著者
可児 雅弥 本橋 由香 奥 知子 山内 忍 佐藤 敏夫 阿岸 鉄三
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.Annual57, no.Abstract, pp.S90_1, 2019 (Released:2019-12-27)

【目的】嚥下反射の惹起性が低下した患者に対して冷圧刺激法などの冷感刺激を利用したリハビリテーションが実施されており、近年では冷却炭酸水の有用性が注目されている。一方で、食塊の送り込み能力が低下した患者にはゼリー食などの嚥下調整食を用いて誤嚥を予防している。今回の報告では、炭酸水やゼリー食嚥下時の嚥下音を測定・解析し、こられの予防策を効果的に用いる手法について検討した。【方法】嚥下試料として炭酸強度の異なる3種類の炭酸水およびゲル化剤添加量の異なる5種類の水ゼリーを作製した。炭酸水は市販の炭酸水メーカを使用して作製し、ボトル内の圧力値に基づいて炭酸強度を管理した。また、各試料の温度は10℃、20℃、30℃となるように調整した。各試料嚥下時の嚥下音は被験者の舌骨直上および輪状軟骨直下気管外側上に装着した心音センサから採取し、合成嚥下音信号の包絡線から嚥下機能の指標となるP値を算出した。【結果及び考察】P値を算出した結果、炭酸水は炭酸強度が強いほど、また温度が低いほど嚥下反射を惹起させ得る可能性が示唆された。また、硬さが約4100Paのゼリー食が誤嚥を効果的に防止できる可能性が示唆された。
著者
佐藤 信
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.63-95, 2015-03

本稿は、近代日本の典型的な権力者である山県有朋とその館を事例として、空間と政治の連関を研究したものである。椿山荘(東京)や無隣庵(京都)、古稀庵(小田原)といった山県の邸宅はその庭によってよく知られているが、それらの館がどのように使われていたか明らかではないところも多い。本稿は、山県有朋関係文書や田中光顕関係文書などの政治史史料を用いることで、この問題に取り組んだ。本稿はまず、館の変遷と変遷の理由を明らかにした。1880年代に大磯が「政界の奥座敷」として活性化すると、そこから隠れるためにさらに東京から遠隔な館が必要とされるようになり、無隣庵はこうした静養の地として設定された。この無隣庵は同時に幕末維新期の記憶装置でもあった。やがて山県は無隣庵に籠って上京を拒否するという政治技術を用いるようになったが、それでも無隣庵会議に代表されるような政治活動は稀な事例に過ぎなかった。一方、1907年、無隣庵に代わる静養の地として建設された古稀庵は、山県の政治的影響力の拡大によって予想以上に「政治化」され、椿山荘に代わって主たる館として利用されるようになった。これに伴って椿山荘や小淘庵の必要性は急激に低下した。このように、山県は政治的意図に基づいて館を移動させたわけではなかったが、館の地理的移動によって生じた政治的効果を最大限利用したと言える。また、本稿では無隣庵の洋館を出発点として、山県の空間の使い方についても考察した。そこでは、山県が自身の館の操作可能を確保することで、訪問客との主客関係を固定化していた可能性を指摘した。山県が空間のこのような作用を重視したことは、山県の政治的性格をも浮き彫りにするものでもあり、空間の使い方に注目した政治的人格の比較研究の可能性を示すものである。
著者
竹綱 誠一郎 齋藤 寿実子 吉田 美登利 佐藤 朗子 瀧沢 絵里 小方 涼子
出版者
学習院大学人文科学研究所
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.10, pp.85-92, 2011

本研究の目的は、作文学力と算数文章題学力との関係を吟味することである。小学5 年生児童75 名を対象に、第2 学期に作文学力を測定するテストを実施し、第3 学期に文章題学力を測定するテストを課した。作文学力は5 つのカテゴリー(反論への考慮、段落構成、つながり、わかりやすさおよび論理性)ごとの下位得点の合計得点によって算出された。文章題学力は5 つの問題タイプ(通常問題、過剰情報問題、無意味問題、情報不足問題および不合理問題:通常問題以外は、不完全な文章題)ごとの得点の合計得点によって算出された。 分析の結果、2 学期に測定した作文学力と3 学期に測定した文章題学力との間に有意な相関がみられたことから、作文学力を伸ばすことが文章題学力を高める可能性のあることが明らかになった。また、論理性得点や反論への考慮得点の高い児童が、現実的で論理的な思考力を必要とする不合理問題において高得点を示すことも明らかにされるなど、教育実践への有用な示唆が得られた。研究論文
著者
佐藤 陽子 村田 美由貴 千葉 剛 梅垣 敬三
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.157-165, 2015-08-25 (Released:2015-09-03)
参考文献数
29
被引用文献数
2 6

