著者
常盤 俊之 奥田 徹
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.jjom.H20-10, 2009-11-01 (Released:2018-03-30)
参考文献数
13

イグチ類に寄生する日本産Hypomyces属菌5種とそのアナモルフのSepedoniumを記載し検討した.これらはH. melanocarpus, H. transformans, H. chlorinigenus, H. chrysospermus及びH. microspermusであり,前2種は日本新産種であった.また,日本特産種のホオベニシロアシイグチ(Tylopilus valens)をHypomyces melanocarpusの新寄主として報告した.さらに類似する2種H. chrysospermusとH. microspermusの形態と寄主範囲の相違点について論じた.
著者
藤野 裕子 樋口 裕也 藤本 裕二 立石 憲彦
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.319-327, 2019-01-31 (Released:2019-08-01)
参考文献数
35

精神科看護師のリカバリー志向性の特徴と関連要因を明らかにすることを目的として,2つの精神科病院に勤務する看護師455名を対象に自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,1)基本的属性,2)リカバリー志向性(日本語版7項目版Recovery Attitudes Questionnaire:RAQ-7),3)リカバリー知識(日本語版Recovery Knowledge Inventory:RKI),4)リカバリーの認識,5)リカバリーへの関心,6)研修姿勢,7)リカバリー研修経験,8)リカバリープロセスにある精神障害者を知っている人数,9)リカバリー概念に基づいた支援経験の有無,10)楽観性(前向きさ・気楽さの2因子で構成される楽観性尺度を使用)である。調査対象者中,有効な回答を寄せた315名(有効回答率69.2%)の回答を分析した。分析対象者は,女性が55.8%,男性が44.2%であり,年齢(平均値±標準偏差)は40.4±9.8歳,看護師経験年数は16.9±10.0年,精神科経験年数は13.1±9.1年であった。RAQ-7合計点は27.2±2.7点,項目点ごとに集計した場合は「精神の病気からのリカバリーのしかたは,人によって異なる」が4.3±0.6点で最も高く,「重い精神の病気をもつ人は誰でも,リカバリーするために励むことができる」が3.3±0.9点で最も低かった。リカバリーの認識を有していたのは198名であり,この中でリカバリー概念に基づいた支援経験者は12名(分析対象者の3.8%,認識のある者の6.1%)に過ぎなかったが,精神科専門職全般を対象とした先行研究よりもRAQ-7得点が高かったことから,患者の社会復帰を傍で支える看護師の姿勢が,リカバリー志向性の高さに繋がっていると考えられた。RAQ-7は,リカバリー支援経験者,研修に積極的な人,リカバリーに関心がある人,リカバリーに関して知らなかった人よりよく知っていた人において高かった。RAQ-7は,RKIとは関連がなく,前向きな楽観性とは弱い正の相関(r=0.194)がみられた。以上より,看護師は,回復において個別性を重視しながらも悲観的に捉えやすいため,リカバリーに関する教育が必要であると考えた。また,看護師のリカバリー志向性を高めるには,意欲的に学習に取り組む姿勢の育成,リカバリー概念の理解の推進,前向きな楽観性の考慮や実践的なプログラムを取り入れた教育が重要だと考えた。
著者
吉村 剛
出版者
日本環境動物昆虫学会
雑誌
環動昆 (ISSN:09154698)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.153-163, 2009 (Released:2016-10-20)
著者
上長 然
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.18-37, 2016 (Released:2016-08-12)
参考文献数
114
被引用文献数
5

