著者
中野 信子
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
産業医大誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.93-108, 1984

ロバート・グレイブスは, 英国やアメリカでは著名な神話学者であり詩人である. しかし, わが国に於ては, その厖大な, しかも多岐にわたる作品の量にもかかわらず, なぜかあまり知られていない. さらに, アメリカや英国に於てさえ, ある人々は, 彼を白い女神にとり憑かれた多芸なる偶像崇拝者として, 敬遠しているきらいさえある. 実際, キリストの生涯を描いたフィクション「キング・ジーザス」が世に出た時, その白い女神信仰を基盤としてひき出された, 彼の並はずれた神話的キリスト学は, 当時の人々に強い衝撃を与えたであろうことは, 想像するに難くない. キリストの中に, 彼はユダヤ教のアポロ的教義とは対称的な, 女性原理の断片を発見したが, しかし, 彼の目には, それは甚だ不完全で, 人生の根本的な要素, つまり, 愛と憎しみの理念を欠いているように見えたのである. これは, グレイブスが, 彼の博学を駆使して, いかに自分のキリスト理解をおしすすめているか, その背景と発展の過程を追求した一考察である.
著者
松野 陽一 山崎 誠 新藤 協三 岡 雅彦 中野 真麻理 永村 眞 落合 博志 鈴木 淳
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究は各時代を代表する個人言語資料が多数残存する作家の自筆資料を網羅的に収集し、高精度の画像として時系列的に整理保存するとともに、これらの資料を科学的に判定する方法と技術を開発することを目的とした。最大の研究目標であった『自筆画像研究支援ツール』 (これは自筆本画像の任意部分とその解読文とを任意に関連づけ、コメントを付けてデータベースとして格納し、キーワードや任意文字列から、複数の部分画像を検索比較し印刷することのできる画期的なデータベースソフトである)に実際にデータを格納する実験を行い、プロトタイプ版の改良を継続した。現在NT版のみであるが、ほぼ研究上の諸要求に応えるものとして完成していることを検証した。試行版として世阿弥自筆『能本集』と後白河院自筆『梁塵秘抄断簡』を材料としてCD-ROM版を作成した。自筆本の資料調査と収集は所蔵者及び保存機関の許可が厳しいことから、写真による撮影を東大寺と真福寺に限定し、凝然と能信の自筆資料を中心に、それぞれのかなりの年代的幅を持つ個人言語資料自筆資料を収集した。これによって、筆跡の経年変化を分析する上で有力なデータが得られた。研究成果『自筆画像研究支援ツール』の改良と普及のために、平成十四年度学術振興会科学研究費補助金『古典籍・古文書解読のための自習システムの開発』を引き続き申請した。本研究の成果を国文学研究資料館の近くホームページで公開する予定である。
著者
中野 克己 今井 基次 辻 哲也 里宇 明元
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.28-31, 1997 (Released:2003-07-30)
参考文献数
4

代表的なADL評価法の1つである機能的自立度評価法(FIM)を用いて,移動能力が他のADL項目とどのように関わっているのかを検討した。対象は,リハビリテーション科に入院していた73名。本研究では,FIMを1)セルフケア,2)排泄コントロール,3)移乗,4)移動,5)コミュニケーション,6)社会的認知の6つの大項目にまとめ指標に用いた。その結果,FIM総得点のうち,移乗・移動の合計は27%を占め,運動項目全体では72%を占めていた。そして入院中の得点向上率は,移乗13%,移動16%と6大項目中の上位2つを占めていた。またFIMは,主成分分析の結果,運動能力因子及び認知能力因子の2因子構造からなり,移乗・移動の大項目は,他の運動項目との間に高い相関を示したが,認知項目とは,低い相関を示した。以上より移動・移乗の大項目は,運動項目を通じてFIM総得点に深く関わっているが,認知項目との関与は少なく,他職種との連携がより要求されることが示唆された。
著者
中野 照海
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-7, 1995-02-10 (Released:2017-07-18)
被引用文献数
1