ワルファリンはビタミンKと相互作用を起こすことから,その服用者にはビタミンK摂取制限が指導されるが,制限を過度に意識すると摂取不足やQOLの低下を招く.そこで,ワルファリン服用者が許容可能なビタミンK摂取量の幅を検討するため,ワルファリンとビタミンKの相互作用による有害事象論文の系統的レビューを行った.論文は2014年10月に2つのデータベースにて検索し,採択した16報より摂取の上限量を,6報より下限量を検討した.その結果,ワルファリン服用者におけるビタミンK摂取量は,25~325 μg/日の範囲で,日ごとの変動幅は292 μg未満に収め,150 μg/日の摂取を目指すことが適切と考えられた.この結果から,日本人の主なビタミンK供給源のうち,禁止すべき通常の食品は納豆であり,緑黄色野菜は摂取量の調節をしながら摂取できることが示された.
著者
伊藤 嘉浩 佐藤 洸志
出版者
日本消費者行動研究学会
雑誌
消費者行動研究 (ISSN:13469851)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.2_95-2_120, 2014

<p>本稿では、日本の映画料金に関して、映画館関係者へのインタビューおよび、顧客側へのアンケート調査による、価格反応性分析、PSM法による価格受容意識分析、料金に関するイメージ分析の3つの分析を行い、割引制度などの価格戦略の考えや効果、および顧客の考える価格意識などを明らかにした。これらの結果から、映画料金を透明化して、600円程度まで引き下げることを提言し、飲食物の売上げへの貢献により、利益が増加する可能性を提示した。学術的には、ものの商品にはあまり見られない、アート消費である映画特有の価格反応性や価格受容意識が見られ、特に、映画経験が豊富で、非常に高関与なユーザー層が存在することが明らかになった。</p>
著者
柳澤 正久 佐藤 恵一 原 常典 中沢 徳郎 古矢 勝彦 内田 昌文 矢守 章 河島 信樹
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告 (ISSN:02852853)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.1-27, 1987-12

The two stage light gas guns have been used widely to study the collisions between planetesimals, from which the planets were believed to be made, meteorite impacts on the surface of the moon and planets, and high pressure states in the planetary interiors. The electromagnetic guns, especially railguns, are expected to make these researches with much higher velocity (more than 10km/sec) possible. The railgun accelerator system was set up in the Institute of Space and Astronautical Science (ISAS) in 1986,having more than 10km/sec with 1g projectile as a goal. The energy source is a 300kJ capacitor bank. The maximum velocity so far is 2.4km/sec at 108kJ with 2.4g projectile and 1.8m barrel.
著者
長岡 和則 佐藤 昭二 山中 武 大西 由子
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 : hoken buturi (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.66-71, 2009-03-01
参考文献数
20
被引用文献数
2

In order to estimate the environmental radiation dose rate level, measurements of the terrestrial gamma ray dose rates and cosmic ray ionizing components were conducted in public places such as park, street and train in Tokyo area. Measurements for 10 s with a NaI(Tl) scintillation spectrometer were repeatedly carried out with walking. Terrestrial gamma ray dose rate ranges from 10 nSv/h in a train to 80 nSv/h on the stone road. Although cosmic ray ionizing component was constantly 30 nSv/h in the outdoor, reductions by shielding effect were observed at underground and in the concrete building. Influence of radiopharmaceutical was measured in the stations where so many people exist. This shows that the same effect may occur in the environmental radiation monitoring.
著者
佐藤慶浩
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.5-12, 2015-01-15

本稿は,企業において顧客情報を管理するデータベースを設計・構築して運用する際に,各国によって異なっていたり,国内であっても法改正を控え今とは異なることが想定される法令等や自主規制ルールを,データプライバシー対策として捉え,それらに対応するために配慮すべき設計と運用のプラクティスを紹介するものである.具体的な対策方法を示すために,連絡先情報をプロモーション連絡に利用する場面を例にしたが,そこで検討するアプローチは,他の利用場面でも参考になるプラクティスである.
著者
太田 英利 増永 元 佐藤 寛之 安川 雄一郎
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学会報 (ISSN:13455826)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.2, pp.78-87, 2003-09-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
32

A book entitled “A Photographic Guide; Amphibians and Reptiles in Japan” (coauthored by Ryu Uchiyama, Norio Maeda, Kenji Numata, and Shintaro Seki; ISBN4-582-54232-8; soft bind.; modified A 5 size; 336 pp.; 2800 JY exclusive of tax) was published in 2002 from Heibonsha, Tokyo. While showing with mostly attractive photographs all amphibian and reptile taxa known from Japan to the present (i. e., native Japanese taxa plus exotic taxa now having feral populations in Japan), the book also attempts in text to summarize up-to-date information regarding the diversity and natural history of Japanese herpetofauna. The first print, dated in colophon as 20 September 2002, however, has numerous errors of various categories, such as erroneous identifications of animals photographed, misleading statements regarding morphological and ecological features of taxa, and adoptions of obviously inappropriate classifications and scientific names. Many of these errors were corrected in the second version, which, despite its rather substantial changes from the original edition, was published simply as “the second print of the original edition” on 25 November of the same year (according to the date printed in its colophon). Obviously publication of this “second print” much preceded sellout of the first print, and surprisingly the first print was still in sell after publication of the second print despite its numerous errors. Such an attitude of the publisher should be severely criticized from an ethical point of view.
著者
佐々木 温子 西澤 美幸 佐野 あゆみ 佐藤 等 阪本 要一 池田 義雄
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.530-536, 2017 (Released:2017-12-22)
参考文献数
14
被引用文献数
1

