著者
佐々木 達
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

<b>1.課題の設定</b> <br>&nbsp; 東日本大震災から時間がたつにつれて地域経済の再構築は被災地にとって喫緊の課題となっている。とくに、地域経済の一翼を担う農業の復興を図るうえで障害となっているのは、農産物に対する風評被害である。除染やサンプル検査などが行われる中で沿岸部では津波被害からの営農再開が進みつつある一方で、安全とされる農産物が敬遠され、消費者も農産物を安心して消費できない状況が継続している。 しかし、風評被害問題も農産物が売れないという単純な話でとらえるべきではない。原発事故を契機とした問題の長期性と根深さが加わっているが、農産物流通のあり方や地域農業の再建、そして今後の地域の在り方をどうするのかという問題の立て方が必要である。それらの課題に先立ち、本報告では、福島県いわき市を対象にして、消費者の農産物の購買行動を把握することにより風評被害の実態を明らかにすることを目的とした。今回は、アンケート結果の中から野菜の購買行動を中心に検討を行う。&nbsp; <br><br>&nbsp;<b>2.アンケート結果の分析</b> <br>&nbsp; 分析の結果、明らかになったのは以下の点である。①野菜の購入先は食品スーパーが主流である。震災前後で購入先に大きな変化は見られない。②野菜を購入する際に重視されているのは産地、鮮度、価格の3要素である。風評と関連する放射性物質の検査はこれに続く結果となっており、原発事故以降に新たな判断材料として加わったと見ることができる。③購入産地は県外産にシフトしているのが現状である。ただし、産地表示や検査結果を気にしている反面、その判断する情報リソースは二次情報、三次情報である可能性も否定できない。④購買行動において国の基準値や検査結果に対して認知されているが,信頼度という点においては低い結果となっている。野菜の購買基準は,「放射性物質の検査」と答える人も多いが,風評とは関連性のない「価格」を挙げる人が多い。しかし、「価格」要因は消費者サイドに起因するのではなく現在の小売主導の流通構システムから発生している可能性がある。一般的に風評被害は、消費者が買わないことにばかり目を向けがちであるが、市場・流通関係者の取引拒否や産地切替などの流通システムからも風評は生まれることを看過してはならない。 &nbsp; <br><br><b>3.復興支援のあり方―調査から発信・共有へ―</b> <br>&nbsp; 風評被害は、消費者だけでなく小売店、農業生産者など様々な主体の思惑が錯綜する中で実体化している。今後、風評被害を払拭するための支援のあり方には、地元の消費者と情報を共有・発信しながら課題認識の場を作り出していくことが重要であると考える。なぜなら風評被害に対する正確な現状把握や調査もほとんど手が付けられておらず、「目に見えないもの」に生産者や消費者がただただ翻弄される状況がいまだに続いているからである。正確な現状認識のための研究調査の重要性を認めつつ、その成果を地域の住民とともに共有し、課題を乗り越えるための復興支援調査との両輪で被災地の復興に参加することが重要であろう。
著者
佐々木 肇 Hajimu Sasaki
出版者
岩手県立大学盛岡短期大学部
雑誌
岩手県立大学盛岡短期大学部研究論集 = Bulletin of Morioka Junior College Iwate Prefectural University (ISSN:13489720)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.9-21, 2004-03-01

