著者
佐藤 大悟
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要. アーカイブズ研究篇 = The bulletin of the National Institute of Japanese Literature. 人間文化研究機構国文学研究資料館 編 (ISSN:18802249)
巻号頁・発行日
no.15, pp.53-70, 2019-03

本稿は、明治太政官期の修史部局の記録管理を分析するものである。太政官の記録管理部局から派生した修史部局は、歴史を編纂する修史的側面に加え、史料や図書の収集・管理といったアーカイブズ的側面を併せ持つため、当該期のアーカイブズ認識や制度を検討する上で重要な一事例である。歴史課の成立経緯を、「記録編輯」の編纂物を提示しつつ、明治元年11月記録編輯掛、3年11月記録編輯局、4年8月記録局(同9月記録分局設置)といった段階を明示して論じた。5年10月の歴史課設置は、政府の様々な記録管理を掌る正院記録局内の分課構想が、正院の分課に落着し、内史・外史に記録局の各課が分課された結果だと位置づけた。成立した修史部局の記録管理を、東京大学史料編纂所所蔵「修史局・修史局史料」を用いて分析した。記録管理制度については、歴史課、修史局、修史館の段階別に解明し、記録局出身の官員らによって取扱事項の明文化などの整備が進められたことを指摘した。その上で制度に対応する記録管理の実態に迫り、「修史局・修史館史料」のうち往復文書、日記・官員履歴類、受付録、図書目録の簿冊について整理し、これらと別に史料編纂所が所蔵する簿冊との対応関係を示した。以上を踏まえ、当該期の政府の記録管理を捉えるには、修史部局やそれと同様の成立経緯・アーカイブズ的側面を持つ地誌・統計編纂事業の検討が不可欠である点を指摘した。This article analyzes records management of the Office of Historiography under the Dajō-kan during the Meiji period. The Office of Historiography, derived from the record administration department of the Dajō-kan, is an important example when considering the recognition and institutionalization of archives in that period because it has archival aspects such as collection and management of historical records or books in addition to the historical aspects, compiling history. While presenting the compilation of the Kiroku Henshū, we discussed the history of the establishment of the History Division by expressly giving the following three chronological orders and the corresponding name: the Kiroku henshū gakari in November of Meiji 1, as the Kiroku henshū kyoku in November of Meiji 3, and as the Kiroku kyoku in August of Meiji 4 (the branch of the Kiroku kyoku was established in September in the same year) We assumed that the subdivision concept within the Seiin Records department responsible for the various records management of the government was settled down by making it a subdivision of the Seiin. We then concluded that the establishment of the History Division of October of Meiji 5 was the result of the subdivision of each department of the recording office into Naishi and Gaishi. We analyzed the records management of the Office of Historiography by using the Shūshi-kyoku and Shūshi-kan Shiryō owned by the Historiographical Institute of the University of Tokyo. Regarding the record management system, we clarified stage by stage the History division, the Shūshi-kyoku, and the Shūshi-kan, and then pointed out that the officials from the bureau of records made preparations such as clarification of handling matters. In addition, we approached to the actual situation of the record management corresponding to the system. We organized books of round-trip documents, diary / official history, acceptance records, book bibliographies described in the Shūshi-kyoku and Shūshi-kan Shiryō, and then showed the correspondences with books separately owned by the Historiographical Institute of the University of Tokyo. Based on the above, we pointed out that consideration of chorography and or statistical compilation projects which have history of establishment and or archives aspects similar to the ones of the Office of Historiography are indispensable to understand record management of the government during that period.
著者
中澤 翔 秋元 大和 山代 幸哉 佐藤 大輔 丸山 敦夫
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.274_1, 2016

