著者
佐藤 大和
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.67-78, 2002-04-30

This paper describes Japanese loanword accentuation, and proposes a strategy to assign accent types of these words. About four hundred sixty unitary loanwords are prepared having more than 5 morae. Nine native speakers, with a Tokyo dialect, are instructed to assign the most separable intra-word juncture and accent location of the words. The experimental result shows that Japanese loanword accentuation is closely related to the word formation quasi-structure and the metrical structure formed by compounded syllables in the words. It is clarified that accentuation rules of unitary words with phonological juncture parallel Japanese compound accent rules. Moreover, an additional new accenting rule is also proposed based on the Japanese metrical structure. The loanword accent under such a metrical structure is placed at the penultimate position of the two-mora syllable unit (foot).
著者
佐藤 大輔 黒須 正明 高橋 正明 高橋 秀明
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.269-281, 2005-10-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
14

本研究では, 業界の機運として高まりつつあるユーザビリティ担当者の人材育成への関心を踏まえ, ユーザビリティ担当者に求められるコンピタンスの明確化を目指し, 現在のユーザビリティ業界で実際に広く要求されている経験的なコンピタンスを実証的に明らかにすることを目的とした. まず, ユーザビリティ業界のマネージメント層を中心に半構造化インタビューによる2度のデータ収集および分析を実施し, コンピタンスリスト (第1版) を作成した. 続いて, 質問紙調査によって検証と分析を行った. その結果, 大きく五つの分類からなり3段階に重要度分けされる, ユーザビリティ担当者に求められる54項目のコンピタンスリスト (第2版) をまとめた. また, マネージャとエンジニアで求められるコンピタンスに違いがあること, 活動している業種や職種などにかかわらず同一のコンピタンスリストを適用できることが明らかにされた.
著者
佐藤 大紀 加藤 元海
出版者
高知大学大学院総合人間自然科学研究科黒潮圏総合科学専攻黒潮圏科学編集委員会
雑誌
黒潮圏科学 (ISSN:1882823X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.218-228, 2013-03

ニホンカワウソは、生息範囲が山から川、そして海に至るまで広く、生態系において上位捕食者に位置することから保全生態学的に重要な種である。日本で最後にニホンカワウソが確認された高知県の新荘川を対象に、生態学的な観点から現在と過去の河川環境を調べた。現在の河川環境に関しては、源流域から河口域に至る流程の8地点で河川地形や水質などの物理化学的環境、付着藻類や底生動物などの生物相の調査を行なった。過去の河川環境に関しては、文献調査と聞き込み調査を行なった。現在の河川環境は、上流域から下流域にかけて物理化学的環境と生物相に関して、流程に沿った顕著な変化の傾向はみられなかった。水質に関しては、過去から現在にかけてはわずかであるが改善する傾向にあり、水質の悪化がカワウソ絶滅の直接の要因ではなかったことが示唆される。明治初期から昭和初期にかけて乱獲で個体数が減少し、河川内にある堰の改修で主要な餌である魚類が減少した。河川周辺の植林やハウス栽培が原因で、水量が減少しさらなる魚類の減少をもたらした。乱獲に加え、1960年代以降、河川内改修や周辺環境の変化の人為的な3つの要因が重複したことがニホンカワウソの生息環境の著しい劣化を招き、1973年頃の気象災害による巣の破壊が新荘川からニホンカワウソの姿を消した決定的な要因と考えられる。
著者
池上 弘樹 石黒 亮輔 佐藤 大輔
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

超流動3HeのA相では、クーパー対が3Heという中性原子で構成されているにも関わらず、磁場と軌道角運動量の間に微弱な相互作用が生じ、マクロな性質に影響を及ぼす可能性がある。この現象の検証を行うため、超低温高磁場冷凍機と実験セルの整備を行った。これと同時に、3He-4He混合液表面に出来る3He薄膜の研究を行った。この3He薄膜では、上下の面はきれいな表面であるため、明確な検証実験が可能と考えられる。この3He薄膜の性質の解明のため、3He-4He混合液上の電子の移動度測定を行った。移動度の詳細な解析により、3He準粒子は表面で3He薄膜との間で異常な散乱をしている事が明らかになった。
著者
今木 隆太 庭野 慎一 佐々木 紗栄 弓削 大 脇坂 裕子 平澤 正次 佐藤 大輔 佐々木 毅 森口 昌彦 和泉 徹
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Supplement3, pp.142-146, 2005-07-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
10