目的:東京衛生病院の減量ステップアップ講座参加者に対して呼気アセトン濃度を測定し,減量の補助的指標としての有用性について検討した.方法:対象は2011年1月から2014年7月の期間中,東京衛生病院の減量講座(週1回,計6回)を受講した45名である.食事内容,体重変化,歩数,活動量を記録させ,毎回体重,体組成およびセンサガスクロSGEA-P1による呼気アセトン濃度を測定し,初日と最終日に血液生化学検査を施行した.結果:減量講座終了時には,行動変容の改善に伴い,肥満関連検査項目である身体計測値,血圧,糖・脂質代謝,肝機能の検査値の有意な改善がみられ,血中総ケトン体,呼気アセトン濃度は有意に増加した(血中総ケトン体:開始時73.6±59.2 μmol/L ,終了時240.5±193.8 μmol/L,p<0.001,呼気アセトン濃度:開始時529.2±150.8 ppb,終了時1,156.6±590.9 ppb,p<0.001).体重と体脂肪量は講座の回数を重ねるほど有意に減少し,呼気アセトン濃度は有意に増加し,特に5週目以降で著明な増加を示した.結論:減量経過において呼気アセトン濃度測定は脂肪燃焼を示唆する補助的指標として有用であると考えられた.
著者
薄井 春香 佐藤 哲也 北口 紗織
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
pp.TJSKE-D-23-00015, (Released:2023-10-18)
参考文献数
43

This research focuses on picture books, a medium for childhood reading, during which gender stereotypes are formed. The colors of the clothing of characters in picture books and the words they utter reveal characteristics of gender expression. The results showed that gender and age were among the most prominent characteristics in depicting characters in picture books, with red used more frequently for females and less bright shades for males. The proportion of colorful colors was higher among children, and the ratio of achromatic colors increased with age. These results are consistent with previous studies on color images and the evolution of color preferences with age. In the text, it was found that the differences between men and women in the way they perceive things are reflected in the text. These results suggest that picture books may influence the formation of children’s gender images and color preferences.
著者
佐藤 德
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.345-353, 2014 (Released:2014-10-25)
参考文献数
30
被引用文献数
2 2

Previous studies demonstrated that participants in left-to-right writing cultures showed a strong preference to associate the past with left space and the future with right space. The present studies investigated whether these spatial associations involved body-part-centered or extracorporal space. In Experiment 1, participants categorized words as referring to the past or the future by pressing button on the left with the left hand or a button on the right with the right hand. In Experiments 2 and 3, participants crossed their hands and were instructed to categorize words by pressing the left or right buttons (Experiment 2) or by moving their left or right hand (Experiment 3). Irrespective of the relative spatial positions of the response buttons, past words were more quickly categorized with the left hand and future words with the right hand. In addition, reaction times were slower in Experiment 2 than in Experiment 1, whereas there was no significant difference between Experiments 1 and 3. These results suggest that temporal concepts such as past and future are more strongly associated with embodied space than visual space.
著者
佐藤 悠子 藤森 研司 石川 光一 佐藤 一樹 石岡 千加史 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.156-165, 2016 (Released:2016-06-13)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

【目的】保険診療情報が格納されたナショナルデータベース(National Data Base,以下NDB)を用いた,終末期がん医療の質の評価の実現可能性と限界を検討した.【方法】NDBのサンプリングデータセット(Sampling Data Set,以下SDS)を用いて,2012年10月の死亡がん患者を対象に死亡14日以内の心肺蘇生術と化学療法の実施率を算出した.【結果】対象者1,233例を解析した.心肺蘇生術と化学療法の実施率は,入院死亡症例(n=1079)で8.2%,3.5%であった.SDSの仕様では,解析対象の化学療法薬剤の27-70%が匿名化されていた.【考察】SDSでは匿名化処理や入院と外来レセプトが紐付けされない等の問題から,過小評価の可能性があり結果の解釈に注意を要する.しかしながら,NDBの特別抽出であればこれらの問題の一部は解決でき,同様の手法で質の評価は可能と考えられた.
著者
佐藤 拓哉 渡辺 勝敏
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.51-59, 2004-05-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
33
被引用文献数
6

Population size and spawning site environment of the endangered southernmost population of Kirikuchi charr Salvelinus leucomaenis japonicus were investigated in a tributary on the upper reaches of the Totsu River system, Nara Prefecture, central Japan, in 2001. The total number of fish≥100 mm in fork length (FL) in May was estimated to be 308±50 (SE). Water depth and gravel size at spawning sites were 15±13 cm (meant±SD) and 31±8 cm, respectively. Spawn-ing sites were found mainly at upstream sites, freely accessible to the fish. The number of fish≥130 mm in FL had dropped in the lower section of the tributary in July, most probably as a result of leisure fishing. Spawning redds were clearly fewer in the lower sections than further upstream. These results indicated that fishing pressure on the population had been heavy, resulting in a decreased level of reproduction population.