動作と痛みとの関連を検討していく必要がある。
著者
津上 智実
出版者
神戸女学院大学
雑誌
論集 (ISSN:03891658)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.139-153, 2014-06

讃美歌412番「わがやまとの」は、1947年6月12日、昭和天皇の神戸女学院来院時に生徒たちが自然発生的に唱和したと伝えられるが、現行の讃美歌集に掲載されず、今の教会では歌われない。この歌は一体いつから、いつまで讃美歌集に掲載され、どれほど広く歌われていたのか。讃美歌集の横断調査によって、この疑問に答えるのが本論の目的である。調査の対象は、柳澤健太郎編「国立国会図書館所蔵讃美歌目録(和書編)」『参考書誌研究』第71号(2009年11月)掲載303点の内、1947年以前に出版された106点と、手代木俊一監修『明治期讃美歌・聖歌集成』(大空社、1996~1997)全42巻で、それに神戸女学院大学図書館所蔵分を加えた。調査の結果、これらに収録された「わがやまとの」とその関連讃美歌46点を得て、「(表1)讃美歌『わがやまとの』とその関連讃美歌一覧」として整理した。この讃美歌の原詩は 'Our native Land' (John S. Dwight 1844)、先行の邦訳に永井えいこ訳「ひのもとなる」(1884)がある。松山高吉訳の歌詞「わがやまとの」の初出は『新撰讃美歌』(1888)、ジョージ・オルチン George Allchin 編曲(原曲はG.M.ギャレットと伝えられる)の旋律「Hinomoto」の初出は『新撰讃美歌』譜附改訂版(1890)で、約2年半のずれがあり、当初「わがやまとの」の歌詞は「ひのもとなる」の旋律(America)で歌われていたとの植村正久の証言がある。その後、歌詞「わがやまとの(原)」は1902年に松山自身によって改変されて「わがやまとの(改)」となり、オルチンの旋律と共に1910年以降の讃美歌集で宗派を超えて広く用いられた。この詞と曲は戦後の讃美歌集でも引き継がれ、1997年の『讃美歌21』で収録曲から外された。以上から、讃美歌412番「わがやまとの」の歌詞「わがやまとの(改)」は1902年から用いられ、同じく旋律(Hinomoto)は1890年の初出後、1910年以降は旧旋律(America)に取って代わる形で広く用いられて、キリスト教関係者に定着していたことが明らかになった。This paper aims to trace the history of church hymn no.412 'Waga Yamato no', which was sung by Kobe College students for the Imperial visit to the College on June 12th 1947. For this purpose, a survey of the church hymnals published in Japan from the Meiji Era up to 1947 has been made.I have examined 1) the hundred and six hymnals from this period out of those hymnals listed in YANAGISAWA Kentaro's 'Catalogue of Church Hymnals of the National Diet Library' (2009), 2) forty-two bolumes contained in the Collection of Meiji Era's Church Hymnals edited by TESHIROGI Syunnichi (1996-7), and 3) those in the possession of the Kobe College Library.This has resulted in a table containing forty-six occurences of the church hymn 'Waga Yamato no' and those related to it, accompanied by variants in the text and the music.The standard Japanese text of this hymn, provided by MATSUYAMA Takayoshi (1846-1935) from 'Our native Land' (John S. Dwight, 1844), first appeared in Shinsen Sambika of 1888, while there is an earlier Japanese version by NAGAI Eiko as 'Hinomotonaru' (1884). George Allchin (1851-1935) arranged a tune by G.M.Garret to the text 'Waga Yamato no' with the title 'Hinomoto', and first published it in Shinsen Sambika of 1890. In between the text was sung with the melody of 'Hinomotonaru', i.e. 'America', according to witness UEMURA Masahisa (1858-1925).In 1902, Matsuyama revised the text and this rrevised version was widely used with the melody 'Hinomoto' in church hymnals of diverse denominations and purposes especially after 1910. This hymn was ingerited also after the Second World War but removed in 1997 from Sambika21.Of the church hymn no.412 'Waga Yamato no', it was made clear that the text, that is the revised one, was sung from 1902 and the melody, 'Hinomoto', was first published in 1890 and sung widely after 1910, replacing the previous one, 'America'.
著者
宮野 公樹
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
まてりあ (ISSN:13402625)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.615-619, 2021-10-01 (Released:2021-10-01)
参考文献数
14
著者
稲垣 長典 西尾 正子 服部 マリ子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.282-287, 1965-07-15 (Released:2009-04-21)

