著者
中野 拓治 中村 真也 松村 綾子 高畑 陽 崎濱 秀明 大城 秀樹 幸地 優作 平田 英次
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.I_9-I_15, 2019

<p>沖縄本島北部に分布する国頭マージ土壌を用いて油汚染土壌の室内浄化試験を実施し, 島内で産出される琉球石灰岩砕・粒子を含めた浄化促進材の添加を通じて, バイオレメディエーションによる油分浄化特性と影響要因について考察した.軽油模擬汚染土壌に琉球石灰岩を5%以上添加することにより, 土壌含水比が5~20%の範囲で油分の浄化速度(Total Petroleum Hydrocarbons(TPH)浄化速度)を向上させるとともに, 貝殻片や花崗岩砕等を用いた浄化促進材との比較検証の結果, 琉球石灰岩砕が最もTPH浄化速度を高めることを明らかにした.琉球石灰岩砕・粒子は, 油分分解菌の代謝活動に必要となる通気性とその棲息域を確保する細孔を多く有しており, 国頭マージ土壌のpHを酸性域から中性域に中和する効果もあることから, 土壌中の油分分解菌の活性化によりTPH浄化速度が向上したものと推察される.</p>
著者
友田 恒典 中野 康夫 陰山 克
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.356-358, 1983-12-20 (Released:2009-12-18)
参考文献数
10
被引用文献数
7 9

白血病治療中の感染症は注意すべき合併症の一つでありその原因菌は上気道, および腸内の常在菌や Candida が考えられている. 本報告では白血病治療患者の腸内 Candida の増殖を知るため糞便中の Candida 量を検討した. 白血病治療患者 (2ヵ月以上治療例) 56例中29例において糞便1g中に Candida が104以上認められた. Candida の種類は Candida albicans Aが半数を占め, ついで Candida tropicalis であつた. また乳酸菌含有牛乳投与による糞便中 Candida の変動を検した. 糞便中1g中に Candida が105以上認められたものの中, 牛乳飲用可能な16例について, 乳酸菌含有牛乳投与の影響をみたが16例中8例が104以下に減少した. すなわち乳酸菌含有牛乳投与により糞便中の Candida 量の減少が認められた.
著者
蓮尾 徹夫 中野 浩 飯村 穣 斎藤 和夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.1082-1086, 1971-11-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
11

1.清酒に銅が混入した場合, 著るしく着色したり, 濁るという現象が当局管内の2製造場でみられた。2.清酒への銅の混入経路につき, 醸造中, 清酒移動中, 製成火入工程中と, 原料から製品までの銅を調査し, その混入経路をある程度はあくできた。3.消毒, 殺荷剤による銅製器具からの銅の溶出効果について検討した。4.銅混入酒の矯正方法について, 活性炭素, 各種イオン交換樹脂を用いて, その除銅効果を検討した。
著者
松村 泰志 中野 裕彦 楠岡 英雄 朴 勤植 松岡 正己 大嶋 比呂志 早川 正人 武田 裕
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.19-26, 2002 (Released:2017-08-14)
参考文献数
13
被引用文献数
2

ネットワークを利用した医療機関の連携を実現するために,ADSLによる地域IP網上にPKIをのせたネットワークインフラの上に,電子診療情報提供書システムとASP型の電子カルテシステムを稼動させ評価した.電子診療情報提供書システムは,センターのメッセージ交換サーバを中心に,18診療所と4病院の間を結び,診療情報提供書情報(J-MIXのXMLフォーマット)を交換するシステムである.病院側では地域医療連絡室を中継点として,各診察室との間で,配信・収集を行う方式とした.77人の患者を本システムで紹介したが,医師,患者ともに高い評価を得た.ASP型電子カルテシステムは,センターにサーバ,診療所に端末を置く構成で,病院用に開発されたシステムを診療所用に応用するものである.本システムは,message queuの非同期通信を基本とし,端末側にも患者データベースを置く構成であり,遅いネットワークででも,患者データの送受信については,応答速度を遅延させる要因とならなかった.画面等の設定データの受信に負荷がかかるなど,いくつかの改良すべき点が明らかとなったが,技術的には解決可能であり,この方式の電子カルテシステムが実現可能であると考えられた.
著者
小坂 光男 山根 基 松本 実 小粥 隆司 中野 匡隆 塚中 敦子 加藤 貴英 大西 範和 Mitsuo KOSAKA Motoi YAMANE Minoru MATSUMOTO Ryuji OGAI Masataka NAKANO Atsuko TSUKANAKA Takahide KATO Norikazu OHNISHI
雑誌
中京大学体育学論叢 = Research journal of physical education Chukyo University (ISSN:02887339)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-15, 2004-11-20

