著者
小池 春妙 伊藤 義美
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.155-164, 2012 (Released:2016-03-12)
参考文献数
28
被引用文献数
7

本研究では,精神科受診意図を高めるための方法として情報提供に注目し,メンタルヘルス・リテラシーと援助要請研究の知見を踏まえた情報提供の効果を検討した。研究1では,精神科受診意図に関連する情報についての質問紙調査を,大学生(261名)を対象に行った。因子分析の結果,「全般的不安」と「援助資源」という先行研究と一致する2つの因子が得られた。研究2では,大学生(115名)を対象に情報提供の効果を検討した。統制群としてうつ病の症状と治療法に関する情報のみを提供する群(29名)を設け,「全般的不安」と「援助資源」のそれぞれについての情報を提供する群(順に28名,26名)および,すべての情報を提供する群(32名)との比較を行った。その結果,情報提供後に受診意図が統制群よりも有意に高くなったのは「援助資源」情報を提供した群のみであった。「援助資源」に含まれる内容から,精神科受診意図を高めるためには情報を提供するだけでなく,能動的な情報収集を補助していくことも重要であることが示された。
著者
饗庭 伸 西 昭太朗 伊藤 武仙 山田 沙知 加茂 春菜 田野 哲也 石原 滉士 伊藤 若菜 小園 茉初
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.1282-1287, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
5

市民参加型で空間計画を検討するワークショップにおいて、コミュニケーションを活性化し、検討の内容を充実させるための媒体として、地図、図面、模型が活用されている。本稿では、これらの媒体をデジタル情報で作成し、MR(Mixed Reality)技術でフィジカル媒体と組み合わせるワークショップの技術について報告する。筆者らは、東京都の下水処理場跡地利用の基本構想の検討プロセスにおいて、3つのMRアプリケーションと10回のワークショップの技術を開発した。開発における主な課題は、デジタル媒体とフィジカル媒体をいかに組み合わせるかということであった。本稿ではこのアプリケーションとワークショップの技術を報告し、そこでどのように情報が伝達され、コミュニケーションが活性化されたかを、参加者へのアンケート調査の評価に基づいて考察する。
著者
伊藤 達也
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.23-31, 2019 (Released:2019-08-19)
参考文献数
35
被引用文献数
1

本稿の目的は河童を使った水辺環境保全と地域振興効果を、福岡県久留米市田主丸町での調査から明らかにすることである。田主丸町は筑紫平野に位置し、河童を信仰する地域住民が河童を祭る祠を立て、毎年8月8日に祭りを開催している。筆者が行ったアンケート調査では、河童を使ったイベントの地域振興効果は、主として田主丸町の人々の交流を活発にし、人々を元気にさせるという経済効果の間接的側面で明らかになった。また、こうした河童を使ったイベントを肯定的に捉えている人が全体の80%を超え、田主丸町の河童が地域の水辺環境の保全に関わっていると考える人は3分の2を超え、そうした河童のいる水辺を守りたいと考える人が4分の3を占めた。田主丸町において、河童による地域振興効果は経済効果としては間接的であるものの、河童のいる水辺環境の保全意識は強く、そうした河童を信じる心、愛する心が河童によるイベントを支えていると思われる。
著者
藤本 将志 伊藤 陸 鈴木 俊明
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.28-34, 2020 (Released:2020-12-28)
参考文献数
10
被引用文献数
1

The Trendelenburg sign can occur due to various factors, and it is necessary to evaluate the factors in detail and then perform treatment to lead to voluntary training. In this paper, we consider the factors and movement patterns of the Trendelenburg sign appearing in electromyogram data, and explain voluntary training for those factors.
著者
伊藤 真紀
出版者
日本演劇学会
雑誌
演劇学論集 日本演劇学会紀要 (ISSN:13482815)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.21-37, 2013 (Released:2017-01-06)

Since 1948, female Nô performers have been admitted to the Nô Association, and women can now perform at Nô theatres. In few of these performances, however, do women play all the roles. This report considers the remarkable case of the “Awaji Women's Nô,” when a group of some sixty Ôsaka amateur women Nô students traveled to Awaji Island to perform together on a private stage on May 7, 1922.Awaji Women's Nô was a landmark in breaking down a long taboo against females on the Nô stage. Three factors made this unique event possible. First was the sponsorship of MASAOKA Kasaburô (1867-1950), a Nô aficionado from a wealthy Ôsaka family who built a private Nô stage at his estate on Awaji. Second was the active support of professional male Nô instructors of female pupils in the Ôsaka area. Third was the contribution of NAKAYAMA Mitsue, wife of the editor of an Ôsaka Nô journal (Kansai Nôgaku) who was herself a member of the Awaji group and helped promote the event, emphasizing the ways in which the study of Nô could help women promote family values.Awaji Women's Nô was widely reported in the press, and although the precedent was not to be repeated, it helped pave the way for the later reforms that would enable women to perform on the Nô stage.
著者
伊藤 嘉浩 佐藤 洸志
出版者
日本消費者行動研究学会
雑誌
消費者行動研究 (ISSN:13469851)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.2_95-2_120, 2014