<p> 中長距離選手の走の経済性(RE)に及ぼすSSC(stretch-shorten cycle)の影響に関する研究では、プライオメトリックトレーニングと競技成績の関係に関する報告がいくつかある。しかし、SSC能力が走の経済性に及ぼす影響についてはあまり報告されていない。本研究は大学男子中長距離選手12名を対象に、VO<sub>2</sub>16km、% VO<sub>2</sub>max(VO<sub>2</sub>16km/ VO<sub>2</sub>max)、16km/h走行時の重心上下動(GH)、平均ストライド長(SL)およびリバウンドジャンプ(RJ)とドロップジャンプ(DJ)接地時間および跳躍高を測定し、それぞれの関係について検討した。その結果、(1)% VO<sub>2</sub>maxとRJ接地時間にr=0.641(P<0.05)の有意な相関関係が認められた。(2)重心上下動とストライド長および重心上下動とRJ跳躍高との間にそれぞれr=0.868(P<0.01)およびr=0.660(P<0.05)の有意な関係が認められた。(3)重心上下動とVO<sub>2</sub>16kmおよび% VO<sub>2</sub>maxとの間に有意な関係性は認められなかった。このことから、RJ接地時間の短い選手ほど走の経済性(% VO<sub>2</sub>max)が良いことが示唆された。</p>
著者
佐藤 大介 志築 文太郎 三浦 元喜 田中 二郎
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
日本ソフトウェア科学会大会講演論文集 日本ソフトウェア科学会第20回記念大会 (ISSN:13493515)
巻号頁・発行日
pp.98, 2003 (Released:2003-12-17)

我々はペンによるメニュー選択に基づく日本語入力手法を開発した。このシステムでは子音のみの入力と予測候補の選択により入力速度の向上を図った。しかし、子音の組み合わせによって候補が多数になり、その選択に手間がかかることが問題であった。そこで絞り込みの機能を加え、より効率よく入力が行えるように工夫した。一方メニューにはFlowMenuを採用し、入力と候補の選択を連続的で滑らかなメニュー選択で行えるようにした。そしてユーザによる実験によって本システムを使った日本語入力の有効性を示した。
著者
佐藤 大祐 松林 達史 足立 貴行 大井 伸哉 田中 悠介 長野 翔一 六藤 雄一 塩原 寿子 宮本 勝 戸田 浩之
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.D-wd05_1-10, 2020-03-01 (Released:2020-03-01)
参考文献数
16
被引用文献数
2

In places where many people gather, such as large-scale event venues, it is important to prevent crowd accidentsfrom occurring. To that end, we must predict the flows of people and develop remedies before congestioncreates a problem. Predicting the movement of a crowd is possible by using a multi-agent simulator, and highly accurateprediction can be achieved by reusing past event information to accurately estimate the simulation parameters.However, no such information is available for newly constructed event venues. Therefore, we propose here a methodthat improves estimation accuracy by utilizing the data measured on the current day. We introduce a people-flowprediction system that incorporates the proposed method. In this paper, we introduce results of an experiment on thedeveloped system that used people flow data measured at an actual concert event.
著者
赤石 敏 小圷 知明 黒澤 伸 佐藤 大三 加藤 正人
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.1008-1019, 2011 (Released:2011-12-13)
参考文献数
19
被引用文献数
1

脊髄くも膜下麻酔後に高位胸髄レベルの対麻痺が発生する医療事故が1960年代以降,日本でも少なくとも数十例発生している.一般的にTh9~10に入ることが多いAdamkiewicz動脈(大根動脈;arteria radicularis magna)は日本人の約0.5%の頻度で脊髄くも膜下麻酔が施行されるL3~5から脊髄に入ってくる.くも膜下腔に穿刺針を深く刺し過ぎると,馬尾神経損傷以外に,この動脈を損傷して不可逆的な高位対麻痺が発生する危険性がある.これを回避する最も重要なポイントは,必要以上に深く穿刺針をくも膜下腔に挿入しないことであると思われる.脊髄くも膜下麻酔を施行するすべての医師はこのことを常に念頭に置いておく必要がある.
著者
福田 治久 佐藤 大介 福田 敬
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.147-157, 2019-05-01 (Released:2019-06-13)
参考文献数
6