It was in October 1998 that we started our research project titled "The Present State and Prospect of the International Sister-City Relationships in Iwate Prefecture" with the grant from the Iwate Prefectural Foundation for Promoting Academic Research. The reason we had chosen this subject was that "international educational and research activities" have been shown as one of the founding ideals of Iwate Prefectural University. At the same time, with the arrival of the international and global era enhanced by high-level information technology, we thought we might be able to propose or raise some problems by studying the present state of international exchanges in Iwate Prefecture. We learned that Ofunato City, a harbor city on the coast of the Pacific Ocean has a sister-city, Palos de la Frontera, at the south-western tip of Spain, and that the two cities concluded the sister-city agreement on August 12, 1992. In order to make research on the relationship of both cities, we visited Ofunato City in September 1999 and then the City of Palos de la Frontera in February 2001. This paper is the result of our visits, based on the interviews we made, as well as the materials obtained on those occasions. Everything started on May 24, 1989 when Dr. Harutsugu Yamaura, a well-known scholar of "Kesen" (Ofunato area) culture and language, encouraged the members of Ofunato Junior Chamber of Commerce to invite the restored Santa Maria to Ofunato Harbor. The Santa Maria was restored celebrating the 500th anniversary of Christopher Columbus' discovery of the new world, and it was scheduled that she would call at Kobe Harbor in 1992. According to Dr. Yamaura, Columbus sailed out from Spain, specifically from the harbor of Palos de la Frontera, originally aiming at Jipang, which might have been Kesen, the land of gold. Ofunato City decided to invite the Santa Maria to anchor at its harbor in 1992, which happened to be the year of the city's 40th anniversary. Ofunato is said to have a historical relationship with Spain as Captain Sebastian Viscaino, under orders of the king of Spain, sailed into the harbor of Ofunato in 1611 to explore the gold mines in Kesen area. The mayor of Ofunato, together with the chairman of the City Council and citizens, did attend the sailing out ceremony of the restored Santa Maria at Barcelona in July, 1991. The delegation of Ofunato City, taking advantage of the opportunity, visited the City of Palos de la Frontera, where Columbus set out for his first voyage westward. Soon after that visit, the City of Palos de la Frontera sent a message expressing its ardent wish to have a sister-city relationship with the City of Ofunato. Urged, as it were, by the City of Palos de la Frontera, the City Conucil and the mayor of Ofunato finally approved the proposal of a sister-city relationship. On the day when the restored Santa Maria arrived at Ofunato Harbor on August 12, 1992, the sister-city agreement was formally concluded. The following year, in November 1993, Ofunato City sent its delegation to the City of Palos de la Frontera in return for the visit of the mayor and two council members of Palos de la Frontera to Ofunato. However, there have been few mutual exchange visits since 1994 from either city and the current state of the relationship is a sort of hibernation or dormancy. Visiting the two cities, we learned that their relationship, or the situation they have come to, is one in which two sisters, although they have friendly kinship feelings themselves, do not have the common language to make themselves understood properly. The City of Palos de la Frontera is proud of being "Cuna del Descubrimiento de America" and Ofunato City, of being the center of golden homeland Kesen. The physical distance between the two cities is, as the mayor of Palos de la Frontera told us, the most serious problem even in this global era, and another problem lies in the language differences. The improvement or strengthening of the relationship of two cities, although they are in the sticks in their respective countries, will certainly contribute, as written in their agreement, not only to the peace of the world but to the welfare of human beings.
著者
佐々木 秀美
出版者
広島文化学園大学看護学部
雑誌
看護学統合研究 (ISSN:13460692)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.28-47, 2011-03

本論では,前稿における検証結果を踏まえて,精神的危機からと自立までのプロセスを通して,行為の源としてのナイチンゲールの思想をさらに探究した。神秘主義と科学主義の交差するイギリスの教育思想の影響を受けたナイチンゲールは,成長・発達段階において,神の存在と日常生活の様々な現象とが,神との一体感の中で生まれるものであると感じ,真実の目は真理の探究につながると考えた。その考えは,イギリス経験認識論日常生活における様々な現象を原因と結果の関係において解釈しようとする科学主義的要素と相まって,全て実際に起きている現象を科学的な目で観察・認識しようとした。その真実の目と真理の探究が彼女をして,批判のみならず一歩進んで,自身の取るべき行為を導きだした。彼女の主張は急進的であり,伝統的な社会規範を覆すものであった為に,家族との対立,精神的危機状況を作り出したが,その状態を克服したときにナイチンゲールは人間としての強さを獲得し,自立へのプロセスを踏んだ。彼女の思想の背景には人間存在の問題として人格と生存権の問題があった。
著者
合田 明生 佐々木 嘉光 本田 憲胤 大城 昌平
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.74, 2012 (Released:2013-01-10)

