著者
菅野 幸恵 北上田 源 実川 悠太 伊藤 哲司 やまだ ようこ
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.6-24, 2009 (Released:2020-07-07)

本論文は,奈良女子大学で行われた日本質的心理学会第 4 回大会におけるシンポジウムの内容を収録したものである。北上田氏は,沖縄での平和ガイドの実践経験から,非体験者が過去の出来事とどのように出会うのかという体験の創出を重視した,伝えながら共に学ぶガイドのあり方について述べた。実川氏は,水俣展を開催した経験から,自由に足を運びやすい展覧会という場の可能性,聞く側の準備の必要性について述べた。ふたりの話題提供に対して,質的心理学の立場から,伊藤哲司氏,やまだようこ氏がコメントを行った。伊藤氏はベトナムやタイでのフィールドワークの経験から,あえて語らないことの意味についてコメントした。やまだ氏はナラティヴの立場から,2 氏の実践のあり方と語り手と聞き手の関係をむすぶメディエーターの役割を重視した協働の学びのトライアングルモデルとの関連について述べた。最後に,“語り継ぐ”ことについて,双方向性,メディエーターを通した個別の体験のむすび,語らないことの意味から考察した。
著者
許 鳳浩 長谷部 久乃 石原 克之 伊藤 政喜 上馬塲 和夫 鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.23-26, 2017-03-31 (Released:2017-04-05)
参考文献数
12
被引用文献数
1

フルーツグラノーラの摂取が排便状況およびQOLに与える影響について検討するため,排便回数が週に5回以下の女性20名(平均年齢20.0 ± 1.1歳)を対象としたオープン臨床試験を行った.フルーツグラノーラ1日当たり50 gを,1食の主食に置き換えて2週間連続摂取させ,摂取前後の排便状況やQOLを比較した.試験の結果,フルーツグラノーラ摂取後は,摂取前と比べて摂取2週間目で排便回数の増加( p =0.014),排便量の増加(p =0.024)が見られ,全体的なQOLの向上(p =0.011)も認められた.このことから,フルーツグラノーラの摂取は排便状況の改善やQOL向上に有効である可能性が示唆された.
著者
青木 光広 林 寿光 若岡 敬紀 西堀 丈純 久世 文也 水田 啓介 伊藤 八次
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.270-276, 2017-08-31 (Released:2017-10-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

The superior semicircular canal dehiscence syndrome (SCDS), which presents with comprehensive symptoms such as hyperacusis, autophony, and pressure-induced vertigo, has been recently recognized in Japan. Three patients with SCDS, in whom severe vestibular symptoms were unable to be controlled with conservative treatments, underwent capping surgery through the middle fossa approach. The preoperatively air-bone gap (AB gap) in the audiometry, the decreased threshold of cervical vestibular evoked myogenic potentials (cVEMP) and bone dehiscence of the superior semicircular canal could be observed in all patients on CT imaging. All patients suffered from positional vertigo for about one week after the operation. However, their cochlear and vestibular symptoms associated with the SCDS were relieved within a few months after the operation. The capping procedure decreased the AB gaps and increased the thresholds of cVEMP in all patients. We suggest that capping surgery via the middle fossa approach for the SCDS is an efficient procedure without severe side effects.
著者
伊藤 博之
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.477-482, 2012-04-15
被引用文献数
2

著作権法で規定される著作物の利用は,著作権者の許諾を必要とする密なモデルである(原則NG).「初音ミク」を人々の創作の共通テーマとして不特定多数のクリエイターが創作に使用できるために,当社はライセンスを規定・公開して当社の許諾を取らずとも使用できる範囲を拡げ疎のモデルを提案した(原則OK).これにより「初音ミク」がクリエイター同士を結びつけるインタフェースの役割を持つものとして,インターネットで創作の連鎖を引き起こした.この創作の連鎖は,技術研究の分野,商業分野にも波及しており,日本発のムーブメントとして,世界にも影響を与えはじめている.
著者
伊藤 貴昭 垣花 真一郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.86-98, 2009-03-30 (Released:2012-02-22)
参考文献数
19
被引用文献数
14 5

