著者
吉澤 徹 山田 浩樹 堀内 健太郎 中原 正雄 谷 将之 高山 悠子 岩波 明 加藤 進昌 蜂須 貢 山元 俊憲 三村 將 中野 泰子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.459-468, 2016 (Released:2017-03-16)
参考文献数
23

非定型抗精神病薬は定型抗精神病薬に比べ錐体外路系の副作用などが少なく,また陰性症状にも効果を示すため,統合失調症治療薬の第一選択薬として用いられている.しかし,これら非定型抗精神病薬の副作用として,体重増加や耐糖能異常などが生じることが問題となっている.われわれは抗糖尿病作用,抗動脈硬化作用,抗炎症作用などを示し,脂質代謝異常により減少する高分子量アディポネクチン (HMWアディポネクチン) や増加するとインスリン抵抗性を助長するレチノール結合蛋白4 (RBP4) を指標として非定型抗精神病薬であるオランザピンとブロナンセリンの影響を統合失調症患者において観察した.薬物は通常臨床で使用されている用法・用量に従って投与され,向精神病薬同士の併用は避けた.その結果オランザピンはブロナンセリンに比べ総コレステロールおよびLDLコレステロールに対し有意な増加傾向を示し,HDLコレステロールは有意に増加させた.また,HMWアディポネクチンとRBP4に対してオランザピンは鏡面対称的な経時変化を示した.すなわち,オランザピン投与初期にHMWアディポネクチンは減少し,RBP4は増加した.ブロナンセリンはこれらに対し大きな影響は示さなかった.体重およびBMIに対してはオランザピンは14週以後大きく増加させたが,ブロナンセリンの体重増加はわずかであったが,両薬物間ではその変化は有意な差ではなかった.インスリンの分泌を反映する尿中C-ペプチド濃度に対してはオランザピンはこれを大きく低下し,ブロナンセリンはわずかな平均値の低下であり,有意な差はなかった.血中グルコースおよびヘモグロビンA1c (HbA1c) やグリコアルブミンは両薬剤において有意な影響は認められなかった.このようにオランザピンはコレステロール値や体重,BMIなどを増加させ,さらにインスリンの分泌を抑制し耐糖能異常を示す兆候が認められたが,ブロナンセリンはこれらに大きな影響を与えないことが示された.
著者
中野 有美
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.364-369, 2011-10-15 (Released:2015-06-24)
参考文献数
25

妊娠中および妊娠前後,もしくは近々妊娠の可能性がある女性の抑うつ/不安に薬物療法は使用しにくい。したがって,彼女らは認知行動療法を含む精神療法の有用性が高い集団と考えられる。 原因不明の反復流産の患者に対し,産婦人科領域では,簡便な情緒的サポートが患者の抑うつ/不安の軽減のみならず,出産率を向上させるであろう点を指摘している。一方で,それだけでは抑うつ/不安の改善に至らない反復流産の患者には,高強度認知行動療法など時間をかけたマンツーマンの精神的援助が必要となる。本稿では,流産,反復流産の患者の精神疾患罹病率について概観した後,認知行動療法を含む精神的支援について,これまでの調査研究と名古屋市立大学病院での試みをもとに論じた。
著者
中野 宏二郎 橋本 修宏 吉田 準史
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
シンポジウム: スポーツ・アンド・ヒューマン・ダイナミクス講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.C-26, 2016

<p>In this paper, we investigated energy distribution of a sports bicycle for evaluating the acceleration performance quantitatively. As the input force for measurement of the performance, constant weight was put on one side pedal of the bicycle positioned on a running roller, and the rotational speed of the wheel was measured under various conditions. The acceleration performance was then calculated by dividing the increased rotating rolling energy by the input energy. The result shows that almost 60% of the input energy was used for the acceleration of the bicycle. In addition, we also investigated influence of the wheel weight (moment of inertia) and air pressure of the tire on the performance. As the results, the performance was increased about 5% by the 30% reduction of the inertia. On the other hand, the performance was observed to decrease about 4% by the 30% reduction of the tire pressure. From these results, we could obtain the influence of the wheel and the tire characteristics on the acceleration performance of the sports bicycle quantitatively.</p>
著者
大石 不二夫 吉川 高雄 中野 純
出版者
マテリアルライフ学会
雑誌
マテリアルライフ
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.96-103, 1989

