著者
佐々木 重洋
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.242-262, 2015-09-30

本稿の目的は、エヴァンズ=プリチャード(以下、E-P)の思考の軌跡と、彼が示していた問題意識と手法をあらためて批判的に再検討し、その知的遺産と検討課題を現在に再接続させることにある。本稿では、民族誌や論考、講義録や書簡から読み取ることができるE-Pの構想のなかでも、人間の知覚と認識、その作用に影響を与えるものとしての社会、それも決して閉じた固定的なシステムではなく、人間関係の動態的な諸関係としてのそれとは何かをモンテスキューにさかのぼりつつ自省し続けた点と、民族誌と人類学の主要な仕事としていち早く解釈という営為を強調した点にとくに注目し、その背景を再検討した。アザンデの妖術やヌアーの宗教を扱った民族誌においては、当時の西欧的思考の枠組みに対する疑義ないし違和感が表明されていたが、E-Pとその後進たちの遺産は、そこに「インテレクチュアル・ヒストリー派」としての省察がともなうかぎり、主知主義批判、表象主義批判や言語中心主義批判、主客二元論批判や心身二元論批判としても、今なお私たちにとって着想の源泉たり得る。さらに、共感や友情を強調したその人文学的経験主義からは、絶えず自己に立ち返り、自らが影響を受けている知的枠組みと社会背景に対する自省を保ちつつ、調査する者と調査される者のあいだの共約不可能性を乗り越えようとする姿勢を継承でき、それはフィールドワークと民族誌を取り巻く思想的、物理的環境が大きく変わりつつある今こそ、あらためて参照に値することを指摘した。今日、E-Pに立ち返って考えることは、モンテスキューを脱構築しつつ、人類学的思考が哲学や社会学はもとより、法学や政治学、経済学などと未分化の状態であった時点に立ち返って考えることにつながるものでもあり、今後の人類学が人文学とどのように関係すべきかという点も含めた人類学の知のあり方を模索するうえで一定の意義があると考える。
著者
村上 隆之 桑原 拓郎 佐々木 堯 谷口 肇
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.531-535, 1995-07-15
被引用文献数
4 3

Bio-Gel P-6DG担体を用いた親和性クロマトグラフィーとToyopearl HW-55Sゲル濾過クロマトグラフィーを併用し糸状菌Robillarda sp. Y-20の培養濾液より,エンド-1, 4-β-キシラナーゼ(1, 4-β-Xylano-hydrolase, EC 3.2.1.8)を簡易に精製することができた培養濾液からの精製酵素の回収率は約40%であった.SDS-PAGEによって測定した分子量は23400Daであった.pIは9.5で,至適pHおよび温度はそれぞれpH4.5-5.5と55℃であった.キシロオリゴ糖の加水分解物をパルスドアンペロメトリー検出によるHPLCで分析したところ,主生成物はキシロビオースであり,また,本酵素が転移酵素活性を持つことが解った.キシロ3-6糖に対するKmおよびVmaxを求め,これらのデータより本酵素が5個のサブサイトを持つことが推察された.また,本酵素はキシロオリゴ糖の存在下でBio-Gelカラムに対して特異的なアフィニティーを持つことが確認された.
著者
佐々木 猛智 小倉 知美 渡部 裕美 藤倉 克則
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1-2, pp.1-17, 2016-04-13 (Released:2016-04-15)
参考文献数
31

Provanna Dall, 1918ハイカブリニナ属は深海の化学合成生物群集に広く生息し多産するグループである。日本の近海では,ハイカブリニナ属にはP. glabra Okutani, Tsuchida & Fujikura, 1992サガミハイカブリニナ,P. abyssalis Okutani & Fujikura, 2002カイコウハイカブリニナ,P. shinkaiae Okutani & Fujikura, 2002シンカイハイカブリニナの3既知種が分布しており,種によって深度分布と底質が異なる。本研究では南西諸島海域から新たに発見された新種について報告する。貝殻の比較形態学的解析および分子系統解析の結果から,4新種の存在が明らかになった。(1)P. subglabra n. sp.ニヨリハイカブリニナ(似寄灰被蜷:和名新称)は膨らみのある平滑な貝殻で特徴づけられ,沖縄トラフの熱水噴出域では最も多産する。種小名と和名は,本種がかつてP. glabraサガミハイカブリニナに同定されていたことに由来する。(2) P. clathrata n. sp.コウシハイカブリニナ(格子灰被蜷:和名新称)は粗い格子状の彫刻を持ち,沖縄トラフ南部の熱水噴出域に生息する。(3) P. lucida n. sp.ミガキハイカブリニナ(磨灰被蜷:和名新称)の殻は平滑で縫合が深く,今のところ沖縄トラフ北部の南奄西海丘にのみ出現する。(4)P. kuroshimensis n. sp.クロシマハイカブリニナ(黒島灰被蜷:和名新称)の殻は平滑でオリーブ色の殻皮を持ち,黒島海丘に固有である。一方,歯舌の形態は4種の間で明確な差は見られなかった。この発見により,ハイカブリニナ属は南西諸島の狭い範囲で多様化していることが明らかになったが,その要因としては南西諸島海域の化学合成生態系形成域が多様な環境にあることが関係していると考えられる。
著者
佐々木 潤之介
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1960

博士論文
著者
佐々木 哲朗 立川 浩之 向 哲嗣 栗原 達郎
出版者
首都大学東京小笠原研究委員会
雑誌
小笠原研究 (ISSN:03868176)
巻号頁・発行日
no.41, pp.41-73, 2014