説明を生成することが理解を促進することはこれまでの研究でも数多く示されてきた。本研究では, 他者へ向けた説明生成によって, なぜ理解が促されるかを検討するため, 統計学の「散布度」を学習材料として, 大学生を対象に, 実際に対面で説明する群(対面群 : 13名), ビデオを通して説明する群(ビデオ群 : 14名), 上記2群の説明準備に相当する学習のみを行わせる群(統制群 : 14名)を設定し, 学習効果を比較した。その結果, 事後テストにおいて対面群が他の2群を上回っており, 対面で説明することが理解を促すことが示唆された。一方, ビデオ群と統制群には有意差は見られず, 単に説明を生成することのみの効果は見られないことが示された。プロトコル分析の結果, 「意味付与的説明」, またその「繰り返し」の発話頻度と事後テストの成績との間に有意な相関が見られ, 対面群ではビデオ群よりこの種の発話が多く生成されていた。対面群でそれらが生成された箇所に着目すると, これらの少なくとも一部は, 聞き手の頷きの有無や返事などの否定的フィードバックを契機に生成されていることが明らかとなった。本研究の結果は, 他者に説明すると理解が促されるという現象は, 聞き手がいる状況で生じやすい「意味付与的説明」, またそうした発話を繰り返すことに起因することを示唆している。
著者
荒木 和憲 伊藤 幸司 榎本 渉 須田 牧子 後藤 真
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成30年度に引き続き,研究代表者と研究分担者が5つの作業チームに分かれて研究を進めた。「東アジア交流史関係史料」の検出・データ化作業は,荒木班・榎本班・伊藤班・須田班が行った。具体的には,榎本班は中世前期の記録・典籍類(刊本),伊藤班は九州に所在する中世後期の文書類(刊本),荒木班は九州以外に所在する中世後期の文書・記録類(刊本),須田班は禅宗関係史料(東京大学史料編纂所謄写本)を分析し,10~16世紀における「東アジア交流史関係史料」を検出した。検出した史料については,基本情報(年月日・作成者・受信者・史料名・典拠など)だけでなく、本文の全文テキスト(一部は抄出)を作成し,かつ当該史料の生成・授受にかかわる地域・階層などのメタデータを付与した。各班で作成したデータは,研究代表者である荒木がとりまとめ作業,校正,データの整合性チェックを行った。こうして作成したデータは,平成30年度末の時点では約4,600件であったが,令和元年度末には約7,000件に増加した。また,紙媒体での報告書(『東アジア交流史関係史集成(稿)』)の編集作業を同時に進捗させており,原稿量は令和元年度末の時点で約1,300頁(A4版・2段組)に達した。一方,後藤班は,ファセット検索システムの運用改善を進めた。当該システムは,ユーザーがさまざまな切り口から高度で有意な情報を引き出すことを意図したもので,今年度内に国立歴史民俗博物館の「総合資料学情報基盤システム」(https://khirin-ld.rekihaku.ac.jp/)における試験公開を行っており,校正済のデータについての基礎検索が可能である。
著者
倉員 貴昭 鈴木 稚子 伊藤 千恵子 島原 義臣
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.95-101, 2016 (Released:2016-08-29)
参考文献数
14
被引用文献数
1

Recently, consumers have a heightened awareness of food safety; moreover, complaints regarding off-flavor are also increasing. There are various causes of off-flavor in frozen food, but in our experience there have been repeated cases in which p-DCB detected in residential environments and styrene detected in refrigerators have been detected in food that has generated complaints of off-flavor. Therefore, we consider that these compounds might pertain to off-flavor in frozen food products. Also, testing has been done on the migration of volatile organic compounds (VOCs) to food at room temperature up to now. On the other hand, there is no knowledge regarding frozen food. In this study we investigated VOCs and monitored the amount of migration regarding p-DCB and styrene in home freezers for an extended period. The results showed that p-DCB and styrene have existed in all of the home freezers examined, and both substances have migrated to frozen food. For this reason, it is possible that both of these substances are indicators of lingering odors when keeping food refrigerated. Therefore, it was shown that the amount of migration varies according to the type of food and how packages of food are resealed once opened. These observations indicate that frozen food whose packages were opened has a risk of lingering odors the same as food stored in other temperature zones does.
著者
伊藤 靖忠
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第63回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.71, 2011 (Released:2014-12-26)

