著者
久保田順一著
出版者
みやま文庫
巻号頁・発行日
1996
著者
久保田 文
出版者
文化女子大学
雑誌
文化女子大学紀要. 人文・社会科学研究
巻号頁・発行日
no.4, pp.51-60, 1996-01

メルヴィルが語ったホーソーンの闇の力とは,原罪を根底とする人間の罪を強く凝視するその集中力から生まれたものであり,内なる罪に懊悩するナイーヴなキャラクター達は,我々の心を引き付け続けている。しかしその一方で,幾つかの作品は,罪悪感の重荷から全く解き放たれた特異なキャラクターの姿を呈示し,その対照性は読者をとまどわせる。現世的な悩みや喜びを顧みない美の探求者や科学者達のエゴイスティックなまでの現実超越は,ホーソーン自身に潜んでいたデカダントな部分における強い憧れであったに違いない。文学者ホーソーンの位置は,地に足をつけたまま深く悩むモラリストと,身勝手なまでの魂の飛翔を遂げる知識の信奉者達の中間に在り,彼の自己投影は作中,心理の追求者の形をとっているように思われる。ホーソーンにとっての文学者や心理学者は(彼にとっての科学者達と同じく,冷酷と呼べるほどの偏執性を持ちながら)現実の人間の心の問題から目を離せないでいる人々である。孤高の作家ホーソーンは,人間心理の深淵をのぞこうとする情熱とやましさを,イーサン・ブランドやロジャー・チリングワースと分かち合っていたと推考できる。その観点で,D.H.ロレンスのロジャー・チリングワース分析は若干皮相的すぎるのである。
著者
宇都宮 由佳 伊尾木 将之 瀬尾 弘子 江原 絢子 大久保 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】日本人の食文化は年中行事と密接に関わって育まれてきた。2015年度農水省「「和食」の保護・継承推進検討会」が実施した「食生活に関するアンケート調査」(10,235人)データを分析した結果、「正月・大みそか」が最も実施され、行事食を食べていることが分かった。そこで本研究では、和食の保護・継承のため正月行事及びその食について、より詳細な現状を把握することを目的に、2017年の正月に関するアンケート調査を実施した。<br /><br />【方法】調査は2017年1-2月全国の和食文化国民会議のメンバーおよび本研究に賛同を得た大学教員・学生を対象に実施した。調査票2047件回収しデータクリーニングをしたのち統計分析を行った。世代別、性別、地域別、子の有無でクロス分析、相関分析等を行った。<br /><br />【結果】正月への準備は、大掃除が最も多く、次いで年越しそば、年賀状、雑煮、おせち料理であった。食関連では祝箸、鏡餅、お屠蘇が、年齢の高い世代ほど準備をしており有意な差がみられた。2017年正月、雑煮とおせち料理は8割以上の人が食べていたが、お屠蘇は全体で約2割、世代差があり50歳以上で4割弱、20歳未満は約1割であった。子の有無による違いをみると雑煮やおせちは、子有または子の年齢が若い方が喫食する率が高い傾向がみられた。雑煮の餅、調理法、調味料については地域差があり、特に餅の形状は東側(角餅)と西側(丸餅)で明確な違いが見られ、地域の食文化継承の様子が伺えた。一方、お屠蘇や祝箸は若年層で準備や実施率が低く、薄れつつある現状が明らかとなった。学校の授業では雑煮やおせちは取り上げることが多いが、今後は屠蘇や祝箸、鏡餅などについても意味等伝えていく必要があろう。
著者
久保田 忠利
出版者
東海大学文学部
雑誌
東海大学紀要 文学部 (ISSN:05636760)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.48-33, 2004

This is a prose translation of Aristophanes' Birds (Ornithes in Greek original title, Aves in Latin) with introduction and notes. Aristophanes is the most famous Athenian comic poet in the 5th century B. C. Birds was produced at the City Dionysia in the spring of 414 B. C. That the play contains rich fantasy is unanimously agreed and highly praised by critics, but the interpretation of the work differs widely. Some scholars find in Birds allegorical comment on the political events in 415 B. C., others see as a creation of egocentric desire to get control over everyone else. This subject will be discussed after the completion of this translation.
著者
福島 雅夫 吉村 一彦 久保 恵嗣 小林 俊夫 半田 健次郎 草間 昌三
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.18, no.10, pp.753-757, 1980

