著者
佐藤 裕
出版者
富山大学人文学部
雑誌
富山大学人文学部紀要 (ISSN:03865975)
巻号頁・発行日
no.59, pp.1-33, 2013

ウィトゲンシュタインの哲学,特に「哲学探究」を中心とする,いわゆる「後期」のそれは,社会学という学問分野においても多くの議論を呼び起こしてきた。とりわけ,「規則(に従うこと)」や「私的言語」といった論点は,「言語(活動)」と「社会」との接点に位置しており,社会学者にとって意義のある検討課題であろう。 しかし,後期ウィトゲンシュタインの「中心テーマ」と評されることもある,「言語ゲーム」という概念それ自体は,それほど主題化されてこなかったのではないかと私は考えている。これは,ウィトゲンシュタイン自身がこの概念を明確には定義しておらず,むしろ積極的な定義を避けているようにも見える,といったことにもよるだろうし,この概念を理論的な概念であるというよりは理論の方向性を(漠然と)示すものとして受け止められてきたためではないかとも思う。 しかしながら,少なくとも社会学にとっては,この「言語ゲーム」という概念は,それ自体が詳細に検討する価値のある概念なのではないかと私は考えている。そこで,本論では「言語ゲーム」という概念そのものを主題化することにより,社会学におけるこの概念の利用可能性を検討したい。
著者
松本 大輝 松井 勇佑 山崎 俊彦 相澤 清晴 片桐 孝憲
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.6, pp.1-6, 2014-08-25

イラストは身近な表現手段であり,近年では,pixiv といったイラスト投稿 SNS サイトで多くのイラストが共有・閲覧されている.しかし,イラストの検索方法や表示方法にはあまり注視されていないというのが現状である.そこで,本稿では,著者の画風の類似性に基づいてイラストを平面上にマッピングし可視化する手法を提案する.これにより,ユーザは好みのイラストに似た画風のイラストを一度に複数閲覧することができ,より効率よくイラストを閲覧することができる.Illustration is a common way of communication. A lot of illustrations are uploaded, shared and viewed on illustration-sharing SNSs such as pixiv. However, how to retrieve and display illustrations has received relatively sparse attention. We propose a method of visualizing illustrations based on drawing style similarity of authors. By using this method, users can see illustrations which have similar drawing styles to their favorite one at a time and enjoy seeing illustrations more efficiently and effectively in illustration-sharing SNSs.
著者
山浦 晴男
出版者
医学書院
雑誌
看護研究 (ISSN:00228370)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.218-227, 2017-06-15

はじめに この小論は,次の文献と筆者の体験をもとに,クラシックGTとKJ法およびそれに準拠した質的統合法(KJ法)を比較検討している。 Ⅰ. 川喜田二郎(1967).発想法─創造性開発のために.中央公論社. Ⅱ. 川喜田二郎(1986).KJ法─渾沌をして語らしめる.中央公論社. Ⅲ. B.G.グレイザー&A.L.ストラウス/後藤隆,大出春江,水野節夫訳(1996).データ対話型理論の発見─調査からいかに理論をうみだすか.新曜社. Ⅳ. 山浦晴男(2008).科学的な質的研究のための質的統合法(KJ法)と考察法の理論と技術.看護研究,41(1),11-32. Ⅴ. 山浦晴男(2012).質的統合法入門─考え方と手順.医学書院. Ⅵ. V.Bマーティン&A.ユンニルド編/志村健一,小島通代,水野節夫監訳(2017).グラウンデッド・セオリー─バーニー・グレーザーの哲学・方法・実践.ミネルヴァ書房. これらの文献とともに,KJ法の創案者川喜田二郎氏に直接指導を受けた20年間の体験と,その後の26年間にわたる筆者の実践経験に基づき,比較検討を行なった。 日本ではグレイザーの流れに基づくクラシック・グラウンデッド・セオリー(以下,クラシックGT)のほかに,ストラウスの流れをくむグラウンデッド・セオリー(以下,GT)が普及しているとされている。そこで次の文献も参照したが,本小論では主にクラシックGTとの比較を行なっている。 Ⅶ. 木下康二(2003).グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践─質的研究への誘い.弘文堂. Ⅷ. 戈木クレイグヒル滋子(2005).質的研究方法ゼミナール─グラウンデッド・セオリー・アプローチを学ぶ.医学書院. Ⅸ. 戈木クレイグヒル滋子(2006).グラウンデッド・セオリー・アプローチ─理論を生みだすまで.新曜社. Ⅹ. 髙木廣文(2011).質的研究を科学する.医学書院. これらに加えてさらに,次の文献を参照している。 Ⅺ. マイケル・ポランニー/高橋勇夫訳(2003).暗黙知の次元.筑摩書房. Ⅻ. 伊藤邦武(2016).プラグマティズム入門.筑摩書房. なお,筆者はクラシックGTおよびGTの直接的な体験がなく,文献ならびに小島通代氏の講義と口頭での学びの範囲での理解であり,そこに理解の限界があることを申し添えたい。また,以降の本文中の引用については,一部を除いて,上に挙げた文献番号を示す形とさせていただきたい。
著者
加納 隼人 佐藤 理史 松崎 拓也
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.8, pp.1-7, 2015-01-12

