著者
加瀬 和俊
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.141-184, 2005-02-07

本稿は中高等教育修了者の就職状況が著しく悪化し,すでに就職していた官公庁・民間企業の職員層の解雇も増加した状況の下で,1929年度から開始された小額給料生活者失業救済事業について,その立案過程・実施過程の特徴を実証的に検討したものである.本稿の分析の結果,失業職員層を対象としたこの事業は,日雇失業者を対象とした失業救済事業とはその内容・性格が大きく異ならざるをえなかったことが明らかになり,失業対策を労働者の階層性,労働市場の分断性を考慮せずに論じることはできないことが確認できた.また,結果的に見れば,失業問題打開のために中高等教育修了者数を減少させよとする財界の主張が実現せず,日中戦争前後の景気回復の中で職員層失業問題がなし崩し的に解消されたのであるから,この事業は客観的には,職員層の失業問題の深刻化を部分的に抑えつつ,景気回復までの時間稼ぎの意味を持ったと位置付けることができる.
著者
紀谷 文樹 円角 健一 市川 憲良 小川 正晃 栗原 隆
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会 論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.51, pp.69-78, 1993
被引用文献数
2

本報は,当学会で作成した"給水・給湯設備の計測システム指針"に基づき,男子独身寮における水・湯の使用量の実態調査を行った結果に関する調査研究報告である.約80名を収容する男子寮を対象として,給水4系統(建物全体・洗濯室・厨房および大浴場),給湯1系統(大浴場)の使用状況について,約1週間にわたり連続自動計測を実施している.同様の計測を冬期および夏期に実施し,それらの結果を比較・分析してその傾向を把握した.
著者
栫 邦雄 山井 成良 金 勇 北川 直哉 友石 正彦
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2018-IOT-42, no.9, pp.1-6, 2018-06-21

インターネットの普及に伴って,マルウェア感染による被害が世界中で深刻な問題になっており,マルウェア感染を早期に検知することが必要とされている.コンピュータに侵入したマルウェアは,攻撃者からの指令を受信するために C&C サーバと通信を行うことが多い.C&C (Command and Control) サーバは攻撃対象のホストを IP アドレスで指定することがあり,その場合マルウェアは DNS による名前解決をせずに直接 IP アドレスで通信先のホストを指定して TCP 接続を行おうとする.本研究では,DNS の名前解決の動作に着目して,マルウェアが行う通信を DNS 問合せの有無に基づいて検知 ・ 遮断するシステムを提案する.
著者
アカミネ ロジェリオ 舟橋 國男 鈴木 毅 木多 道宏 李 斌
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.68, no.566, pp.71-79, 2003
被引用文献数
6