【目的】心室細動(VF)自然発作既往のない無症候性ブルガダ型心電図症例において,VF誘発性と他の臨床データを有症候性症例と比較し,その臨床的意義を検討した.【方法】対象は心電図で特徴的なST上昇を認め,当科で電気生理学的検査(EPS)を施行した36症例.うち有症候例(VF自然発作群)5例,VF誘発例(VF誘発群)15例,VF非誘発例(VF非誘発群)16例.【結果】観察期間中4例でVF出現を認めた(VF自然発作群2例,VF誘発群2例).各群の失神歴(%)はVF自然発作群:VF誘発群:VF非誘発群=100:13:25(P<0.05),突然死家族歴(%)は40:13:19(NS)であった.ピルジカイニド負荷時のcoved型ST上昇頻度(%)は100:93:63(NS),冠動脈攣縮陽性率(%)は50:64:25(NS),MIBG分布異常(%)は75:40:20(NS)と,VF自然発作群,VF誘発群に多い傾向のみ認めた.【結語】無症候例の経過観察中,VF誘発群でVF自然発作を認めた.高リスク例の指標は明らかでなかったが,冠動脈攣縮誘発率やMIBG分布異常などの重要性が示唆された.
著者
丸山 俊朗 鈴木 祥広 佐藤 大輔 神田 猛 道下 保
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.818-825, 1999-09-15
参考文献数
24
被引用文献数
14 15

閉鎖循環式の泡沫分離・硝化システムと従来の流水式システムでヒラメを飼育し, 閉鎖循環式養殖の可能性を検討した。本閉鎖循環式システムは, 飼育水槽, 空気自吸式エアーレーターを設置した気液接触・泡沫分離槽, 硝化・固液分離槽, およびpH・水温調整槽からなる。ヒラメ幼魚200尾を収容(初期収容率2.8%)し, 90日間の飼育実験(実験終了時収容率5.0%)を行った。本閉鎖循環式システムと流水式システムを比較すると, 生残率はそれぞれ93.5%と98%であり, また, 飼料効率は, それぞれ117%と110%であった。本閉鎖循環式システムによって, 飼育水をほぼ完全に排水することなしに, 高密度飼育することができた。
著者
中島 輝一 真野 泰成 大内 かおり 佐藤 大輔 岩田 杏子 樋口 安耶 江原 邦明 加藤 芳徳 廣澤 伊織 田島 正教 土屋 文人 山田 治美 小瀧 一 旭 満里子
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.9, pp.599-608, 2012-09-10 (Released:2013-09-12)
参考文献数
9
被引用文献数
4 17

We established a pharmaceutical outpatient clinic at the International University of Health and Welfare Mita Hospital. In the clinic, pharmacists provide mainly pharmaceutical care for cancer outpatients based on prescriptions from a doctor, and then feed back the contents of medication counseling and information about patients to doctors.In this study, we evaluated the role of the pharmaceutical outpatient clinic. From April to July 2011, we investigated retrospectively the contents of feedback from pharmacists to doctors. The contents consisted of three types of information such as medication counseling, history of side effects and allergy, and uneasiness from patients. Most of this information was on side effects. Approximately 42% of uneasiness from patients was about the side effects of chemotherapy. Furthermore, we conducted a questionnaire survey in 62 cancer outpatients that gave informed consent during the period as mentioned above. The results showed that the degree of understanding of drugs on treatment and prevention of the onset of side effects after consultation was markedly improved compared with those before consulting. Many patients (50/62) felt “uneasiness about treatment" and “some uneasiness" before consultation. However, 88.0% (44/50) of them noted that their “anxiety was eased" after consultation. The degree of reduction in uneasiness in patients with stage Ⅰ and Ⅱ breast cancer was larger than that with stage Ⅲ and Ⅳ. In conclusion, it is suggested that the clinic may play a role which makes it possible to enable cancer outpatients to participate in medical treatment with ease, in addition to enabling support for doctors.
著者
阿部 匡伸 佐藤 大和
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.682-690, 1993-10-01
参考文献数
19
被引用文献数
31

音声合成における文音声の基本周波数パタン制御方式として、アクセント句の大きさの配分を設定するグローバルモデルと、音節内の基本周波数を逐次的に実現するローカルモデルからなる2階層制御方式を提案する。ローカルモデルでは、単語内の音節位置ごとに区分化されたモデルに基づき、基本周波数の平均値と変化率が求められる。本方式を連続音声の基本周波数パタンの生成に適用し、高い自然性の得られることを確認した。更に、提案方式の誤差解析を通じて得られた、強調を表現する基本周波数パタンの型に関しても議論する。
著者
佐藤 大介
出版者
日本アーカイブズ学会
雑誌
アーカイブズ学研究 (ISSN:1349578X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.5-22, 2012

