著者
西村 訓弘
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.2_40-2_46, 2021-06-30 (Released:2021-08-16)
参考文献数
5

Society 5.0 の実現など社会が変化し,新しい時代を迎えるにあたり「創り出す人へと覚醒させる」ための教育が求められている.著者は地域企業の経営者層へのリカレント教育に取り組んでいる.経営者が自身の考えを客観的に捉えることで新事業につながる.また,経営者が互いに切磋琢磨し,地域社会が変化することも期待される.本稿では,地域イノベーションという概念に基づく地域産業界の中核人材に対するリカレント教育を紹介する.また,10年以上行ってきた一連の活動を通して形成した次の中核人材を生み出し続ける地域エコシステムについて説明したい.
著者
一二三 亨 渡邉 善寛 吉岡 早戸 長谷川 栄寿 原口 義座 加藤 宏 小井土 雄一 本間 正人
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.321-325, 2010-07-01 (Released:2011-01-25)
参考文献数
13

症例は39歳の男性。塗装作業中にタイル洗浄用クリーナー(フッ化水素酸1.3%,フッ化アンモニウム10%を含有)を誤飲し,当院へ救急搬送された。胃管より牛乳を投与した後,ICUに入室した。フッ化水素中毒による低Ca血症に対しては,グルコン酸カルシウムを静脈投与した。また来院4時間後頃より血清K濃度が急激に上昇したため,continuous hemodialysis(CHD)を施行した。来院7時間後にtorsades de pointes(TdP)が生じたが,硫酸マグネシウム2 gを投与したところ,洞調律に回復した。TdPが生じた時の血清Mg濃度は0.8 mg·dl−1と著明な低値であり,これがTdPの原因の1つと考えられた。これは,透析液中のMg濃度が1.2 mg·dl−1と,慢性腎不全患者を対象として低値に設定されているために,フッ化水素中毒による低Mg血症に加えて,CHDによりさらに低Mg血症が悪化した可能性が考えられた。
著者
藤井 理行 樋口 敬二
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.173-186, 1972
被引用文献数
4 1

富士山頂において, 富士山測候所付近で存在を知られていた凍土は, 山頂一帯にわたる永久凍士 (permafrost) ではないかと考え, 凍土およびその上部融解層 (活動層, activelayer) の調査を, 1970, 71年に4回にわたっておこない, 次のような結果を得た.<BR>(1) 1971年10月の調査から山頂部の凍土は, 越年する凍土すなわち永久凍土である事を確認した.永久凍土の分布は, 山頂部一帯に広がり, 下限高度は2,800~2,900mで, 高緯度永久凍土南限の年平均気温とよい一致を示す高度である.<BR>(2) 活動層厚は, 山頂部においては7月末で50~130cmで5月末の積雪水量が大きい所ほど小さい.<BR>(3) 火口稜線内部の活動層厚は, 消雪後の積算温度 (thawing index) の平方根にほぼ比例し, その比例定数である融解係数は6.44である.<BR>(4) 火山砂礫の透水性は, 凍土の方が同じ有効空隙率を有する非凍土に比べはるかに良い.10月に採取した凍土及び非凍土の透水係数 (permiability) は, それぞれ約0.62×10<SUP>-2</SUP>cm/s, 0.74×10<SUP>-2</SUP>cm/sで, 透水性は良好である.透水試験及び凍結面の観察から, 永久凍土の成長は, 水の供給という点で, 熔岩帯では制約を受けるが, 砂礫帯では制約を受けないと考えられる.<BR>(5) 積雪が最寒期に少なく, 気温が0℃を上まわる4月末から5月にかけて多いという富士山頂部での傾向は, 永久凍土の形成, 維持という点で有利な役割を果している.
出版者
日経BP
雑誌
日経コンストラクション = Nikkei construction (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.749, 2020-12-14

川田テクノロジーズと川田工業(富山県南砺市)は芝浦工業大学と共同で、現場の人型ロボットを遠隔地から操り、品質・出来形管理を支援する「アバターシステム」の開発に着手した(図1、2)。2020年度から3年間の計画で、22年度をめどに橋梁架設現場での試用を…
著者
岡田 紅理子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

