著者
福長 秀彦
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.66-77, 2018

2015年の水防法改正によって、都道府県と市町村は「内水氾濫」によって地下街などに大きな被害が出るおそれがある下水道施設に「雨水出水特別警戒水位」を設定し、「内水氾濫危険情報」を発表することになった。本稿では、内水氾濫危険情報の特性を緊急時コミュニケーションの視点から考察した。考察の結果は以下の通り。■内水氾濫危険情報は、下水道管の水位が特別警戒水位に達すると発表される。特別警戒水位は、情報伝達・避難に要するリードタイムとその間の下水道管の水位の上昇によって設定される。国土交通省が特別警戒水位の設定事例などで示しているリードタイムは、洪水予報や水位周知の対象河川、水位周知海岸で想定されるリードタイムよりかなり短い。■リードタイムが短いのは、主として下水道管の水位上昇特性によるためだ。下水道管は洪水予報などの河川と違って、水を流す容量が小さいので、短時間の大雨時に水位が急上昇する傾向がある。リードタイムを長く取ると特別警戒水位が低くなり、内水氾濫危険情報を頻繁に発表することになってしまう。■内水氾濫危険情報はリードタイムが短いので、内水氾濫による地下街などの浸水害の危険が差し迫った時点で発表される。危険度は大雨警報(浸水害)と大雨特別警報(浸水害)の中間に位置づけられている。内水氾濫危険情報は、切迫度が非常に高い情報である。
著者
泉水 英計
出版者
日本科学史学会
雑誌
科学史研究. 第II期 (ISSN:00227692)
巻号頁・発行日
vol.48, no.252, pp.233-237, 2009-12-25
参考文献数
21
著者
野嶋 政和 吉田 鐡也
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.298-309, 1993-12-24

郊外住宅地の形成に思想的に連なる「田園都市論」は当初内務省地方局を中心に受容された。「田園都市論」は地方改良運動との関係で受容されたのであるが, それは明確な目的意識の下で受容されたのではなかった。しかし, 当時の社会状況に対応しようとする感化救済事業と接合されることを通して, 「田園都市論」は積極的な意義を与えられることになった。感化救済事業では, 従来は住宅に関する問題は救貧・防貧対策として考えられていたのだが, 資本主義の生産関係における労働力再生産過程を支える機能空間として「住」に関わる空間が理解されるようになったのである。また, この空間は国民統合というもうひとつの課題を実現するための「社会」を創出していく空間としても機能することを求められるに至った。「田園都市論」は, 分節化されかつ統合された社会関係を支え, 発展させていく空間論へと展開された。
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.805, pp.261-265, 2001-09-24
被引用文献数
1

2000年8月下旬。シャープ 天理事業所のカメラ・モジュール開発スタッフは,その「きたない絵」について出口のない議論を続けていた。 「この絵,もう少しどうにかならんのか。小山さん,あんだけCMOSセンサのノイズ消すのに苦労してたのに。こんな絵やったら,ノイズなんかあってもなくても同じや」 「まあ,そうでもないやろ。送った絵をパソコンで見たら,一発で分かるわ。
著者
杉山 和明
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.396-409, 1999-08-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
59
被引用文献数
5 2

In recent years, there has been much debate over the social production of space and the relationship between social subject and space. The author, emphasizing the social structural context, contributes to this debate by identifying social space focused on one district. This paper seeks to reveal the significant relationship in which society and space are reconstructed in the late modern era, considering the differences between subjective space and objective space, mass behavior during weekend nights, and the factors influencing the mechanism of perception. To put it concretely, the purpose of this paper is to explain how youths, between the ages of 15 and 29, use the space and act in the night amusement quarter applying the concept of social space, and to examine the experiences of this generation using the ethnographical method.A case study was carried out in the EKIMAE district, the redeveloped area in front of Toyama station, Toyama City. EKIMAE is a commonly used name for the space. Social space refers to subjective social space expressed as a mental map depicted in the youths' own way. On the other hand, objective social space is the space bounded by the regulator of public space, the Toyama Police Department, which is a police patrolling area defined by their own territorial perception in order to monitor and control the populace. Neither space, objective and subjective, is an official administrative district.The remarkable result of various examinations of these spaces is that NANPA spot, a place where girl or boy hunting are conducted, is equivalent to subjective social space and plays an important role for the youth to maintain their identity. Examining the way in which commodities were selected by the youth in the questionnaire, it was demonstrated that various commodities are obstacles to their entry. Furthermore, when they participate in the space as an actor or observer, space functions as theater in a high consumption society. As such, the space where youths encounter one another is constructed as subjective social space and they therefore tend to feel their perceived territory as home.This analysis assists us in understanding the quality of late modern places and how subject and place become inextricably intertwined in the context of social structure.
著者
増田 淳
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.339-345, 2021-06-05 (Released:2021-06-05)
参考文献数
44

屋外で曝露(ばくろ)される太陽電池モジュールにはさまざまな負荷が複合して与えられ,その結果,発電性能低下が生じる.劣化現象は複雑であるものの,劣化要因は遮光,集電能力低下,光起電力低下の3つに大別可能である.本稿では,さまざまな太陽電池モジュールの劣化現象をこれら3つの劣化要因に整理して紹介する.とりわけ,電圧誘起劣化については,最新の研究成果も含めて詳細に説明する.また,さまざまな負荷のうち,屋外で使用する太陽電池にとって避けることのできない紫外光照射が劣化現象に及ぼす影響についても紹介する.

