著者
佐藤 深雪
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.91-100, 2005

第131回芥川賞受賞作であるモブ・ノリオの『介護入門』について、三島由紀夫の『葉隠入門』、ジム・ジャームッシュの『ゴースト・ドッグ The Way of Samurai』、そして棄老伝説と深沢七郎の『楢山節考』などを参照しながら、エスカレートする死の暴力との戦いという視点から論じた。
著者
佐藤 正明
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.898, pp.8-11, 1997-07-07

RVのヒットで快走を続けてきた本田技研工業の国内販売に,黄信号が点った。好調の裏側で進まなかった販売改革。今後の経営課題はここにある。昨年『ホンダ神話教祖のなき後で』で大宅賞受賞の佐藤正明氏がリポートする。1996年度の決算を発表した5月20日,社長・川本信彦の顔から笑みが絶えることがなかった。
著者
佐藤 洋一郎 篠原 和大 浅井 辰夫 中村 郁郎 岡村 道雄 工楽 善通
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

日本各地の遺跡からは多量のイネ種子が出土しているが,その大半は黒化し炭化米と呼ばれている.故佐藤敏也氏が1960年代から1985年ころに収集した炭化米(これを佐藤コレクションという)を中心としてそれらの情報、とくに遺伝情報を1次資料化し,将来のデータベース化に備えようというものである.なお佐藤コレクションに含まれるサンプル総数は100万粒を超えるほど膨大なものであることがわかった.今年度はその最終年度であり、主にDNA分析に力を入れてまとめを行った.DNA分析を行った遺跡は全部で17遺跡(北海道から沖縄までの32都道府県にまたがる)で、そこから出土した計207粒の炭化米を研究に用いた.これら炭化米の多くは熱を受けて炭化したのではないことが外見上から確かめられた.DNA抽出はSSD法ないしはアルカリ法で行い,増幅はPCR法によった.その結果,古代の日本列島のイネのほとんどすべてがジャポニカであったこと,また約40%ほどの確率で熱帯ジャポニカの系統が含まれていることなどが明らかになった.熱帯ジャポニカは、場所、時期を問わず出土しており,当時の日本列島にひろく分布していたものと思われる.あわせて福岡市雀居遺跡から出土した炭化米はその220粒程度を対象に分析を行った.このうち12粒から,ジャポニカであることを示すDNA断片が増幅された.ただしそれらが熱帯ジャポニカであるか温帯ジャポニカであるかの判定はできなかった.
著者
佐藤 芳行
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
no.90, pp.115-150, 2011-03

ロシアでは1992年の「改革」の実施とともに所得分配をめぐる紛争からハイパー・インフレーションが生じ,それと関連しながら様々な調整が進行した。マネタリズムの政策志向は,通貨不足をもたらしつつ,賃金と利潤,エネルギー資源部門とその他の部門との間の所得分配に大きな影響を与えた。1998年の通貨危機後の政策転換は,資源価格の高騰とともに大きな変化をもたらしたが,「オランダ病」の症候が依然としてロシアに特徴的でありつづけている。
著者
北村 勝哉 吉田 仁 池上 覚俊 佐藤 悦基 田中 滋城 井廻 道夫
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.565-569, 2009-05-31 (Released:2009-07-07)
参考文献数
10

本邦の急性膵炎診療ガイドラインでは,急性胆石性膵炎における緊急内視鏡治療は,胆道通過障害や胆管炎合併例に推奨されているが,治療時期や方法は施設間で相違がある。当施設において,入院72時間以内に内視鏡的逆行性膵胆管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)を施行した急性胆石性膵炎25例を対象に治療成績を検討した。年齢は,30歳から89歳,男性が14例,女性が11例であり,厚生労働省急性膵炎旧重症度判定基準における軽症・中等症が11例,重症が14例であった。胆道通過障害や胆管炎合併を有する急性胆石性膵炎に対し,早期にERCPを用いた内視鏡治療を施行することで,膵炎の病態は改善した。しかし,内視鏡的胆管ドレナージ術(endoscopic biliary drainage:EBD)単独と内視鏡的乳頭括約筋切開術(endoscopic sphincterotomy:EST)併用EBD,および早期結石除去術と待機的結石除去術において,入院期間,結石除去率,偶発症発生率に有意差を認めなかった。偶発症として,EST後出血,およびEBD後胆嚢炎に注意する必要がある。
著者
佐藤 信
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.119-124, 1958 (Released:2008-11-21)
参考文献数
23
被引用文献数
1

