著者
矢部 多加夫 澤木 誠司 中本 吉紀 伊藤 茂彦 小寺 一興 中村 雅信
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.223-230, 1997-08-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
17

スポーツクレー射撃時の衝撃音が射手に与える影響について検討するために, 衝撃音測定用のダミー人形装置 (KEMAR) を用いて衝撃音を測定し, 63名のクレー射手を対象に純音聴力検査と質問紙調査を実施した。 1) 衝撃音のピーク音圧は約155dBで, 2msec前後にピークをもち, 約50msecで減衰した。 2) 銃口側耳と反対側耳間にピーク音圧差が認められ, 耳介の集音作用が考えられた。 3) 音響外傷予防用具の遮音効果についてはイヤープラグとイヤーマフの併用, イヤープラグ, イヤーバルブ, イヤーマフの順であった。 4) 高音域で明らかな高音急墜ないしC5 dipを示した異常群は非異常群に比べ平均年齢が高く, 平均経験年数が長く, 予防用具使用率が低率を示した。 音響外傷予防用具は遮音に効果的で, 予防用具の必要性と適切な使用法についての今後の一層の普及, 使用率の向上が望まれる。
著者
戸次 大介 峯島 宏次 金子 貴美 田中 リベカ 谷中 瞳 木下 恵梨子 伊藤 友里菜 簗 有紀子
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第31回全国大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.2B3OS07a4, 2017 (Released:2018-07-30)

自然言語の意味論はモンタギュー以来、モデル理論的意味論が主流であったが、ランタらによる証明論的意味論の流れが存在する。特に近年、著者ら自身の研究を含む理論的進展により、証明論的意味論の経験的、計算的優位性が明らかにされつつある。本発表では、証明論的意味論の中心的枠組みの一つである依存型意味論(DTS)を紹介するとともに、その言語学的意義、哲学的位置付け、自然言語処理への応用などについて解説する。
著者
伊藤 元一 柚木 脩
出版者
中国・四国整形外科学会
雑誌
中国・四国整形外科学会雑誌 (ISSN:09152695)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.325-329, 1996-09-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
3

It was difficult for a baseball player to recover completely from a frontal dislocated shoulder or subluxation even though an operation was performed because it limits the range of motion of the shoulder. However, recently many baseball players wish for complete recovery. Our team has been making efforts to meet their wishes. This is a report of some cases we have treated. We define a complete recovery as a state when a player can throw a ball fast enough to play on a team without experiencing pain.
著者
中濵 直之 瀬口 翔太 藤本 将徳 有本 久之 伊藤 建夫 藤江 隼平 高柳 敦
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
大阪市立自然史博物館研究報告 = Bulletin of the Osaka Museum of Natural History
巻号頁・発行日
vol.73, pp.91-105, 2019-03-31

京都府に位置する京都大学芦生研究林は設立以降多くの研究者により利用・調査されているが,ニホンジカによる食害やナラ枯れにより,動植物相は2000年代以降大きく変化している.甲虫類( 鞘翅目) については1970年代にまとまった調査が行われているものの,近年まとまった報告はない.そこで本研究では,2008年から2016年にかけて甲虫相の調査を実施した.その結果,66科496種1,123個体の甲虫が記録され,そのうち7科14種は京都府新記録だった.本調査では,腐朽木に依存する甲虫や地表性甲虫が特に多く得られた.ニホンジカの増加やナラ枯れなどの生態系変化は,現時点では地表や腐朽木を生活場所とする甲虫相には負の影響を与えていないかもしれない.一方で,得られた草本植物食甲虫の数は少数だった.ニホンジカによる生態系被害は特に草本植物で顕著なため,草本植物食甲虫は負の影響を受けている可能性が示唆された.
著者
伊藤 邦彦
出版者
東京都立産業技術高等専門学校
雑誌
東京都立産業技術高等専門学校研究紀要
巻号頁・発行日
vol.1, pp.2-12, 2007-03

鎌倉全期を通じて、守護・守護人・守護所・守護職と様々に表記された名称のうち、必ずしも「正員」を表すとは限らないケースを中心に、その用例を個々に検討した。
著者
中矢 大輝 遠藤 慎 佐鳥 新 吉田 功 三枝 信 伊藤 那知 加納 正城
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3+, pp.99-101, 2017-05-01 (Released:2017-10-07)