【目的】 近年、運動が認知機能を改善、または低下を予防する効果が報告されている。運動による認知機能への効果を媒介する因子として、脳由来神経栄養因子(Brain-derived Neurotrophic Factor;BDNF)が注目されている。BDNFは、中枢神経系の神経活動によって神経細胞から刺激依存性に分泌される。そこで本研究では、BDNFと交感神経活動の関係に着目し、運動ストレスによる交感神経活動が、神経活動亢進を介して中枢神経系におけるBDNF分泌を増加させる要因であると仮説を立てた。よって本研究の目的は、健常成人男性を対象に、運動の前後でBDNFを測定し、運動が交感神経活動を亢進させることで、中枢神経系の神経活動を引き起こし、末梢血流中のBDNFを増加させるという仮説を検証することである。その結果から、運動によるBDNF分泌メカニズムの解明の一助とすることを最終目標とする。【方法】 健常成人男性10名を対象に、30分間の中強度有酸素運動(最高酸素摂取量の60%)を実施した。運動の前後で採血を実施し、末梢血液中のBDNF、ノルアドレナリン(Noradorenaline:NA)を測定した。運動中の交感神経活動指標としてNAを用いた。また運動中の中枢神経活動指標として、前頭前野領域の脳血流量を用いた。以上の結果から、運動前後のBDNF変化量、交感神経活動の変化(NA)、大脳皮質神経活動の変化(脳血流量)の関連性を検討した。各指標の正規性の検定にはShapiro-wilk検定を用いた。血液検体の運動前後の比較には、対応のあるT検定を用いた。各指標の相関の分析には、Pearsonの相関係数を用いた。いずれも危険率5%未満を有意水準とした。【結果】 中強度の有酸素運動介入によって、10人中5名では運動後に血清BDNFが増加したが、運動後のBDNFの値はバラつきが大きく、運動前後のBDNF量に有意な差は認められなかった(p=.19)。またBDNF変化量と交感神経指標の変化の間(BDNF-NA r=.38, p=.27)、中枢神経活動指標と交感神経指標の変化の間(脳血流量-NA r=-.25, p=.49)、BDNF変化量と中枢神経活動指標の変化の間(BDNF-脳血流量 r=-.16, p=.66)には有意な相関は認められなかった。【考察】 本研究では、健常成人男性を対象に、30分間の中強度運動の前後でBDNFを測定し、運動が交感神経活動を亢進させることで、中枢神経系の神経活動を引き起こし、末梢血液中のBDNFを増加させるという仮説の検証を行った。その結果、中強度の運動介入によって、10人中5名は運動後の血清BDNF増加を示したが、運動前後のBDNF量に有意な差は認められなかった。この要因として、刺激依存性のBDNF分泌を障害するSNP保有が考えられた。また、BDNF変化量と交感神経指標の変化の間、交感神経指標と中枢神経活動指標の変化の間、BDNF変化量と中枢神経活動指標の変化の間には、有意な相関は認められなかった。この要因として、交感神経活動が急性BDNF増加に直接的には関与しないことが考えられる。【まとめ】 健常成人男性における30分間の中強度有酸素運動は、末梢循環血流中のBDNFを有意に増加させず、運動によるBDNF変化には、交感神経活動や中枢神経活動は関連しないことが示唆された。
著者
長友 拓憲 川平 和美 弓場 裕之 佐々木 聡 伊藤 可奈子 長谷場 純仁
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.149, 2006

