著者
野 徹雄 平松 孝晋 佐藤 壮 三浦 誠一 千葉 達朗 上山 沙恵子 壱岐 信二 小平 秀一
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
JAMSTEC Report of Research and Development (ISSN:18801153)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.13-29, 2016-03-01 (Released:2016-03-30)
参考文献数
41
被引用文献数
5

近年,海洋研究開発機構は多くの地震探査航海を日本海で実施し,その探査中マルチビームによる高品質な海底地形データを同時に取得している.海底地形はその海域におけるテクトニクスや構造発達史を解明する手かがりの1つであり,地震研究においても,例えば震源断層のパラメータの検討の観点から重要である.したがって,高品質な海底地形データを活用することができれば,断層の長さに関する検討の精度が上がり,震源断層の大きさの議論の進展にもつながる.その結果,日本海における地震活動・活構造と地殻構造の関係をより統合的に研究を推進することができる.本報告では,地震探査時に取得された海底地形データを加えた日本海全域及びその周辺の地形データを用いて,それらを統合したDEM(数値標高モデル:Digital Elevation Model)データを作り,さらにそのデータを用いて方向依存性のない立体感が得られる赤色立体地図を作製した結果について記す.
著者
佐藤 健太郎
出版者
関西大学東西学術研究所
雑誌
関西大学東西学術研究所紀要 (ISSN:02878151)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.47-65, 2012-04

Milk and its by-products are naturally nutritious food, and people in ancient Japan enjoyed tasting them as foods, drinks, or medicines. On the other hand, milk and its by-products were closely related to the philosophy of Buddhism and were often supplied at Buddhist rituals. There have been many studies on ancient diets including milk and its by-products and we have obtained useful knowledge on nutritious foods in ancient Japan. Among the milk products, "So" (蘇), a type of dairy product made from layers of milk skin, has been re-produced, and Japanese people enjoy it as it was enjoyed in the ancient diet. Based on previous studies, in this article the author describes the use of milk and its by-products as well as the contribution system of offerings in ancient Japan. The newly found research materials including Kouninshiki's lost writings' formula (弘仁式逸文) that describe "So" (蘇), wooden plates (木簡), and clay pots (墨書土器) are used for discussion. Since materials useful for studying the contribution system of offerings (蘇) in the Heian Era are unavailable except for 延喜民部式貢蘇条 (a Japanese book of laws and regulations), the contribution system of offerings (蘇) earlier than Engishiki (延喜式) is not known. Thanks to Kouninshiki's lost writings' formula, the contribution system of offerings under regulation called Kouninsikisei (弘仁式制) has been clarified. By comparing the contribution system of offerings called Engishiki with that of Kouninshiki, every aspect of change, i.e., difference in systems and any historical factors for transformation, have been reviewed. It is not clear when the contribution system of offerings was changed from Kouninshiki to Engishiki, but it is certain that the contribution system of offerings (蘇) apparently existed until 887 (the 3rd year of Ninna) according to Kouninshiki.
著者
佐藤 純 溝口 博之 深谷 佳乃子
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.3-7, 2011

うつ病性障害に代表される気分障害の出現頻度は増加しており,現代社会での大きな問題となっている.以前より天候変化が気分障害の発症と悪化に影響すると考えられているが,実証研究は行われていない.そこで,筆者らは気分障害が前線通過や悪天候の際に悪化する現象の科学的実証とそのメカニズムを明らかにする目的で,抑うつモデルラットを用いて人工環境暴露実験を行ってきた.これまでに,天気変化で見られる程度の気圧低下(大気圧から 20 hPa 減圧)により,抑うつモデルラットが示すうつ様行動が増強することを明らかにし,気分障害(うつ病)が気圧低下時に悪化する現象を動物モデルで再現することに成功した.<br>
著者
佐藤 司郎 鈴木 牧 谷脇 徹 田村 淳
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.100, no.5, pp.141-148, 2018-10-01 (Released:2018-12-01)
参考文献数
40
被引用文献数
2

