著者
横山 佳子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.21-27, 2013-06-30 (Released:2013-07-26)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究では, 野菜サラダの加工過程および冷蔵保存を含め, 大量調理施設衛生管理マニュアルに基づき7工程 (原材料, 水洗・下処理, 中性洗剤・すすぎ, 殺菌・すすぎ, 試料の切断・混合, 冷蔵保存10°C, 24時間後, 冷蔵保存10°C, 48時間後) を設定し, 一般細菌数と細菌叢の変化について検討した。特に野菜に多く分布しているNFGNBの消長について検討した。野菜を7つの全工程に従って処理した結果, 一般細菌数および細菌叢に大きな変化は認められなかった。野菜には多くのNFGNBに分類される菌種が分布していた。野菜サラダを作成し, 10°C, 48時間冷蔵保存をすると, 腸内細菌科の細菌割合が増加する傾向が見られた。全工程で検出回数が多かったのは, 芽胞形成・桿菌およびBurkholderia cepaciaであった。また検出された菌種の多くがNFGNBに属するものであった。NFGNBは一般的にヒトへの病原性は低いが易感染性宿主には重篤な感染症を起こし, また常用抗菌薬に対する耐性を有することが知られていることから, 易感染性宿主や在宅介護を受けている者に対しては, 野菜を加熱調理して提供することおよび生での提供が必要な場合は調理後速やかに食することでリスクが緩和されることが示唆された。
著者
鮫島 輝美 竹内 みちる
出版者
公益財団法人 集団力学研究所
雑誌
集団力学 (ISSN:21872872)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.98-123, 2014-12-28 (Released:2014-02-07)
参考文献数
27

本研究は,介護を負担と見なすことの問題点を指摘し,その問題点を克服する認知症介護の実践事例を考察することで,要介護者・家族介護者・支援者の「共育」を軸とする新しい介護のあり方を提起する。従来の認知症介護支援では,要介護者は,認知機能が欠損している状態,社会的・職業的機能水準の著しい低下状態とされ,その機能を補うだけの「介護力」が前提とされている。この特徴は,近代医療の特徴とパラレルである。 筆者らは,発症から24 年間,在宅で認知症の妻Kさんの介護を行ってきたT氏の取り組みの中に,新しい認知症介護における一つの方策を見いだした。T氏は,妻の病気を問題とするのではなく,ⅰ)支援の方向性を「妻が楽しくなるような介護」と定め,ヘルパーたちに支援を求めた。そして,支援者たちは,T氏の介護力不足を問題とするのではなく,ⅱ)今,必要な支援を「課題」とし,その課題解決を試みた。また,在宅での認知症介護が一般化される前から,ⅲ)支援者たちはKさんやT氏に寄り添いながら,日常生活の問題に共に向き合い,Kさん–T氏−支援者たちの間で溶け合う関係を通じた支援が長期にわたって行われていた。 以上の具体的実践から,大澤のポスト近代論を援用して,溶け合う関係を通じた支援によって,「介護=負担」という等式が崩壊し,介護関係が「『支援があればできる』認知症を生きる人」と「それを支援する人」という新たな関係を生成することを提示する。また,認知症を生きる人の世界とは,「未だ歩んだことのない新しい道」であり,在宅介護の現場は,規範(意味)の原初的形成の場となり,共に成長する「共育」的関係を醸成していることを提示する。次に,認知症を生きる人は,〈プロレタリアートの身体を生きる〉のであり,彼らの願いとは「よく生きること」である。そのため支援の発動点は常に要介護者側にあり,それを支援側が自覚する必要性を述べる。最後に,支援者に要請されている【専門性】とは,自らの生活世界から出て,相手の生活世界に飛び込み,そこから必要な支援を考える態度であり,支援者が「専門家」という視座をおり,要介護者との「溶け合う関係」を楽しむ姿勢が,支援者と要介護者,家族介護者との関係性を変化させ,新たな支援を生み出す可能性に開かれていることを示す。
著者
青柳 暁子 西田 真寿美
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.264-270, 2014 (Released:2014-07-04)
参考文献数
30