22才男. 中岳 (3,084m) 登頂後呼吸困難, 意識障害が出現, 天候不順のため4日間山頂付近に滞留した. 救助時昏睡状態, 全身チアノーゼを認め, 全肺野で湿性ラ音を聴取した. 呼吸不全のため救助後約12時間で死亡. 剖検にて肺水腫の他に肺胞毛細血管, 肺動脈に微小血栓を認め, 脳白質にびまん性点状出血を認め注目された.
著者
久保 武一
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

中枢神経軸索は一度損傷すると再生しないが、その原因の一つとして中枢神経軸索の再生を阻害する因子repulsive guidance molecule(RGMa)が報告されている。RGMaは、中枢神経傷害時にニューロン、オリゴデンドロサイトのみならず、免疫細胞の一種であるミクログリア/マクロファージにおいても発現上昇する。この観測結果から、先行研究課題でRGMaの免疫系における役割を検討し、以下の結果を得た。1、抗原提示細胞(樹状細胞)の活性化にともないRGMaの発現上昇を認めた。2、CD4陽性T細胞ならびにマクロファージにRGMaが結合することをフローサイトメトリーにて確認した。3、RGMaはCD4陽性T細胞ならびにマクロファージにおいて、細胞内シグナル分子であるRap1の活性化を誘導した。4、Rap1が媒介する細胞機能として、細胞接着性の向上が報告されているが、CD4陽性T細胞ならびにマクロファージを含む脾臓細胞にRGMaを作用させたところ、細胞接着性の向上を認めた。5、過剰な免疫反応により誘導される実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)におけるRGMaの役割を、RGMaの作用を抑制する抗RGMa抗体投与により解析したところ、抗RGMa抗体が治療効果を示すことを観察した。本研究課題ではさらに詳細な解析を行い、RGMaの作用をブロックすることで、CD4陽性T細胞の免疫反応性ならびに脊髄における炎症反応が抑制され、EAE病態が抑えられることを観察した。以上の結果は、RGMaが生体内での免疫反応の活性化に関与することを示唆し、RGMaが過剰な免疫反応を原因とする多発性硬化症などの中枢神経での自己免疫疾患の治療標的となりうることを示唆する。
著者
小久保 啓弘 Akihiro Kokubo
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2013-03-25

2012年の7月に首都大の水口らによりBi4O4S3に電子ドープをすることにより、超伝導状態が発現されることが発見された。この物質はBiS2層を持つ層状構造を有しており、その後同様にBiS2層を持つ物質、REO1-xFxBiS2(RE=La,Ce,Pr,Nd)などの物質も超伝導になることが発見された(TcはLaにおいて最大10.6K)。このことからBiS2層が超伝導の本質である可能性が高い。銅酸化物や鉄系超伝導に続く、層状超伝導体の新しいファミリーの発見であることから注目を集めている。2次元性が高いという点においては銅酸化物や鉄系超伝導と似ており、非従来型超伝導メカニズムの可能性にも興味が持たれるが、発見されて日が浅いこともあり、超伝導発現機構に関しては様々な議論がなされているが、結論は出ていない。BiS2層が超伝導の本質にどのように関わっているか調べるため、本研究では結晶構造が単純でTcの高いLaO1-xFxBiS2に着目した。第一原理バンド計算からバンド構造を求め、最局在Wannier関数を用いてBiS2層の6p軌道とSの3p軌道を考慮した2次元4軌道有効模型と、Sの効果を有効的に取り込んだ2次元2軌道模型を構築した。それぞれの模型に対して乱雑位相近似(RPA)を適用し、バンドフィリングを変えつつ磁気感受率及び超伝導ギャップを計算した。結果としては、バンドフィリングを増やしていくとフェルミ面の形が変化し、ネスティングベクトルが変化する(図1)。それに伴い磁気揺らぎが変化しTcが最大となるx=0.5において強い強磁性的な揺らぎが発達することがわかった。超伝導ギャップに関しては拡張s波、dx2-y2波、dxy波の3種類の対称性を想定し計算を行い、これらの対称性に対する線形Eliashberg方程式の固有値λの値を求め比較した(図2)。これより、どのバンドフィリングにおいても拡張s波とd波の値が同程度の大きさを持っており、競合していることがわかった。複数の対称性の虚号は、Tcを下げる要因となっている可能性があると考えられる。
著者
葛原 茂樹 小久保 康昌 佐々木 良元 桑野 良三 伊藤 伸朗 冨山 弘幸 服部 信孝 辻 省次 原 賢寿 村山 繁雄 齊藤 裕子 長谷川 成人 岩坪 威 森本 悟 赤塚 尚美
出版者
国立精神・神経センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

