著者
佐藤 晃
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.1-9, 1998-07-10 (Released:2017-08-01)

安東(秋田)実季は、中世・安藤(東)氏から近世大名・秋田氏への転換期に、蟄居の身となった人物である。実季が、死の前年まで綴った系図は、蝦夷に系譜を持ち、奥州安倍氏の血を引く自家のアイデンティティを、「勅免シテ北国ノカタメトナ」ったものへと定位し直すものだった。そのため系図のなかの多くの記述が、朝廷に対する「勅免」劇の反復といった内容を持つものとなった。正史の歴史叙述の行間に自家の存在を滑り込ませ、かつ、その在り方を観念的に論理化してみせたのが、実季の系図作りの<創造>であったといえよう。
著者
重森 雅嘉 佐藤 文紀 増田 貴之
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第9回大会
巻号頁・発行日
pp.48, 2011 (Released:2011-10-02)

一般的に多くの人に当てはまる事柄であっても、心理検査や占いの結果として提示すると、自分に特別な内容として受け取られやすい(バーナム効果)。この効果を注意や警告を強化するものとして用いることができれば、安全や教育においての有効な活用が期待できる。本研究では日常的な展望記憶課題(一連の実験セッションの最後にID札を返却する課題)を用い、展望記憶エラーに対する警告をおみくじのように被験者が選択することにより、同様の内容を実験者から与えられるよりも警告の効果が高まることを明らかにした。
著者
村瀬 香 佐藤 俊幸 奥田 圭
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

チェルノブイリ原発事故の後、周辺の国々で先天性奇形が増加したとされる論文もあるが、2011年の福島原発事故後の日本ではどうだったのだろうか?原発事故前後の日本イノシシの遺伝子を解析した結果、原発周辺に限らない広範囲での影響が認められた。そこで我々は、対象を日本全国に広げ、原発事故前と後でヒトの先天性奇形の手術件数を比較する研究に着手した。事故前後を比較・解析したところ、停留精巣は原発事故後に13.4%の有意な増加が認められ、さらに、新生児および乳児における複雑心奇形の手術件数は、原発事故後に約14.2%の有意な増加が認められた。どちらも事故後に急増した後、高い水準のまま維持されていた。
著者
佐藤 成見 白須 未香 東原 和成
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.774-781, 2015-10-20 (Released:2016-10-20)
参考文献数
28

ムスクは,官能的で魅惑的な香りを有し,古代から人間社会で香料以上の役割を担ってきた.天然ムスクであるムスコンは現在希少であり,その代替となるべく多くの合成ムスク香料が開発されてきたが,なかには毒性を指摘されるものもあり,問題となっている.当研究室では,ムスコンの受容体をマウスやヒト,4種の霊長類で同定し,それらのさまざまなムスク香料に対する構造活性相関を調べた.ヒトのムスコン受容体であるOR5AN1の応答性は,私たちが実際にムスク香料を嗅いだときの感覚とよく一致しており,ヒトのムスクの匂い受容の鍵となる受容体であることがわかった.これらの結果は,より良い新規ムスク香料の開発に貢献すると期待される.
著者
廣瀬 宗孝 助永 憲比古 岡野 一郎 岡野 紫 中野 範 恒遠 剛示 棚田 大輔 佐藤 和美 乾 貴絵
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.15-0039, (Released:2016-09-06)
参考文献数
43

慢性疼痛の発症とその持続には,中枢神経系の神経可塑性が重要であるが,血液における自然免疫の役割も注目されている.このため慢性疼痛の血液マーカーを見つける研究が行われており,脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor:BDNF)もその候補の一つである.末梢神経が損傷されると,炎症誘発期では中枢神経系のBDNFは増加し,抗炎症期になると低下すると考えられている.中枢神経系のBDNFは血液中に漏出するため,このような中枢神経系におけるBDNFの変化は血液中のBDNF濃度に反映するとの考えがある.しかし,われわれが行った慢性腰痛症患者の臨床研究では,抗炎症反応が増加すると血液細胞のBDNF遺伝子におけるエピジェネティックな変化で血清BDNF値は低下することが明らかとなり,BDNF値の低下と痛み症状の数の増加に相関関係が認められた.慢性疼痛患者の血中BDNF濃度は,その時々の自然免疫状態など他の因子との関係も鑑みることで血液マーカーとなる可能性がある.
著者
木村 容子 杵渕 彰 黒川 貴代 清水 輝記 棚田 里江 稲木 一元 佐藤 弘
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.499-505, 2008 (Released:2008-11-13)
参考文献数
13
被引用文献数
1

介護者が抱える諸症状に抑肝散およびその加味方が有効であった8症例について報告した。症例1はのぼせ,ほてり,集中できないなどの多彩な症状に抑肝散加芍薬,症例2は不眠および背中の痛みに抑肝散加味方,症例3は不眠に抑肝散合芍薬甘草湯,症例4はイライラや動悸に抑肝散,症例5は不安,不眠に抑肝散,症例6は手掌の湿疹に抑肝散加味方,症例7は目の奥の痛みと頭痛に抑肝散加陳皮半夏合芍薬甘草湯,そして,症例8は頸・肩こり,下痢,動悸,不眠,倦怠感などの症状が抑肝散加陳皮半夏(合芍薬甘草湯)を処方して症状が軽快した。愁訴は多岐に渡るが,その背景には,介護による慢性的かつ持続的なストレスが共通し,情緒系,筋,眼などと関係が深い肝の機能が障害されていると考えられた。また,症例5,6,7,8では,介護される者と介護者の双方に抑肝散を同時に服用させたところ,両方に効果がみられた。原典では「子母同服」とある。介護には,精神的・身体的健康状態が互いに影響を及ぼし合うような濃厚な人間関係があり,母子関係に通じるのではないかと思われた。本来の親子関係とは逆転するが,日常生活の面倒を看てもらう観点から介護される側を「子」,面倒を看る側を「母」ととらえ,「子母同服」の考え方が応用できると考えられた。
著者
佐藤理史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.108, pp.33-40, 2004-11-04
被引用文献数
1