視聴覚教育の分野で教育メディア研究の課題を考える場合、その歴史的発展の中から、基本的概念や研究の視点を整理する必要があろう、そこで、ここでは視聴覚教育メディア研究の分野での一般的となっている基本的な事項を改めて整理して、今後の研究への出発点を設定することから作業を始めた。このために、「画像による新たな学習の展開」、「教育メディア研究に見られる実証主義的伝統」、「教育過程を具体化するメディア」、「教育効果に関わるメディアの属性」、「特定の学習課題に対する特定のメディアの属性」、「学習過程における画像の新たな機能の探求」から、教育メディア研究の基本的事項を吟味した後、教育メディア研究は「特定の教育課題に対して、特定のメディア属性の寄与」を目指すものとしている。その上で、マルチメディアの普及などによって、映像メディア研究の新たな課題と期待とに及んでいる。
著者
小森 浩二 塙 由美子 山本 淑子 古前 竜平 山崎 裕己 中野 祥子 三田村 しのぶ 宮﨑 珠美 菊田 真穂 高田 雅弘 首藤 誠
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.133, no.8, pp.905-911, 2013
被引用文献数
2

&nbsp;&nbsp;Loxoprofen (Loxonin<sup>&reg;</sup>), an antipyretic painkiller, was approved as an over-the-counter (OTC) drug (Loxonin<sup>&reg;</sup>-S) in January 2011. With regard to self-medication using OTC drugs, the information that pharmacists provide to consumers is very important. Although loxoprofen is a very versatile drug and can be used during breastfeeding, information regarding its mammary gland transfer is inadequate. In this study, we established a simple method to evaluate mammary transfer of drugs, and compared loxoprofen's mammary gland transfer with that of aspirin. Loxoprofen 12 mg/kg and aspirin 132 mg/kg was orally administered to mother mice (ddY), and blood and milk samples were collected. Twenty microliters of ethanol was added to the blood and milk samples (10 &mu;L), and the mixture was centrifuged for 15 min (12000 <i>g</i>); the supernatant was analyzed by high-performance liquid chromatography. Since aspirin was immediately metabolized, we analyzed salicylic acid concentrations. Maximum concentration of loxoprofen was observed at around 15 min after its oral administration, with the concentrations in the blood and milk being 2.9 and 0.5 &mu;g/mL, respectively. The drug was metabolized promptly thereafter. In contrast, maximum concentration of salicylic acid was observed at 30 min after aspirin administration, with the concentrations in the blood and milk being 187.2 and 64.4 &mu;g/mL, respectively. These concentrations remained constant from 60 to 120 min. Salicylic acid could be detected 240 min after aspirin administration. Thus, mammary gland transfer of loxoprofen is lower than that of aspirin, suggesting that loxoprofen does not accumulate in milk.<br>
著者
西内 偉格 吉田 真里子 木下 春樹 高岸 靖 山田 秀雄 稲沢 和博 中野 正行 能登谷 満 長谷川 博司 水平 敏知 菅野 浩一
出版者
The Japanese Society for the Study of Xenobiotics
雑誌
薬物動態 (ISSN:09161139)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.179-197, 1990 (Released:2007-03-29)
参考文献数
4
被引用文献数
7

The distribution, excretion and metabolism of recombinant human interleukin-2 (S-6820) were studied using 125I-labeled compound (125I-S-6820)1. At 5min after intravenous injection of 125I-S-6820 to male and female rats, high radioactivity was observed in the kidney. Radioactivities in the other organs were lower than the serum level. Results obtained by whole-body autoradiography showed that high concentrations of radioactivity were found in the cortex renis.2. At 5min after intravenous injection of 125I-S-6820 to 20-th day pregnant rats, no radioactivities were detected in the amniotic fluid and fetus.3. Within 24hr after intravenous injection of 125I-S-6820, 78% and 1 % of administered radioactivity were excreted in the urine and feces, respectively. However, 98% of excreted radioactivity in the urine was not precipitated with trichloroacetic acid.4. In the kidney after intravenous injection of 125I-S-6820, a low molecular weight degradation products of 125I-S-6820 were observed as revealed by gel filtration radio-chromatography. In addition, micro-autoradiogram of cortex renis after intravenous injection of 125I-S-6820 showed that S-6820 was likely to be ultrafiltrated by the glomerulus and absorbed by proximal tubules. S-6820 appeared to be degraded in the kidney.
著者
菅原 悠樹 小寺 正明 田中 健一 中野 博史 浮田 昌一 白沢 楽 冨谷 茂隆 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第41回ケモインフォマティクス討論会 熊本
巻号頁・発行日
pp.2C08, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
8