Biological responses due to thermal stimuli were categorized based on the areas of the human body as well as on the modalities of thermal stresses such as icing, cooling and heating applications. These biological responses reported in previous papers were analyzed based on the concepts of Selective Brain Cooling (SBC) and long-term fever range (FR)-mild hyperthermia. Although no thermophysiological problems occurred in the case reports of biological responses induced by SBC, the effects of those induced by cooling of the body trunk and extremities were not so thoroughly evaluated. On the other hand, the idea of long-term fever range (FR)-mild hyperthermia (39.5-41.0℃) proved to be helpful in therapies enhancing the immune defenses against virulent bacterial diseases through the proliferation of Langerhans cells (LCs) and, under these conditions, it might even be beneficially combined with Selective Brain Cooling (SBC) and body heating to enhance human health and physical performance.
著者
小林 義郎 熊懐 稜丸 大沢 昭緒 村上 慎一 中野 隆治
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.1247-1249, 1978-04-25 (Released:2008-03-31)
被引用文献数
31 45

Photochemical trifluoromethylation of pyridine gave a mixture of three (trifluoromethyl) pyridines. Pyrrole and N-methylpyrrole were trifluoromethylated in α-position. Benzene gave very low yield of benzotrifluoride.
著者
中野 牧子 馬奈木 俊介
出版者
横浜国立大学経営学会
雑誌
横浜経営研究 (ISSN:03891712)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3・4, pp.1(101)-13(113), 2007-03-15

日本の電力産業は,1995年の電気事業法の改正以来大きな転換期を迎えている.段階的に規制緩和が実施され,競争原理の導入が進んできたが効果があったのだろうか.本研究では,電力産業の規制緩和に関する先行研究を概観した後,規制緩和が生産性に与える影響について実証分析を行った.検証にあたってはダイナミックパネルモデルをGMMで推定することで信頼性の高い結果を得た.推定結果より,1995年以降実施されてきた制度改革は,9電力会社の汽力発電部門の生産性成長率にプラスの貢献をしていることが明らかとなった.
著者
中野 勉
出版者
The Academic Association for Organizational Science
雑誌
組織学会大会論文集 (ISSN:21868530)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.41-48, 2016 (Released:2016-12-14)
参考文献数
20

What is “good” sound to listen to music? How does the market work? This paper investigates market mechanisms of Japan’s high-end audio industry as linked to the global markets, from the point of view of pragmatic valuation as tasting of hardware products. It aims to test its validity and potential with relevance to the network analysis. The industry is a “creative industry” where art, technology and culture intersect to produce “good” quality sound for serious audiophiles who buy luxurious high-end equipments to enjoy listening to the aesthetic music. The serial work by Hennion on taste discusses attachments as a moment of sensations as to become music lovers or alcoholics. By contrast, applying network analysis of relevant social networks and fieldwork interviews of audiophiles in Denmark, France, Germany, Japan, Sweden, UK, and US markets, this research study focused on the hardware, which mediates the art of music and human minds as agents, the point largely ignored by the existing literature. As a result, the study found that the concept of “high fidelity” is the foundational notion of “good” sound as a shared benchmark among the stakeholders. However the complexity of valuation of sound as combination of art, culture and technology generates ambiguity or ambivalence regarding the definition. The fact requires a multi-dimensional approach to the tasting or evaluation with a rich and sophisticated repertoire of pragmatic knowledge from seasoned experience, highly subjective judgements as well as objective metric tests from engineering and technology. This ambivalence of high-fidelity is the engines that drives the market by creating the dynamic market valorization mechanisms where intermediaries coordinate stakeholders to stabilize value of the products through collaboration, confirmation, information sharing, legitimation, and updating or upscaling as agencement. This approach thus can elaborate on the coordination processes as well as the competitive dynamics of social networks in the marketplace beyond the relational structure.
著者
尾崎 恵美 高尾 純子 鶴川 まどか 西 美由紀 前田 智奈 中野 正博 高松 三穂子
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会大会講演論文集 (ISSN:13451510)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.45-48, 2009