本稿は, 日本において2014年7月から2015年6月までに発表された青年期・成人期・老年期を対象とした発達研究について概観したものである。1年間に発表された青年期以降を対象とした発達研究の動向を「自己」, 「対人関係」, 「適応と精神的健康」, 「進路・キャリア発達」, 「その他」の5つに分類し, 論評を行った。自己に関する研究では, 青年期のアイデンティティ発達に関する研究, 自己概念・自己評価に関する研究, 世代性や子育てに伴う心理発達に関する研究がなされていた。対人関係では, 夫婦関係の継続理由や夫婦関係と家族機能の関連を扱った研究が見られた。適応と精神的健康では, 学校行事や接続教育, いじめ, 非行といった学校生活・学校適応に関する研究が多く報告されていた。進路・キャリア発達に関する研究では, キャリア教育や職業意識の形成, 社会参加に関する発達的意義について論じられていた。その他としては, 青年期から老年期にかけての認知機能やパーソナリティの発達について報告されていた。最後に, 青年期以降の発達研究における展望とともに, 今後の課題について論じた。
著者
倉石 泰
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.139, no.4, pp.160-164, 2012 (Released:2012-04-10)
参考文献数
69
被引用文献数
2

痒みは,皮膚表層の生体防御感覚であり,マスト細胞,ケラチノサイト,T細胞,一次感覚ニューロンなどが産生・放出するアミン,ペプチド,サイトカイン,プロテアーゼ,脂質メディエーターなど多種多様な因子が起痒因子となる.痒みの受容にTRPV1チャネルを発現する一次感覚ニューロンが重要な役割を果たす.すなわち,TRPV1チャネルは起痒因子による一次感覚ニューロンの発火に関与する.一次感覚ニューロンのガストリン放出ペプチドは脊髄後角における痒み信号の伝達に関わり,BB2ボンベシン受容体を発現する後角ニューロンは多様な痒み信号の入力を受ける.脊髄後角では下行性ノルアドレナリン作動神経がα-アドレナリン受容体を介して痒み信号の伝達を抑制する.脳および脊髄のμ-およびκ-オピオイド受容体も痒み信号の調節に関わる.
著者
福武 慎太郎
出版者
上智大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

2002年に正式独立を果たした南洋の島国、東ティモール民主共和国のナショナリズムに関連する問題について、現地におけるフィールドワークと文献調査で得られた知見にもとづき考察をおこなった。東ティモールの公用語であるテトゥン語を共通言語とし、カトリック信徒で、かつティモール島南部にかつて存在した王国とのつながりを共有するテトゥン社会は、東西国境をはさみ合計50万人規模であり、人口100万人の東ティモールにおいてけっしてマイノリティではない。親族や姻戚関係、そして商業目的での国境の往来は頻繁におこなわれており、「東ティモール人」アイデンティティを理解する上で重要な文化圏であるとの見解に至った。
著者
辻村 亮彦
出版者
慶應義塾福沢研究センター
雑誌
近代日本研究 (ISSN:09114181)
巻号頁・発行日
no.36, pp.37-72, 2019

はじめに一 司法官の養成とヨーロッパ留学二 東京大学法学部とヨーロッパ留学三 梅謙次郎の留学と帝国大学の成立おわりに特集 : 近代日本と留学
著者
劉 文憲 古賀 千尋 岩本 修 木原 俊之 亀山 忠光
出版者
Japanese Society of Oral and Maxillofacial Surgeons
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.46-48, 2000-01-20 (Released:2011-07-25)
参考文献数
5

We usually use Vitapex® as a root canal filling. This report describes a case of inferior alveolar nerve hypoesthesia caused by overfilling a root canal with Vitapex®.Case: A 23-year-old woman was referred to our hospital because of hypoesthesia of the inferior alveolar nerve.She had undergone treatment of 7 with root canal filling using Vitapex® one week earlier at another clinic. On the following day, she had hypoesthesia of the skin of the right side of the chin. X-ray examination showed a radiopacity in the right mandibular canal.After 4 months of conservative management, hypoesthesia decreased.Soon after, we extracted 7.Her subsequent course has been uneventful, and only a small hypoesthestic area remains.
著者
ハーマッハー ヴェルナー 宮﨑 裕助[訳・解題] 清水 一浩[訳]
出版者
新潟大学大学院現代社会文化研究科共同研究プロジェクト「世界の視点をめぐる思想史的研究」新潟大学人文学部哲学・人間学研究会
雑誌
知のトポス : 世界の視点 : topos = 知のトポス : 世界の視点 : topos (ISSN:18809995)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.173-206, 2016-03