本年度新たに実装した,大学入試センター試験 『国語』 評論傍線部問題を解くソルバーについて報告する.実装したソルバーは,傍線部問題の本文と選択肢に対して節境界検出による節分割を行い,その結果を用いて類似度計算を行うことで,解答を選択する.本ソルバーをセンター試験の過去問 40 問に適用したところ,昨年度のソルバーを上回る最大 28 問の正解数を示した.This paper describes a new solver that solves comprehension questions in Contemporary Japanese of the National Center Test. A target question consists of a text body, a question sentence, and five choices. Our solver divides the text body and the choices into clauses by using clause-boundary detection and selects a choice based on clause similarity. Our solver correctly solved 28 questions in 40 previous questions of the National Center Test.
著者
國井 義郎
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.67-85, 2018-03-31

主要農作物種子法は,稲などの主要農作物の優良な公共種子の開発および普及を公金によって支援する法制度を構築していた。しかし,農薬や化学肥料に強い耐性をもつ遺伝子組換種子が化学企業により開発されたのに伴い,わが国において遺伝子組換種子の普及を目論んで公共種子の開発および普及を支えた主要農作物種子法を廃止することとなった。そこで,本稿では,主要農作物種子法の廃止後,種苗における知的財産保護を目的とする種苗法との整合性を考慮しつつ「優良な種子」を開発し普及させようと試みる制度改革に内在する法制度上の諸問題を考慮した。
著者
小林 信彦 Nobuhiko KOBAYASHI 桃山学院大学文学部
出版者
桃山学院大学総合研究所
雑誌
桃山学院大学総合研究所紀要 = ST.ANDREW'S UNIVERSITY BULLETIN OF THE RESEARCH INSTITUTE (ISSN:1346048X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.107-140, 2001-03-15

Japanese kamis who hate sins get angry and bring about disasters when men do wrong. Without sins they are happy and do not cause disasters. Taking advantage of this behaviour, the Japanese framed the idea of kekwa They tried to soothe angry kamis by chanting sutras as magic formulae in order to stop disasters such as droughts and plagues. This is a new type of harahe and therefore repenting is not involved in spite of its name "kekwa" (to repent).
著者
花村 榮一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.688-696, 2005