目的:費用対効果評価制度における分析は,『医療経済評価研究における分析手法に関するガイドライン』(経済評価GL)に基づいて実施することとなっている.経済評価GLにおいては,診療報酬改定の影響を補正するために,診療行為レベルでの単価の補正を推奨しているが,他の補正方法との比較検討はなされていない.本研究の目的は,レセプトデータを用いた医療費分析において診療報酬改定の補正方法について検討することである.方法:本研究では2009年 4 月から2016年12月のおよそ 8 年間における医科およびDPCのレセプトデータから,1度でも入院をしたことのある者の解析用IDを抽出し,当該解析用IDの中から無作為に25%分を抽出したナショナルデータベース(NDB)を使用した.2012年度から2016年度にかけて,DPCコードおよびDPCコード内における患者定義が同一のDPCコードにおける入院症例を解析対象に定めた.診療報酬改定の補正方法として以下の 4 方法を定めた:1DPC包括部分・診療行為・薬価・材料に対して2016年度単価を使用,2薬価・材料のみに対して2016年度単価を使用し,その他は診療報酬本体改定率を使用,3診療報酬本体・薬価・材料に対して全体的にネット改定率を使用,4補正を行わない.本研究では,経済評価GLが推奨する 1 を用いた補正方法によって算出した医療費に対して,2~4のそれぞれを用いた補正方法によって算出した医療費の比率を算出し,補正方法の違いによる医療費推計結果の違いを比較検討した.結果:「2012-2013年度」,「2014-2015年度」,「2016年度」の間で,DPCコードおよび患者定義が変更されていないDPC数は,2016年度全DPCコード数:4,918件のうち,999件(20.3%)であった.一方,「2014-2015年度」,「2016年度」の間では1,528件(31.1%)であった.経済評価GLが推奨する補正方法 1 による医療費に対して,各補正方法で算出した医療費の比は,補正方法 2 では1.01,補正方法 3 では0.99,補正方法 4 では1.00であった.ただし,DPCコードによって医療費比が±10%程度の相違が生じ,一部のDPCコードでは±20%以上の誤差も生じていたが,どの補正方法においても相違の傾向は同様であった.結論:経済評価GLにおいて推奨されている補正方法 1 は,DPCコード内容の変更の影響が大きいことから現実的に実施困難であることが明らかになった.また,より簡便な補正方法2~補正方法 3 を用いた場合でも,推計結果に大きさ誤差を認めなかった.そのため,結果の精度と分析実施可能性に鑑みてネット改定率(補正方法3)を用いることが許容される.
著者
齊藤 明 岡田 恭司 髙橋 裕介 柴田 和幸 大沢 真志郎 佐藤 大道 木元 稔 若狭 正彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1220, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】成長期野球肘の発症には投球時の肘関節外反が関与し,その制動には前腕回内・屈筋群が作用することが知られている。成長期野球肘おいては投球側の円回内筋が硬くなることが報告されており,特に野球肘の内側障害ではこれらの硬い筋による牽引ストレスもその発症に関連すると考えられている。しかしこれらの筋が硬くなる要因は明らかにされていない。そこで本研究の目的は,成長期の野球選手における前腕屈筋群の硬さと肘関節可動域や下肢の柔軟性などの身体機能および練習時間との関係を明らかにすることである。【方法】A県野球少年団に所属し,メディカルチェックに参加した小学生25名(平均年齢10.7±0.7歳)を対象に,超音波エラストグラフィ(日立アロカメディカル社製)を用いて投球側の浅指屈筋,尺側手根屈筋の硬さを測定した。