1. 序 1990年代以降、世界各地の大都市における都市再開発プロジェクトが勢いを増してきた。この過程における重要な特徴の一つは、密集市街地の居住者に、高密に由来する社会的な諸問題やストレスを軽減し得るオープンスペース(以下OS)を確保することである。 地方自治体は、民間セクターを計画に惹きつける手段として「インセンティヴゾーニング」を採ってきた。Kaydenはニューヨークにおける「私有公的空間privately owned public spaces (pops)」事例を法的側面・空間的配置から分析した。Whyteはプラザの利用実態研究に基づいてプラザのデザインに関する法の改良に寄与した。日本の大阪アメニティパーク(OAP)は都市再開発プロジェクトに含まれる私有公的空間の一事例である。 日本の都市におけるpopsの着想は建築基準法に基づく総合設計制度による公開空地に見られ、1980年代以来多くの研究者がその研究に従事した。それらの成果は主に、利用状況・心理的側面・物理的側面・維持管理的条件・手法の適用方法、の5テーマにまとめられる。2.目的と方法 本研究では、一つの空間事例に絞ったり適用された手法の詳細に限定せず、いくつかのOSが併存する一定の地区におけるOSとしてのOAPのpopsを様々な視点から分析する。空間的配置状況に基づく各場所利用の特徴を明らかにすると共に、公的利用に対するOAP-OSの役割を評価する。特定の場所に即しながら、有意義な評価が今後の計画のデザインコンセプトに参照され得るものと期待される。調査は、OAPを校区に含む公立小学校と隣接校区の小学校児童の保護者を対象とする。良く行くOS・行為内容・同伴者・時刻・頻度・滞在時間等、オープンスペース利用に関する質問紙調査を行うと共に(回収率約70%)、面接調査に応じた者に対するインタビューを行い(質問紙回答者の約10%)、さらに詳細な利用状況を把握した。3.回答者属性(図1) 質問紙調査回答者は各家庭1名としたので、30才乃至40才代女性、主婦もしくは有業者が多く、男性は全体の17%であった。 4.OAPとその近隣におけるOS 調査対象2校区にある15箇所の各OSについて、インタビューによって得られた特徴づけは、雰囲気・魅力・利用・問題点・改善への示唆、という5つの側面に整理された(表2,図3)。雰囲気は場所のイメージに関連し、魅力は利用に対する固有の誘因、利用は各場所に於ける人々の行為である。各場所に対する不満は問題点と示唆として、また全般的な問題点も記述された(表3)。主として、公園に住むホームレスの人々に関するもの、周辺との関連の欠如、管理、施設利用の葛藤などである。5.OAP開設後の変化(表4)インタビューによると、OAPは近隣を活性化し、人口増加をもたらし、その結果として交通量・商業業務の増加という3点で周辺を変化させた。 6. OSと利用の特徴 質問紙調査結果から、OSの利用者数順位が得られた(図、4)。OAPのOSは第1位である。回答者の半数以上が、24ヵ所のOSを利用している(図5)。質問紙調査で得られた各種の結果(利用行為・同伴者・時刻・頻度・滞在時間)は表5に示されている。 扇町・滝川・東天満公園は子どもとの遊びに最も好まれている。他の共通の活動は川沿い公園における散歩である。OSの利用は通常昼間帯である。多くの回答者は週2回乃至月1回利用し、滞在時間は扇町公園と大阪城公園で最も長く天満宮境内では最も短い。OAP-OSと他の場所との利用順位比較は明確な結果を示すが、他の変数を同時に観察すると明確な関係は少なくなる。 7. OSへの距離 OAP利用者と非利用者別に、住居からOAPへの距離ならびに住居から最もよく利用するOSへの距離がそれぞれ測定された。それらの関連が図6に示されている。OAP非利用者の大多数がOAPから500M以上の範囲に住んでいる。 8. 0APのOS空間的配置とまとまりとに基づいてOAPのOSが更に細分化された(表6,図7)。それぞれが、雰囲気・魅力・利用・問題点・改善への示唆の観点から特微づけられ他のOSと比較された(表6,図7-1)。 桜広場と河畔までの延伸部分が最も好まれる場所であり、北端のプレイグランドが最も嫌われている。歩行者の流れは、好まれる場所の連結を示し(図8)、桜広場はOAP-OSの核であると言われ、OAPタワー周囲のOSはOAPのOSであると良く認識されている(図9)。 9. 結論 OAPのOSは、不潔物・ホームレスの人々に関する問題等は無い一方利用が制限され、静かな活動のみが適している。少なくともより多くの施設設備、例えば座れる場所、がここには確保されるべきである。OAPのOSは都市構成体との妥当な統合を与えているが、アクセシビリティの改善が、例えば源八橋下の息詰まるような通路の如く、近隣のOSへのアクセシビリティに対して悪影響を与えている場合も生じている。近隣におけるOSの利用に関するあらゆる要求を把握し、それらが私有公的空間プロジェクトにおいて満足されるように、検討条件として設定されるべきである。それにより、公的利用に対するより効果的な施設であり得るであろう。
著者
Bando Hiroshi Ebe Koji Bando Masahiro
出版者
OMICS International
雑誌
Molecular Biology : Open Access (ISSN:21689547)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, 2018-01-24