<p>宮城資料ネットは、2003年7月の宮城県北部での連続直下型地震を契機に発足した。地域の歴史資料を災害から守るため、災害「前」の所在把握と記録化を続けていた。</p><p>東日本大震災の発生後は、全国の関係者や被災地内外の市民ボランティアの支援を得て活動を続けている。2012年8月現在53家分を保全しているが、活動の完了には長期間かかることは確実である。</p><p>震災で多数の歴史資料が消滅したが、震災前に撮影していたものは画像データは遺された。被災情報の収集にも、震災前からの地域との関係構築が大きな役割を果たした。「次」の巨大災害が発生する前に、地域連携・多分野連携による歴史資料の防災対策を進める必要がある。</p>
著者
佐藤 大介
巻号頁・発行日
2011

Thesis (Ph. D. in Engineering)--University of Tsukuba, (A), no. 5932, 2011.11.30
著者
佐藤 大樹 菅原 俊治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.105, pp.31-35, 2010-06-18

本論文ではユーザのブラウザの閲覧履歴から探索行動と探索目的ページの抽出方法を提案する.近年,ウェブページの爆発的な増加に伴い,ウェブページ推薦の研究が盛んに行われている.我々は,小グループにおける検索サイトを利用した情報探索においての推薦システムをめざしている.特にウェブページ全体を推薦の対象としながらも,ユーザへの負担が少ないことを狙っているが,その実現にはいくつかの課題がある.本論文ではこの中で特に,推薦対象を自動抽出するという課題に対し,ユーザのブラウザの閲覧履歴に基づいた探索行動と探索終了ページの抽出手法を提案し,さらに終了ページが探索の目的ページ(推薦対象ページの候補)となる割合を調べた.評価実験の結果,52.3%の割合で探索行動を抽出でき,そのとき87.0%の割合で探索結果として有用なウェブページを抽出できた.
著者
佐藤 大 杉浦 彰彦 米村 恵一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IE, 画像工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.537, pp.51-54, 2007-02-16

本研究は認知症の予防に対する作り笑いの可能性を探ることを目的としている.本稿では,作り笑いがストループ効果と顔表面温度に与える影響について述べる.はじめに実験で用いた作り笑いじゃんけんシステム,笑み筋体操およびストループ効果について述べる.実験ではストループ効果を指標として用いて,作り笑いじゃんけん評価実験を行い,認知症の予防に対する作り笑いの可能性を示した.次に笑み筋体操顔表面温度変化実験を行い,笑み筋体操によって顔の表面温度を上昇させることを示した.
著者
佐藤 大樹
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会第55回大会
巻号頁・発行日
pp.38, 2011 (Released:2012-02-23)

2011年4月から5月にかけて筑波山中腹の3箇所の沢でフタバコカゲロウ(Baetiella japonica)を採集した.このカゲロウは大きめの石や岩盤の表面にしがみついており,左手で水をよけ,現れた幼虫を鋭利なピンセットでつまみとり氷冷して研究室に持ち帰った.採集された複数の個体において,肛門から伸び出た菌糸が観察された.5月23日に採集された個体では,21頭中4頭が肛門から菌糸を伸ばしていた.菌体の基部は半球形に寄主の後腸クチクラに食い込んでおり,周囲は褐色を呈していた.菌体は主軸があり,肛門から伸び出した後に隔壁部分から一箇所あたり2-3本に分枝し,これを繰り返した.菌糸先端付近は,6-14μm間隔で隔壁に区切られた胞子形成細胞を形成し,続いて斜めにトリコスポア(trichospore:離脱生の胞子嚢)を形成した.トリコスポアは細長い円筒形でカラーはなく,長さ50-62.4μm幅4.0-4.6μmであった.同様の菌体基部,分枝様式を持った菌体において,菌糸の先端部分が癒合し,中間に紡錘形の接合子の形成が認められた(高さ8.0-9.4μm幅38.0-42.0μm).水生昆虫の肛門から菌体が伸び出すトリコミケテス類は,レゲリオミケス科(Legeriomycetaceae) のOrphella, Pteromaktron, Zygopolarisの3属である.Orphella属とは,トリコスポアの形態が異なり,Pteromaktronとは分枝のタイプが異なる.Zygoporarisとは,トリコスポア形成様式が似ているが,接合子の形態が異なる.従って,本属を新属と判断した.トリコミケテス類は観察に適した良い状態の標本を採集することが困難である場合が多いが,今回は,胞子形成が始まったばかりの菌体をスライドガラス上に1滴の沢の水とともに5℃で追培養を行い,トリコスポアの形成過程を約10日間連続観察できた.レゲリオミケス科のように分枝する菌体を持つトリコミケテス類は,分離培養までは達成できなくても,追培養による形態形成観察は有用な手段であると考えられた.
著者
益子 幸江 佐藤 大和 峰岸 真琴 降幡 正志 岡野 賢二
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、強調の機能をイントネーションがどのように表すことが可能かを、タイプの異なる複数の言語について、音響音声学的データに基づいて検討した。言語タイプとして、音の高低を用いる声調言語と高低アクセント言語、音の強弱を用いる強弱アクセント言語を取り上げた。声調言語ではイントネーションは通常は用いられないのに対し、他のタイプの言語ではイントネーションが用いられることがわかった。また、発話における声調のピッチパタンは声調ごとの典型的なパタンからの逸脱(調音結合)では説明できず、声調の組合せからなる形態統語論上の単位に付与される動的パタンと考えられることが明らかになった。
著者
佐藤 大輔 中川 博之 田原 康之 大須賀 昭彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.11, pp.1773-1782, 2011-11-01