ワルファリンを代表とする第一世代の抗凝血性殺鼠剤は、単回摂取ではほとんど致死効力を発揮しないが、複数回摂取では顕著な累積効果が認められる。一方、ジフェチアロールを代表とする第二世代の抗凝血性殺鼠剤は、ネズミに対する毒性が極めて高く、単回摂取でも致死効力を発揮するが、これら薬剤の累積効果についての報告はほとんど見られない。マウスに対するジフェチアロールの累積効果については、第59回衛動学会大会時(2007)の殺虫剤研究班集会で報告した。試験は、所定濃度の投与液をマウスの体重10g当たり0.1mlの割合で金属製ゾンデを用いて直接胃内に投与する方法で行った。その結果、従来より認められていた単回摂取での致死効力に加え、単回摂取で十分な効力が得られない低薬量群において、0.5mg/kgの1回投与で死亡率が0%(0/6)、0.1mg/kgの5回投与で死亡率が33.3%(2/6)という累積効果が認められた。その後、ラットおよびクマネズミに対して同様の方法で試験を行った結果、単回摂取での致死効力に加え、単回摂取で十分な効力が得られない低薬量群において、ラットでは0.5mg/kgの1回投与で66.7%(4/6)、0.1mg/kgの5回投与で100%(6/6)、クマネズミでは0.5mg/kgの1回投与で50%(2/4)、0.1mg/kgの5回投与で100%(4/4)という死亡率が得られ、いずれのネズミにおいても、0.1mg/kgの5回投与、合計で0.5mg/kgという低薬量で累積効果が認められた。これらの結果の詳細について報告する。
著者
小関 成樹 伊藤 和彦
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.390-393, 2000-05-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
10
被引用文献数
7 12

電解水の保存中の変化を検討した結果,以下のことが明らかになった.1) 短期間の保存において,強酸性電解水のORP,有効塩素濃度は明所開放条件によっては速やかに低下し,有効性を失うことが示された.一方,遮光密閉条件において強酸性電解水は安定していることが確認された.また,強アルカリ性電解水は保存条件によらず不安定であった.2) 長期間の保存においても強酸性電解水は遮光密閉状態であれば安定した状態を保つことが明らかになった.また,遮光しない場合にはORP,有効塩素濃度は速やかに低下してしまうがpHは変化を示さないことから,活性を失っても酸性を示す水溶液であることが明らかになった.
著者
塚田 由佳里 小伊藤 亜希子
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.14, no.27, pp.223-228, 2008-06-20 (Released:2009-02-13)
参考文献数
6
被引用文献数
5 9

This paper aims to clarify the relationship between split method and it's effects.Hearing survey was condacted,the results are as follows.1)There are 3 split-types.Type I :combined care in a ground,Type II :separated care in a ground and Type III :separeted care in the separated grounds.2)The effects defer from split-types. Type I improves in physical conditions.Type II and Type III are effective way at all points,especailly type III is more effective in child care.3)There are 4 barriers to split the GAKUDOHOIKUSYO. (1) difficulty to find a site, (2) unstable operation, (3) lack of parents' understanding and (4) lack of government's arrangement policy for GAKUDOHOIKUSYO.
著者
伊藤 徹哉
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.118-143, 2009-03-01 (Released:2011-05-31)
参考文献数
60
被引用文献数
1

本研究は,都市再生政策が早くから実施されているドイツのミュンヘンを事例として,都市再生政策の展開過程を整理し,1980年から2000年における都市空間の形態的・社会経済的変化という視点から都市再生の実態を分析することを通し,都市再生政策に伴って生じる空間再編の地域的差異の特徴を考察することを目的とする.ミュンヘンでは1970年代以降に都市再生政策が本格的に導入され,個別の既存住宅の改良を促進するための複数の施策のほか,主な事業として都市更新事業が実施され,既成市街地が面的に改善されていった.建築物の形態的側面からみると,都心2~4 km圏に位置する東西の都市更新事業の実施区域や,都市政策上の重点開発地域である中央駅周辺などの都心周辺において都市再生が活発である.特定区域における都市再生の活発さは,公的事業による直接的な開発行為,およびそれらを契機とした民間投資による開発を反映している.都市再生の社会的側面として,建物更新が顕著である都心周辺の更新度が「中・高」の地区においては,ドイツ人人口が維持され,または増加しており,社会経済活動の中心である18~64歳までの生産年齢人口の割合が高く,社会的な再生産がみられる.都市再生政策の実施を契機として,衰退地域が居住地としての魅力を回復し,都心周辺という立地条件を備えた開発地としての魅力を高めており,政策的判断を通して都市再生が特定地域で促進されるという選択的な都市再生が進行している.
著者
伊藤 晶文
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.537-550, 2003-06-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
34
被引用文献数
2 1