蛍光物質は液晶ディスプレイや照明、創薬の動物実験などの広い用途で用いられており、重要性が高まってきている。蛍光を示す化合物のなかでもBODIPYと呼ばれる二置換ホウ素原子とジピロメテンの複合体を分子骨格に有する化合物は、シャープなスペクトルを持ち、溶媒環境による波長変化の影響が小さく、量子収率が安定して高いので実用性が期待される。本研究では望ましい物理的性質を持つ新しい候補BODIPY化合物を迅速かつ正確に予測するモデルを提案する。提案モデル(MAE = 17.34、R2 = 0.90)は、量子計算モデル(MAE = 24.71、R2 = 0.84)と比較して、非常に正確な性能を示した。提案モデルが、吸収波長の予測に重要と判断した記述子には化学の知見と一致するものもあり、提案モデルの信頼性を示している。しかし提案されたモデルは溶媒情報を適切に活用できておらず、今後のさらなる改良が期待される。
著者
羽間 稔 中野 正則 篠崎 雅史 藤澤 正人 岡本 恭行 柯 昭仁 岡 伸俊 浜口 毅樹 岡田 弘 松本 修 守殿 貞夫
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1047-1050, 1988-06

A case of a 32-year-old paraplegic male who fathered a girl following artificial insemination after an intrathecal neostigmine injection is described. The patient became a complete paraplegic after injury to the spinal cord caused by a traffic accident in 1971, resulting in ejaculatory disturbance. In June, 1984 the first intrathecal neostigmine injection was tried and 2.7 ml of semen was collected and offered to artificial insemination. However, the first to ninth attempt did not result in fertilization. The tenth attempt was made in March 7, 1986, and 3 ml of semen presenting 240 X 10(6) spermatozoa per ml with 5% of motile sperms was collected. This resulted in pregnancy, and the patient's wife delivered a healthy girl weighing 2552 g by cesarean section on November 19, 1986. This is the fourth case of a paraplegic who fathered a child following artificial insemination after an intrathecal neostigmine injection in the Japanese literature.
著者
藤田 将己 中野 孝一 小西 正躬
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.75, 2009

実験用小型AGVを試作した。このAGVは、フォトセンサを装備し白線をたどって走行する。制御系はPICマイコン、モータの駆動用ドライバボード、電源回路、センサボードなどから成る。本研究では、これらの制御要素を最適に配置し回路の占有スペースが最小となるように制御回路の設計を行った。すなわち、GA・SA法により回路要素を矩形領域内にネスティングし、回路要素の結線長と回路の占有領域を共に最小とする機能を実現した。試作した小型AGVについて走行実験を行い、所期の制御性能を確認した。
著者
中野 嘉弘
出版者
北海道情報大学
雑誌
北海道情報大学紀要 (ISSN:09156658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.73-86, 1994-09

Der Autor (NAKANO) mochte die erweiterte Lesestoffe von dem 20. Jahrhundert uber FLT fur vielen Amateure geben: die Fermatsche Letzte Theorem (FLT), Mordellsche Vermutung, Fields-Medaille fur von Gerd Faltings, Freysche Theorem fur Elliptische Kurve, STW-Vermutung fur Elliptische Kurve, der Beweis von K. A. Ribet fur Freysche Kurve, der Beweis von Andrew Wiles (Princeton) fur STW-Vermutung und FLT.
著者
中野 嘉弘
出版者
北海道情報大学
雑誌
北海道情報大学紀要 (ISSN:09156658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.15-31, 1994-03