発症初期における大腸癌の識別は,医師による定性的な判断により行われる.本研究では,北里大学の協力のもと,初期の4段階に分類された大腸癌のうち最も識別が困難であるとされる高度異形成と癌細胞の識別をハイパースペクトルカメラにより計測し,機械学習を用いて解析を行った.使用したハイパースペクトルカメラは,北海道衛星株式会社が開発したHSC1702である.分類に用いた手法は,K近傍法,サポートベクターマシーン,ランダムフォレストである.前処理として,細胞核より抽出されたハイパースペクトルデータを主成分分析により次元削減した.第三主成分までを考慮して3手法をトレーニングを行い予測させた結果,1100以上のサンプルに対し,K近傍法では96.0%,サポートベクターマシーンでは98.1%,そしてランダムフォレストでは98.2%の精度を得た.
著者
伊藤 克哉 中川 慧 今城 健太郎 酒本 隆太
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.3Xin409, 2023 (Released:2023-07-10)

機械学習による金融時系列の予測は実務的にも学術的にも重要な研究課題である。金融時系列は、ノイズが多く、非定常であり、更に機密情報を含む事があるため、分析が困難である。これらの課題に対して、本研究ではAugmentation and Bagging method for Confidential Data series Forecasting(ABCD-Forecast)という手法を提案する。ABCD-Forecastは「データ分析コンペティション」という現実の枠組みから着想を得ており、 多数の分析者が予測結果を送信し評価を受ける仕組みを仮想的に構築する。ABCD-Forecastでは、仮想的な分析者に多様な「ノイズ除去加工」をしたデータを配布する。この加工により多様で低ノイズなデータ生成が可能となる。コンペティション形式で、分析者から多様かつ正確なモデルを得、状況ごとに使い分けることで非定常な市場にも対処する。また、時系列を加工して配布することで、実際のコンペティションに於いても機密性を担保したデータ配布が期待される。本研究では実データを用いた実証分析により良好な予測精度が得られることを示した。
著者
鈴木 杏奈 長谷川 諒 稗貫 峻一 窪田 ひろみ 伊藤 高敏
出版者
日本地熱学会
雑誌
日本地熱学会誌 (ISSN:03886735)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.111-122, 2022-07-25 (Released:2023-01-25)
参考文献数
35

Geothermal potential area in Japan has been depopulated recently, and there have been distances between the geothermal potentials and most energy consumers living in urban areas. Since 2020, working from home (home-based telework) has spread rapidly due to the influence of the COVID-19. If some of the energy consumers work from the geothermal potential area, namely onsen areas, it would help to reduce the extra fossil fuel consumption, to reduce the environmental impact, and to save commuting costs and time. In this study, we quantitatively evaluated the advantages and feasibility of working from onsen in Naruko area, Osaki City, Miyagi Prefecture, as a case study. The environmental effects were analyzed by using the annual CO2 emissions and the costs, based on the perspective of the form of stay and the life-cycle assessments with four scenario conditions ((a) base system, (b) home-based telework in a city, (c) onsen-based telework (using hot spring only for bathing), and (d) onsen-based telework (using hot spring for bathing and heating)). Compared to the base system, the use of public baths in the onsen area can reduce CO2 emissions by about 1/3, and the use of bathing and heating by hot springs can reduce CO2 emissions by about 1/4. In the case of a short-term stay in the onsen area, the effects of reducing CO2 emission differed depending on the area where the worker is based and the season. The results indicates that some conditions of the short-term stay may results in higher CO2 emission than when nothing is done. Therefore, we expect that each of urban workers, companies, and onsen areas will change their awareness and take actions to be able to stay in the onsen area for a mid- to long-term.
著者
伊藤 資浩 河原 純一郎
出版者
北海道心理学会
雑誌
北海道心理学研究 (ISSN:09182756)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.1-13, 2019-03-31 (Released:2019-03-25)
参考文献数
27
被引用文献数
2