目的:日本の介護保険施設等では認知症高齢者の援助方法のひとつとしてアクティビティケアが注目されている.実践の現場では職員が各々の経験と認識に基づいて判断している現状がある.本研究では看護職・介護職が重要と認識するアクティビティケアの評価基準を類型化することによって,その特性を明らかにすることを目的とした.方法:中国地方5県に所在する全ての特別養護老人ホーム・介護老人保健施設の看護主任および介護主任に郵送法による質問紙調査を実施し,657名を分析対象とした.調査は認知症高齢者に対するアクティビティケアの評価基準に関する項目について主観的な重要度を5段階尺度で回答を求めた.重要度の類似性を検討するため階層的クラスター分析と多次元尺度構成法(ALSCAL)を併用して分析した.結果:クラスターは1「快・安楽の状態」,2「自発性」,3「緊張状態の消失」,4「他者との交流」の4つに分類された.重要度の平均値は高い順からクラスター1(4.48),クラスター2(4.23),クラスター3(3.95),クラスター4(3.48)であった.2次元モデルにおいてはストレス値0.113,決定係数RSQ 0.948で良好な適合度が示された.次元1『複雑性』では,単純な表現から複雑な行為を表すクラスターが平均値の高い順に布置され,より単純な行為が重視されていた.次元2『開放性』では,中央付近とその下方にあるクラスター1と2の平均値が高く,上端のクラスター3と下方にあるクラスター4が低値であった.医療的な問題解決や高次の社会的な開放性よりも,個人の快・安楽や自発性などの個別的な開放性が重視されていた.結論:従来のアクティビティケアの目的別の分類のみでは把握できなかった4類型と2次元構造の抽出によって,評価基準の重みづけの方向性が明瞭となった.その主観的な重要度の認識には,行為の複雑性と個別的な開放性に着目し,視覚的なわかりやすさ,測定可能である汎用性を目安にしていると考えられた.
著者
小倉 康嗣
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.50-68, 2001-06-30 (Released:2010-04-23)
参考文献数
32
被引用文献数
3 1

本稿は, 高齢化社会の内実への歴史的再認識を出発点として, 「高齢化」ないし「老い」の問題を, 全体社会の根本的変革や新たな社会構想の問題へとつなげていく研究枠組を開拓していく試みである.つまり「高齢化」ないし「老い」の社会学的研究に関する「生成的理論」の構築を目指して, 探索的な経験的研究を行っていくうえでの理論的インプリケーションを明確化し, その概念枠組の構築を図ることが本稿の目的である.理論的インプリケーションを明確化する際の主張は2つある.第1に, 高齢化社会の内実を「再帰化する後期近代」という歴史的ダイナミズムにおいて認識すること (1節), 第2に, その認識を取り入れてthe agedからaging へと照準を合わせ直し人間形成観の問題圏へ入ること (2節), である.これら 2つの主張は, パースペクティブとしての〈ラディカル・エイジング〉として統括される (3節).つづく概念枠組の構築作業においては, いかなる事象にどのような概念的参入を図ればよいのかを検討することによって, さきの理論的インプリケーションを具象化する.まず, 現代日本における「中年の転機」を〈ラディカル・エイジング〉の理論的インプリケーションの集約事象として位置づけ (4節), その作業を媒介に〈再帰的社会化〉という概念構成を導出し, 同時に〈再帰的社会化〉の基盤をめぐる探索課題を提起することによって概念的参入の足場を築く (5節).
著者
Katsuo Tamaoka
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.441-468, 2003-12-01 (Released:2008-10-03)
参考文献数
63

The present study investigated attributes of kanji On- and Kun-readings from the perspectives of both statistical prediction and human strategy. In Study 1, discriminant analysis using the stepwise method revealed four significant indicators out of ten kanji characteristics for distinguishing On- and Kun-readings. These indicators are semantic concreteness, naming latency, special sounds and number of strokes. In Study 2, an On- or Kun-reading test is given to 30 native Japanese speakers. The result showed tendencies similar to the accuracy rates of discriminant analysis. After the test, a questionnaire revealed that 6 out of 10 strategies were employed by more than 6 out of the 30 participants. Three of these were congruent with significant indicators specified by discriminant analysis, namely, semantic concreteness, naming latency and special sounds. Despite the significant indicator in Study 1, particular strategies concerning kanji strokes and radical frequency were not used by humans. Native Japanese speakers are likely to use kanji neighborhood, kanji homophones and number of morae. The results between indicators and strategies illustrate a more general point: On- and Kun-readings can be effectively predicted by discriminant analysis on the basis of various kanji characteristics; however, due to a lack of consistency in On- and Kun-readings attached to each kanji, humans can flexibly incorporate a wider variety of strategies when making their determinations.
著者
竹内 みちる
出版者
公益財団法人 集団力学研究所
雑誌
ジャーナル「集団力学」 (ISSN:21854718)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.158-174, 2010-07-01 (Released:2013-04-16)
参考文献数
11