北上川下流低地に分布する浜堤列の形成時期について,空中写真判読,ボーリング資料解析,堆積物の粒度分析と14C年代測定および考古学的資料の整理などから考察した.さらに,本研究で明らかとなった浜堤列形成時期と既存の14C年代資料の整理・検討および埋積浅谷の形成時期とから,仙台湾岸における完新世後期の相対的海水準変動を考察した.北上川下流低地臨海部には,内陸から順に広渕浜堤列,第I浜堤列,第I'浜堤列,第II浜堤列,第III浜堤列の五つの浜堤列が存在し,各浜堤列の形成時期は,内陸側から縄文時代前期 (6,000~4,600 yr B. P.), 縄文時代中期 (4,600~4,000 yr B. P.), 縄文時代後期 (4,000~3,000 yr B. P.), 縄文時代晩期から弥生時代にかけて (3,000~1,600 yr B. P.) および1,000 yr B. P.以前から現在である.仙台湾岸では過去6,000年間に5回の海水準の上下動が認められ,約3,500 yr B. P.と約2,200yrB. P.を含む5回の海水準の極大期,約2,500 yr B. P.と約1,600 yr B. P.を含む4回の海水準の極小期の存在が推定された.
著者
布川 悠介 伊藤 史子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.589-564, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
6

「グラフィティ」とは街に描かれる落書きのことである。本研究ではグラフィティ分布と都市要素との関係を分析し、ライターの行動特性に関する示唆を得ることを目的としている。高円寺駅を中心とした半径600m以内のグラフィティ分布の調査を行って得られた地点と数、種類のグラフィティ属性データを用いて空間分析を行った。駅距離とグラフィティ密度の関係から非線形回帰分析により密度関数を導出した。ライター間の敵対的な「Communication」地点と不特定多数に見せつけるための「Exposure」グラフィティの各分布が商業地域、駅南の商業地域に集中していることをKolmogorov-Smirnov検定、二項検定により示している。グラフィティを描く目的に着目して行った空間分析の結果より、ライターの行動特性は都市要素と関係していることがわかった。特に駅からの距離、用途地域はグラフィティを描く場所を決定する上での大きな要因となっている。これらの分析によって導かれた結果はライターの行動特性を空間的に捉える一つの指標になると考えられる。
著者
魚崎 祐子 伊藤 秀子 野嶋 栄一郎
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.349-359, 2003
参考文献数
14
被引用文献数
20

テキストを読みながら学習者が自発的に下線をひく行為が文章理解に及ぼす影響について,文章の難易度と読解時間という2要因に着目し,テキストに予めつけておいた下線強調との比較という点から実験的に検討した.自分で下線をひくことのできるアンダーライン群,キーワードなどを下線で強調したテキストを与えられるプロンプト群,統制群の3群に被験者を分け,テキスト読解の後に自由記述形式の再生テストを行った.その結果,テキストの下線強調は文章の難易度や読解時間の長さに関わらず,強調部分の再生を高める効果を持つことが示された.一方,学習者の下線ひき行為が有効であるのは,難解なテキストの読解において十分な読解時間を与えられた時に限定された.また,テキストにつけられた下線,自分でひいた下線ともに下線部以外の再生は促進しないということ,下線の有無に関わらずテキスト中の重要な概念ほど再生されやすいということも明らかになった.
著者
伊藤信博
出版者
名古屋大学
雑誌
言語文化論集
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, 2009-10-09
著者
伊藤 浩明
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.9-16, 2010 (Released:2010-07-09)
参考文献数
13
被引用文献数
1

食物アレルゲン特異的IgE抗体検査は,患者血清中の特異的IgE抗体を高感度に検出して,食物アレルギーの診断に対する感度は比較的良好である.一方,抗体陽性であっても誘発症状を認めない偽陽性がしばしば存在し,臨床現場ではある抗体価以上であれば食物アレルギーと診断できる確率(陽性的中率)を参考にすることが限界である.しかし,食物間の交差抗原性を考慮して複数の食品の抗体価を比較することにより,経口負荷試験に頼らなくても診断精度を向上させる工夫ができる.さらに,アレルゲン成分別に抗体価を測定して,感度・特異性に優れた検査を開発する研究が進められている.