丹沢山地において,シカの増加に伴う林床植生の減少がオサムシ科甲虫に与える間接的な影響を検討するため,シカの影響程度(林床植物量)の異なる5地点においてオサムシ科甲虫相を調査し比較した。併せて,植生保護のため8年前に設置された防鹿柵によるオサムシ科甲虫への保全効果を検証するため,防鹿柵内外の6カ所でも調査を行った。GLMとモデル選択の結果,調査区の林床植物量が,最優占種であるヨリトモナガゴミムシの捕獲数には負の,体の大きいクロナガオサムシの捕獲数に正の影響を与えたことが示唆された。この結果は,シカの影響による植被の減少に伴い,小型のオサムシ科甲虫種は増加し大型種は減少するという一般的な傾向と一致した。優占種5種を対象とした冗長性分析(RDA)でも林床植物量はRDA1軸に強い相関を示した。以上の結果から,丹沢山地のオサムシ科甲虫群集にシカが強い間接的影響を与えることが示された。また,シカが増加する前に設置された加入道山の防鹿柵内では林床植生が多く残存し,大型のクロナガオサムシが多数出現しており,防鹿柵の早期設置は大型のオサムシ科甲虫種の保全に効果があったことが示唆された。
著者
糸賀 紀晶 井星 正氣 沖田 理香 佐藤 旭
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.174-180, 2013 (Released:2014-06-27)
参考文献数
7

To land a helicopter on a flight deck of a ship is said to be one of difficult operations even for experienced pilots because the helicopter rotor is affected by complex flows, e.g. ship airwakes and interference flows formed between the rotor and superstructures, in addition to ship motions. Therefore, it is important to grasp quantitatively influence of these complex flows on the helicopter rotor for securing the safe deck-landing. In this paper, CFD analysis of helicopter rotor operating over a flight deck is done by solving unsteady 3D compressible Euler equations with an overlapped grid system. The superstructure on a flight deck is modeled by a simple sharp edged bluff body. Parameters for numerical analysis are landing spot and relative wind speed to the rotor and ship. Effects of these parameters on the rotor torque, flowfields around the rotor and inflow distributions on the rotor disc are clarified.
著者
澤田 昭三 中村 典 田中 公夫 李 俊益 美甘 和哉 佐藤 幸男
出版者
広島大学
雑誌
核融合特別研究
巻号頁・発行日
1988

ヒトのリンパ球は末梢血中では分裂しないので放射線の線量率依存性を調べるのには最適である。そこで細胞死を指標としてトリチウム水とガンマ線を同じ線量率、2Gy/hrと2Gy/day、つまり線量率を24分の11に下げた時の細胞生存率を調べたが、トリチウム水でもガンマ線と同程度の細胞生存率の上昇がみられた(中村)。同じくヒトのリンパ球染色体に及ぼすトリチウム水の影響を調べ、ガンマ線に対するRBEを求めた。今回は特に観察誤差の少ない=動原体染色体のみを指標として10〜50cGyの低線量域のRBEを正確に求め2.6(含水率70%)を得た(田中)。ヒト精子染色体に及ぼすトリチウム水の影響について前年度に引きつづいて調べた。線量も25〜17.3cGyの低線量域に主力をおき、2年間で合計3132精子の染色体分析を行った。染色体異常頻度は線量の増加とともに193cGyまでは直線的に増加したが、それ以上の線量では飽和に近ずき、直線にのらなくなった。これらの結果と今までに得ているX線のデータと比較してRBEを求めた。出現する種々の染色体異常を指標としたRBEは吸収線量を最低に見積った時は1.9〜3.0、最大の場合は1.04〜1.65となった(美甘)。マウス胎仔脳の発育に対するトリウチム水の影響を調べるための予備実験がガンマ線を使ってつづけられているが、脳細胞の致死を指標とする場合は、トリチウム水のような低線量率被爆の影響を正確に把握することは困難なことがわかった(佐藤)。マウスの妊性低下に及ぼすトリチウムの影響を調べたが、線量・効果が明確でないこと及びデータにばらつきがあって今後の研究が必要と思われた(李)。有機結合型トリチウムのマウス初期胚に与える影響を調べ、吸収線量を基礎としたLD_<50>は核酸結合型で約1/20、アミノ酸結合型では1/5ほどトリチウム水に比べて低かった(山田)。体内トリチウム水の排泄促進剤として二種類の利尿剤の併用効果をねらったが十分な結果はえられなかった(澤田)。
著者
林 松彦 高松 一郎 吉田 理 菅野 義彦 佐藤 裕史 阿部 貴之 橋口 明典 細谷 龍男 秋葉 隆 中元 秀友 梅澤 明弘 重松 隆 深川 雅史 川村 哲也 田中 勝 杉野 吉則
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.551-557, 2012-07-28 (Released:2012-08-07)
参考文献数
24
被引用文献数
2 5