測定肢位は椅子座位で肘関節屈曲30度位,前腕回外位とし,硬さの解析には各筋のひずみ量に対する音響カプラーのひずみ量の比であるStrain Ratio(SR)を用いた。SRは値が大きいほど筋が硬いことを意味する。身体機能は投球側の肘関節屈曲・伸展可動域,前腕回内・回外可動域,両側のSLR角度,股関節内旋可動域,踵殿距離を計測し,事前に野球歴と1週間の練習時間を質問紙にて聴取した。また整形外科医が超音波診断装置を用いて肘関節内外側の骨不整像をチェックした。統計学的解析にはSPSS22.0を使用し,骨不整像の有無による各筋のSRの差異を比較するため対応のないt検定を用いた。次いで各筋のSRと各身体機能,野球歴や練習時間との関係をPearsonの相関係数またはSpearmanの順位相関係数を求めて検討した。有意水準はいずれも5%とした。【結果】参加者のうち肘関節内側に骨不整像を認めた者は4名(野球肘群),認められなかった者は21名(対照群)であった。浅指屈筋のSRは2群間で有意差を認めなかった(1.01±0.29 vs. 0.93±0.23;p=0.378)が,尺側手根屈筋のSRでは野球肘群が対照群に比べ有意に高値を示した(1.58±0.43 vs. 0.90±0.28;p<0.001)。浅指屈筋のSRと各測定値との相関では,各身体機能や野球歴,練習時間のいずれも有意な相関関係は認められなかった。尺側手根屈筋のSRも同様に各身体機能や野球歴との間には有意な相関関係を認めなかったが,1週間の練習時間との間にのみ有意な正の相関を認めた(r=0.555,p<0.01)。【結論】成長期の野球選手において浅指屈筋,尺側手根屈筋の硬さは,肘・股関節可動域や野球歴とは関連がないことが明らかとなった。一方,1週間の練習時間の増大は尺側手根屈筋を硬くし,このことが成長期野球肘の発症へとつながる可能性が示唆された。
著者
齊藤 明 岡田 恭司 佐藤 大道 柴田 和幸 鎌田 哲彰
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.F-45, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに・目的】 成長期野球肘内側障害における脊柱アライメントを評価し,本症との関係を明らかにすることである。【方法】 野球肘内側障害患者50名(野球肘群)と健常小学生100名(対照群)を対象に,Spinal Mouseを用いて自然立位およびwind up phaseを模した片脚立位での胸椎後弯角,腰椎前弯角,仙骨傾斜角,脊柱傾斜角を計測し,それぞれの変化量(片脚立位-立位)も算出し2群間で比較した。また脊柱アライメントと肩関節外旋,内旋可動域(90°外転位),および肩甲骨アライメント(脊柱-肩甲棘内側縁,壁-肩峰前縁の距離)との関連を検討した。【倫理的配慮】 秋田大学医学部倫理委員会(承認番号1036)の承認を得てから実施し,対象者および保護者には事前に研究目的や方法について十分に説明し書面にて同意を得た。【結果】 自然立位における脊柱の各角度は2群間で有意差を認めなかった。片脚立位では野球肘群が対照群に比べ有意に胸椎後弯角が大きく(P=0.016),脊柱傾斜角は後方傾斜していた(P=0.046)。またこれらの変化量も同様の結果であった(それぞれP=0.035,0.020)。しかし,脊柱アライメントと肩関節可動域および肩甲骨アライメントとの間には有意な相関関係は認められなかった。【考察】 成長期野球肘内側障害では,片脚立位において胸椎が後弯し,体幹も後方傾斜することが明らかとなった。このことが投球フォームへ影響を与え,本症の発症につながる可能性がある。
著者
中澤 翔 瀧澤 一騎 厚東 芳樹 山代 幸哉 佐藤 大輔 丸山 敦夫
出版者
日本コーチング学会
雑誌
コーチング学研究 (ISSN:21851646)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.209-217, 2018

