著者
遠藤 金吾
出版者
秋田県立秋田南高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

【研究目的】近年、博士号を取得しても定職に就けない余剰博士が問題化していおり、博士号取得者をアカデミア以外の業界で活用しようという動きが盛んになっている。また、秋田県では、昨今問題視されている理科離れに鑑み、子どもたちの理数分野への興味・関心を高め、将来の科学技術・医療を担う人材を育成する事を目的として、全国に先駆けて理系の博士号取得者を対象とした教員採用試験の特別選考を行い、新たな博士のキャリアパスの開拓へとつながる試金石として注目を浴びた。申請者はこの選考による採用者であり、自らの教育実践を通し、博士号取得者に対して、初等中等教育の教員としてのロールモデルの提示を行っていくと同時に、学術界・教育界に対して、理系博士号取得者の初等中等教育の教員としての有用性を訴えていく。【方法・結果】専門性を生かした授業・実習プログラムを開発し、秋田県内の小中高校において実践した。その実践報告を、日本理科教育学会、日本生物教育学会にて行った。文部科学省中央教育審議会大学院部会において、本研究の取り組みについて答弁を行った。(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/004/gijiroku/attach/1288749.htm)【結果】日本理科教育学会、日本生物教育学会での実践報告、中央教育審議会での答弁の他、名古屋大学ノン・リサーチキャリアパス支援事業のパンフレット、文部科学省科学技術白書にて紹介されたことにより、博士号取得者に対してのロールモデルの提示を行い、学術界・教育界に対する、理系博士号取得者の教員採用の意義を訴えることができた。内閣府行政刷新会議においても博士号取得者を教育界で活用する方針が打ち出され、岩手県など、博士号取得者の教員採用が広がりつつあり、今後、本研究の成果が各方面で活用されていくことが期待できる。
著者
佐藤 洋之 倉元 直樹
出版者
東北大学
雑誌
教育情報学研究 (ISSN:13481983)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.25-33, 2006-03

大学のユニバーサル化に伴い,大学入学者選抜は受験者の「選抜」から志願者の「募集」へと大きく比重を移している.名称の工夫によるイメージ戦略もその一環と言えよう.本研究では「学部」を単位として高校生が大学に抱くイメージを調査した.対応分析によって19のイメージ語と81の実在の学部名の布置を2次元で描いたところ,総じて伝統的な名称の学部のイメージが良く,新奇な学部名称は総じて芳しく受け取られていない傾向が見られた.
著者
阿久津 洋巳 浅野 壮志 AKUTSU Hiromi ASANO Takeshi
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.9, pp.65-71, 2010

現代社会に生活する多くの人は,1週間を一つの周期としている.この周期は「日曜日が好きだ」とか「月曜日は嫌いだ」という大まかな曜日の好き嫌いに現れたり,曜日ごとに様々に変動する感情をもたらす.ポジティブ感情(PA)とネガティブ感情(NA)は,曜日ごとに変動することが知られており,この変動は「曜日の効果」と呼ばれることもある.「曜日の効果」に関する先行研究は,活性化したPA と「快感情(Pleasant affect)」を区別する必要があることを明らかにしている(Egloff,Tausch,Kohlmann & Krohne, 1995).活性化したPA(以下単にPA とよぶ)は覚醒感をともなっているが,一方,快感情は高い活性状態をともなっておらず,「幸せ」や「うれしい」のような穏やかで持続的な気持ちを含んでいる.活性化したネガティブ感情,つまり緊張や不安といった気持ちを含むNA(以下単にNA とよぶ)と,悲しみや不幸といった気持ちを含む「unpleasant affect(不快感情)」についてもPA と同様のことが言える.
著者
吉田 文
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.178-189, 2020 (Released:2020-09-30)
参考文献数
33

本稿は、1991年の大綱化以降の30年間に及ぶ大学の教育改革に関して、1.文部(科学)省の政策(審議会答申と競争的資金事業)、2.それに対する大学の反応(改革の実施率と大学教育関係学会)、3.この両面から大学教育改革がもたらした意味を考察することを目的とする。分析の結果、次第に改革が手段ではなく目的化し、改革に関する大学の自由裁量の余地がなくなったこと、大学はそこから抜け出せない現実があることが明らかにされた。
著者
西成 典久 斎藤 潮
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.39.3, pp.907-912, 2004-10-25 (Released:2017-08-02)
参考文献数
26
被引用文献数
1