いつまでも老いることのない高齢者----「何歳になっても現役」というように、往年と変わらぬ存在としての高齢者。その一方、寝たきりの高齢者。周りの人にケアしてもらわなければ、明日をも生きられない高齢者。我々の持つ高齢者に対するイメージは、現在、この2つに分極化している。我々は、いつから、このような単純で貧困なイメージしかもてなくなったのだろうか。現実の高齢者は、より多様で固有の生を生きているのではないだろうか。本研究は、上記のようなパターン化した「高齢者」の意味を再検討し、そこに欠落している可能的意味を探ろうとするものである。さらに言えば、かつては存在したにもかかわらず、ここ半世紀の中で消滅した「高齢者」の意味を再発見し、その現代的意義を考察しようとするものである。 本研究の方法的特徴は、政府機関が実施した世論調査の質問票をテキスト分析の俎上に載せた点にある。特に、本稿の中で扱った世論調査の内でも、1954年の世論調査は、高齢化が注目を浴びるはるか以前、高齢者が政策的課題として本格的に組み込まれる以前に実施されたものであり、極めて重要な分析対象である。 本稿では、まず、本研究の目的と方法を述べた上で、上記の1954年調査を分析し、それ以降急速に消滅していった「高齢者」概念を指摘した。すなわち、1954年の世論調査では、高齢者は、他の世代とは異なり、「自らの来たりこし道を振り返り、来たるべき死を直視する」存在であったことを指摘した。次に、その概念が、いかなる「高齢者」概念によって代替されたのかを、同じく高齢者を調査対象とした1960年代以降の調査票を分析しながら明らかにした。最後に、より積極的に、「来たりこし道をふりかえり、死を直視する」高齢期を再発見することの現代的意義について論じた。
著者
西野 耕一 笠木 伸英 平田 賢 佐田 豊
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.55, no.510, pp.404-412, 1989-02-25 (Released:2008-03-28)
参考文献数
13
被引用文献数
6 8

A technique for measuring instantaneous, three-dimensional velocity components in liquid flows was developed using digital image processing system. This system consists of three TV cameras, a digital image processor, a stroboscope, a laser disk recorder and a 16-bit microcomputer. The three-dimensional displacements of fine particles suspended in the liquid are tracked by the TV cameras and recorded on the laser disk recorder. The recorded image data is later replayed and sent to the image processor, and the three-dimensional velocity field is automatically calculated on the microcomputer. Uncertainty intervals associated with the present technique are systematically evaluated. An unsteady laminar Couette flow between two concentric cylinders, of which the outer cylinder starts to rotate impulsively, is measured by the present technique. The instantaneous velocity profiles measured show good agreement with the analytical solutions within the experimental uncertainty, and thus, the present technique is proven to be applicable to the measurement of unsteady flow. The decay of turbulence generated in a stirred water tank is also measured in good agreement with the theoretical prediction.
著者
石原 邦雄
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.43-47, 2010-04-30 (Released:2011-05-10)
参考文献数
5

シンポジウムの際のコメンテーターの立場から,当日の報告により得られた示唆と家族研究において考えるべきポイントとして,以下の2点を指摘した。第1に,統計的にも増加しつつある独身男性高齢者に典型的に見られるコミュニケーション能力の不足と,そこから生じる社会的孤立などの問題に注意を向ける必要があること,そのためにも,従来日本の家族研究では根付いていなかった,コミュニケーション論や相互作用論による研究が求められる。第2には,葬送の「個人化」に関連して,それが市場化・商品化と連動することによるネガティブな側面に着目することの重要性を再確認するとともに,より基礎的には,家族について何らかの制度論的,文化論的なアプローチによる研究が改めて求められているのではないか。
著者
児玉 寛希 樋口 秀 中出 文平 松川 寿也
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.505-510, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
12
被引用文献数
2

地方都市では、昨今の財政難や今後の人口減少に伴い、税収が減少に転じている。持続可能なまちづくりを行うためには、税収の確保が求められるが、中心市街地・既成市街地の衰退により、都市全体の固定資産税収を減少させている。本研究では、長岡市・松本市・上田市・高知市を研究対象として、固定資産税収動向を市街地区分別に把握するとともに、どのような市街地指標が固定資産税収に影響するかを検討した。その結果、市街地指標と固定資産税収には関連性が見られ、市街地指標が優位な都市では固定資産税指標が高く、低位にある都市では固定資産税収の減少が大きくなっていることが明らかとなった。固定資産税収を確保するためには、評価額の低下を防ぐ必要があり、中心市街地やその周辺の既成市街地へ開発を誘導することが重要といえる。
著者
片桐 資津子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.70-86, 2012-06-30 (Released:2013-11-22)
参考文献数
37