In: Kontroversen, alte und neue. Akten des VII. Internationalen Germanisten-Kongresses Göttingen 1985, hg. v. Albrecht Schöne, Band II: Historische und aktuelle Konzepte der Literaturgeschichtsschreibung, Tübingen: Niemeyer 1986, S. 5-15.
著者
松川 真美 細川 篤 長谷 芳樹 長谷 芳樹 柳谷 隆彦 星野 裕信
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

MHzの超音波照射により骨中に生じる誘発電位について実験的検討を行った。その結果、10 kPa程度の超音波照射でも誘発電位が観測され、圧電性の存在が確認された。この結果は骨折治療に使用される低強度超音波法による治癒メカニズムに、圧電による電荷生成が関与する可能性を示唆している。またこの誘発電位は湿潤した骨でも観測されたほか、HApの配向量に依存しないこと、誘発電位の極性は部位に依存することを見出した。また、圧電FDTD法を用いて、超音波伝搬による骨中電界の空間分布推定を試み、骨折の有無によって、分布が大きく変化することを確認した。
著者
吉澤 克明
巻号頁・発行日
2008-03-21

授与大学:弘前大学; 学位種類:修士(教育学); 授与年月日:平成20年3月21日; 学位記番号:修第428号
著者
加田 哲二
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-88, 1927-12-25

一. シュタインの生涯二. シュタインの業績三-四. シュタインの社会学史上の地位並にその思想の背景五-一八. 「仏蘭西社会運動史」に現われた社会学的思想
著者
オメル アイダン 川本 眺万 大塚 悟 久野 覚 片木 篤 西 順次 YUZER Erdoga
出版者
東海大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

本研究ではトルコ・カッパドキア地方にあるデリンクユ古代地下都市を対象として、その住環境および安定性についてまとめたものであり、次の順次で研究成果をまとめている。1) カッパドキア地方の地理、地質、気候、火山活動、地震活動等についてまとめ、地下都市成立要因を昼夜の温度差、建材となる樹木が少ない、地質的には掘削しやすい凝灰岩、地震からの避難等の理由と考える事ができることを明らかにした。2) この地方の歴史背景についてまとめた。歴史背景においては、敵からの迫害や周辺国からの侵略から身を守る為に地下に住んだ事の可能性が高いことを示した。3) カッパドキア地方の地下都市に存在する凝灰岩について既存の実験結果と今回行った実験についてまとめ、さらに凝灰岩の長期、短期特性について収集および整理した。また、地下都市の存在する岩盤の評価も行った。4) 考古学的見解から、カッパドキア地方を中心にこの地域の鉱山活動についてまとめ、カッパドキア地方周辺の遺跡の出土品と鉱山活動から、この地方において地下空間利用は少なくとも紀元前3000年頃までさかのぼることと結論づけた。5) カッパドキア地域の地下空間利用は1500年前よりも以前であることを紹介し、現代における地下空間利用事例として貯蔵施設,(果物、野菜、ワイン)、地下工場、半地下ホテルやレストラン、半地下住居、地下野菜栽培施設を紹介し、そのメリット・デメリットを論じた。6) デリンクユ地下都市に関して空間形態の分析を行い、実験データをもとに、換気シャフトおよび地下7階ホールの短期、長期安定性についてまとめ、なぜ今日まで地下都市が残っていたのかを力学的に明らかにした。7) 住環境に対して本研究で行った計測結果にもとづいて地下都市の換気シュミレーションを実施し、地下都市内部の発熱要素は換気に影響を与える事がなく、外気温が換気に大きく影響を与えており16℃以下という条件で換気が行われていたことを示した。特にこの地方は、年間を通して夜には16℃以下となり換気を損なうことはないことが明らかになった。これらの調査・分析・解析結果からデリンクユの空間形態および1万人以上の人々が生活する事のできる地下都市の換気構造を明らかにし、また、有限要素法解析から、地下都市が安定している事を明確にした。