High performance engineering plasticsいわゆるスーパーエンジニアリングプラスチック (SEPと略記する) は、耐熱性等にすぐれ、高温用途だけでなく、力学的用途に対しても有望視されている。しかし実用上必要なせん断強度特性についての報告は極めて少ない<SUP>1) </SUP>。そこでSEPのうち4材種 (液晶ポリマー・PPS・PES・PEEK) について先に報告<SUP>1) </SUP>したのに引続き、芳香族を含むナイロン (PAMXD 6) とポリエーテルイミド (PEI) を採りあげて、汎用EPの最強級のポリアミド (PA-G) と比較しながら、次の諸物性を調べ傾向を明らかにした。<BR>1) 熱特性、2) せん断強度特性、3) 耐環境応力性、4) 耐候性 (促進、屋外) 、5) 耐疲労性 (定変形) 、6) 動的粘弾性挙動。
著者
寺井 朗子 萩野 賀世 浅倉 弘幸 大貝 真実 柳原 碧 木村 圭介 田中 智哉 觀 公子 中村 耕 荒金 眞佐子 中野 久子 門間 公夫 笹本 剛生
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.174-182, 2018-08-25 (Released:2018-08-30)
参考文献数
17
被引用文献数
1

イヌサフラン(Colchicum autumnale)は,ヨーロッパから北アフリカ原産の多年草で有毒植物である.食用であるギョウジャニンニクなどと外観が類似しているため,誤食による食中毒が発生している.形態観察や有毒成分の検出が困難な少量の試料からでも,イヌサフランであることを迅速に鑑別することを目的として,PCR法を検討した.イヌサフランのリボソームDNA中のinternal transcribed spacer (ITS) 領域をPCRにより特異的に増幅するプライマー対を新規に作製した.イヌサフラン9試料および48種類の農作物等から抽出したDNAを用いて,今回作製したプライマー対によるPCRを行った結果,イヌサフランのみを特異的に検出し,また,調理および人工胃液による消化を受けた試料についても検出可能であった.本PCR法は,イヌサフランに特異性が高く,迅速な鑑別に有用であることが確認された.
著者
野中 朋美 中野 冠
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集C編 (ISSN:18848354)
巻号頁・発行日
vol.79, no.798, pp.408-417, 2013 (Released:2013-02-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1

This paper evaluates CO2 emissions generated during the manufacturing phase of global production network and discusses requirements analysis of green sustainable policies of global production network to prevent carbon leakage arising from transnational production. It calculates CO2 emissions from electricity used in manufacturing, emissions during transport from mining to manufacturing countries and emissions during transport from manufacturing countries to market. A case study of electric vehicle (EV) production includes outcomes calculated CO2 emissions in the manufacturing phase and transportation phase: for production in China, India, Thailand, Germany, Japan and Mexico to market in Japan, German and Singapore. It is illustrated that CO2 emissions during manufacture of EVs vary significantly, depending on the carbon intensity from electricity generation and each country's technical efficiency, and transport has a minor influence on emissions.
著者
嶋田 宏 中野 晋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_749-I_754, 2017