一般に敬遠されがちな施設ケアには, 在宅ケアでは享受できないものがある. それは専門のケア職員が常駐していることに加えて, 要介護状態の利用者が集まって生活しているため「グループのもつ力」が存在していることである.本稿では, 相部屋の従来型特養と個室完備の新型特養を比較することにより, グループのもつ力と個別ケアのあり方を探究した. 本来ユニットケアをおこなう施設として創設された新型特養は, グループのもつ力を活用しながら個別ケアを実現できるはずであった. しかし, 必ずしもうまくいっているとはいえない. グループのもつ力は所与のものではなく, 人と人との重層的なつながりのなかで育まれる必要があるからだ. その際に生じるジレンマを浮き彫りにすることを本稿の研究課題とした.そのため, まず既存研究の「再生力集団」の概念を検討し, グループのもつ力の説明概念として, 「役割」と「共同」を抽出した. さらに従来型と新型のケア職員にインタビュー調査を実施し, 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ (M-GTA) により, 「安心」と「自由」の説明概念を抽出した.従来型と新型ではグループのもつ力の中身が異なっており, それぞれに一長一短がある. グループのもつ力を個別ケアにつなげていくためには, 役割, 共同, 安心, 自由という4つの説明概念からみえてきたジレンマに折り合いをつけていく必要があることが結論として示された.
著者
筏 義人
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.33-44, 2007-06-01 (Released:2012-10-29)
参考文献数
36

最近, 気管支喘息のようなアレルギー疾患が先進国を中心に増え続けている。その原因は必ずしも明らかではないが, 推測されている大きな原因は,最近の急激な室内環境変化である。すなわち, 住居の気密性と断熱性が高まるとともに, 室内冷暖房設備の機能が向上した結果, 室内にダニやカビが年中住みついてしまったのである。それまでは, 高温多湿期という限られた期間しかダニやカビは住居内に生息できなかった。アレルギー疾患のアレルゲンとして最も可能性の高いダニアレルゲンが常に居住空間内に存在するために, アレルギーの発病頻度が高くなったという次第である。その結果, 室内環境からダニの糞やペットの毛などを含むハウスダストを排除しようという試みが国の内外において活発に進められている。わが国においては, 以前から畳やフトンの天日干しと叩き, 床の雑巾拭き, 掃除機がけ, などがダニの排除に実施されてきた。最近では, 先端技術を利用した方法も用いられている。本解説においては, 特にわが国で, 最近, 開発されたダニの排除法とその効果を調べた結果を最近の文献に基づいて紹介する。
著者
佐藤 貴宣
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.93, pp.27-46, 2013-11-30 (Released:2015-03-25)
参考文献数
14
被引用文献数
2

本稿は,教師たちが盲学校のリアリティを,普通学校とは別の独得の秩序をもつ現実として構成していくその仕方を解明するとともに,そうしたリアリティ構成のあり方が,どのような形で生徒たちの進路形成・進路分化を規定しうるのかを,エスノメソドロジーの成員カテゴリー化論に依拠して考察することを目的とする。 この間,精力的に成員性カテゴリー化分析(MCA)を推進してきたエグリンとヘスターはリフェラル・ミーティングにおける参加者のカテゴリー使用を考察することにより,成員カテゴリーや成員カテゴリー化装置(MCD),その述部の意味はインデクシカルな表現から成り立ち,カテゴリー化とその文脈とは相互に精緻化し合うと主張してきた。本稿もヘスターらのアイディアを援用し,盲学校という場のリアリティを構成する教師たちの言語行為を記述していく。それはすなわち,盲学校に固有のリアリティが状況定義と生徒のカテゴリー化との相互規定性として達成されていくプロセスの解明に他ならない。そのようにして達成されていく盲学校のリアリティは,[盲学校教師]カテゴリーに対して特定の述部的行為を道徳的に帰属する。その結果,盲学校内部の職業課程を経由する職業移行が,視覚障害を有する生徒にとっての,最も妥当な進路として合理化されていくのである。
著者
青木 雅信 平野 恭弘 阿曾 佳郎
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.152-157, 2011 (Released:2014-02-07)
参考文献数
10