対人評価において,被評価者の衛生マスク(以下,マスク)の着用は,印象や魅力の知覚に影響することが明らかにされている(Miyazaki & Kawahara, 2016)。本研究は,マスクを着用している人物に対する印象や顔の魅力の知覚に及ぼす影響について,マスクの色による違いに着目する。具体的には,黒もしくは白色のマスクを着用している人物に対する潜在的・顕在的な態度(例えば,良い‐悪い)及び顔の魅力を調査・測定した。その結果,潜在的・顕在的態度の両方で黒いマスクを着用している人物に対して非好意的な態度が確認された。また黒いマスクの着用者の顔の魅力は,白いマスクの着用者に比べて低い場合があった。これらの結果は,(1)印象や顔の魅力の知覚にマスクの着用だけではなく,マスクの色特有の影響が生じること,(2)慣れ親しみの高い従来のマスク(白色)に比べて,慣れ親しみの低いマスク(黒色)を着用している人物に対して非好意的に知覚されることを反映している。
著者
Milan Zaviačič Tomas Zaviačič Ablin Richard 伊藤 喜久
出版者
医学書院
雑誌
臨床検査 (ISSN:04851420)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.1015-1018, 2003-09-15

1.女性前立腺 女性前立腺は17世紀のオランダ人組織学者Graafにより命名されたが,一般的には19世紀のアメリカ人産婦人科医SkeneにちなんでSkene's paraurethral glandと呼ばれることが多い1,2).筆者らは一貫して女性前立腺の呼称を提唱してきた.この努力が実り,2001年解剖学用語に関する合衆国国際委員会(The Federative International Committee on the Anatomical Terminology;FICAT)が開催され,今後組織学用語集に女性前立腺(prostata feminina)を掲載することに合意に至った. 発生学的には男性同様,尿生殖洞から分化する.スロバキア女性の前立腺の平均重量は5.2g,尿道平滑筋層内に存在して,全周に渡って広く尿道を取り囲む.構造も男性と変わりなく腺上皮,導管上皮からなり,多くの導管が尿道に開口し70%以上は遠位尿道,特に尿道開口部に集中局在している(図1)3).Peroxidase antiperoxidase法(PAP),Biotin -streptoavidin peroxidase法(BSP),Biotin -streptoavidin -alkaline phosphatase法(BASP)いずれの免疫組織染色においても,PSAは表層分泌上皮細胞胞体に濃染され(図2),さらに分泌細胞,基底細胞,導管細胞表面にも局在が認められる.特に表層からは多くのPAS陽性ジアスターゼ抵抗性成分,さらにプロテイン1,前立腺特異的酸性ホスファターゼ,水解酵素,脱水素酵素などを分泌,局所炎症制御,免疫に機能すると推定される4,5).今後,標準化による表示値の統一に問題は残すが,高感度測定法により,健常者女性血清において,最高値は0.9ng/mlにも及ぶことが明らかにされている6).これは男性の基準範囲に近似し,女性においても血中PSAは主に女性前立腺由来と推定される.これまでの光顕,電顕所見,局所産生分泌成分,あるいは前立腺癌,前立腺肥大,前立腺炎など病理組織像を総合すると,女性前立腺は単なる痕跡組織ではなく内分泌,神経内分泌機能をつかさどる泌尿生殖組織と断言できる7~11).
著者
樫原 潤 伊藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-015, (Released:2021-08-03)
参考文献数
19

心理ネットワークアプローチは、心理的な構成概念(例えば、各種の精神疾患)を「観測変数(例えば、個別症状)同士の複雑な相互作用(ネットワーク)」として理解し、それらのネットワークを実データから推定するものである。本稿では、「臨床革命」という造語を用いつつ、本アプローチが臨床実践の効率化と精緻化という多大なインパクトをもたらしうることを、以下のように順を追って議論する。第1に、本アプローチ特有の用語を紹介し、心理ネットワーク分析が横断的・縦断的どちらのデータにも適用できることを示す。第2に、症状ネットワークの研究知見を参照すれば、より効率的にケースフォーミュレーションを実施できると議論する。第3に、本アプローチを用いれば、心理療法や個別の介入技法の精緻な作用機序を解明できると議論する。最後に、本アプローチを活用する際の留意点と今後の課題について議論する。
著者
砂田 安秀 杉浦 義典 伊藤 義徳
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.28.2.13, (Released:2019-10-24)
参考文献数
29
被引用文献数
2