本論文では,閲覧中のWeb上のニュース記事に対する意見を個人のブログから収集し,その本文中の主張部分を抽出して提示するシステムの提案を行う.現在ニュースサイトにコメント欄が用意されているところは少なく,検索エンジンを用いても個人の意見のみを収集するのは容易ではない.そこで個人の意見を述べやすい場であるブログに着目してニュース記事に関連した意見を集め,主張を抽出する.本研究では主張とは意見の中で筆者が強く述べている主観的な部分を指す.開発中の主張提示システムの中で,本論文では主張抽出に焦点を当てる.主張抽出には人手により主張であるとされた文章から形態素解析を利用して特徴的な抽出ルールを設定した.本システムによりユーザはニュースサイトを閲覧すると同時に意見の多角的な見方が可能になり,より深い洞察が得られるようになる.評価実験において人手による正解との適合率を求めたところ70.0%となった.
著者
佐藤 大
出版者
全国英語教育学会
雑誌
全国英語教育学会紀要 (ISSN:13448560)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.91-100, 2006

This study aims to investigate English writing and speaking abilities through grammatical knowledge. The first step to cultivate learners who can use English productively is to understand the use of grammatical items when they want to express something in English. Junior high school students are beginner learners of English. They always make use of the knowledge which they learned in English grammar classes. However, they can not communicate with the ALT (Assistant Language Teacher) well. In this study, I tried to focus on teaching grammar to lead to communication. After learning grammar, students were forced to make sentences and speak using the grammatical items in regular English classes. Finally, an oral test and a written test were conducted to examine whether students can write or speak English using the grammatical item correctly. The future tense and "There is ..., there are..." were used in this study. This study attempts to examine the relationship between grammatical knowledge, writing and speaking abilities in a junior high school setting. 60 oral tests and written tests by 60 students were analyzed. As a result, some features on grammar were found.
著者
内村 要介 佐藤 大和 松江 勇次
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.393-399, 2001-09-05
参考文献数
20
被引用文献数
2

さらなる省力, 低コストの水稲直播栽培に適する品種育成のため, 酸素供給剤を粉衣しない種籾の出芽苗立ち安定化についての基礎的知見を得る目的で, 72品種を供試して湛水土壌表面直播栽培を行い, 出芽苗立ち特性の優れる品種の評価および圃場中の水温と溶存酸素濃度の測定を行った.播種後14日間の圃場中の水中の溶存酸素濃度は約4.7〜11.6mgL^<-1>(飽和量の約50%〜過飽和), 水温は日平均21.8〜29.0℃で推移し, 水稲種子の発芽, 根の伸長に問題はほとんどなかった.供試した72品種はすべて発芽率が80%以上あったにもかかわらず, 播種14日後の出芽率は0〜89%の変異幅が認められた.出芽率が80%以上と出芽能力が優れた11品種が認められ, そのうち8品種の譜系図に旭または朝日が認められた.転び苗および浮き苗の発生率については4%〜61%の変異幅が認められた.出芽能力が優れた11品種において, 出芽率と転び苗および浮き苗の発生率との間には相関関係は認められず, 出芽率が80%以上で転び苗および浮き苗の発生率が10%以下の苗立ちが優れた品種, 神力, はえぬき, どまんなかが認められた.出芽率の高い品種は, 千粒重が重く, 比重1.1以上の割合が高く, 初期生育が優れた.転び苗および浮き苗の発生が少ない品種は, 種子の比重が1.1以上の割合が高く, 種子根の平均伸長速度が遅かった.これらの知見は, 酸素供給剤を用いない省力, 低コスト直播栽培で出芽苗立ちを安定化させる水稲品種育成のための交配母本選定に当たり有効な情報になるものであった.