境界認定は、語(単位)を認定するのではなく、境界とその種別を認定する。本稿では、境界認定という考え方が生まれてきた背景と、境界認定の背後にある思想について述べる。This paper describes background and philosophy of boundary identification, which identifies boundaries and their types between linguistic units in a given sentence. The proposal of boundary identification aims to restucture Japanese sentence analysis method.
著者
佐藤 晃
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.1-9, 1998-07-10

安東(秋田)実季は、中世・安藤(東)氏から近世大名・秋田氏への転換期に、蟄居の身となった人物である。実季が、死の前年まで綴った系図は、蝦夷に系譜を持ち、奥州安倍氏の血を引く自家のアイデンティティを、「勅免シテ北国ノカタメトナ」ったものへと定位し直すものだった。そのため系図のなかの多くの記述が、朝廷に対する「勅免」劇の反復といった内容を持つものとなった。正史の歴史叙述の行間に自家の存在を滑り込ませ、かつ、その在り方を観念的に論理化してみせたのが、実季の系図作りの<創造>であったといえよう。
著者
佐藤 翔
出版者
同志社大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では利用者に新たな発見を促す排架法の構築を目的に、1)実験用書架閲覧時の視線軌跡と注視行動分析、2)実際の公共図書館における利用者の注視行動分析を行ってきた。結果から、1)実験用書架閲覧時、十分な時間があれば、人は最上段から順に全ての図書を確認しようとする。段によって視線の移動方向は左右反転する。2)タイトルがゴシック体の図書は有意に注視時間が長い。カバーが黒・暗紫色の図書は有意に注視時間が短い。書架上の中央に置かれている図書は注視時間が長い傾向がある。3)公共図書館において、書架上の垂直位置が注視時間と有意に関係し、1-4段目で全注視時間の80%を占める、ことがわかった。
著者
佐藤 翔 サトウ ショウ
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.51-56, 2013

電子ジャーナル等の電子リソースの普及に伴い,そのアクセスログに基づいた研究が増えている。本文へのアクセス状況を包括的に示すアクセスログの分析は利用者行動を知る際に役立つものであるが,その目的や意図はログからはわからないため,その他の手法と組み合わせることが有益である。また,引用データとは異なる傾向を示すものとしてビブリオメトリクスの中でも注目されているが,研究評価に用いるには水増しが容易である等の問題もある。日本においては,海外で行なわれているような電子ジャーナルの大規模ログ分析が未だ行なわれていないことが課題である。
著者
佐藤 修彰 桐島 陽 秋山 大輔
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.591-603, 2018-12-15 (Released:2018-12-15)
参考文献数
21
被引用文献数
1

2011年3月に発生した東京電力福島第一発電所事故に関して,燃料デブリの性状評価や含まれている核燃料物質や核分裂生成物,マイナーアクチノイドの炉内への移行挙動評価,環境中の汚染状況評価とデブリを含む廃棄物の処理・処分についての研究例を紹介した。さらに,当該研究の核燃料サイクルのおける位置づけと,研究展開に必要な核燃及びRI使用施設の在り方についても述べた。
著者
佐藤 弘康 晴山 知拓 大井 菜美子 谷口 雄人 石田 陽美 八幡 弘子 橋本 義宏 小森 均
出版者
Japanese Society of Drug Informatics
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.63-69, 2014 (Released:2014-09-06)
参考文献数
12
被引用文献数
2

Objective: Taking the wrong medicine or medication error is a serious concern to patient safety.  The aim of this study was to statistically survey the relation between the placement of drugs on medicine shelf and the occurrence of error in taking a medicine.Methods: The study comprised 2 groups.  The incident group contained 43 cases that were erroneously taken in the Obihiro Kosei General Hospital.  The control group contained 43 drug pairs matched by the similarity index of the drug names from among the drugs used in the hospital at random.  The similarity index of drug names was based on 10 quantitative indicators.  The distance of medicine shelf arrangement was represented by three variables: the horizontal distance, the vertical distance and the distance of shelf block.  Conditional logistic regression analyses of the occurrence of medication errors were performed by evaluating the three variables of the distance factor and their interaction for error in taking a similar-sounding named drugs.Results: Conditional logistic regression analysis revealed that the vertical distance (OR: 0.64, 95%CI: 0.42-0.99) and the distance of the shelf block (OR: 0.74, 95%CI: 0.57-0.97) were significant risk-reduction factors of medication errors.  Four variables were extracted as the most suitable logistic regression model in terms of the interaction between them.  As the interaction between 3 variables (the horizontal distance, the vertical distance and the distance of shelf block) was significant (OR: 0.93, 95%CI: 0.86-0.99), they may be considered as synergistic risk-reduction factors.  Moreover, the horizontal distance was found to be a risk-enhancement factor (OR: 1.52, 95%CI: 0.93-2.48).Discussion: In order to reduce the risk of medication errors due to similar-sounding drug names, placement of drug on the medicine shelf should take into consideration the three coordinates of the distance factor.