小笠原諸島海域の保全管理に資するため、兄島と父島の浅海域、海岸域および河川下流域において軟体動物相の現況調査を実施した。調査では5綱22目78科153属247種の軟体動物が記録された。記録種のうち40種は小笠原諸島からの初記録であった。To contribute to the conservation management, we investigated molluscan fauna of marine and freshwater habitats in Anijima and Chichijima Island. A total of 247 species of molluscs (153 genera of 78 families of 22 orders) were recorded on the basis of photographs. 40 species were considered to be new records from Ogasawara Islands.
著者
佐々木 大祐 関 二郎 宮前 陽一 黄 基旭 永沼 章 神吉 将之 西原 久美子 平本 昌志 由利 正利 梅野 仁美 森口 聡 見鳥 光 廣田 里香
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.39, pp.P-17, 2012

腎乳頭部壊死(RPN; Renal Papillary Necrosis)は糖尿病や,鎮痛剤・抗癌剤等の服用等によって生じる腎障害の一つであり,薬剤の開発や臨床的使用に支障を来すことがある。しかしこれまでヒトにおいてRPNの発生初期から鋭敏に変動するバイオマーカー(BM)は知られていない。そこで我々は,トキシコプロテオミクス(TPx)及びトキシコゲノミクス(TGx)の技術を利用してRPNを検出するための新規BMを探索した。<br> 2-bromoethylamine hydrobromideによるRPNモデルラットを作製し,その尿をTPx解析に,剖検後摘出した片腎の乳頭部をTGx解析に用いた。もう一方の片腎では病理組織学的検査を実施し,各BM候補と比較検証した。更に腎臓内障害特異性確認のため,puromycinやcisplatin等で糸球体或いは近位尿細管を障害させたモデルラットでの結果と比較した。<br> RPNモデルラットのTPx解析の結果,急性期炎症性蛋白質を複数含む計94種の蛋白BM候補が得られた。TGx解析の結果,アポトーシスシグナルやIL-1シグナルの活性化,酸化ストレスの亢進等をうかがわせる遺伝子群の変化が認められた。特にfibrinogenとC3はTPx解析及びTGx解析から共に検出されたため,これらはRPNと関連した着目すべきBMと考えられた。しかし障害部位特異性検討の結果,尿中のfibrinogenとC3は近位尿細管障害でも増加することが判明した。よって,fibrinogen及びC3はRPNを検出することは可能であるもののRPN特異的ではなく,近位尿細管の障害をも検出するBMであり,これら急性期炎症性蛋白質の増加は腎臓内障害部位における炎症関連シグナルの活性化に起因するものと考えられた。<br> 現在,RPNを特異的かつ鋭敏に検出するBMを残りの92候補から見出すべく,各候補に対する検討を実施中である。
著者
佐々木 大祐 宇波 明 関 二郎 宮前 陽一 黄 基旭 永沼 章 神吉 将之 西原 久美子 平本 昌志 由利 正利 梅野 仁美 森口 聡 見鳥 光 廣田 里香
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.40, 2013

腎乳頭部壊死(RPN; Renal Papillary Necrosis)は,糖尿病患者や鎮痛剤・抗がん剤等の服用等によって生じる腎障害の一つであるが,発症初期からヒトのRPNを鋭敏に検出するバイオマーカー(BM)の報告はなく,薬剤の開発や臨床的使用を困難にしている。そこで我々は,トキシコプロテオミクスの技術を利用してRPNを早期検出するための新規BMを探索した。<br>2-bromoethylamine hydrobromide(BEA)を雄ラット各5例に単回腹腔内投与(0,3,10,30,100mg/kg)し,投与直後から24時間蓄尿後剖検した。血液化学的検査及び腎臓の病理組織学的検査の結果,30mg/kg以上の投与群でBUNの増加やRPNが認められた。これらの結果を基に尿検体を4グループ(対照群,10mg/kg・RPNなし,30mg/kg・RPN有・BUN正常値,30mg/kg・RPN有・BUN増加)に分けプール尿を調製した。それらを脱塩濃縮後,トリプシン消化及びiTRAQラベル化し,2次元LC-MS/MSによるグループ間比較定量分析を実施した結果,RPNの認められた動物の尿中で増加していた94種の蛋白質BM候補を見出した。<br>次に,これらのBM候補のうち変動の程度が大きかった25候補について,まずは早期診断BMとしての可能性を検討した。BEAを雄ラット各8例(対照群は各6例)に単回腹腔内投与(0,30,100mg/kg)し,投与直後~6時間(0-6h)蓄尿後に剖検する群,0-6h及び投与後6時間~24時間(6-24h)蓄尿後に剖検する群をそれぞれ設けた。投与後6時間の剖検群ではRPNは認められなかったが,投与24時間ではいずれの投与群でもRPNが観察された。6-24h蓄尿について各BM候補をMultiple reaction monitoring法にて定量した結果,いずれのBM候補もRPNの認められた動物の尿中で増加していた。そのうちの4種のBM候補は,24時間後にRPNの認められた動物の0-6h蓄尿中でも増加傾向が見られたため,RPNが発症する前に変動するBM候補である可能性が考えられた。
著者
佐々木 倫朗
出版者
吉川弘文館
雑誌
戦国史研究 (ISSN:02877449)
巻号頁・発行日
no.42, pp.1-11, 2001-08