ミャンマーのエーヤワディ地域は,2008年のサイクロン・ナルギスにより,約14万人の犠牲者を出した.これを受け沿岸部の高潮被害を軽減するため,独)国際協力機構によるミャンマー自然災害早期警報システム構築プロジェクトが実施された.このプロジェクトの一つとして,パテイン川河口部に衛星を利用したリアルタイム潮位観測システムを導入し,別途実施されている高潮予測システムとを併せて精度の高い高潮予測を可能としている.しかしながら,広範囲に入り組んだデルタ地帯の沿岸各地での高潮警報を住民に伝えるためには,更なる潮位計の設置により水位の変動を把握することが必要である.そのため筆者らは安価な簡易潮位計を設置し,短期間観測での調和分析に加え,観測潮位と月別降水量等との相関が高いことを検証することにより,乾季と雨季の水位変動を考慮した潮位推算を可能とした.
著者
嶋田 宏 中野 晋 村田 進 丹羽 竜也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_125-I_130, 2015
被引用文献数
1

ミャンマー沿岸部では2008年5月に深刻な高潮被害を受け,約14万人の犠牲者を出した.これを受け沿岸部デルタ地帯の高潮被害を軽減するため,JICAによる自然災害早期警報システム構築プロジェクト<sup>1)</sup>(JICAプロジェクト)が実施されている.広範囲で入り組んだ沿岸各地に精度の高い高潮警報を住民に伝えるためには,ミャンマー国(麺国)の技術者が自立的に各地の潮位特性を分析できる技術を身につけることが重要である.筆者らはリボンテープを用いた簡易潮位計を用い短期間の観測から潮位推算を行ない,これらの手法を防災安全教育の一環として麺国の実情に合わせた継続的な展開が可能な基礎的観測技術の移転を行った.
著者
中野 功一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.42, no.10, pp.1010-1013, 2001-10-15
被引用文献数
1

今年(2001年)に入り,米国最大のプロバイダであるAOLによって,ダイアルアップアクセス利用料金が値上げされた.ブロードバンド系のDSLサービスを提供しているSBCも,昨年末にDSLアクセス料金を値上げしている.
著者
安川 人央 中野 智彦 黒瀬 真 信岡 尚 井上 雅央
出版者
奈良県農業総合センター
雑誌
奈良県農業総合センター研究報告 (ISSN:18821944)
巻号頁・発行日
no.41, pp.29-33, 2010-03

シカ出没圃場におけるキャベツ栽培で、農地を効率的に活用するために、柵の設置の有無が耕起や移植にかかる作業時間と定植苗数に及ぼす影響並びに、肥料制限苗の定植直後のシカ被害軽減効果を調査した。キャベツの定植苗数は柵設置圃場に比べて柵未設置圃場で多く、耕起と定植に要した作業時間は、柵設置圃場に比べて柵未設置圃場で短かった。キャベツのシカによる被害には、食害と踏害があった。また、肥料制限苗の草丈および最大葉長は、慣行苗に比べて小さく、定植直後の食害株率は、春植えと秋植えの両作型ともに、慣行苗に比べて明らかに小さかった。さらに定植直後の踏害株率は、春植えと秋植えの両作型ともに、慣行苗に比べて小さい傾向が見られた。肥料制限苗のみを定植した場合、定植直後の食害株率はいずれの定植時期でも1%未満と小さかった。しかし、シカの出没が多い場合、少ない時期に比べて踏害株率が大きかった。これらから、シカ出没圃場において、キャベツ肥料制限苗を利用することで、慣行苗に比べてシカによる食害が軽減できることから、柵の設置を定植後に行うことが可能となり、柵設置圃場に比べ、耕起や定植時の作業性が良くなるとともに圃場全体を有効に活用できると考えられる。
著者
今井 亮太 大住 倫弘 平川 善之 中野 英樹 福本 貴彦 森岡 周
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-7, 2015-02-20 (Released:2017-06-09)