<p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;The purpose of this study was to clarify the relationship between running distance over an 8-month period and both 5000 m running performance and aerobic capacity (VO<sub>2</sub>max, VO<sub>2</sub>VT, running economy). The 8-month study period was divided into two segments of 4 months each. It was found that long-distance athletes could run 5000 m in about 15 min 30 s. The analysis also confirmed the following: (1) athletes that ran longer distances in the 8-month period had better 5000m times; (2) they had higher VO<sub>2</sub>VT; and (3) athletes whose distances were longer in the first half of the study period had better VO<sub>2</sub>VT and 5000m records in the second half of the period. The anaerobic threshold reached a higher level in runners with greater training distance, resulting in an improvement in race results. Furthermore, based on the fact that the distance run in the first four months effects on VO<sub>2</sub>VT and 5000 m running times in the latter four months, this study demonstrates the possibility of training effects occurring after a certain latency period. The results implicated that it was important to track running distances as an indicator of race performance.</p>
著者
斎藤 眞 川畑 大作 佐藤 大介 土志田 正二 新井場 公徳
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.2, pp.86-87, 2016-02-15 (Released:2016-06-17)

121巻9月号掲載の斎藤ほか論文(p.339-346)のFig. 2aの中で,露頭および試料採取位置の地点番号が欠如していました.次頁に正しい図を掲載し,訂正いたします.(著者一同・編集委員会)
著者
椿 淳裕 森下 慎一郎 竹原 奈那 德永 由太 菅原 和広 佐藤 大輔 田巻 弘之 山﨑 雄大 大西 秀明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0413, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】有酸素運動の急性効果に関して,運動後に認知課題の成績が向上することが報告されている。我々は,有酸素運動後も運動関連領野の酸素化ヘモグロビン濃度(O2Hb)が高値であることを報告している。認知に関与する前頭前野においても有酸素運動後にO2Hbが高値を維持すると仮説を立て,これを検証することを目的に本研究を行った。【方法】健常成人9名(女性5名)を対象とし,自転車エルゴメータによる中強度での下肢ペダリング運動を課題とした。安静3分の後,最高酸素摂取量の50%の負荷で5分間の定常負荷運動を実施し,運動後には15分間の安静を設けた。この間,粗大運動時のモニタリングに最適とされる近赤外線分光法(NIRS)により,脳酸素モニタ(OMM-3000,島津製作所)を使用しO2Hbを計測した。国際10-20法によるCzを基準として30mm間隔で送光プローブと受光プローブを配置し,全24チャネルで測定した。関心領域は,左前頭前野(L-PFC),右前頭前野(R-PFC),左運動前野(L-PMA),右運動前野(R-PMA),補足運動野(SMA),一次運動野下肢領域(M1)とした。同時に,NIRSでの測定に影響するとされる頭皮血流量(SBF)と平均血圧(MAP)を計測した。また,酸素摂取量体重比(VO2/W),呼吸商(RQ),呼気終末二酸化炭素濃度(ETCO2)をブレスバイブレス法で測定した。領域ごとのO2Hb,SBF,MAPは,安静時平均値に対する変化量を算出した。中強度運動5分目の1分間の平均値と,運動後安静11~15分の5分間の平均値を求め,対応のあるt検定により比較した。【結果】O2Hbは5分間の中強度運動中に徐々に上昇し,運動終了直後に一時的に減少したものの,2~4分で再度上昇し,運動後15分目まで安静レベルに戻らなかった。一方SBFおよびMAP,VO2/W,RQ,ETCO2は,運動終了直後より速やかに安静レベルまで低下した。領域ごとに運動中と運動後安静中のO2Hbを比較した結果,L-PFCでは運動中0.025±0.007 mM・cm,運動後安静中0.034±0.008 mM・cm(p=0.212),R-PFCでは運動中0.024±0.008 mM・cm,運動後安静中0.028±0.009 mM・cm(p=0.616)であり,運動後11~15分であっても運動中と差がなかった。また,L-PMA,R-PMA,SMA,M1においても,中強度運動5分目と運動後安静11~15分との間に有意な差を認めなかった(p=0.069~0.976)。SBF,MAP,VO2/W,RQ,ETCO2は,中強度運動5分目に比べ運動後安静11~15分では有意に低値であった(p<0.01)。【結論】5分間の有酸素運動によって,運動中に上昇したO2Hbは,運動後安静中も15分間は運動中と同程度であることが明らかとなった。またこのO2Hbの変動は,SBFやMAPなど他の生理学的パラメータの変動とは異なることが示された。
著者
佐藤 大祐
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.8, pp.452-469, 2001-08-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
26
被引用文献数
1 5

海岸の観光地では,海浜別荘地や民宿地域などが大都市からの距離や利用者の社会階層などに応じて発達し,観光産業を基軸とした地域が形成された.その中にあって,近年マリーナの増大が顕著で,漁業などとの海域利用の競合が発生している.本研究では,東京を中心としたマリーナの立地と,マリーナ利用者の属性とレクリエーション行動を解明することを目的とした.1960年代に三浦半島の相模湾岸において別荘地帯の延長線上に開設されたマリーナは,充実した施設を併設している.この利用者は,東京都区部の西部に居住する高額所得者層から成り,夏季を中心にリゾートマンションなどに滞在して,沖合海域において大型のクルーザーヨットでのセーリングとモーターボートでのトローリングを,沿岸海域に密集する漁業活動とすみわけっっ行っている.一方,1973年の第1次オイルショック以降,東京湾において産業施設から転用されたマリーナは簡易な施設で構成されている.中産階級にも広がる利用者は,週末に日帰りし,波浪の静穏な東京湾内湾の中でも沿岸寄りの海域を小型モーターボートを使って行動することで,沖合の大型船の航路とすみわけている.,このようなマリーナとその海域利用の実態が明らかとなった.