【はじめに】<BR> 転落によりTh12からL2(L1粉砕骨折)の損傷による脊髄損傷患者に対し、両側KAFOの膝継手として、Spring assisted extension knee joint:伸展補助装置付膝継手(以下SPEX:アドバンフィット社製)を処方し、歩行の実用性に改善がみられたため報告する。SPEXの特性として、筋力に応じた膝伸展補助装置機能があり、伸展位固定でも軽度の屈伸の可動性が得られ、膝折れを予防する効果がある。そのため立脚初期に軽度の膝屈曲が出現し、二重膝作用が働き正常に近いスムーズな交互歩行が可能となる。リングロック固定式にも使用でき、無段階の可動域調整が可能である。また屈曲拘縮の矯正が0°から60°の範囲で一定のトルク負荷が可能であり、コイルスプリングをスチールロッドと交換し屈曲制限及び固定として使用可能である。適応は、脳卒中片麻痺、脊髄損傷、大腿四頭筋筋力低下、膝及び肘関節拘縮、進行性筋ジストロフィーに用いられる。<BR>【症例・理学療法経過】<BR>50才女性。転落によるTh12からL2(L1粉砕骨折)の損傷。胸腰椎骨折固定術施行。入院時評価:American Spinal Injury Association(以下ASIA)は運動C、感覚C。下肢は不全麻痺が両側に残存し、MMTにて股関節外転右2+、左2+、膝関節右伸展4左3+であった。歩行に関しては、膝折れが見られ、平行棒内軽介助レベルにて可能。ADLに関しては、移乗は軽介助レベル、寝返り・起き上がりは自立、座位保持は長座位自立、端座位は自立。立位は両上肢支持にて自立レベル。随意的な膝関節の屈伸運動が可能であるため、SPEXを用い下肢筋力増強、屋内歩行動作獲得を目標に用いた。約2ヶ月間理学療法を施行した。下肢の筋力増強プログラムと併用し、歩行期間に関しては約1ヶ月平行棒内、歩行器での歩行練習をコイルスプリングによる伸展補助力を微調整しながら施行した。退院時評価:ASIAは変化なし。下肢筋力が股関節外転右3+、左3+、膝関節右伸展4、左4に改善した。ADLは、車椅子への移乗が自立レベルに改善した。歩行に関しては、SPEX使用にて平行棒内歩行自立レベル、屋内歩行を歩行器にて監視レベルにて可能となった。<BR>【考察】<BR>今回はSPEXのコイルスプリングによる伸展補助力の微調整と足継手(ダブルクレンザック)の調整を行っていきながら歩行練習を行っていき、膝関節の屈伸運動を可能とし、随意的な収縮がみられたため、また自主練習にて平行棒内歩行練習を加え、通常のプログラムによる筋力増強運動も併用し、股関節・膝関節周囲筋の筋力増強がより効果的になり、歩行の実用性につながったと示唆される。<BR>【終わりに】<BR>今回はSPEXのコイルスプリングによる伸展補助力の微調整と足継手(ダブルクレンザック)の微調整をしながら、歩行練習を行ったが、下肢伸展筋力の個人差に対して、コイルスプリングの強度調整が困難であった。また歩行のアライメント調整のため、膝継手と足継手で通常は約2:1の割合で角度調整が求められるが、患者自身の能力、歩行練習中での問診、分析に応じて調整が求められる。今後症例を重ねて客観的な有効性を検討していく。
著者
林 良嗣 谷口 守 土井 健司 佐々木 葉 杉原 健一 冨田 安夫
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