In order to clarify the relation of the image about the delivery desk and the knowledge on the posture of the delivery, the investigation has been done using questionnaire to the young students, 77 students of 2^<nd> year ,and 75 students 3^<rd> year in nursing course, and 105 students in midwife course. It is cleared that 1) the degree of recognition on the postures of delivery is largely different between nurse course students and midwife course students (p=0.000), 2) midwife course students has negative image for the delivery desk compared with the nurse course students, 3) nurse course students have the image as "usual" (p=0.000) and "natural" (p=0.000) and also "general" (p=0.012) compared with the midwife course students.
著者
北山 育子 真野 由紀子 中野 つえ子 安田 智子 今井 美和子 澤田 千晴 下山 春香 鎌倉 ミチ子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.162, 2008

<BR> 【目的】<BR> 前報では地域性のある米の伝統料理が以前ほど家庭や地域に伝わっていないことを報告した。その伝統料理の伝承をたやさないために、今回は津軽地域と南部地域に伝わる米料理の調理方法や伝承の仕方などを調査した。<BR> 【方法】<BR> 平成18年12月~平成19年1月に青森県在住の調理担当者399人(40~50才代が79.7%)を対象に選択肢法と自記式でアンケート調査を行った。その中から家庭や地域に伝わる米料理についてまとめた。<BR> 【結果】<BR> 津軽地域は津軽平野を有した米作地帯であり、豊富にとれるうるち米のほかに、もち米や米粉を使用した米料理が作られていた。一例としてはうるち米ともち米を使い、たっぷりの砂糖を入れた太巻き寿司、米粉と砂糖を練ってかまぼこ形にしたお菓子のうんぺいなどがあった。干し餅は寒さの厳しい冬に寒気を利用して切り餅を乾かして作られるこの地方独特のものである。また、沿岸地方ではコンブの若芽で包んだ若生(わかおい)おにぎりなどがあった。南部地域はヤマセのために稲作に厳しい土地柄で、昭和の中頃までは雑穀や粉食が多かった。そのため、米の不足を補うためにかぼちゃを加えて食されていたかぼちゃ粥が今も作られていた。また、ウニやアワビを使った炊き込みご飯や茹でた長芋とごはんを混ぜた味噌餅などがあった。カワラケツメイ(マメ科の一年草)を乾燥して作るお茶を使った茶粥は上北郡野辺地町独特の料理である。米料理の多くは母親、祖母、義母(姑)から教わっており、家庭における世代間で伝承されていた。その他に地元や近所の人など、地域の交流が伝統料理の伝承の場として大切になってきている。
著者
朱 敦堯 中野 政詩 宮崎 毅
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.194, pp.269-276,a2, 1998

土壌物理性が違うの二つ試料, 砂とYolo粘土を用いて, 斜面における水移動の数値シミュレーションを行った。第一, 湛水開始時間の数値解と準解析解を比較した。湛水開始時間は, 降雨強度の増加とともに指数関数的減少する。土の浸潤能は, 傾斜角に大きく依存し, 特に傾斜角30°になると, 斜面と平面の浸潤能が著しい相違である。<BR>第二は, 土壌物理性と斜面水流の関係を調べた。砂の場合には, 斜面と平行のフラックス成分は斜面水流に大きい影響を与る。湛水開始の際, 砂の場合は, 浸潤前線の後方で飽和層と不飽和層を明確に区別できた, しかし, この砂の特徴は, Yolo粘土で見つけなかった。第三には, 傾斜角と降雨強度はフラックスの大きさ及び屈折を決定する最も重要な二つ要因であることが分かった。土の表面での最大屈折角は, 傾斜角によって直線に増加し, ただし, 降雨強度が大きいと, 最大屈折角は小さくなる。
著者
中野 俊二
出版者
一般社団法人 日本創傷外科学会
雑誌
創傷 (ISSN:1884880X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.170-177, 2013 (Released:2013-07-01)
参考文献数
15