2 0 0 0 OA 博雅笛譜考

著者
林 謙三
出版者
奈良学芸大学
雑誌
奈良学芸大学紀要 (ISSN:0369321X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.89-103, 1960-02-15

The Hahuga-Tehihu is a partial score edited by Minamoto-no-Hiromasa 源博雅 (a noted Japanese musician in the 10th cent.), for flute in the 3rd year of Koho 康保 (A.D.966). This consists of about 50 melodies both in T'ang and Japanese musics ; and among them you will find some rare ones of T'ang period that are now entirely forgotten. They would be very good material for us in the study of the music of T'ang period. To our great regret, however, these melodies are now dead ones ; they could be really helpfull as materials only after they were made to be read. I was fortunate enough to read most of them through my own methods. In fact, this score has something common in it with those of sho 笙 (Chinese mouth-organ) and of biwa 琵琶 (Chinese lute) of old times in point of its expression only of the basic melodies of T'ang music.
著者
渡辺 達朗
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.17-36, 2019-01-17 (Released:2019-01-17)
参考文献数
72
被引用文献数
1

イギリスの都市政策では多様性の維持に加えて,1990年代後半以降は持続可能性が,基本となる考え方として位置づけられてきた。それらに基づいて,一方で開発許可を軸にしたプラニングシステムによって大規模ショッピングセンターをはじめとするさまざまな開発を規制してきた。そこでは,タウンセンターの「活力と存続」,あるいはタウンセンターファーストの考え方を前提にした逐次的アプローチというコンセプトが受け継がれている。他方,都市再生の側面では,タウンセンターにおける小売,サービス,エンターテイメント,そして住宅などを含む大規模再開発と,インナーシティにおける近隣街区リニューアルが並行して実施されてきた。本稿では,以上のような経緯について思想,政策,取組みという3つの次元から確認する。その上で,都市計画による郊外開発規制,将来ビジョンとしてのコンパクトシティ,タウンセンターやハイストリートにおける多様性と同質化,という3つの論点から日本への示唆を探る。
著者
飯塚 正明
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 = Bulletin of the Faculty of Education, Chiba University (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
no.69, pp.307-310, 2021-03-01

[要約] 電気技術者の多くは,子供時代にラジオ製作から電気・電子技術に興味をもち,技術者の道に進んでいる者が少なくない。初めて作るラジオ教材は,AM ラジオである。これは,回路が簡単であることだけではなく,簡単な回路であることから,部品一つ一つが特性に影響をおよぼす回路であり,部品の改良と共に特性の改善が得られ,技術の核心に触れることが出来る。しかし,近年,このAM ラジオで受信可能なAM 放送の放送停止が進められている。我が国では,今日でもAM放送が続けられているが,すでに,海外では放送を停止した国もある。テレビ放送がアナログ放送から地上デジタル放送への変更にともない放送電波帯がVHF からUHF へと移動した。その結果,FM ラジオ放送の利用電波帯が広がり,ワイドFM となった。広がった電波帯にAM 放送と同じ放送が行われるようになり,FM ラジオだけで,FM 放送だけでなく,AM放送と同じ内容の受信も可能となった。これは,AM 放送電波帯の停止の可能性が高まったといえる。AM 放送が停止してしまうと,技術者育成のきっかけでもあるAM ラジオ教材が製作できなくなってしまう。本研究では,AM ラジオ教材にかわるFM ラジオ教材の検討を行った。FM ラジオでは,AM ラジオに比較し,復調回路が複雑である。AM ラジオでは,鉱石ラジオと呼ばれる無電源ラジオが作製教材の代表例である。無電源ラジオとして,FM 復調回路だけのラジオの検討を行った。筆者の環境では,電界強度が低く,放送の受信が出来ないため,増幅回路を検討した。回路が複雑なラジオでは,初心者の製作には困難であるため,トランジスタ1石で検討を行った。その結果,超再生方式のFM ラジオ回路であれば,増幅度を高くすることが可能であり,1石での回路が作製できることから,超再生FM ラジオ作製教材の検討を行った。
著者
土屋 昭夫 相澤 直孝 佐藤 邦広 高橋 姿
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.173-177, 2012 (Released:2012-08-25)
参考文献数
20

線維素性唾液管炎は, 唾液腺導管内に線維素塊が形成されて導管の閉塞をきたし, 反復性に唾液腺腫脹をきたす疾患である. 腫脹時に唾液腺を圧迫すると, 導管から多数の好酸球を含む線維素塊の排出を認める. アレルギー性疾患を合併することが多く, そのため発症の原因としてアレルギーの関与が考えられている.今回われわれは, 反復する耳下部腫脹を主訴に当科を受診し, 線維素性唾液管炎と診断された3例を経験したので報告する. 3例ともにアレルギー疾患の合併があり, 2例ではステノン管からの排出物に好酸球を認めた. 全例で抗アレルギー剤の効果を認めたが, 1例を除き症状は残存しており, ステロイド治療の追加を検討している.
著者
小野寺 峻一 山本 奬 川原 恵理子 亘理 大也
出版者
岩手大学大学院教育学研究科
雑誌
岩手大学大学院教育学研究科研究年報 = Research Journal of the Iwate University Professional School for Teacher Education (ISSN:2432924X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.243-253, 2021-03-31

本研究の目的は,自殺予防教育の一環として,「援助要請の仕方・受け止め方」の心理教育プログラムを作成し,高校生を対象に実施し,その成果を検証することであった.作成したプログラムについて,援助要請の仕方・その受け止め方共に,当初の自信による適用の禁忌はないことが確認された.援助要請の仕方・その受け止め方の自信の向上については,自信の程度が,中程度,低い生徒に対して,効果が認められた.援助要請姿勢のへの変化に関しては,「部活や習い事」は有意に多く,「友達と口論」は有意,「成績が上がらない」は有意傾向であることが示された.高校生にとって,心理教育プログラムは,援助要請の仕方とその受け止め方の自信を向上する傾向にあり,心理面,社会面の問題において,援助要請姿勢を変容させる可能性が示唆された.