本発表は、台湾で「原住民族」と自称・公称されるオーストロネシア語族系先住民族のキリスト教への改宗要因を、「アミ」とカトリック教会を事例として検討するものである。多神的コスモロジーを有していたアミがキリスト教という一神崇拝へと移行し得た過程と、カトリック信仰が選択された要因とを彼らの日本植民地経験から分析し、「国家神道」を教化システムとしても作用する「宗教」として捉えることが可能であるのかを検討する。
著者
樋浦 郷子
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.219, pp.1-20, 2020-03-27

本稿は植民地期台湾の一地域にとって「御真影」がいかなる役割を担ったのかということを,学校沿革誌,郡誌,当該時期の戸口統計等の資料を手がかりに検討したものである。第一に,台湾における御真影は,朝鮮への下付と異なり,戦闘状況下の日本軍の展開に合わせて開始された。1920年代以降学校への下付は中等教育機関から広まりだしたものの,公学校(台湾人初等教育機関)へはほとんど下付されなかった。第二に,新化尋常小学校は,「御真影奉護」の人員確保を考えれば,教員数の減少は避けねばならかったが,1930年代には新化街の日本人人口が減少していた。学級編成および教員の数を確保できたのは,台湾人児童の尋常小学校在籍数に支えられたことが推定される。第三に,新化尋常小学校への御真影下付が同校だけにとどまらず,新化公学校と農業補習学校児童生徒に対する一定の役割も担った。その人数を見れば天皇・皇后写真による「教育」の対象は台湾人児童が圧倒的多数である。御真影を下付されていない学校の児童生徒に対して,「紀元節」「四方拝」(一月一日)などの学校儀式のあと尋常小学校まで移動して拝礼を実施する,奉護燈設置の寄付金を拠出させるなどの要求がなされた。一方では学校として御真影下付校に選ばれないという構造的な劣位への配置と同時に,他方で天皇崇敬教育のために御真影およびその奉護設備を利用した「教育」には巻き込まれたことを具体的な事象をもって示した。
著者
吉丸 雄哉 Yoshimaru Katsuya
出版者
三重大学人文学部文化学科
雑誌
人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 = Jinbun Ronso: Bulletin of the Faculty of Humanities, Law and Economics (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
no.38, pp.1-14, 2021-03-31

公益財団法人石水博物館に現在収蔵されている一四代当主川喜田政明(号は石水)の文事のなかから、教訓・道徳を短歌形式で記した教訓歌をとりあげる。川喜田石水の文事は多岐にわたっているが、教訓歌はその筆頭と石水がみなしていた重要な文芸である。石水は出版ができる状態の稿本である『教訓歌選』(館蔵番号一二七ー一三)を編纂しておきながら、実際には出版の意図はなかった。これはほかの出版可能な稿本を同じで、本人は出費を避け、後代に上梓は任せたものと思われる。収録された道歌はもともとは童蒙の手引きを意図したもので、なにかの本を引き写したのではなく、石水が日頃耳慣れていた歌を書き留めたと思われる。『教訓歌選』は近世後期の伊勢商人がどのようなモラルをもっていたかをうかがうことができる重要な資料であり、実際に『教訓歌選』に示された道徳は石水の妻政子を通じて、孫の半泥子に受け継がれたことが確認できる。
著者
岸田 依子
出版者
光葉会
雑誌
学苑 (ISSN:13480103)
巻号頁・発行日
no.905, pp.2-14, 2016-03
著者
森岡正博
出版者
立教大学
雑誌
立教大学コミュニティ福祉学部紀要
巻号頁・発行日
no.4, 2002-03-15
著者
岩本 光雄
出版者
Primate Society of Japan
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.119-126, 1987 (Released:2009-09-07)
被引用文献数
2 3
著者
赤林 伸一 坂口 淳 佐藤 久遠 浅間 英樹
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.11, no.22, pp.315-318, 2005-12-20 (Released:2017-04-14)
参考文献数
3
被引用文献数
4 3