(1) 電子レンジによる食品中の微量成分の変化をみるために,まず各種ビタミンの変化と脂肪の酸化状態を調べた。(2) ビタミンAについてはレンジ,オーブン同様でともにAの損失は少ない。B1については濃度1000γ%の場合沸騰に達する時間でレンジにては約5%,オーブンにては約12%の損失があり,レンジのほうが損失は少ない。B2についてはB1ほど損失大でなく,レンジでもオーブンでも大差ない。Cについては高濃度にてはレンジ,オーブンに差はないが低濃度になるに従いレンジのほうが残存率高くなる。すなわち10mg%の液を沸騰させるまでにレンジでは約10%,オーブンでは約30%の損失である。これらの傾向は食品の場合でも同様であった。(3) 脂肪の酸化状態を酸価,過酸化物価,TBA値カルボニル価より検討した結果,加熱により酸化されるがレンジ,オーブンの間には大きな差はなかった。
著者
中村 朋美
出版者
関西大学東西学術研究所
雑誌
関西大学東西学術研究所紀要 = Bulletin of the Institute of Oriental and Occidental Studies, Kansai University (ISSN:02878151)
巻号頁・発行日
no.50, pp.231-244, 2017-04

The purpose of this paper is to consider the trading design of the Russian Empirein the Seas of East Asia in the early 19th century. After the treaty of Kyakhta in1727, the Russian Empire and the Qing Dynasty maintained relations based on trade, and the trade in the only overland border town of Kyakhta increased year by year. At the end of the 18th century, however, Russia attempted to increase itsprofi ts from the trade. This request came to the fore when the Golovkin Embassy was dispatched to the Qing Dynasty by the Russian Empire in 1805‒06. Firstly, this paper illustrates the background to growing interest in Guangzhou trade, and how and why the Russian government dispatched the first Russian to circumnavigate the globe and the Golovkin Embassy at the same time. I then consider issues occurring related to the fur trade in Kyakhta by observation of Yu. A. Golovkin. Finally, it shows that analyzing the instruction given to Golovkin and the documents written by Russian government officials, the Russian government attempted to negotiate with the Qing for the rights to enter the Guangzhou Trade and the Amur River navigation rights, and Russia envisaged the establishment of trading routes that connected the three points, Guangzhou and the Jiangnan district (and Japan), the colonies in Kamchatka and Alaska, and central Siberia in the Seas of East Asia.
著者
Kazunari TAKAYA Masayoshi HAGIWARA Shiro MATOBA Mitutoshi TAKAYA Nobuyuki SHIBATA
出版者
National Institute of Occupational Safety and Health
雑誌
Industrial Health (ISSN:00198366)
巻号頁・発行日
pp.2021-0037, (Released:2021-11-08)
被引用文献数
1

A volatile organic compounds (VOC) gas monitor was developed using an ion mobility spectrometer (IMS). It was designed for real-time monitoring in work environments, where gas chromatography/mass spectrometry (GC/MS) does not perform well. To evaluate the identification capability, response time, and quantitative accuracy of this device, experiments were conducted using methyl ethyl ketone. This is widely used in many factories, and its short-term exposure limit (STEL) has been set by the American Conference of Governmental Industrial Hygienists. Because the ionizable amount of methyl ethyl ketone has already been exceeded in STEL value of 300 ppm which belongs to the measurement range of interest in this study, this study estimated the peak shift amount rather than the peak intensity. Calibration curves with high accuracy were obtained in a range including 300 ppm which is the STEL of methyl ethyl ketone. The results of the experiment suggest that the device can be used for monitoring chemical substances in a work environment.