紀伊半島の一部集落に多発する神経風土病の筋萎縮性側索硬化症・パーキンソン認知症複合(ALS/PDC)類似疾患で知られているほぼ全ての原因遺伝子を調べ、異常変異は認められなかった。病態と発症に関して、脳のアルツハイマー神経原線維変化の分布様式はALSとPDCでほぼ同じであった。脳と脊髄にはTDP-43の蓄積が認められ、生化学的にはタウ/TDP-43異常蓄積症と考えられた。尿中の酸化ストレスマーカーが有意に上昇しており、神経変性に参加ストレスの関与が推定された。タウとTDP-43の蓄積を起こして神経変性が進行する仕組みと、遺伝子の関与の解明が今後の課題である。
著者
矢野 博美 田原 英一 山田 靖子 山内 俊彦 吉永 亮 犬塚 央 久保田 正樹 平田 道彦 栗山 一道 三潴 忠道
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.13-22, 2014 (Released:2014-07-22)
参考文献数
22
被引用文献数
1 3

58歳男性。20年来の2型糖尿病を放置し,糖尿病足病変を発症した。HbA1c10.8%(JDS)でトリオパチーを合併していた。発症12日後に漢方治療を希望して当科に転院した。右足全体は浮腫状で,第4・5趾間と足背に潰瘍(約7 × 4 cm と 5 × 4 cm)を認め,骨髄炎を合併していた。抗生剤,インスリン,プロスタグランディン製剤とともに,漢方治療は小腹不仁を目標に八味地黄丸料を用い,瘀血を改善する目的で桂枝茯苓丸大量投与(自家製剤2 g × 24丸/日)を7日間行い漸減した。その後,八味地黄丸料を自家製剤に変更し,肉芽形成促進を期待して帰耆建中湯(黄耆20 g)に転方した。経過中に右第5趾の骨が露出したが,潰瘍は退院時(発症50日)に2.5 × 1.8 cmに縮小した。発症約2ヵ月後には潰瘍部分が上皮化して包帯が不要になり,4ヵ月後に治癒した。漢方治療は糖尿病足病変に有効で治癒を早める可能性があると考えた。
著者
仲上 豪二朗 久保 貴史 川波 一美 岩嵜 徹治 真田 弘美
出版者
看護理工学会
雑誌
看護理工学会誌 (ISSN:21884323)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.174-179, 2015

&emsp;背景/目的:皮膚バリア機能の損傷は細胞間脂質の減少によって引き起こされ,褥瘡のリスクになりうる.本研究はセラミド含有ドレッシング材(CD)から皮膚へのセラミドデリバリーが皮膚バリア機能の回復能を有するかどうかを検証した.方法:健常者の皮膚に対して,異なる濃度のCDを貼付し,セラミドデリバリーの濃度依存性を検討した.その後,CDを,人工的に皮膚バリア機能を損傷させた健常人の前腕に貼付し,皮膚バリア機能回復能を検証した.結果:CDから角層へセラミドが移行することが確認された.また,セラミド非含有ドレッシング材および未貼付群に比較して,CDは貼付後3日および6日目の経皮水分蒸散量を有意に低下させた(貼付後3日:順にP=0.047,P=0.009;貼付後6日:順にP=0.048,P<0.001).結論:CDによるセラミドデリバリーは皮膚バリア機能を回復させるのに有効であり,褥瘡予防方法として有用な方法である可能性が示された.
著者
下田 俊介 大久保 暢俊
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.90.17309, (Released:2018-12-25)
参考文献数
21
被引用文献数
1