<p>本稿では、日本の映画料金に関して、映画館関係者へのインタビューおよび、顧客側へのアンケート調査による、価格反応性分析、PSM法による価格受容意識分析、料金に関するイメージ分析の3つの分析を行い、割引制度などの価格戦略の考えや効果、および顧客の考える価格意識などを明らかにした。これらの結果から、映画料金を透明化して、600円程度まで引き下げることを提言し、飲食物の売上げへの貢献により、利益が増加する可能性を提示した。学術的には、ものの商品にはあまり見られない、アート消費である映画特有の価格反応性や価格受容意識が見られ、特に、映画経験が豊富で、非常に高関与なユーザー層が存在することが明らかになった。</p>
著者
江崎 治夫 安田 克樹 武市 宜雄 平岡 敬生 伊藤 利夫 藤倉 敏夫 矢川 寛一 林 雄三 西田 俊博 石丸 寅之助
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.1127-1137, 1983-09-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2 5

広島での原爆被爆者からの甲状腺癌の発生を知るため研究を行った.対象は統計処理を容易ならしめるよう,性別,被爆時年齢別,被爆線量別にあらかじめ定められた固定集団である放射線影響研究所の寿命調査拡大対象を用い, 1958年から1979年までの22年間に診断,或いは剖検により発見された甲状腺癌を調べ,被曝放射線量との関係を明らかにした. 75,493人の中から125人の臨床的甲状腺癌が発生した.男15人,女110人で,人口10万人対粗年間発生率は男2.7, 女12.4で男女共,線量の増加と共にリスクが増加する.若年女性に特に,この傾向が著るしい.期待数に対する観察数の比(O/E)をみると,男女別でも,男女合計でも,線量の増加と共に甲状腺癌が増加する.線型反応についての検定を行うと,女性及び男女合計では線量効果がみとめられた.又年齢が若い程線量効果が明らかである. 50rad以上被爆した群の対照群に対する相対性リスクは4.2で,男女差はないが男性は数が少い為,女性にのみ有意である.年齢別では20歳末満のリスクが7.9と高く,統計的に有意である.統計的に有意な回帰係数が求められた20歳末満の女性の年間1 rad当りのリスクの増加は100万人対約3.4である. 同期間に剖検された4,425人中155人に潜伏癌がみられた. 50rad以上の群の相対的リスクは1.9で有意に高く, O/E比は男1.6, 女1.8でほぼ等しいが,女子にのみ有意であった.
著者
伊藤 保彦 五十嵐 徹 立麻 典子 今井 大洋 吉田 順子 土屋 正己 村上 睦美 福永 慶隆
出版者
日本医科大学医学会
雑誌
Journal of Nippon Medical School (ISSN:13454676)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.239-244, 1999-08-15 (Released:2000-04-12)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

We have encounted two patients with fibromyalgia (FM) initially diagnosed as having autoimmune fatigue syndrome (AIFS). To investigate the relationship between AIFS and FM, the distribution of the tender points in patients with AIFS was assessed according to the ACR criteria for FM. It was revealed that AIFS patients had 5.6 tender points on averages. Patients with headaches, digestive problems, or difficulty going to school had more tender points than patients without. Patients with ANA titers
著者
伊藤 高史 Takashi Ito
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.138, pp.21-40, 2021-09

本稿は,筆者が別稿で検討した,メディア文化についての社会システム論的分析枠組みを実証研究に応用するものである。そのことによって,大衆文化としてのメディア文化において創造性が発揮されるメカニズムを社会システムの観点から明らかにするとともに,筆者が提示した分析枠組みの有効性を検証する。分析対象とするのは,今日に至るまで活躍するスター歌手森高千里であり,彼女が1980年代後半にデビューし,スターとしての大衆的認知を得る1990年代はじめまでの時期に焦点を当てる。彼女は文化産業システムによって敷かれた路線を従順に歩むアイドルとしてデビューさせられたが,スタッフの協力を得て独自の世界を切り開いていった。彼女の振る舞いを「キワモノ」「アイドルのパロディ」として解釈する「解釈共同体」が成立し,彼女に唯一無二の地位を与えていった。彼女がスターとしての大衆的認知を得る過程が示しているのは,社会システム論が示唆する通り,様々な社会システムが交差し相互作用する中での葛藤や協働が,資本主義社会のメディア文化に創造性をもたらしていることである。論文(Article)
著者
井森 萌子 常川 祐史 片岡 沙耶 伊藤 雅隆 大屋 藍子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.23-32, 2021-01-31 (Released:2021-05-18)
参考文献数
14

本研究は、先延ばし傾向のある大学生を対象に、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)が先延ばしに与える影響について、先延ばしの心理指標と行動指標の両側面から検討することを目的とした。対象者47名を60分のACTのプログラムを行う実験群、プログラムは行わない統制群に振り分けた後、先延ばしの行動指標として、7日間の課題達成率、先延ばしの心理指標として先延ばしを測定する質問紙への回答をプログラムの前後に求めた。同時に、ACTのプロセス指標であるFFMQとAAQ-IIも測定した。四つの指標の変化を分析した結果、実験群では課題達成率、先延ばし尺度がともに改善されたが、ACTのプロセス指標は変わらなかった。ACTに基づくプログラムが心理面、行動面ともに先延ばしの改善に効果的である一方、効果のメカニズムについては検討していく必要があることが示唆された。