近年,倫理を伴ってマインドフルネスの訓練を行う重要性が指摘されている。本研究では,マインドフルネスと無執着・視点取得の関連に対する倫理の調整効果を検討することを目的として,一般成人193名を対象としたウェブ調査を実施した。階層的重回帰分析の結果,倫理観が強い場合,マインドフルネスが高いほど,無執着が高かった。一方で,倫理観が弱い場合,マインドフルネスが高いほど,無執着が低かった。また,倫理観が弱い場合,マインドフルネスが高いほど,視点取得が低かった。以上の結果から,マインドフルネスは倫理を伴って機能することで有益な結果をもたらし,倫理が欠如した中では有益な結果につながらない可能性が示唆された。
著者
田崎 由実 伊藤 源太 三浦 直樹 田中 美穂 桃井 康行
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.61-66, 2013-10-10 (Released:2014-03-20)
参考文献数
6

これまでの研究で、我々は鹿児島県においてシリカ尿結石のイヌが多くみられること、及び県内の水道水中のシリカ濃度は他の地域に比べて著しく高いことを報告した[4]。シリカ結石の発生原因として、飲料水との関連性が示唆されたため、今回、国内のいくつかの地域の水道水中シリカ濃度を測定した。その結果、大分県竹田市、茨城県筑西市付近でシリカ濃度が高いことが判明した。また、シリカ結石が好発している鹿児島県霧島地方の水について高速原子衝撃質量分析(FAB-MS)を用いて解析したところ、シリカ濃度が1mM以上であるにもかかわらず、イオン状に溶解しているシリカが少なく、シリカを析出した後にみられる水の特徴と一致していた。シリカ結石予防の方法としてRO膜型浄水器は水道水中のシリカを除去できるが、家庭に普及している家庭用浄水器では、シリカが除去されないことが明らかになった。また、シリカ好発地域以外のシリカ結石症の要因について調べると、特定のフードとの関連が示唆された。
著者
村山 恭朗 伊藤 大幸 浜田 恵 中島 俊思 野田 航 片桐 正敏 髙柳 伸哉 田中 善大 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.13-22, 2015

これまでの研究において,我が国におけるいじめ加害・被害の経験率は報告されているものの,いじめに関わる生徒が示す内在化/外在化問題の重篤さはほとんど明らかにされていない。本研究は,内在化問題として抑うつ,自傷行為,欠席傾向を,外在化問題として攻撃性と非行性を取り上げ,いじめ加害および被害と内在化/外在化問題との関連性を調査することを目的とした。小学4年生から中学3年生の4,936名を対象とし,児童・生徒本人がいじめ加害・被害の経験,抑うつ,自傷行為,攻撃性,非行性を,担任教師が児童・生徒の多欠席を評定した。分析の結果,10%前後の生徒が週1回以上の頻度でいじめ加害もしくは被害を経験し,関係的いじめと言語的いじめが多い傾向にあった。さらに,いじめ加害・被害を経験していない生徒に比べて,いじめ被害を受けている児童・生徒では抑うつが強く,自傷を行うリスクが高かった。いじめ加害を行う児童・生徒では攻撃性が強く,いじめ加害および被害の両方を経験している児童・生徒は強い非行性を示した。
著者
伊藤 大幸 中島 俊思 望月 直人 高柳 伸哉 田中 善大 松本 かおり 大嶽 さと子 原田 新 野田 航 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.221-231, 2014 (Released:2016-09-20)
参考文献数
26
被引用文献数
3

本研究では,既存の尺度の因子構造やメタ分析の知見に基づき,養育行動を構成する7因子(関与,肯定的応答性,見守り,意思の尊重,過干渉,非一貫性,厳しい叱責・体罰)を同定し,これらを包括的に評価しうる尺度の開発を試みた。小学1年生から中学3年生までの7,208名の大規模データに基づく確認的因子分析の結果,7因子のうち「関与」と「見守り」の2因子を統合した6因子構造が支持され,当初想定された養育行動の下位概念をおおむね独立に評価しうることが示唆された。また,これらの6因子が,子ども中心の養育行動である「肯定的養育」と親中心の養育行動である「否定的養育」の2つの二次因子によって規定されるという二次因子モデルは,専門家の分類に基づくモデルや二次因子を想定しない一次因子モデルに比べ,適合度と倹約性の観点で優れていることが示された。子どもの向社会的行動や内在化・外在化問題との関連を検討した結果,「肯定的養育」やその下位尺度は向社会的行動や外在化問題と,「否定的養育」やその下位尺度は内在化問題や外在化問題と相対的に強い相関を示すという,先行研究の知見と一致する結果が得られ,各上位尺度・下位尺度の構成概念妥当性が確認された。