人口減少・少子高齢化が早く進む地方都市において,郊外からの計画的撤退と中心市街地の再構築が必要であることを示し,さらにその具体的な方法論を明らかにするために,愛知県豊田市をスタディエリアとして,以下の検討を行った.1.将来状況予測:人口予測に基づき,市内各地点の居住環境質,インフラ維持コスト,環境負荷を計測し,郊外部での悪化傾向を示し,人口減少・少子高齢化が進行する地方都市では双対型都市戦略(郊外からの撤退・中心市街地の再構築)の必要性を示した.さらに,今後の都市域縮小策による社会基盤整備コスト削減効果を世代会計の手法を用いて評価した.2.政策目標運成度指標:QoLインディケータを適用した欧米の事例調査に基づき,わが国の都市構造検討に適用可能なQoL・市街地維持コスト・環境負荷の面からなる多元的評価手法を開発した.さらに,QoL向上を可能とする都市構造として分散集中型構造の提案を行った.3.市街地デザイン:街区デザイン検討のための3次元都市モデル自動生成システムの開発を行った.,これを用いて,複数のシナリオにもとづく将来の建物の更新結果の景観を予測評価し,現状の容積率の引き下げ(ダウンゾーニング)の案などを提示した.一方,中心市街地再構築に必要不可欠な自動車依存脱却策の1つとして,自動車共同利用に着目し,国内の事業化事例を対象とした分析を行った結果,自動車保有台数削減等の環境改善効果が観測された.4.事業化検討:日本の密集市街地整備事業の現状と課題を整理し,民間非営利組織による密集市街地整備事業の先進的な事例分析に基づいて,民間非営利組織の役割および特徴について明らかにした.また,TDR制度導入による郊外田園の開発抑制と,都市空間の広域的管理手法としての開発権取引の導入効果について検討した.
著者
河野 南雄 佐々木 則子 棚橋 豊子 村岡 祝子 東 ちえ子
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.742-752, 1975

There are many reports on the relationship among malignant tumors, blood clotting and fibrinolytic enzyme system. The present report describes the fibrinolytic enzyme system in plasma of rats with experimental urinary bladder tumor. The plasma was separated into three fractions with lysinesepharose affinity chromatography. The materials were Wistar-Imamichi strain male rats which had been administered a dose of 0.02mg/head/day of N-butyl-N-(4-hydroxybutyl)-nitrosamine (BBN) from 8 weeks old to 16 weeks old and then sacrified at 28 weeks old. Fraction-I did not contain either plasmin (PL) or plasminogen activator (PLg-act). Though the normal rat plasma sometimes has a slight antiplasmic action, the plasma of rats which had been administered BBN had a marked antiplasmic action. However, the action did not correspond with bladder tumor and hyperplasia. The rat plasma had an antiurokinase activity irrespective of BBN-administration. Sometimes fraction-II had also PLg-act irrespective of BBN-administration. On the rats which had been administered BBN, the activity of PLg-act in the bladder tumor-group and in the hyperplasia-group had an increasing tendency which was more marked than that in the unchanged group. Fraction-III revealed mainly the PL-activity. Normal rats had no activated PL, but the animals administered BBN revealed PL-activity. The PL-activity in the unchanged group had a more marked increasing tendency that in the bladder tumor group and hyperplasia group.
著者
佐々木 千絵 児玉 雄二
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.47, 2007

【目的】日本における車椅子テニス選手の躍進は目覚しく、ワールドカップ等でも上位に食い込み活躍を見せている。長野県においてもジャパンカップ車椅子テニス大会が開催され、昨年度で第20回を数える。長野県理学療法士会では十数年にわたり、大会期間中の理学療法サービスを実施してきた。今回はスポンサー撤退により、大会が縮小した過去2年間の大会に限定し、車椅子テニス競技の障害特性について報告する。<BR>【方法】大会会場に理学療法室を設置し、治療用簡易ベッド、物療機器、テーピングテープなど用意し、理学療法士を7名程度常勤させ、期間中選手がいつ来室しても対応できる体制をとった。利用が込み合う時間帯は予約制とし、スムーズに運営できるように配慮した。<BR>【結果】過去2年間の大会参加選手のべ112名。理学療法サポート利用選手のべ59名であった。試合前の利用者は11件。試合と試合の間18件。試合後30件であった。障害部位の内訳としては、肩甲骨周囲筋群22件、肩関節6件、利き手肘外側8件、利き手肘内側6件、その他手関節、頚部、腰部等20件であった。症状は筋硬結24件、疲労21件、運動時痛21件、圧痛15件、その他19件であった。障害期は急性期5件、亜急性期3件、慢性期51件であった。対応はマッサージ37件、ストレッチ29件、アイシング8件、テーピング4件、物理療法4件、その他9件であった。<BR>【考察】車椅子テニス競技は、利き手にラケットを握り、車椅子を操作(以下チェアワーク)しながらプレーする競技である。ターン、ダッシュ、ストップなどのチェアワークは勝敗の鍵を握る1つで、練習でも重要視されている。障害発生要因は利き手側の過用症候群のみではなく、チェアワークによる要因も大きいと考えられる。また、車椅子をすばやくターンするときには、上肢のみでなく頚部、体幹、腰等を回旋させているため、頚部・腰等に障害を抱える選手が多いとも考えられる。<BR>【おわりに】障害者スポーツ大会は、スポンサーの有無によりその規模がかわってしまい、かつメディアの注目度はけっして大きくはない印象にある。一方選手の身体特性は元来から有する障害に加え、スポーツ障害を併発しているため、複雑化している場合も多い。当士会では、1998年に冬季パラリンピック大会を支援した経験があり、その事を生かしながら、今後も障害者スポーツの活動を支援してゆきたいと考えている。
著者
上田 将嗣 佐々木 睦美 横山 大輔 知識 拓弥 先立 英喜 山本 保文 藤村 直美
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2018-IOT-43, no.16, pp.1-7, 2018-09-20