Discussion concerning Calorie Restriction (CR) and low carbohydrate diet (LCD) has continued for years. Authors have developed research of LCD using super LCD with 12% of carbohydrate. The biology of human aging includes study between human and mammalian such as mice, rhesus monkeys. Moderate CR reduced age-related mortality, incidence of diabetes, cancer, cardiovascular disease. By very low calorie diet (VLCD), body weight can be reduced, but the diabetic pathological state remains. Besides CR and LCD, Zone, Ornish, LEARN Diets and Mediterranean style can be applicable. There are very low-carbohydrate ketogenic diet (VLCKD), Moderate-LCD, High- Carbohydrate Diet, as related with the definition of LCD. Morbus (M) value was investigated for clinical practice of LCD, in which M value was remarkably improved by LCD treatment.
著者
Kentaro Suzuki Mari Michikawa Haruna Sato Masahiro Yuki Kei Kamino Wataru Ogasawara Shinya Fushinobu Satoshi Kaneko
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
Journal of Applied Glycoscience (ISSN:13447882)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.13-21, 2018-05-20 (Released:2018-05-20)
参考文献数
40
被引用文献数
9

Highly thermostable β-mannanase, belonging to glycoside hydrolase family 5 subfamily 7, was purified from the culture supernatant of Talaromyces trachyspermus B168 and the cDNA of its transcript was cloned. The recombinant enzyme showed maximal activity at pH 4.5 and 85 °C. It retained more than 90 % of its activity below 60 °C. Obtaining the crystal structure of the enzyme helped us to understand the mechanism of its thermostability. An antiparallel β-sheet, salt-bridges, hydrophobic packing, proline residues in the loops, and loop shortening are considered to be related to the thermostability of the enzyme. The enzyme hydrolyzed mannans such as locust bean gum, carob galactomannan, guar gum, konjac glucomannan, and ivory nut mannan. It hydrolyzed 50.7 % of the total mannans from coffee waste, producing mannooligosaccharides. The enzyme has the highest optimum temperature among the known fungal β-mannanases and has potential for use in industrial applications.
著者
北村 育子 永田 千鶴 Ikuko Kitamura Chizuru Nagata
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.133, pp.1-16, 2015-09

認知症高齢者が地域で暮らし続けることを支援するための要件と課題とを,地域包括支援センターにおいて行われているチームアプローチの実際を踏まえて明らかにした.熊本県内の全てのセンター79か所の職員196名から回答を得,44項目7因子(1)認知症疾患医療センターとの連携,(2)認知症高齢者の支援に必要なネットワークの構築と家族・地域の啓発,(3)認知症高齢者の緩和ケアと終末期ケア,(4)認知症高齢者の権利擁護とそのための地域資源の開発,(5)認知症高齢者とその予備軍の所在・状況の把握,(6)介護サービス利用のためのアドボカシー,(7)介護家族支援,を抽出した.専門職間で実施に多少の違いはあるものの,概ね地域包括支援センターとしてチームアプローチによる実践が行われていたが,終末期ケアに関する支援,ボランティアの活動機会の創出,家族会の立ち上げや地域への広報,などは実施率が低かった.
著者
樋口 土生
巻号頁・発行日
2013-09

Supervisor:飯田弘之
著者
安達 博行 亀川 裕之 岩田 茂樹
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09135713)
巻号頁・発行日
vol.J70-D, no.10, pp.1843-1852, 1987-10-25

将棋の盤面を縦横9マスから縦横nマスに一般化したとき,与えられた局面から先手が勝てるかどうかを決定する問題は指数時間完成であることを示す.すなわち一般化将棋の先手必勝問題を解くどのアルゴリズムも少なくともnの指数時間を必要とし,この問題は「手に負えない」問題であることを証明する.この結果は,すでに指数時間完全であることが知られているG3の先手必勝問題(Stockmeyer, et al., Provably difficult combinatorial games, SIAM J. Comput. 8)から対数領域還元可能であることを示す.G3は与えられた積和形式の論理関数上のゲームである.一般化将棋の構成は各論理変数をシミュレートするための変数部,論理関数の各項に対応する飛車捕獲部,リテラルが項に含まれることに対応する竜角交代部などからなる.
著者
橋本 郷史
出版者
日本医学図書館協会
雑誌
医学図書館 (ISSN:04452429)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.131-136, 2015-06