ESWL施行後に発生した腎被膜下血腫および腎周囲血腫症例について臨床的に検討した.  対象は2005年1月から2009年5月までに当院でESWLを施行した腎結石123例で,腎被膜下または腎周囲血腫を合併した28例と合併しなかった95例について臨床的に比較し,血腫形成についての危険因子を検討した.腎周囲血腫を4例認め,そのうち3例に高血圧の既往があり降圧剤を内服していた.血腫形成群は血腫非形成群と比較してbody mass index(BMI)25kg/m2以上の割合が有意に高かった.また,全ESWL180回における検討では血腫形成群においてESWL施行中の血圧が有意に上昇していた.さらにBMI 25kg/m2以上であること,ESWL施行中に収縮期血圧が30mmHg以上上昇することが血腫形成の危険因子であった.  ESWLを施行する際には,既往歴,内服薬,肥満度を念頭において,施行中の血圧変化に十分な注意を払うべきであると考えられた.
著者
山中 孝文 田中 尚人 星野 裕司 本田 泰寛
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.82-95, 2012 (Released:2012-08-20)
参考文献数
27

熊本大学工学部の前身である第五高等学校工学部,のちの熊本高等工業学校は1897(明治30)年,1906(明治39)年に実業専門学校として設立された.上記の学校の卒業生は高等専門学を教授され,工学得業士の称号を授与された.本研究では,まず土木分野における五高工学部・熊本高工の位置づけを整理し,実社会における工学得業士の割合を示した.さらに,卒業時点の進路と勤務先の変遷に関するデータベースを作成することにより,工学得業士の主な勤務先が地方官庁だったことを明らかにした.最終的に,地方官庁の勤務者を抽出してその就業状況について分析することにより,その特徴を考察した.
著者
Tomohiro TAKAKI Kazuya NAKAGAWA Yusuke MORITA Eiji NAKAMACHI
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
Mechanical Engineering Journal (ISSN:21879745)
巻号頁・発行日
pp.15-00063, (Released:2015-05-22)
参考文献数
61
被引用文献数
1 6

In this study, we applied a modified Kobayashi-Warren-Carter (KWC) phase-field model to the neurite growth process. To confirm the applicability of this model, we observed axonal extension of PC-12D cells cultured with nerve growth factor (NGF). Based on our observations, we defined three stages of nerve cell axonal extension: neurite generation, neurite contraction, and axon extension. We further determined the parameters in the phase-field equations to express the three extension stages. Finally, our results show that the modified KWC phase-field model reasonably expresses the morphologies of nerve cells and predicts the three stages of nerve cell axonal extension. Although, we employed the binary alloy solidification model as a sample model in the present phase-field simulations, this work will be extensible to relatively more realistic models for nerve cell growth.
著者
出羽 寛
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.139-151, 2002 (Released:2008-07-23)
参考文献数
27
被引用文献数
2

北海道旭川市に隣接する当麻町において,孤立林を含むモザイク的な生息環境である農耕地域でのネズミ類の分布,種類構成,孤立林の利用形態を明らかにするために,森林域(屏風山),3つの孤立林(親山5.1ha,子山 4.1ha,窪山 0.3ha)と農耕地(水田,ビート畑,麦畑,JR 沿線草地,農道横草地,納屋·ビニールハウス)に調査区を設定,1986年6月から1988年11月まで毎月1回(12月から4月までの積雪期間を除く),記号放逐法によるネズミ類の個体数調査を行った.森林域と孤立林ではヒメネズミApodemus argenteus, エゾアカネズミ A. supeciosus ainu, エゾヤチネズミ Clethrionomys rufocanus bedfordiae の3種が主要な構成種であり,農耕地ではエゾヤチネズミ,カラフトアカネズミA. peninsulae, ドブネズミ Rattus norvegicus, ハツカネズミ Mus musculus の4種が主要構成種であった.ネズミ類による孤立林の利用形態には次の3つのタイプが認められた.a)エゾヤチネズミは孤立林を最も主要な生息場所として利用するが,同時に農耕地も普通に利用し,孤立林と農耕地の間で移動が通年見られる.b)ヒメネズミとエゾアカネズミは孤立林だけをすみ場所として利用し,農耕地は秋の移動·分散時の経路として利用した.ただし,面積が小さい場合は孤立林も秋から冬季の一時的なすみ場所として利用した.c)カラフトアカネズミ,ドブネズミ,ハツカネズミの3種は農耕地を主要なすみ場所として利用し,孤立林には主に9月から11月に侵入し,一時的なすみ場所として利用した.