各種抗生物質を利用して,清酒もろみの細菌汚染による腐造を防止乃至救さいする方法を検討するために,(実験A)正常な清酒もろみの醗酵条件で抗生物質添加が清酒酵母の酒精醗酵に及ぼす影響及び製品清酒に及ぼす影響を考察し,(実験B)清酒もろみの腐造を実験室的に再現する条件を検討し,(実験C)その条件で抗生物質添加の影響を観察し,(実験D)清酒もろみ腐造の原因となると考えられる乳酸菌・醋酸菌群の代表的菌株について11種の抗生物質とZ-フランの発育阻止濃度を検討した. その結果,乳酸菌群に対してはPenicillin, Aureomycin, Terramycin, Achromycin, Chloromycetinが20γ/cc以下で発育を阻止し醋酸菌群に対してはStreptomycin, Terramycin, Achromycin等が20γ/cc以下で発育を阻止した.これ等の物質は, 20γ/cc以下の濃度で清酒もろみに添加するとぎ清酒酵母の酒清醗酵及び製成酒に対して影響することなく,細菌による汚染を防止し且つ既に汚染したもろみを救さいすることが出来ると考えらた.
著者
大濱 俊彦 佐藤 愛 田中 聡 石塚 恒夫 勝盛 弘三
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.34-39, 2012 (Released:2012-02-09)
参考文献数
8

20年前に1型糖尿病と診断されインスリン加療中の54歳の男性が,全身倦怠感,脱力感にて当院救急室を受診した.受診3日前より食後の心窩部痛を自覚し,摂食すると嘔気嘔吐がみられたため,食事摂取もできず,受診2日前からインスリン注射を中断していた.受診当日,コーヒー残渣様嘔吐を認め,その後全身脱力感,意識レベル低下を認めたため救急車要請となった.救急車内でモニター上10秒程度のVT波形となり,血圧も低下した.到着時意識障害を認め,心電図波形で高カリウム血症性変化を認めた.血液検査にて血糖値1435 mg/dl, K 8.6 mEq/l,アシドーシスを認め糖尿病ケトアシドーシス(Diabetic ketoacidosis,以下DKAと略す)と高カリウム血症にて緊急入院となった.その後の集学的治療にて病態をコントロールすることができた.翌日の上部消化管内視鏡にて上部消化管に出血性潰瘍を認めた.DKAから高カリウム血症を認めることはあるが,K 8.6 mEq/lという著明な高カリウム血症はあまり報告例をみない.本症例は消化管出血や腎前性腎不全も併発していたために致死性不整脈が生じるほどの血清カリウムの上昇につながったと思われる.糖尿病罹病期間の長いDKAで著明な高カリウム血症を認めた場合,背景に消化管出血を合併している可能性があり,本症例のように早急な治療が求められることが多いため注意を要する.
著者
佐藤 義彦 土師 岳 叢 花 潘 儼 上田 恵理子 間瀬 誠子 山本 俊哉 山口 正己 廬 春生
出版者
独立行政法人農業生物資源研究所
雑誌
植物遺伝資源探索導入調査報告書 = Annual report on exploration and introduction of plant genetic resources (ISSN:24347485)
巻号頁・発行日
no.23, pp.137-151, 2007-11

A survey for the distribution, utilization and conservation of fruit tree genetic resources was conducted in south-western part of Xinjiang Uygur Autonomous District of China in cooperation with scientists of Xinjiang Academy of Agricultural Sciences from September 2 to 10, 2006. The abundance and diversity of the pear and stone fruit were observed in the region visited. Local varieties and seedlings of peach (Prunus percica ) and Xinjiang peach (P. ferganensis ) were observed in the region surveyed. Local variety 'Suan Mei', which is thought to be P. domestica , is cultivated in south-western part of Xinjiang Uygur Autonomous District. Local varieties of three Pyrus species, P. × bretschneideri, P. armeniacaefolia and P. communis and their interspecific hybrids are distributed mainly in south-western part of Xinjiang Uygur Autonomous District. Besides these three species, P. betulaefolia is used as rootstock for Pyrus. But the diversity of these local varieties is rapidly declining with the spread of commercial cultivars that were introduced from other provinces. Analyses for genetic diversity of pear and stone fruits based on molecular markers were carried out.
著者
佐藤 いつみ 高久 雅生
雑誌
じんもんこん2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.245-252, 2019-12-07

無形民俗文化財は,人々の生活の推移を示すものであり,その情報も含めて後世に残していく必要がある.本研究では,無形民俗文化財情報の構造化する手法を提案し,その適用を図ることを通じて,その統一的な管理とアクセス性向上を目指す.構造化を行うにあたり,CIDOC CRMに基づき,無形民俗文化財情報のLinked Data化を行った.データモデルでは,中心となる無形民俗文化財のエンティティに対し,イベント情報に関する3種類のエンティティ,「開催イベント」「発祥記述イベント」「登録イベント」を関連づけた.また,無形民俗文化財のカテゴリーの階層関係をSKOSで表現した.作成したデータモデルには,インスタンスとして無形民俗文化財の一つである「秋田の竿燈」を当てはめ,作成したデータセットについて議論する.
著者
石川 雄治 古閑 文哉 内田 守譜 矢内 伸佳 渡邊 鋼一 佐藤 亮一
出版者
福島県農業総合センター
巻号頁・発行日
no.9, pp.33-38, 2018 (Released:2018-08-02)