九州大学情報統括本部 (以下,「情報統括本部」 という.) では,2017 年から 2018 年にかけて,キャンパスライセンスを締結するセキュリティ対策ソフトの切り替えを実施した.本稿では,切り替えに至る経緯及び切り替え作業の内容と遭遇した問題点について報告する.
著者
宮澤 宏文 白根 実央 佐藤 広祝 佐々木 和人 鈴木 英二
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.19-22, 2012 (Released:2012-03-23)
参考文献数
6

高齢者は疾患にかかわらずバランス能力の低下をきたしていることが多い。当院ではスリングを用いて,運動戦略のうち,股関節戦略,足関節戦略を模したエクササイズを実施している。この股関節運動戦略エクササイズと足関節運動戦略エクササイズについて,各エクササイズ前後にfunctional reach test(以下FRT)とTimed Up and Go test(以下TUG)を実施した。また合わせて重心動揺計を利用して安定性限界の測定も行った。股関節運動戦略エクササイズではFRTの向上が認められ,静的バランスの向上が示唆された。足関節運動戦略エクササイズではFRT,TUGの両方で向上が認められ,静的バランスだけでなく動的バランスの向上が示唆されたが,安定性限界の測定については,有意な変化を認めなかった。
著者
佐々木 均 本多 寛子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
巻号頁・発行日
vol.64, pp.70-70, 2012

北海道内における吸血性アブ相を把握するとともに,蔓延する牛白血病対策の基礎資料を得る目的で,2011年7月7日から同年9月15日までの期間,隔週1回,計5回(9月1日は雨天のため中止),北海道檜山管内江差町にある元山牧場(41°52'9.1"N, 140°11'14.6"E)で,ボンベから1,500ml/min.放出される二酸化炭素を化学的誘引源とするNZIトラップを用いて吸血性アブ類の捕獲調査を行い,ニッポンシロフアブを最優位種 (5,551個体,58.57%)とし,ヤマトアブ (2,862個体,30.20%),キンイロアブ(540個体,5.70%)と続く,5属12種合計9,478個体を得た.1トラップ1時間当たりの捕獲数は,7月中旬と8月中旬にピークを示しその後減少する双峰型の消長を示したが,ニッポンシロフアブは 7月中旬に,ヤマトアブは8月中旬にそれぞれピークを持つ単峰型の消長を示し,種によってピークの時期が異なる傾向を示した. 7月21日,8月5,19日には,朝8:30から16:30まで1時間毎に捕獲された個体を回収して日周活動性を調査したが,気温の上昇に連動する形の消長を示した.得られた種類は,これまでの調査で記録された種のみであったが,種構成の変遷と発生消長についてはこれまで調査されておらず,本調査によって短い発生期間ながら,時期によって牛白血病媒介種として防除対象となる種が 7月 8月の2ヶ月はニッポンシロフアブ,8月中旬はヤマトアブと異なることが明らかになった.
著者
草野 正一 小林 剛 松林 隆 石井 公道 柴田 久雄 木戸 義行 大宮 東生 中 英男 佐々木 憲一 奥平 雅彦
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.299-312, 1978
被引用文献数
1