レーザー光による皮膚表面外科治療では,常にselective photothermolysisに基づいたthermal relaxation time(TRT)を考慮する必要がある。TRTより照射時間が長くなると,chromophoreに発生した熱の拡散により周囲の熱損傷が大きくなる。炭酸ガスレーザーではそのような危険度が大きく,蒸散組織周囲に必ず認められる蛋白変性層が厚いほど創傷治癒は遅れる。特に東洋人では創傷治癒遷延が2週間をこえると肥厚性瘢痕を形成することが多い。また,肉芽増殖が不十分にもかかわらず上皮化した,陥凹を伴う萎縮性瘢痕などにも注意を要する。今回は肥厚性瘢痕と萎縮性瘢痕に対し波長595nmのロングパルスダイレーザー(Vbeam®,Vbeam Perfecta®)を用い,パルス幅20~30msec,出力6J/cm2,cooling/delayを30/30ないし40/20とまったくの同条件下で治療した。肥厚性瘢痕は平低化し,萎縮性瘢痕の消失や軽減が観察された。さらに,肌理の出現などskin textureの改善が認められ,真皮浅層においてコラーゲンの再構築が行われたことが示唆された。
著者
坂本 淳哉 片岡 英樹 吉田 奈央 山口 紗智 西川 正悟 村上 正寛 中川 勇樹 鵜殿 紀子 渋谷 美帆子 岩佐 恭平 濱崎 忍 三村 国秀 山下 潤一郎 中野 治郎 沖田 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C4P1138, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】大腿骨近位部骨折(以下、近位部骨折)術後の多くの症例では、痛みは骨折部や術創部がある股関節周囲に発生し、骨癒合と術創部の治癒が進むに従い消失する。しかし、これらの治癒が進んでも痛みが残存する症例や、股関節周囲の遠隔部に痛みが発生する症例も存在し、このような症例では痛みが理学療法プログラムの進行の阻害・遅延因子となることがある。このような近位部骨折術後の痛みの実態に関しては経験的には把握しているものの、痛みの発生率や発生部位、程度などの基礎資料を提示した報告は非常に少ない。そこで、本研究では近位部骨折術後の痛みの実態把握を目的に理学療法開始時からの痛みの発生状況を調査した。【方法】対象は、2008年7月から2009年8月までに当院整形外科にて観血的治療を受け、理学療法を行った大腿骨頚部骨折23例、大腿骨転子間骨折3例、大腿骨転子部骨折22例、大腿骨転子下骨折5例、大腿骨転子部偽関節1例の計54例(男性9例、女性45例、平均年齢83.1歳)で、術式の内訳は人工骨頭置換術11例、ガンマネイル12例、compression hip screw (以下、CHS)15例、鍔つきCHS 6例、ハンソンピン7例、その他 3例である。なお、理学療法は平均して術後8.3日から開始した。調査項目は1)安静時痛(背臥位)、動作痛(起き上がり、立ち上がり、歩行)を有する対象者の割合(以下、有痛者率)、2)安静時痛、動作時痛の発生部位、3)安静時痛、動作時痛の発生部位の中で最も痛みが顕著であった部位(以下、最大疼痛部位)の痛みの程度とした。なお、痛みの発生部位については対象者がその部位を身体図に提示した結果を用い、川田らの報告(2006)に準じて腰部、鼠径部、臀部、大転子部、大腿前面、大腿外側、大腿内側、大腿後面、膝部以下の9箇所に分類した。また、痛みの程度はvisual analog scale(以下、VAS)で評価した。調査期間は理学療法開始時から12週後までとし、上記の調査項目の経時的変化を捉えるため2週毎に行った。そして、対象者を理学療法開始時の改訂長谷川式簡易知能評価スケールの得点により21点以上の非認知症群と20点以下の認知症群に分け、分析を行った。