Deutsche Zeitschrift "Spektrum der Wissenschaft" hat bis heute vielmals uber den Beweis der FLT (Fermatsche Letzte Theorem) erklart. Die Fermatsche Vermutung, Mordellsche Vermutung, Fields-Medaille fur Gerd Faltings, Sophie Germain, Gerd Faltings und die Folgen, Der Beweis der FLT, Elliptische Kurven und die Verbindung zur FLT Die Vermutung von Andrew Wiles (Princeton) Der Autor (NAKANO) mochte die erweiterte Lesestoffe von 356 Jahren uber FLT fur vielen Amateure (oder Aussenseiter) geben.
著者
村田 伸 安彦 鉄平 中野 英樹 満丸 望 久保 温子 八谷 瑞紀 松尾 大 川口 道生 上城 憲司
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.113-117, 2018-10-16 (Released:2018-10-19)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究の目的は,幼児の通常歩行と最速歩行時の歩行パラメータの特徴を明らかにすることである。対象児50名(男児16名,女児34名)の歩行分析を行った結果,全ての歩行パラメータに性差は認めなかった。また,最速歩行時には通常歩行時よりも歩行速度・歩行率・ストライド長・歩幅は有意に高まり,立脚時間・両脚支持時間・遊脚時間は有意に短縮した。それらの効果量は,距離因子(d=0.74~0.81)よりも歩行率(d=1.84)や時間因子(d=1.51~1.88)が大きかった。さらに,通常歩行速度は歩行率・ストライド長・歩幅・立脚時間・両脚支持時間・遊脚時間の6項目と有意な相関が認められたが,最速歩行速度と有意な相関が認められたのは歩行率・立脚時間・両脚支持時間・遊脚時間の4項目であった。これらの結果から,幼児期の歩行を評価し結果を解釈する場合は,性差の影響を考慮する必要のないことが示された。また,歩行能力を向上させるためには,歩幅やストライド長を広げる戦略が有効と考えられた。
著者
中野 三敏 花田 富二夫 松原 孝俊 大庭 卓也 宮崎 修多 飯倉 洋一 亀井 森 川平 敏文 久保田 啓一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本調査チームによって収集された、草双紙や仮名草子、木活字、唐本、画譜、銅版など、三十項目以上のジャンル別善本を、ホノルル美術館において精査して、その画像データを公開した。本プロジェクトの目的は、世界で所蔵される和本・和刻漢籍などを総合的、体系的に調査しつつ、在外和本総目録の基礎データを作成し、その公開・発信に努めることにあるが、それと同時に、重要視したのは、「日本学」次世代研究者養成や国際的日本学研究者コミュニティー構築に貢献することであった。日本人だけでなくあらゆる国の次世代研究者対象の書誌調査講習なども実施して、「和本リテラシー」を普及しつつ世界の日本学研究振興に応分の貢献を果たした。
著者
中野 諭 鷲津 明由
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
日エネ学会大会要旨集 (ISSN:24238317)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.160-161, 2017

<p>The objective of this study is to analyze, from a comprehensive perspective, the economic and environmental effects induced by constructing and operating hydrogen utilization systems presented by METI's roadmap. We focused on a marine transport system for hydrogen produced offshore, hydrogen gas turbine power generation, fuel cell vehicles (FCVs) and hydrogen stations, as well as residential fuel cell systems (RFCs). In this study, using an Input-Output Table for Next Generation Energy Systems (IONGES) with newly established renewable energies and hydrogen-related sectors, we evaluated the induced output, labor and CO<sub>2</sub> from construction and operation of these hydrogen technologies using a uniform approach. Initial investments in facilities based in foreign countries that produce hydrogen, transport it through organic hydride, and supply it to a power station of 1 GW capacity yield an induced production of 2.7 times. This investment can exploit a new opportunity for the utilization of unused renewable energy sources that are abundantly available in foreign countries and reduce significant CO<sub>2</sub> emissions. Additional investments in domestic hydrogen supply systems, FCVs, and RFCs yield an induced production of 2.6 times each. From a comprehensive point of view, the construction of a hydrogen utilization system may result in cost and CO<sub>2</sub> reductions.</p>
著者
功刀 正行 阿部 幸子 鶴川 正寛 松村 千里 藤森 一男 中野 武
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.967-984, 2010-11-05
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

残留性有機汚染物質による地球規模の海洋汚染の時空間変動及び化学動態を把握するため,商船を篤志観測船として用い,この目的のために開発した海洋汚染観測システムを搭載し,太平洋及び南シナ海における広域観測を実施した.日本-オーストラリア間は鉱石運搬船を,南太平洋(含む南極近海)はクルーズ船を,北太平洋(東アジア-北米間)及び南シナ海はコンテナ船を,それぞれ篤志観測船として用いた.鉱石運搬船,クルーズ船には専用の海洋汚染観測システムを開発し搭載し,コンテナ船にはユニット化した小型の海洋汚染観測システムを開発して搭載し,試料採取及び観測を実施した.海水中の残留性有機汚染物質の捕集は,固相抽出法を用い,船上で100 Lの海水を濃縮捕集し,採取試料は直ちに船上で冷凍保存し,日本に持ち帰った.持ち帰った試料は冷凍庫で保存し,分析直前に前処理後HRGC/HRMS-SIM法で分析した.すべての試料から残留性有機汚染物質が検出された.低緯度海域では,HCHsの濃度は低く,かつその異性体のうちβ-HCHが最も高い,一方高緯度海域では中央から北米沿岸域ほどα-HCHが高い傾向にあるなどその濃度や異性体存在比などは極めて特徴的であり,発生源及び輸送過程を推定する上で貴重な情報を与えることが明らかとなった.