People with low self-esteem, when experiencing a threat to self-evaluation, reportedly tend to place higher value in a romantic partner as an indirect form of self-enhancement. This study examined whether such an indirect form of self-enhancement is also found when considering a close friend. Participants’ trait self-esteem was measured. Then, they participated in an experiment in which they experienced (or not) a threat to their self-evaluation. They were subsequently asked to evaluate their close friends and acquaintances using trait adjectives. The results showed that participants with low self-esteem valued their close friends and acquaintances highly when they experienced a threat, compared with those who did not experience one. Meanwhile, participants with high self-esteem devalued their close friends but not their acquaintances when they experienced a threat, compared with those who did not. These results suggest that people with high self-esteem devalue their close friends as an indirect form of self-enhancement. We discuss the need to examine the effects of the difference in relationship quality between a close friend and a romantic partner, as well as the cross-cultural differences in indirect forms of self-enhancement.
著者
久保田 恵章 玉木 正義 前田 真一 勝股 克成 森脇 崇之 田代 和弘 出口 隆
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.9-11, 2005-01

著者らの施設における男性不妊症に対する精巣内精子採取法(TESE)の臨床成績について検討した.対象は,男性不妊症でTESEを施行した30例(平均年齢35.0歳)で,内訳は閉塞性無精子症7例(精管,射精管閉塞4例,精管切断術後3例),非閉塞性無精子症21例(染色体異常1例,原因不明20例),射精障害(脊髄損傷)2例であった.30例中20例で精子回収が可能であったが,1例は不動精子で凍結保存はできなかった.20例中15例にICSI(卵細胞質内精子注入法)を施行し,8例で妊娠が成立,7例で出産に成功した.非閉塞性無精子症21例中精子回収可能であった11例(52%)と不可能であった10例における精子回収の予測因子の検討では,FSH・LHは非回収群で有意に高値であり,Johnsen's scoreは非回収群で有意に低かった.この3因子は精子回収の予測因子となり得ると考えられたOwing to progress of assisted reproduction technology in recent years, it has become possible for couples with infertility problems to have children. Between March 1998 and May 2003 testicular sperm extraction (TESE) was performed on 30 men with male-factor infertility in our hospital. Consequently, we succeeded in recovering 20 spermatozoa. Intracytoplasmic sperm injection was subsequently performed in 15 couples and resulted in 8 pregnancies. There was a statistically significant difference in follicle-stimulating hormone, luteirizing hormone and Johnsen's score between the non-obstructive groups with successful TESE and those with unsuccessful TESE.
著者
大久保 純
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.35-38, 1995 (Released:2003-08-05)
参考文献数
2

片麻痺患者はある程度の非麻痺側の代償を用いて,動作の獲得を学習していく。これに感覚障害を伴うことは,麻痺側の機能回復の妨げになるとともに,より非対称で異常な代償にて動作を学習していくと考えられる。報告する症例は弛緩性右片麻痺,深部感覚障害が重度で歩行は困難な状態で転入院してきた。治療は感覚障害に対して視覚代償による自己管理だけを進めるのではなく,運動機能と感覚との関係に注意して運動療法による感覚の回復を求め異常性の少ない歩行の獲得を図った。その結果,右下肢の深部感覚障害は軽度となり自宅周囲の散歩が可能なレベルの歩行を獲得し退院することができた。脳血管障害の感覚障害の改善と運動機能の回復は別々に治療を行うのではなく,互いの関連を考え同時に進めていくことの必要を改めて感じることができた。
著者
久保田 正 上野 輝弥
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.125-128, 1972-09-20 (Released:2010-06-28)
参考文献数
18

1971~2年に駿河湾で9尾のダルマハダカが採集された.体長は78.7~90.5mmであって, これまでに報告されている最大のものよりさらに大きい。ダルマハダカは東および中部大西洋, 地中海, インド洋, 北および南太平洋東部海域に分布することがわかっていたが, 今回の日本の個体により北太平洋西部にも分布していることが判明した.