【説明と同意】本研究は、当院臨床研究倫理委員会において承認を受け、当院が定める個人情報の取り扱い指針に基づき実施した。【結果】安静時痛の有痛者率は理学療法開始時、非認知症群が約20%、認知症群が約47%であったが、4週後には非認知症群が約5%、認知症群が約11%に減少した。また、安静時痛の発生部位のうち鼡頚部、大転子部といった股関節周囲が占める割合は理学療法開始時、非認知症群が約20%、認知症群が約7%であったが、これは4週後にほぼ消失した。一方、動作時、特に歩行時痛の有痛者率は理学療法開始2週後で、非認知症群が約70%、認知症群が約83%で、6週後でも両群とも約40%までしか減少せず、それ以降も増減を繰り返した。また、理学療法開始時の動作時痛の発生部位は両群とも、大腿後面・内側・外側・前面および膝部以下で全体の約60%以上を占め、この傾向は12週後でも変化なかった。痛みの程度として、非認知症群の安静時痛のVASは理学療法開始時から12週時まで1以下であったが、認知症群は理学療法開始時から2週後まで2~3と非認知症群より高値を示した。また、動作時痛のVASは理学療法開始時、非認知症群が4.6、認知症群が6.5と認知症群が高値を示し、両群とも経時的に減少したが、12週後でも非認知症群が3.0、認知症群が4.6と認知症群が高値であった。【考察】今回の結果から、安静時痛の有痛者率は経時的に減少し、特に股関節周囲に存在する痛みが消失した。つまり、安静時痛は近位部骨折の受傷、あるいは手術侵襲といった組織損傷に伴う炎症に起因した痛みであると推測できる。一方、動作時痛、特に歩行時の有痛者率は経時的に減少するものの、残存する傾向があり、その発生部位も骨折部位から離れた大腿部や膝部以下に認められることから、炎症に起因したものとは考えにくい。次に、非認知症群と認知症群を比較すると安静時痛、ならびに動作時痛の有痛者率やその発生部位について違いは認められず、このことから痛みの発生状況に関しては認知症の影響は少ないといえる。ただ、痛みの程度に関しては認知症群が非認知症群より高いことから、情動面が影響しているのではないかと推察される。【理学療法学研究としての意義】近位部骨折術後の痛みについて、有痛者率、発生部位、ならびにその程度といった実態の一部を明らかにしたことは今後の理学療法を考える上でも貴重な基礎資料になると考えられる。
著者
荷宮 剛 木束 裕太 松尾 孝美 ウメルジャン サウット 中野 和司
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集 第53回自動制御連合講演会
巻号頁・発行日
pp.298, 2010 (Released:2011-02-03)

ウメルジャンらは,DCモータ,スロットルバルブ,リターンスプリングからなる電子スロットル系のモデルベース制御法を提案している.この制御手法では,内部状態を推定するために,非線形可変構造オブザーバを導入して,その推定値を用いたスライディングモード制御系(SMC)を提案している.一方,松尾らは,観測信号の時間導関数を発生するダイナミクスの情報を用いずに推定する適応微分推定器を提案している.しかしながら,提案した推定器では,1階微分の推定は可能であるが,相対次数の制約から,2階以上の微分値の推定を行うことができなかった.本報告では,ハイゲイン入力推定器を用いることにより,これまでに提案している適応微分推定器を2階微分の推定器へ拡張する.ついで,エンジンスロットル制御系を対象とする.スロットル角度信号にガウスノイズの付加された出力信号から角速度と角加速度を推定する.最後に,数値シミュレーションにより,提案した推定器の性能を検証するために,非線形可変構造オブザーバの推定値と比較し,その性能を検証する.