【目的】術後急性期の痛みおよび運動に対する不安や破局的思考は,その後の痛みの慢性化や機能障害に負の影響を及ぼす。本研究は,術後急性期からの腱振動刺激による運動錯覚の惹起を起こす臨床介入が痛みの感覚的および情動的側面,ならびに関節可動域の改善に効果を示すか検証することを目的とした。【方法】対象は,橈骨遠位端骨折術後患者14名とし,腱振動刺激による運動錯覚群(7名)とコントロール群(7名)に割りつけて準ランダム化比較試験を実施した。課題前後に,安静時痛,運動時痛,Pain Catastrophizing Scale, Hospital Anxiety and Depression Scale,関節可動域を評価した。介入期間は,術後翌日より7日間,評価期間は,術後1日目,7日目,1ヵ月後,2ヵ月後とした。【結果】反復測定2元配置分散分析の結果,VAS(安静時痛,運動時痛),関節可動域(掌屈,背屈,回外,回内),PCS(反芻),HADS(不安)の項目で期間要因の主効果および交互作用を認めた(p<0.05)。期間要因では,両群ともに術後1日目と比較し,7日目,1ヵ月後,2ヵ月後に有意差を認めた(p<0.05)。【結論】術後翌日から,腱振動刺激を用いて運動錯覚を惹起させることで,痛みの程度,関節可動域,痛みの情動的側面の改善につながることが明らかにされた。また,痛みの慢性化を防ぐことができる可能性を示唆した。
著者
中野 克己
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.6-13, 2012 (Released:2012-03-23)
参考文献数
9

下肢装具は,脳卒中をはじめ多くの患者に利用され,歩行能力など日常生活の拡大に寄与している。これまで装具の材料や継手の種類,背屈角度などさまざまな視点から改良がなされてきたが,これらは進行方向に向かって前後,上下といった矢状面上の分析に限定されており,三次元空間を移動する人の動きを十分に表現しているとはいえない。そこで,水平面上,前額面上を含む三次元的アライメントを考慮した装具について,床反力への影響,足底圧操作と跛行への対応,装具作製後の装具の調整方法,装具の作製例を紹介した。
著者
中野 貴司
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.120, no.3, pp.171-179, 2017

<p> ワクチンで付与される免疫は, 病原体特異的な能動免疫であり, 感染症の予防に極めて有用である. ワクチンは, その製造方法により「生ワクチン」と「不活化ワクチン」に大きく分類される. 生ワクチンは弱毒化された病原体が主成分であり, 不活化ワクチンは感染力をなくした病原体やその成分で製造される. 予防接種法で規定されたワクチンは,「定期接種」として公費で接種される. それ以外のワクチンは「任意接種」であるが, 疾患を予防するという重要性において何ら差異はない. 1948年に制定された予防接種法は, 時代の推移とともに何度か改定された. 2013年の改定は, 海外と比較して公的に接種されるワクチンが少ないわが国の「ワクチン・ギャップ」を解消することがひとつの目的であった. Hib, 肺炎球菌, HPV, 水痘, B 型肝炎など数多くのワクチンが定期接種に加わった. わが国においても, これらワクチンの普及により目ざましい効果が確認され, Hib 髄膜炎や水痘の患者は大幅に減少した. 一方, ワクチンは病原微生物を弱毒化や不活化して製造されるため, 副反応が起こる可能性をゼロにすることはできない. ただし, 接種後に, たまたま別の原因により身体に不都合な症状が出現したとしても, 副反応との鑑別が困難な場合はしばしばある. 実際の接種に際しては,「接種不適当者」や「接種要注意者」の定義と対処法, 接種間隔や使用薬剤に関する注意点などについて十分理解し, 適切な予診を行った上で接種する. 天然痘という人類の脅威であった疾患は, ワクチンの普及により地球上から根絶され, 高い費用対効果も確認された. 感染症対策の重宝な手段であるワクチンを上手く活用し, さらなる健康増進に努めたいと考える.</p>
著者
中野 武彦
出版者
九州大学
雑誌
九州大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13482319)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.85-89, 2004-02-20

Running has a good effect on maintaining a man's health. The aim of this study is to explain a safe running prescription by comparison of the deviation value of the heart rate with the record of the early running. We had ten months with no difference between the records and the deviation value of the prompt heart rates after running. Correlation was high, but the record has one periodicity and the heart rate another. An interaction of the record with the heart rate causes it. It was important to grasp physical condition with a deviation value to continue running safely.