解説For decades, the cost of academic journals has been increasing, and academic libraries have had to cope with this situation. The "Big Deal" subscription model is no longer available for many libraries. In this study, the Nature Publishing Group Pay-Per-View (PPV) service: Articles on Demand (AOD) is examined from the perspective of costbenefit.This study also examined whether the AOD model fits the needs of researchers. To demonstrate the cost evaluation and usage features, the AOD access log was examined. Globally, the AOD cost is lower than that of any other type of subscription contract. AOD cannot be archived, but the AOD log indicates that recent material is accessed more frequently than older material. Old papers are not used. After the introduction of AOD, the number of used titles increase by more than two times the previous number. AOD fits the potential needs of researchers. Major usage concentrates on specific journals, while minor usage extends to a wide range of titles. The combination of a title-based contract with PPV would be an effective means of coping with the increasing costs of academic journals.(著者抄録)
著者
坂本 一民
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
油化学 (ISSN:18842003)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.256-265, 1995-04-20 (Released:2009-10-16)
参考文献数
72
被引用文献数
1

Acylamino acid is a surfactant comprised of fatty acid and amino acids. There are several natural acylamino acids present as components in living tissuue and the research of acylamino acid started from biological interest. Acylglutamate is the first surfactant utilizing natural amino acid and is being actively sold as mild cleansing product due to its extreame mildness to the skin.Mild and environmentally gentle surfactants are eagerly being sought at present and this has led to increased demand for various acylamino acids.The properties and applications of various acylamino acids are explained and breaf introduction is made for other surfactants derived from amino acids.
著者
Yukinori SATO Masako TAKADA Shun NOGUCHI
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
Journal of Home Economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.377-380, 1991-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

ドウの一つの基本配合を中心に, 各成分の配合量を変えてドーナツを調製し, ドーナツの脱水量と吸油量とに及ぼす配合成分の影響を求めた.その結果, 次のことが明らかになった.(1) 油の添加量を変えても, ドーナツの脱脂乾燥物あたりの脱水量と吸油量とはほぼ一定であった.(2) 水の添加量が少なくなると脱水量はやや増大し, 吸油量も明らかに増大する.これは水が減少するとドウの硬化が起こり, これがドーナツにひびを生じさせるためと考えられた.(3) ドーナツは大きい方が脱水量も吸油量も少なく, 水や油の移行には表面積が関与しており, 比表面積の大きい方が脱水量, 吸油量ともに大きくなることがわかった.(4) 砂糖の量を増すと吸油量は明らかに増大するが, 脱水量にはあまり変化がなかった.(5) 卵の量が増すと, 脱水量が減じ, 吸油量が増す傾向がみられた.これらの知見からドーナツ調製時の水や油の移行には表面積が大きく影響し, 材料配合はドーナツの組織に変化を与えることで水や油の移行に関与し, またひびの生成は脱水量, 吸油量を大きく支配することが推定された.
著者
深澤正大
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.68, pp.47-52, 1989-08-17

自然界における色彩の変化で最も身近なものは太陽光である.晴れた日の空の青さや,曇りの日の白っぽさ,朝焼け,夕焼けの赤さ,雨の日の暗さ等,多様な変化を示す.これらの色をCRTで忠実に色再現を行なうことは大変な無理がある.しかしこれらの違いの要因を考慮した計算による変化を表示することはできる.さらに厳密にはディスプレー上に表示されたものとハードコピーに記録されたものでも色は違っているのが事実である.変化要因の抽出と色の再現を試みた.The most familiar color difference in nature is solar light. Such as a blue sky in a very fine day, or whitish sky in a cloudy day, red sky in an evening grow or dark sky in a rainy day and so on. It is very difficult to analyze these color reconstructions with the CRT. However, it is possible to indicate the differences by caluculation using these factors. Fathermore, it is a fact that the actual indication of Display and the computed results are different. Here, we will study a sample variat ion of the factors and the reconstructions of these colors.

2 0 0 0 OA 日本略史

著者
笠間益三 編
出版者
鬼頭平兵衛等
巻号頁・発行日
vol.1, 1879