飼料由来の放射性セシウムにより体内が汚染された黒毛和種雌牛の飼い直し期間を短縮するために、ゼオライト給与による放射性セシウムの排出促進効果を検討した。試験では、清浄飼料にゼオライトを添加して給与した期間中の血液、尿及び糞の放射性セシウム濃度を測定するとともに、牛放射能測定装置により筋肉中放射性セシウム濃度の推定を行ったが、ゼオライト給与による放射性セシウムの排出促進効果は確認できなかった。
著者
フェルナンドトーレス ボジノ 佐藤 邦忠 岡 明男 菅野 幸夫 保地 真一 小栗 紀彦 ヨアヒム ブラウン
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.225-229, 1995-04-15
参考文献数
22

輓用種牡馬4頭について, 精液性状, 繁殖成績, 及び精液の保存性(液状保存と凍結保存)の関係を検討した. 精液性状については膠質除去後の精液量, 精子の濃度, 正常精子率, 及び精子運動性を調べ, また繁殖成績については過去3年間の累積の妊娠率とした. 精液の液状保存は5℃で行い, 0, 24, 48, 72時間目に精子の運動性を調べた. 精液の凍結保存には2種類の異なる希釈液(ブドウ糖-EDTA-ラクトース・卵黄希釈液, 脱脂粉乳-清澄卵黄希釈液)を用い, 凍結融解後の精子運動性と正常精子率を調べた. 精液性状の各値と繁殖成績は通常の変動範囲内にあったが, 膠質除去後の精液量, 正常精子率, 精子運動性, 及び繁殖成績に種牡馬間で有意差が認められた. しかしこれらのパラメーター間には相関性は認められなかった. 液状精液の保存性には種牡馬間で有意差が認められ, 保存前の精子運動性が最も高い個体で最も良好であった. また凍結精液では使用した希釈液にかかわらず融解後の精子運動性(13.8〜26.3%)と正常精子率(19.5〜38.0%)はともに低い値であった. 個々の種牡馬において精液の液状保存と凍結保存の結果には相関性が認められなかった. 以上の結果から, 精液の保存に対する適性を他のパラメーターから類推することは困難であると思われた. 輓用種牡馬精液の耐凍性を向上させるには,現在の凍結精液作製に関わる標準的手法に改良を加える余地が残されている.
著者
佐藤 純 中村 利廣 菅原 伸一 高橋 春男 佐藤 和郎
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山.第2集 (ISSN:24330590)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.19-39, 1989-04-10 (Released:2018-01-15)

Chemical analysis for major and minor elements was performed on the pumice fall deposit, essential blocks from the two pyroclastic flow deposits and the lava flow, erupted in succession during the 1783 (Temmei) volcanic activity on Mt. Asama. The pumice samples representing a vertical column exhibit no remarkable trend of chemical variation with time. The analytical results for the lava flow show small spatial variation in K, Mg, Sr and some other elements. Further inspection of the data for all the samples indicates that Fe, Na, Ti, Sr, Cu, Co and Ni tend to increase with time throughout the whole eruptive sequence. A plot of Sr/(SiO2 + K2O) vs. (Fe2O*3+K2O)/(SiO2+K2O) illustrates that the erupting magma became progressively more mafic and more enriched in Sr during the activity. This type of plot, combined with the spatial distribution of certain elements superimposed on the distribution pattern of the lava flow, reveals that, during the lava eruption, the composition of erupting magma still shifted to slightly mafic.
著者
佐藤 知条
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1-2, pp.25-36, 2012-03-31 (Released:2017-07-18)

本稿では映画の教育利用を推進する全日本活映教育研究会の監修で1933年に作られた理科の教材映画『石炭』の内容を分析して教師や教育関係者の思想との関連を考察した。映画は教科書だけで授業を展開させるのが難しい部分を補完するように作られていた。これは教師が教材映画に求めていたことと一致していた。このことは娯楽性と興行性の排除とも関連するため,興行映画製作者を排除し教育関係者の手で教育映画を作ろうとする思想の表れとも解釈できる。一方で映画には教科書にはない場面も存在した。ここには,時間とともに場面が変化するメディアであるために映像の一貫性やつながりへの考慮が生じるという映画特有の事情が影響していたと考えられる。教師はこの場面に映画の教科横断的な利用可能性を見出していたことから,『石炭』は当時の教師の教育映画観を反映したものであるとともに,彼らの教育映画観に影響を与えるものでもあったと考えられる。