1900年プランクは, 古典物理学では説明できない溶鉱炉中の光エネルギーの波長分布の謎を, 光量子仮説を導入して解決した.これが量子力学の誕生である.1905年この光の粒子性(光子)を用いて, アインシュタインは光電効果を説明した.光が波動と粒子の二面性を持つという非日常性は, ハイゼンベルグの不確定性原理で理解できた.しかし, 青色の1光子が赤色の2光子に分割されるパラメトリック過程で発生する2光子の量子もつれ合い(強い相関)は, 2つの光子を遠く離しても存在し続ける.このもう一つの非日常性を1935年アインシュタインらは指摘した.これも, 量子力学特有の非局所性として理解され, 最近は量子コンピューターと量子通信に使われようとしている.レーザー光の発明は光学と工学に革命をもたらし, 金属加工に用いられる一方で, 人類は10<SUP>-9</SUP>Kのオーダーの超低温まで原子系を冷却できるようになった.その結果, 原子系はボーズ・アインシュタイン凝縮やフェルミ凝縮を示して, 波動として振舞う.この百年の歩みはアインシュタインに負うところが大きかったが, 最近は日本からの寄与も大きくなりつつある.これらを概観する.
著者
林 政彦 酒見 昌伸 安井 万奈 山﨑 淳司 堤 貞夫
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.3-16, 2016

縄文時代の6千年前頃から首飾り等に使われていたヒスイ(翡翠,ヒスイ輝石(Jadeite))は,主に新潟県糸魚川市~富山県朝日町周辺で産出したとされている.わが国では,新潟県以外にも鳥取県若桜町,岡山県新見市,兵庫県養父市あるいは長崎県長崎市などからも産することが報告されている。さらに外国では,ミャンマー,アメリカ,グアテマラ,ロシアなどが知られている。今回入手した各地の試料を調べた結果,輝石族の鉱物名分類(Morimotoら,1988)1)に従うと,ほとんどのものはヒスイ輝石であったが,いくつかの産地のものはオンファス輝石(Omphacite)と呼んだ方がよいものであった。
著者
藤本 典幸 萩原 兼一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.173, pp.61-66, 2005-07-08
被引用文献数
3

個人ユーザを対象に, 数Mbps程度のインターネット回線1本とコモディティPC1台のみを用いて, ウェブページ上に掲載されているマルチメディアデータをキーワード検索するシステムの設計と実装, および評価結果について述べる.サポートされるデータ形式は, 画像(JPEG, GIF, PNG), 動画(MPEG, FLASH, RealMediaなど), 音声(MP3, wave, MIDIなど), PDFファイルなど, HTMLのIMGタグ, Aタグ, OBJECTタグ, EMBEDタグで記述できるもの全てである.本システムはユーザがクエリーと収集時間を入力した後に, Google Web APIを用いて取得したウェブページ群を種ページとして, 指定された時間の間, トピック主導型クローリングを行い, 収集したHTMLのテキストベースの解析を行う(マルチメディアデータの内容解析は行わない).クローリングアルゴリズム, スコアリングアルゴリズムを工夫し, マルチスレッドプログラミングを行うことにより, 本システムは, 各ウェブサイトにかかる負荷を考慮しつつ, ユーザのクエリー入力後30秒間で150ページ前後のウェブページをクローリング, 解析し, 300個程度のマルティメディアデータ(多くは画像)をスコア順に出力することができる.
著者
川乗 賀也
出版者
岩手県立大学
雑誌
岩手県立大学社会福祉学部紀要 (ISSN:13448528)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.21-24, 2015-03

平成14年に厚生労働省は精神科医療について、それまでの入院主体から地域医療への転換をはかったが、近年は全国的に当事者の自傷または他害のおそれがある者についての精神保健福祉法第24条に基づく、警察官や保健所の精神保健福祉相談員による危機介入が増加している。しかし和歌山市保健所ではこの危機介入が有意に減少していることが分かった。これには以下の要因が考えられた。まず相談員を増員することで危機介入時の体制を充実させた、入院時から退院を意識した関わりをしている、地域の関係機関同士の関係を良好に循環させる働きをしていることなどが考えられた。

2 0 0 0 OA 殉難録稿

著者
宮内省 編
出版者
吉川弘文館
巻号頁・発行日
vol.後篇, 1933