The purpose of paper is to develop the simplified measurement technique of the coefficient of performance (COP) for the household air-conditioner. Furthermore, using the developed COP measurement technique, we measured COP of air-conditioner in five residences. We compared the result of a simple measuring method and a detailed measuring method, and the simple measuring method checked validity.
著者
島田 武
出版者
室蘭工業大学
雑誌
室蘭工業大学紀要 (ISSN:13442708)
巻号頁・発行日
no.70, pp.115-124, 2021-03

学術論文
著者
増田 一裕
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.21-52, 1996-11-01 (Released:2009-02-16)
参考文献数
125

半島から導入された横穴式石室は,およそ300年の長きにわたり,凡列島的な規模でわが国の古墳時代後期における葬制として採用され消長していく。1体埋葬にとどまらず,同一の内部構造に追葬が可能となった,この革新的な構造は,6世紀ころより倭王権の公葬制として採用され,次第に大型化・巨石積み化へと発展し,さらに切石造りの整美な石室に変化して,やがて,葬制の主体は横口式石槨に交替していく。畿内における大型横穴式石室の消長は,従来より一系列で把握されてきたが,玄室形態に共通型式を求めた時,実は複数の型式が互いに影響を及ぼしつつ多元的に展開していることが判明する。これらの中で,主系列が存在する。それは,大王家と最高執政官層の象徴的産物で,主系列の導入と技術的変化の背景には物部大連氏が大きく関与し,内在的に巨石積み,少段積み化をはたしていく。しかし,7世紀代に入ると,物部連と姻戚関係を成立させた蘇我大臣がその主導権を掌握し,やがて最大の横穴式石室,見瀬丸山古墳と切石積みの岩屋山式石室を完成させる。このように,量的に限定された大型横穴式石室の消長をもとに,被葬者層の動向を追跡する。
著者
田口 敬太 石崎 直人 蘆原 恵子 伊藤 和憲 福田 文彦 下村 伊一郎 林 紀行 前田 和久 伊藤 壽記
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.489-497, 2017-07-30 (Released:2017-07-30)
参考文献数
23

糖尿病性神経障害を有する患者に対する鍼治療の効果について検討した.治療は,1週間に1回の頻度で合計7回の鍼治療を行った.初回は置鍼のみとし,2診目からは低周波鍼通電治療を15分間行った.治療部位は下腿に位置する経穴,陽陵泉(GB 34)―太衝(LV 3),陰陵泉(SP 9)―太渓(KI 3)の計4箇所とし,左右に行った.1診目のしびれの平均VASは46.4 mm(95 %CI;36.7-56.1 mm),8診目のしびれの平均VASは24.7 mm(95 %CI;14.5-34.9 mm)であった.鍼治療前後でしびれの自覚症状に有意な改善が認められた(-22.0,95 %CI;10.6-33.5,p=0.001).また,2診目と8診目のこむら返りの回数についても鍼治療を行ったことでこむら返りの回数に有意な改善が認められた(Wilcoxonの符号順位和検定 p=0.045).以上のことから,鍼治療は副作用も少なく,一定の効果が期待できる為,糖尿病性神経障害を有する患者の治療法の一つとして有用な手段となりうることが示された.
著者
谷中 昭典 田内 雅史 山本 雅之 兵頭 一之介
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.9-15, 2007
被引用文献数
1

ブロッコリーの芽に含まれるスルフォラファン (Sfn) は,酸化ストレス応答転写因子 nrf2 を活性化することにより,細胞内の抗酸化酵素群を誘導し,酸化ストレスによる細胞障害を防止し,<i>in vitro</i> において抗 <i>H. pylori</i> (Hp) 作用を発揮する.我々は,Hp 感染マウス,およびヒト Hp 感染者において,Sfn 含有食品であるブロッコリースプラウト (BS) の摂取により Hp 胃炎を予防しうるか否かについて検討した.その結果,BS 投与によりマウス,ヒト両者において,Hp 菌数は減少し,胃炎は軽減した.以上より,Sfn 含有食品である BS の摂取により,Hp 胃炎の軽減効果が確認され,Sfn による胃癌予防効果が示唆された.<br>