カルシフィラキシスは,末期腎不全により透析療法を受けている患者を中心に発症する,非常に疼痛の強い難治性皮膚潰瘍を主症状とする,時に致死的な疾患である.病理学的所見としては,小動脈の中膜石灰化,内膜の浮腫状増殖を特徴的所見としている.これまで本邦における発症状況などは不明であったが,平成21年度厚生労働省難治性疾患克服事業として,われわれ研究班により初めて全国調査がなされた.その結果,発症率は欧米に比べて極めて低いと推定され,その要因の一つとして,疾患に対する認知度が極めて低いことが考えられた.そこで,疾患概念を明らかとして,その認知度を高めるとともに,診断を容易にするために,全国調査を基として診断基準の作成を行った.この診断基準は,今後の症例の集積に基づく見直しが必要と考えられるが,カルシフィラキシスに対する認知度を高める上では重要な試みと考えている.
著者
遠藤 哲夫 佐藤 方信 吉田 博 矢川 寛一
出版者
一般社団法人 日本内分泌学会
雑誌
日本内分泌学会雑誌 (ISSN:00290661)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.1007-1015, 1978-09-20 (Released:2012-09-24)
参考文献数
22

A total of 747 cases of malignant neoplasms of the thyroid reported in the “Annual of the Pathological Autopsy Cases in Japan” during the past 5 years (1969-1973) were reviewed and statistically analysed.Histological diagnosis in this series were papillary carcinoma in 323 cases (51.8%), follicular carcinoma in 143 cases (22.9%) and anaplastic carcinoma in 102 cases (16.3%). The average age of patients at autopsy was 58 years for papillary carcinoma cases, 62.4 years for follicular carcinoma cases and 61.7 years for anaplastic carcinoma cases. The incidence of metastasis to lymph nodes and to organs was 47.3% and 51.5%, respectively in cases of follicular carcinoma and 73.3% and 98.0%, respectively in cases of anaplastic carcinoma. Autopsy revealed an otherwise unnoticed thyroid cancer in 457 cases, which accounted for 61.2% of the entire autopsy cases of malignancy of this organ. A so-called multiple cancer, i.e. the concurrence of carcinomas in the thyroid gland and other organs, was seen in 239 cases (32.3%).
著者
桐山 久 高畑 陽 大石 雅也 有山 元茂 今村 聡 佐藤 健
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.555-566, 2009 (Released:2009-12-18)
参考文献数
34
被引用文献数
1

バイオスパージング工法は,ベンゼンで汚染された深部の土壌を浄化する場合に有効な浄化技術である.本工法は,帯水層中に空気を供給することにより,ベンゼンの気化による物理的除去と微生物分解の促進を期待できる.しかし,これまで栄養塩の効率的な供給方法が存在しなかったため,継続的な微生物分解効果を得ることが困難であった.そこで,筆者らは栄養塩を地盤に効率的に供給できる揚水循環併用バイオスパージング工法を開発した.実汚染サイトにおいて実証試験を行い,当工法によるベンゼンの浄化効果と空気や栄養塩の供給能力について検討し,従来工法と比較した優位性を確認した.また,本試験の結果に基づき,当工法の井戸配置や浄化期間予測についての設計手法を確立した.
著者
大橋 弘史 佐藤 博之 國富 一彦 小川 益郎
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.17-26, 2014 (Released:2014-02-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1 5