Computed Tomographyが肝疾患の新たな放射線学的検査法として登場し,その臨床応用の成果が注目されている.北里大学病院でも昭和51年9月から全身用CTの臨床応用を開始した.そこで,肝のCT診断を進める上で不可欠な肝横断正常解剖についてX線解剖学的検討を試み,肝門に連続する左矢状裂,右前裂および右後裂の特徴的構造が,肝腫瘤性病変の区域診断の指標として役立つ事を確認した.この事は,実際の肝切除例でも確認でき,新たな検査法として登場したCTが果した画期的成果と言える.次にCTによる肝悪性腫瘍診断の有用性について検討した結果,我々の使用装置,ACTA 0100,は,肝癌のスクリーニング検査法としては,RI肝スキャンより劣っていた.この原因は,装置の解像力が低かった事も原因の1つであるが,肝細胞癌の診断が困難であったためであった.この肝細胞癌の中で,形態学的に描出可能と考えられるものが,造影スキャンでも描出できなかった理由として,肝が血行動態的に肝動脈と門脈の2重支配を受け,かつ,肝細胞癌が肝動脈のみによって栄養されるhypervascular tumorである事に基因する事を推論した.
著者
佐々木 定
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.100, no.2, pp.84-91, 2005

日本経済に明るい見通しを期待する発表が出始めているが, 酒類業界においては酒類の総消費数量が減少傾向を示しており, 消費の伸びが期待できない材料が多く見受けられる。<BR>そこで, 総務省の家計調査を基に消費者の嗜好の変化や消費行動などについて分析を試みたところ, 若者の酒離れ, 低価格商品へのシフトといった傾向が顕著となっている。<BR>将来に向かって酒類市場が縮小していくと思われる中で, 流通を含めた酒類業界全体で業界構造を見直し, 低価格商品への依存から脱却して, 収益を重視した取り組みを考える時期が来ていると提唱している。
著者
佐々木 稔 SASAKI Minoru
出版者
名古屋大学文学部
雑誌
名古屋大学文学部研究論集. 文学 (ISSN:04694716)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.31-53, 2017-03-31

Cʼest dans le numéro de juin 1850 de Le Magasin des familles, revue de foyer, que pour la première fois après la révolution de février, Baudelaire publie deux poèmes tirés de Les Limbes, recueil en projet. Le premier de ces poèmes intitulé « Châtiment de lʼorgueil », raconte une anecdote où un théologien, enivré de sa dialectique, perd sa raison en punition de son orgueil. Certes, lʼhistoire a pour source un récit allégorique du Moyen-Âge, mais le poème est directement inspiré dʼun article philosophique qui accuse le socialisme de Proudhon de la révolution. Malgré cela, il est peu probable que ce soit un reproche adressé à la pensée de Proudhon. On est ainsi amené à supposer que Baudelaire blâme les utopistes des années 1830 et 1840. Mais les pièces publiées en diptyque sont contradictoires car le second poème, « Le vin des honnêtes gens », est justement inspiré des pensées utopistes. En parcourant les critiques littéraires de Baudelaire sous la Seconde République, on voit quʼen se référant à la philosophie proudhonienne, le poète fait lʼéloge des ouvriers, en même temps quʼil condamne les démagogues qui conduisent le peuple à la banqueroute. Cʼest ainsi que « Le vin des honnêtes gens » symbolise la poétique de lʼivresse qui sous-entend lʼadmiration pour les pauvres travailleurs, tandis que « Châtiment de lʼorgueil » présente la perspective circonscrivant les idées politiques de Baudelaire à cette époque. Cʼest pourquoi ces deux poèmes correspondent parfaitement au sujet de Les Limbes qui traduisent « les agitations et les mélancolies de la jeunesse moderne ».