歌舞伎町及びコマ劇前広場は戦災復興期に石川栄耀によって設計された。本研究の目的は、石川の言説とコマ劇前広場及びその周辺空間との関連を精査することにより、石川の広場設計思想およびコマ劇前広場創出の背景を明らかにすることである。結論は以下の3点である。1)石川は日本に広場がないことを指摘し、「広場は民主社会の表現であり、文化の進んだ都市が持っている」としたが、広場の社会的機能(市民交歓)においては、西欧の広場と日本の商店街に共通性があることを見出している。また、将来的に日本の市民交歓は広場の形態に移ると考え、コマ劇前広場はその為の布石であったと考えられる。 2)石川は計画案において自身の設計論を広場に反映したが、 GHQの建築統制により計画案が頓挫し、広場に盛り込まれた石川の設計手法(Terminal vista)は実施案において実現されなかった。3)広場を導入するにあたり、石川は単純に西欧広場の形態を模倣したわけではなく、広幅員街路のネットワークの終端部に広場を布置することにより、歌舞伎町の土地利用や街路ネットワークと有機的に関係した広場を歌舞伎町において実現しようとした、と考えられる。
著者
林 智絵 佐藤 大樹 二河 成男 根田 仁
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.57-65, 2023-11-01 (Released:2023-12-02)
参考文献数
35

マツカサタケは,長らくAuriscalpium vulgareと同定されてきたが,担子胞子の形態はA. orientaleの特徴と一致した.また,nrDNA ITSおよびLSU領域の塩基配列を用いた分子系統解析ではA. orientaleのクレードに含まれた.さらに,マツカサタケはA. orientaleと同じ基質嗜好性を示した.これらの結果から,マツカサタケは中国から記載されたA. orientaleであると結論づけた.
著者
山田 実
出版者
日本脊髄外科学会
雑誌
脊髄外科 (ISSN:09146024)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.12-19, 2020 (Released:2020-08-26)
参考文献数
22
著者
鈴木 孝男
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.374-377, 2021-03-30 (Released:2022-03-30)
参考文献数
3
著者
岡田 正実
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.53-64, 1982-03-25 (Released:2010-03-11)
参考文献数
26
被引用文献数
1 3

Monthly distribution of major shallow earthquakes (M≥7.5) in and near Japan is investigated using earthquake catalogs including pre-instrumental data. Major shallow earthquakes off Hokkaido and Sanriku districts are concentrated in spring, and those along the coast from Miyagi prefecture through Shikoku district occurred more frequently from August to December, as Mogi has pointed out. We suggest with some consideration that these variations are statistically significant at a 95% confidence level. In the other region the records on major earthquakes are not enough to discuss the seasonal variation. But it is able to show that large earthquakes with magnitude 7.0 or over occurred more frequently from March to September in the inland regions where no effect of the major earthquakes on the Pacific coast is expected. It seems that the decrease in the weight of water on land and lowering of the mean sea level trigger the occurrence of major earthquake between the oceanic and continental plates, when the strain accumulates closely to the limit. It is also considered that the increase of ground water in the fault zone has an influence on the occurrence of large shocks inland in their critical states.
著者
朝倉 こう子 濱﨑 俊光
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.235-245, 2015-07-25 (Released:2015-10-25)
参考文献数
10
著者
城山 英明 村山 明生 梶村 功
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.149-158, 2003 (Released:2009-08-19)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1

米国の航空事故調査は, NTSBが主導し事故原因の究明と再発防止を図っている.NTSBは,関係当事者から専門的知見を集めるパーティー・システムに基づく調査,実効性の高い勧告システムを特徴とするほか,事故犠牲者や遺族に対する一元的支援も実施する.米国では,航空事故への責任追及の手段としては,個人への刑事訴追は極めてまれであるが,懲罰的損害賠償(民事責任)や高額の民事罰(行政処分)が,本来刑事の有する処罰機能を代替し,航空会社やメーカーなど組織への制裁手段として機能している.日本においても,米国の実態の全体像を踏まえた,航空事故調査体制の充実や法的責任追及のあり方に関する議論が行われることが期待される.
著者
永井 幸寿
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.326-329, 2016 (Released:2019-08-01)

昨年11 月に安倍総理大臣は災害を理由に憲法に 緊急事態条項,すなわち国家緊急権を設けることを 国会で明言した.私は,阪神・淡路大震災で事務所 が全壊して以来,21 年被災者支援活動を行ってき た者として以下に災害の現場に基づく意見を述べさ せていただきたい.
著者
畠山 薫 貞升 健志 甲斐 明美
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.238-243, 2011-05-20 (Released:2015-04-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

1950 年代に東京都内で分離された狂犬病ウイルス 10 株と日本の狂犬病固定毒株である小松川株,高免株,西ヶ原株ならびに動物用ワクチン株 RC-HL 株および世界各地の狂犬病ウイルス 86 株の核タンパク(N)遺伝子領域における系統樹解析を行った.東京都で分離された株は,2 グループ (Tokyo 1,Tokyo 2) に分類された.2 グループとも,ヨーロッパ,アフリカ,アジア,アメリカからなる広域クラスターに属していた.Tokyo 1 グループは,1930 年代,40 年代にアメリカ合衆国西海岸のイヌから分離された株とサブクラスターを形成し,Tokyo 2 グループはロシアハバロフスクの racoon dog やバイカル湖地域の stepped fox から分離されたウイルスと同じクラスターを形成する小松川株と近縁であった.これらのことから,1950 年代に東京都内で流行していた狂犬病ウイルスは,ロシアおよびアメリカ由来のウイルスと関連性があったものと推測された.