A new safety concept in a high-temperature gas-cooled reactor (HTGR) was proposed to provide the most advanced nuclear reactor that exerts no harmful consequences on the people and the environment even if multiple failures in all safety systems occur. The proposed safety concept is that the consequence of the accidents is mitigated by the confinement of fission products employing not multiple physical barriers as in light water reactors, but only the cladding of fuel (i.e., the coating layers of the coated fuel particle). The progression of the events that lead to the loss or degradation of the confinement function of the coating layers (i.e., core heat up, oxidation of the coating layers, and explosion of carbon monoxide) is suppressed by only physical phenomena (i.e., the Doppler effect, thermal radiation and natural convection, formation of a protective oxide layer for coating layers of fuel, oxidation of carbon monoxide) that emerge deterministically as a cause of the events. The feasibility studies for severe events and related information revealed that the HTGR design based on this safety concept is technically feasible. This concept indicates the direction in which nuclear reactor research should be headed in terms of safety after the accident at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant.
著者
佐藤 知己
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大学文学研究科紀要 (ISSN:13460277)
巻号頁・発行日
vol.121, pp.157-170, 2007-02-20
著者
野中 亮助 佐藤 誠 小池 康晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.1008-1019, 2004-04-01
参考文献数
17
被引用文献数
3

本論文では,Speed-Accuracy Trade-offの問題に関して,水平面内における2点間到達運動において,運動距離,運動精度を変化させ,そのときの運動軌道及び,筋の活性度を示す終電信号を計測した.また,比較実験として運動精度を要求しない課題を行った.その結果,Fitts's lawに準じた2点間到達運動において,運動の筋端点近傍で運動トルク生成のためには不必要な筋の活性が行われていることを示した.また,その筋の活性度は,要求された運動精度が高くなり,運動速度が遅くなっても,小さくはならないこと,更に,精度を要求されない同じ運動速度の運動に対して,精度を要求された精度の高い運動においては,その筋の活性度が大きくなることを示した.この結果は人がFitts's lawに準じた2点間到達運動を行っている際,腕の粘性や剛性といったインピーダンスを積極的に調節することによって,試行ごとに生ずる誤差を小さくするというメカニズムが存在していることを示す.
著者
道祖土 勝彦 雨宮 恵司 佐藤 秀人 岡部 顕史 小川 直人 釜谷 保志 木暮 一啓 西村 昌彦 奥川 光治 楠井 隆史
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.629-636, 2012-07-05 (Released:2012-07-27)
参考文献数
26
被引用文献数
2 8

日本には毎年5から15万トンの海ゴミが漂着している.この漂着ゴミの70% がポリスチレン(PS)である.漂流・漂着PSは海洋環境でスチレンオリゴマー(SO)を発生すると予測される.本研究では,PS由来の化学物質/SOによる沿岸汚染を明らかにし,発生源に関する知見を得ることを目的に現地調査を行った.このためアジア大陸から発生した漂流プラスチックが漂着する代表的な島々である沖縄本島,八重山諸島(西表島・石垣島)において目視調査をすると共に調査地において海水,砂を採取した.採取した海水,砂の選択イオンモニタリング–ガスクロマトグラフィー/質量分析(SIM-GC/MS)からSO,[スチレンモノマー,フェニルエチレン(SM),スチレンダイマー,2,4-ジフェニル-1-ブテン(SD),スチレントリマー,2,4,6-トリフェニル-1-ヘキセン(ST)の混合物]が検出された.検出されたSOの最大成分はSTであり,海砂中で最大4400 ng/gのSTが検出された.検出されたSO組成は市販発泡ポリスチレン製品中のSO組成,精製ポリスチレン単独熱分解反応生成物のSO組成とほぼ同様の傾向であった.
著者
渡辺 正 石垣 将宏 佐藤 聡 中村 秀夫
出版者
Atomic Energy Society of Japan
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
pp.1109220009, (Released:2011-09-27)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

The analysis of the long-term station blackout accident of BWR has been performed using the TRAC-BF1 code. The actuation of RCIC was assumed, and the results were compared with the data observed at the Fukushima Daiichi power plant unit 2 reactor. BWR-5 of 1,100 MW was analyzed, while the unit 2 reactor was BWR-4 of 780 MW. The reactor pressure and the core liquid level were, however, in good agreement with the observed data. It was confirmed that the quasi-steady state continued for a long time with the RCIC actuation. The timing of recovery action, which was composed of depressurization and coolant injection, necessary for the maximum clad temperature being less than 1,500 K was studied and compared with that of the unit 2 reactor.